(ギム先輩って観客を酔っ払いにできるんだな…)

カラン、と氷と氷がぶつかる音。ぐっと水を飲む相棒を俺はボーッとした目で見ていた。

学園を卒業してから数年、相棒とはずっと連絡を取り合っていた。俺が大人になったから、ってことで相棒はこんな洒落たバーで酒を奢ってくれるらしい。
俺はグイグイ飲んでやる！と意気込んでいたが、そもそも味があんまり好きじゃなかった上にちょっと飲んだだけで一気に体が熱くなった。相棒はそんな俺を見て笑いながら「まあ、こういうのは慣れていくものだから」と言ってくれた。
でもそれがなんだか悔しくて、何故か俺から目を背ける相棒の横顔をじっと睨みつける。

俺は大人になった。でも相棒はもっと大人だ。
……ずりい、せっかく近づけたと思ったのに。

なら、俺が酔わせちまったらいいんじゃねーか？

ボーッとした頭の中にそんな考えが浮かぶ。
そうだ、相棒だけずりーもん。俺だけこんなふわふわして熱くてガキっぽくて。相棒なんだから、俺と一緒がいいのに。

俺は相棒の肩に頭を押し付けた。相棒はびっくりしたのか、むせたみたいだった。ふん、別に俺は悪くねーからな。

「う、ウオッカ？」
「なあ相棒………アンタは酔わねーの？」
「いやあ、そしたらウオッカを送れなくなっちゃうから……それよりウオッカ、頭を…」
「ちぇっ、つまんねーの……ま、水じゃ酔えねーか……」
「……ウオッカ？」

「…なら……ならさ、あいぼう……そんなグラスじゃなくて、俺で、酔えよ……」
「…………」

どかそうと俺の頭に置かれていた手が、ゆっくりと撫でるように動く。…触るなって言ったのに、耳の方まで触ってきやがって。

あれ、なんか変なこと言っちまったかな。
相棒の顔が近い…。