私も……起きていたい……

1二次元好きの匿名さん21/12/03(金) 19:10:41

　薄暗い部屋の中、テーブルの上に置かれた小さな蝋燭の微かな光と、研究室に置かれた発光する薬品郡の色とりどりの明かりが二人の顔をぼんやりと照らし出している。

「大丈夫……ですか……？」　
「もう慣れたよ、キミといると退屈しないねぇ」

　二人のウマ娘が身を寄せあうようにしてソファに腰を掛け、他に何をするでもなくただ時間が過ぎていくのを待っている。アグネスタキオンとマンハッタンカフェ。
　静かな時間、静かな空間……静寂が支配するこの場所に、けたたましい音が飛び込んでくる。
　がん、がん、ぎぎん！
　金属を激しく叩きつける音が隣の研究室スペースから聞こえてくる。

「薬品棚を倒されるのは、さすがに困る」
「大丈夫……扉を開けなければ、そこまでのことはできませんから……」
「そうか、キミがいうならそうなんだろうね」

　タキオンが音のする方へ目をやると、確かに激しい音こそすれど棚やその中の備品が揺れていることはないようだ。
　それを確認して安心したタキオンは、今度はより深く寄り添いながら、頭をカフェの肩に預けて瞼を閉じる。

「子守唄にしちゃあ少しうるさいな」
「少ししたら、また静かになりますよ……」

　がん、がん、ぎぎん！ぎん！
　我慢する風でもなく、部屋の外まで鳴り響くような金属音を聞き流しながら、二人はまた時間が過ぎていくのを待つ。

「まあこのまま起きてるのも悪くない……キミの顔をこんなに近くで観察できるからね」
「私も……」
「うん？　なんだい？」
「…………」

　それ以上の言葉はなかった。
　無言のまま反らされたその顔が、蝋燭に照らされたせいなのか、はたまた別の理由があったのか、微かに赤らんでいたことに気が付くものは誰もいなかった。