- 1二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 21:32:39
「なんか可愛らしい字だね」
「……はて、あまり聞かない風声ですね?」
『それ』を見て、思わず口に出てしまった言葉。
担当ウマ娘のヤマニンゼファーは、その言葉にこてんと首を傾げる。
俺達は今、トレーナー室でゼファーのグッズのサンプルを確認していた。
すでにG1をも制覇している彼女は人気も高く、グッズの需要も高い。
毎月のように様々なグッズ作成の依頼が舞い込んできて、その確認は二人でやることにしていた。
そして今回、とあるグッズが俺の目を引いた。
「確かこれって、ゼファーのサインを元にデザインされてるんだよね?」
「はい、私の書く文字を、実に風雅な形にしていただきました」
そう言いながら、ゼファーはそのグッズを見ながら微笑んだ。
――――『ヤマニンゼファー』という文字が書かれているだけのアクリルキーホルダー。
しかし、それはただの文字ではなく、特別にデザインされたもの。
空のような青色を白で縁取り、どこかゼファーの勝負服を思い起こさせる。
そして何より気になるのは、その文字の筆跡そのものであった。
「ゼファーってもう少しキビキビした字を書くイメージというか」
「……少し下風だったでしょうか?」
「いやいや! そういうわけじゃなくて、こういう丸っこい字を書くんだなって思っただけで」
「ふふっ、少し悪風を吹かせてしまいましたね。わかってますよトレーナーさん」 - 2二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 21:32:58
慌てて弁明する俺を、ゼファーは悪戯の成功した子どものように笑う。
気にしてないとはいえ、俺も誤解を招く軽率な発言だった、反省をしよう。
改めて、そのキーホルダーを手にとって、彼女と並べるように眺める。
……ふむ、さっきは意外と言ったものの、こうして見てみると。
「むしろ、君にぴったりというか、君そのものを上手く表現しているかもしれないな」
「私そのもの、ですか? それはまた、異風な響きといいますが……」
「まずこの色合いは君の勝負服モチーフでありながら、そよ風のように爽やか」
「まあ……そう言っていただけると光風を感じてしまいますね」
「そして丸っこい文字は、君の可愛らしさを表してるみたいだね」
「かわ……!」
ゼファーは声を詰まらせる。
驚いたように目を見開き、顔を少しだけ紅色の染めた。
口元を隠すように両手で覆い、どこかに視線は逸らされている。
彼女のリアクションに疑問を覚えつつも、俺はキーホルダーの分析を進める。
「真摯さを保ちつつ、愛嬌もある……自然体の柔らかさというのかな」
「……えっと、すっ、少し、ほめ過ぎじゃありませんか?」
「これでも言葉足らずなくらいだよ、うん、ちゃんと見れば君と同じで本当に素敵だ」
「……っ」
ゼファーは顔を俯かせて、言葉を失う。
……あまりお気に召さなかったのだろうか。
とはいえ中途半端に止めるのもアレなので、俺は締めの言葉を口にした。
「うん、俺はこのデザイン、とても好きだな」
「…………!」 - 3二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 21:33:14
ゼファーは耳と尻尾をピンと立ち上がらせて、俺を見つめる。
やがて彼女は目尻を緩ませて、嬉しそうに笑みを零した。
「そうですか、トレーナーさんは私……の……に好風を感じるんですね」
「そうだね、ずっと連れ添いたいくらいに、好きだな」
「……ふぅ、正面からおぼせを頂くと、温風を浴びた心地になりま」
「こうなると、他のウマ娘のデザインも気になってくるな」
「……は?」
確か、このシリーズはすでに複数のウマ娘のデザインが制作されていたはずだ。
スマホで検索し、他のデザインも探してみる。
ゼファーもきっとトウカイテイオーとかのデザインが気になるに違いない。
数分の間、検索結果と悪戦苦闘し続けた後、ようやく俺は目的のものを見つけた。
スマホの画面を彼女に見せながら、俺は顔を上げる。
「見てくれゼファー、これがトウカイテイオー……の……」
――――ゼファーは不満そうに唇を尖らせて、そっぽを向いていた。
おかしいな、割とさっきまで機嫌良さそうにしていたはずなのだけど。
驚きの感情を隠せない俺を、彼女は軽く睨むような目つきで見つめた。
「……トレーナーさんはとんだ風来坊ですね」
「良く分からないけど、風評被害を受けている気はする」
「いいえ、色なき風みたく移り気で、すぐに風向きを変えてしまいます」
「えっと、その、なんだ、君のデザインが一番だとは思っているよ?」
「………………トレーナーさん、手のひらを出してください」 - 4二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 21:33:31
小さな声で呟くゼファーの指示に従い、俺は右手を開いて差し出した。
直後きゅぽんという音がどこからか聞こえて、彼女は片手で俺の手首を掴む。
そして、もう片方の手には油性ペンが握られていた。
「るらら~♪ る~らら~♪」
ゼファーは鼻歌交じりで、俺の手のひらにペンを走らせる。
くすぐったいものの、掴まれた右手はビクともしない。
やがて彼女は文字を書き終えたようで、満足そうな笑みと共に、ペンを置いた。
そして手首を掴んだまま、手のひらを俺の方へと向けさせる。
そこには、丸っこい可愛い字で『ヤマニンゼファー』と書かれていた。
……どういうことなのだろう。
別に嫌ということはないけれど、クエスチョンマークが頭に浮かんでしまう。
その一瞬の隙を突き、彼女は俺の手のひらを、今度は自分の頬に触れさせた。
柔らかくて、もちもちとしていて、キメ細やかな、彼女の頬の感触。
ゼファーは、花風のような笑顔を浮かべて、言葉を紡いだ。
「ふふっ、トレーナーさんに私の名前(サイン)、書いちゃいました♪」 - 5二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 21:35:29
こんなにゼファーの風語使えるの凄くない?
- 6二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 21:35:29
お わ り
グッズといえばガチャポンのゼファーのアクスタに5千円吸われました - 7二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 21:38:29
自分の持ち物には名前を書きましょう
ゴルシちゃんもそう言っている - 8二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 21:39:02
唇を尖らせるゼファーがいまいち想像できん
- 9123/06/05(月) 21:51:46
- 10二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 21:58:42
なんだそのふにゃふにゃの字体はとか思ってたけどゼファー直筆って考えたら急に可愛く見えてきた
こんな感じの字で取られたノートすごくみたい - 11二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 22:04:15
多分これテイトレの方も
「それぞれ特徴が出てていいよな。ヤマニンゼファーの丸文字は意外性があるし、ナイスネイチャも彼女らしいカラーが出てて……」
「モー、トレーナーッテバ!ドウシテスグホカノコノハナシヲシチャウノカナー!…トレーニング、行こっか。ボクの事しっかり見ててね?」
みたいなことやってそう - 12123/06/05(月) 22:24:20
- 13二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 23:03:47
独占欲ゼファーは万病に効く
- 14123/06/05(月) 23:16:56
いいよね……
- 15二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 01:09:03
今回のゼファーフォントすごく好きなんだけど、ゼファーの手書きって発想は全くなかった…素晴らしい概念ですわ
丸っこくてあどけなさの残る可愛い字で所有宣言されたい… - 16123/06/06(火) 09:46:34
されたいよね……
- 17二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 10:13:26
これはいい概念…朝からいいものを見た
- 18123/06/06(火) 11:07:29
- 19二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 16:23:31
かわいい
あの字いいよね - 20123/06/06(火) 18:01:33
- 21二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 20:50:59
- 22123/06/06(火) 21:47:40
- 23二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 01:32:05
このくらいのかわいい独占欲大好き……
重馬場じゃダメなんだ、ちょっとヤキモチ焼くぐらいがちょうどいいんだ(熱弁) - 24二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 03:28:44
自分のものにちゃんとお名前書けるゼファーちゃんは偉いねぇ
- 25123/06/07(水) 07:32:48
- 26二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 07:36:55
みんなも自分のものには名前を書こう
- 27123/06/07(水) 08:58:03
- 28二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 11:06:46
これで尻尾巻きつけてたりしたらすごくすごいと思います
- 29123/06/07(水) 12:35:13
今のオチか尻尾ハグオチで結構悩んでました