- 1二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 15:28:49
- 2二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 15:29:35
ショートショートすぎやしないか?
- 3二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 15:31:32
どこか遠い国のこと
勇壮たる地割れの広がる砂漠を超え、立ち枯れた国の残骸を超え、さらに北にはるか彼方
美しくも残酷な雪と氷の国でのできごと。
彼がその姉妹を見つけたのは、吸い込まれるような寒空に鋭い三日月が冴えわたる夜であった。 - 4二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 15:31:49
雪道の上で気を失って倒れている二人の美女。あまりの美しさに息を呑む青年。三日月を背景に女性を抱き起こす青年の姿は、まるで絵画のように峻烈な緊迫感を放っていた。
抱き起こされた女は小さくうめき声を上げて、まだ自分が生きていることを証明する。とはいえ、雪山が近くに連なるこの極寒の地で行き倒れていれば四半刻もしないうちに泉下の客となることは間違いないだろう。
「ニュラ、姉の方を頼む。」もちろん彼にはどちらが姉か妹かなど分からないが、何となくの雰囲気で判断した。
青年は供のマニューラに姉妹の片方を介抱して連れ帰るように指示を出し、急ぎ足で雪に覆われた彼の町へと帰って行った。
青年の町は雪山連なる大山脈の麓にあり、また麓といっても広大な山岳地帯であったため、町の人々は自分たちを山に住んでいると自覚していたし、商人や旅人などの外部の者も雪山の町として捉えていた。
雪国特有の連帯意識の強さは心悪しくは作用せず、町の人々はあくまでも外部の者に対して寛容で温かい人情味を持っている。
青年はこの町を愛していた。生まれ故郷というわけではないが、人生の大半を過ごし、もはやこの町の者で彼を知らない者はいないし、逆に彼が知らない町人もいない。
青年の父はこの町へと流れ着いてからすぐに病で亡くなった。腕の立つ剣士であった。青年もまた父に倣い剣を取ってきた。 - 5二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 15:32:13
ここは雪山。悪漢もいれば野盗もいるし、凶悪な野生種のポケモンが人を襲うこともあるだろう。その度に彼は町の人々を守るために剣を振るってきた。人が剣を取るときは財産や名誉や生命など「何かを守るとき」であるというのは武人の心得の常道であるが、青年にとってはまさしく、この雪山の町と人々を守るためというのが剣を取る理由である。
行き倒れていた二人の姉妹が目を覚ましたのは、青年が彼女たちを拾ったその日のことであった。2人ともほとんど同時に目を覚まし、傍らで介抱していたマニューラと青年を見るや、すぐに自分たちが助けられたのだと理解した。
深々と頭を下げる姉妹に対して、青年は恐縮するばかりであったが、気を取り直して荷馬車もなく雪道の上で倒れていたいきさつを訪ねることにした。 - 6二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 15:32:42
曰わく、二人は巫女であり土地土地の神に祈りを捧げ、災厄を抑えることを使命として旅を続けているとのこと。荷馬車があったが御者ごと野盗に襲われ、命からがら逃げのびたところ、力尽きて倒れていたらしい。
外を歩くのに供のポケモンも連れずに旅をしている。青年のように武術の達人というわけでもない。青年もさすがに不用心が過ぎると思っていたが、なるほど、すでに野盗の被害にあったばかりであったため、一切の自衛手段を失っていたのだった。
青年は巫女という職種そのものは知っていたが実物とであうのは初めてのことである。常人にはない特殊な能力を持っているようだが、サイキッカーのように特殊な術を扱う者もいないではない。何より民草のために自身の生涯を捧げるその気高い精神性に、青年は素直な尊敬の念を抱いた。
その日はそのまま青年の家に泊めおくこととして、翌日町の上役たちのところへ紹介しに行くこととなった。青年の家は豪邸というほどではないにせよ、人間2人を止める程度の広さはあった。
美しい女性と屋根を共にするなど経験のなかった青年は煩悩を払うため自室でひたすらに木剣を振るって夜を過ごすことになったのは秘密である。 - 7二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 15:34:39
おっ?えっちなSSか?
- 8二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 15:35:18
振るっていたのは本当に木剣かな?勃剣じゃないかな?
- 9二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 15:44:10
全裸SSの方じゃないか!新作嬉しいです
- 10二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 15:46:42
翌朝、少し早めに朝餉の支度をしようと起きてきた青年を迎えたのは、二人の美女が自宅の厨房に立ち、料理をしている姿であった。ふわりと香るスープの温かさが起き抜けの彼の胃を小気味よく慣らす。
「あっ、いや・・・その、おはようございます・・・」腹の虫に先を越されてばつが悪いものの、朝の挨拶をする青年。2人の美女はくすくすと品のいい笑いを見せる。笑われているのは間違いないものの、青年は少しも不愉快ではなかった。穏やかな朝がこの日一日を祝福しているようにさえ感じることができた。
青年が「町の上役たちに顔を見せた後、少し町を見て回ってほしい」と姉妹に伝えるや、姉妹の方も元よりそのつもりだったらしく、この日は青年が二人の美女姉妹にこの町を案内する日となった。
「町といっても、多少大きな村程度のものです。なにぶんこの立地ですから。しかし、町人たちはみな気のいいやつらばかりです。田舎者ゆえ少々乱暴な物言いや奇異の目などもあるやもしれませんが、どうかお気を悪くしないで頂きたい」
青年は自分が愛するこの町を巫女姉妹にも好きになってもらいたかった。そのため幾分お節介な先回りとなったが、姉妹はにこりと軽やかに笑い、青年の労をねぎらい、そして感謝を述べるのだった。 - 11二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 15:55:32
「剣士さま、わたくしたちは旅の身ゆえ、そういった物事には慣れております。むしろ風情豊かな趣きを感じられ、嬉しく思っておりまする。」姉巫女はにこりと微笑み、妹巫女もうなずいて賛同した。
賛同を得られたことで緊張をほぐした青年は、上役たちのところまで二人を連れていくまでの道すがら、町のこと、自分のこと、相棒のマニューラのこと、雪山のこと、実に多くのことを話した。普段は謹厳実直を体現したような武道家然とした彼を知る者からすれば、美人を前にして気持ちが昂ってしまっていることは明らかであった。
かといって彼を茶化すような無粋者はこの町にはいないようで、道行く彼らを見守る町人たちの目は実に生温かった。 - 12二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 15:58:07
ウワーッ!全裸の人だ!!
- 13二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 16:04:10
上役たちは到着した姉妹巫女たちを歓迎し、酒食を以ってもてなすつもりであったが、二人とも下戸らしく食事のみを振るまう事となった。
足労に感謝し、気高い使命を称え、滞在する間の便宜を図ることを約束する上役たち。できることならこの町に留まってほしいとの思いはあったが、それを言い出す者はいなかった。
きっと断るだろうことが明らかだったからである。崇高な使命を帯びたこの若き巫女姉妹を世俗の自分たちが困らせてはならない。せめて歓迎は心を込めようということになった。
当の巫女姉妹も上役たちが自分たちを大いに歓迎してくれたことに対して深く感謝し、また妹巫女は、この場所へ連れてきてくれた青年に対して、改めて感謝の意を伝えた。
不意に正面から混じり気のない純粋な感謝を伝えられた青年は顔を真っ赤にして恐縮するばかりであったが、その一幕を見る上役たちの目はやはり生あたたかった。 - 14二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 16:04:54
青年かわいいな
- 15二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 16:05:55
今回は穏やか系でいくのかな?
- 16二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 16:17:26
上役たちとの会食を終えて、改めて町を歩くことになった青年と巫女たち。時刻は昼食時を超えて少し経った辺りで、まだまだ日は落ちそうにない。
山の天気は変わりやすいとはいうが、空には雲一つ見えない。しばらく暖かい陽光と戯れながら、心地よく町を散策することができそうだ。
様々な話題が飛び、実に話が弾んだ。少なくとも青年はそう感じていた。出会い方が特殊だったからだろうか、若い男女だからだろうか、青年は二人の巫女姉妹を懸想するようになっていた。昨日出会ったばかりの素性もろくに知れない二人をである。
また、姉妹の方も災禍を鎮めてまわる日々、疲労の釜の底まで行きついて倒れていたところを救ってくれた、いわば命の恩人に対して悪感情など抱くはずもなく、ましてやこの青年が精悍な顔つきの美丈夫であれば、好意を抱くに至ったとしてもおかしなことではないだろう。 - 17二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 19:02:15
擬人化物かぁ嬉しい
- 18二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 19:03:41
全裸の人だとただの変態さんなんだよなぁ
でもそのインパクトが強すぎて… - 19二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 19:05:29
その日は日が暮れるまで町を練り歩き、妹巫女が少々疲れた表情を見せた途端、青年が慌てて詫び、帰路につく運びとなった。
一日の案内の礼にと、朝餉のときのように、姉妹が夕餉を作ることとなり、青年が大いによろこんだのは言うまでもないだろう。
その夜、青年がすっかり寝静まったころ、姉妹は珍しく言い争いをしていた。といっても姉の方が妹の方を責めるような形であって、実際論争をしていたわけではないようであった。
姉巫女は青年を起こすことがないように語気を抑えつつ、妹に対して怒りを表す。妹の方は両手で顔を覆ってすすり泣くばかり。
「・・・もうこんなことしたくない・・・・」それが嗚咽の中から聞こえてきた妹の声であった。 - 20二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 19:20:16
はい、不穏
- 21二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 21:34:29
あなたの四災SSを待ってたんですよ!(歓喜)
- 22二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 21:44:00
この作者が例の作者ならどっちかっていうと擬獣化ものだぞコレ
- 23二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 22:19:23
全裸の人という的確なパワーワード
- 24二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 22:49:14
擬人化というか…生前?
- 25二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 07:18:32
そんな死が確定してるみたいな…
- 26二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 09:01:44
夜が明けて翌日、姉巫女と町を散策していた。妹の方は少々気疲れしたため家でおとなしくしているとのこと。
長閑な時間、青年にとってはいつぶりか記憶の彼方にすらないほどの静かな時間であった。いつもは傍らにいるマニューラも今日は家で妹と共に留守番をしている。正真正銘の二人きりである。
歓談は大いに盛り上がったが、ふと訪れた一瞬の静寂。その間隙を突くように姉巫女は青年の隣に座り、太ももに手を置いた。
女性に触れられるなど生涯を通じても母親くらいしか例がない青年は血が一瞬で沸騰するのを感じた。
とっさのことであった。
姉巫女の積極性。それが青年には毒となってしまったのか、青年はとっさに姉巫女と距離を取ってしまった。
距離にしてほんの半歩程度。しかし、それは姉巫女にとっては確かな拒絶の意味として感じられた。
「あ、いや、その・・・」取り繕おうとする青年に対して、姉巫女は静かに微笑み、自分の無礼を詫びる。
それから二人は何も話さずに家へと帰り着いた。青年はもはやどの道をどう通って来たのかすら覚えていなかった。 - 27二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 09:09:26
夕食を終えて、夜も更けたころ、姉妹はまたも口論になっていた。今日はどうやら妹の方も姉に言い返している風であった。
青年は他人の話を盗み聞きするほど下卑てはいない。また、彼の供をするマニューラも同様であった。
だから、これは偶然である。マニューラが爪とぎのために手頃な柱を探していたとき、偶然、姉妹の話を聞いてしまったのである。
その内容を知ったマニューラは血が冷めていくのを感じた。氷タイプである自分すらも凍てつかせる人間の悪意というものの悍ましさの一端を垣間見てしまった。
「いけない子ね。盗み聞きなんて」
その日から青年のところいマニューラが帰ることはなかった。 - 28二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 09:10:17
き、きっとそうだよ!
- 29二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 09:21:49
翌日、今度は姉巫女の方が家で休むと言い出した。青年は昨日自分があまりに無礼な態度を取ったため気を悪くしたのか、体調を崩したのかと気が気ではなかったが、姉巫女の口から心配いらない旨を聞いて、一旦は納得することにした。
そこでこの日は妹の方と共に町を歩くことした。
妹巫女との散策もまた、前日に負けず劣らず、いやむしろ、前日も青年に至福を感じさせてくれた。姉巫女も絶世の美女であることは間違いないが、妹巫女の方もまた形容し難い可憐さを持っている。
どちらがより美しいとは言えない。薔薇が美しいか牡丹が美しいか、それを決めかねるようなものである。
散策しているうちに、前日姉巫女の手を払ってしまった場所までやってきた。意図したわけではないが、そこにたどり着いてしまうや、青年は体が少々こわばるように感じた。
これまた偶然か必然か、雪道に足を取られた妹巫女が倒れこみそうになってしまった。とっさに青年は彼女を抱きとめる。
顔と顔が近づく。
互いに染まる頬。しかし、目線は相手の目から離れない。抱きとめる、いや抱きしめる青年の腕に力が入るのを感じると、妹巫女は答えるように青年を抱き返した。
珍しく周囲には誰もいない。銀世界の雪町の一隅で、二人だけの美しい世界が広がる。
遠方からそれを見る姉の目は、凍てつくように鋭かった。 - 30二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 09:23:53
ホミカのも待っているぞ・・・
- 31二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 09:40:03
- 32二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 10:41:38
姉巫女の脳が破壊される!
- 33二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 12:09:17
青年と妹巫女の距離がぐっと近づいたその時から半刻ほどした頃、二人は道中急激な揺れを感じた。
まるで地面がまるごと揺れているような感覚。この雪山に地面タイプのポケモンなどいない。当然「じしん」や「じわれ」を使うポケモンもいない。つまり、これはポケモンが引き起こした現象ではないということである。
青年が周囲を見回していると、妹巫女の表情が青ざめているのが分かった。ぶつぶつとしきりに何かを呟いている。耳をすますと何かに謝っているように聞こえた。
彼女の様子も心配だが、今は町の状況が気がかりである。なにせこの雪山でこれほどの地揺れがあれば想像されるのは、当然「なだれ」である。
雪山に住む者にとって、雪崩は絶望の核を煮溶かして形を与えたようなもの。抗いようのない最大の恐怖。
いかに対応するべきか分からないが、青年はせめて人的被害だけでも防ごうと、妹巫女には急いで家に帰るように伝え、自身は町の中を駆け抜けていった。
町に響く地響きはまるで獣の慟哭のように感じられた。 - 34二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 12:50:21
「姉上様、姉上様、わたくしは辛うございます。悲しゅうございます。」
「泣き言など、何にもならぬ。これこそ我々の生業であり、使命。」
姉妹は上役たちや青年に自らを「厄災を鎮めて回る巫女」として伝えた。事実今まで巡ってきた村や街ではそのように扱われて来たし、姉妹巫女の噂話なども存在する。
だが、ここには彼女たちがひた隠しにしている事情が含まれていた。
彼女らは、災厄を鎮める聖なる能力者、ではない。
神の怒りを鎮める巫女などとは真逆の存在。
妹が土地神のいない土地を探し、姉がサイキッカーとしての力を悪用して厄災を引き起こす。
そして頃合いを見て巫女を名乗って厄災を止めることで、多額の報酬と名声を得る。姉妹はそういった自作自演を生業としてきたサイキッカー一族の最後の二人であった。
もちろん彼女らには良心がある。それでも家伝の生業を否定するほどの「親不孝ぶり」を持ち合わせてはいなかった。
だが、今回は、行き倒れを救われる形となり、厄災を起こす前に町人である青年と接触してしまった。そのうえ、町の人々は彼女らを暖かく迎えた。迎えてしまった。青年の誠意も相まって姉妹はこの町には厄災を起こさず、できることなら永住の土地としたいとすら思っていた。
実際、誰か姉妹の永住を求める者がいれば、彼女らは喜んでその提案にのっただろう。しかし、現実にはそうはならなかった。 - 35二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 13:00:45
姉妹は青年に好意を抱いていた。明確な好意であった。旅の身空で寂しく生きてきた姉妹にとって青年の真っすぐさは実に眩しく、また、実に魅力であった。
だからこそ姉巫女は青年との距離を詰めようとした。自分を好いてもらいたかった。ただ、手を払われ身を躱され、拒絶された。青年はそんなつもりではなかったが、少なくとも彼女はそう思った。
しかも、自らの手を払った青年は妹のことを愛おしそうに抱きしめている。姉の中で何か形容しがたい青い炎が燃えだしていた。
恋敵になったとしても、妹は肉親である。
姉はこのとき心の奥底で「肉親の縁を切りたい」と願った。願ってしまった。 - 36二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 13:25:18
青年と別れて家に着いた妹巫女が姉巫女に訴えたのは、この町だけは見過ごしてほしいとの嘆願であった。
しかし、姉の中にはもはや妹の言に貸す耳などなく、冷たく拒否の言葉を言い放つのみ。
それでも食い下がる妹に姉巫女は一言、残酷な一言を告げた。
「顔を焼きなさい。その美貌を失えば、あの人もお前を見限るでしょう。」 - 37二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 16:00:49
- 38二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 16:03:04
こわいよお
嫉妬の炎で雪を解かしにかかるんじゃないよ
そしてフェードアウトしたマニューラが心配だわ…たぶん死んでるかおぞましい何かに変貌してるんだろうけど… - 39二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 16:52:31
- 40二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 17:15:13
奇しくもパオジアンと同タイプ…
- 41二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 17:21:15
- 42二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 17:22:33
そういえば、中国文学に「青い炎」って作品あるよね。嫉妬の青い炎・・・こわ
- 43二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 17:25:55
- 44二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 17:33:58
つながったな
- 45二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 17:50:44
姉妹は決して仲が悪い訳ではなかった。もちろん外道を生業としている以上、町娘のように平穏で仲睦まじく、とはいかなかったが、それでも肉親の情をもって確かな絆でつながっていた。それは間違いなく事実である。
しかし、古今東西、親愛や友愛に亀裂が入る時にはいつも恋愛の影があるもの。本来美しく甘く切ないものであるはずの恋愛は、悍ましい力をもって人々の絆を引き裂くこともある。
姉巫女の心を凍てつかせ、姉妹の情を断ち切ったのもやはり、青年に対する恋愛の感情であった。
顔を焼けと言われた妹巫女。彼女も多くは語らなかった。姉が差し出した酸液の瓶を目の前にして、身がこわばるのを感じてもその手を止めることはなく・・・
「 ・ ・ ・ 」
その美貌を強酸に爛れさせていく際も、ひと言のうめき声も上げることはなかった。
姉巫女はその一部始終を見ていても気が晴れないことに苛立ちを感じていた。本当は彼女も分かっている。こんなことをしたからといって、あの青年が確実に自分に振り向く保証など、どこにもないということを。
自宅では悍ましい嫉妬の炎が姉妹の心身を焼け爛れさせているその頃、青年は小規模な雪崩によって崩れた家屋に入り込み、がれきの下敷きになっている住民たちの救助にあたっていた。
青年の助力はかなり大きいものだったらしく、住民たちは多くが軽いケガのみで済み、一部重傷を負った者もいたが、命まで失った者はいなかった。
だが、当の青年本人は崩れるがれきから人々を救うために体を張ったため、大小いくつものケガを負ってしまっていた。
身動きすら取れない重傷というわけではないため、青年は瀕死の身体を押して家へと帰っていった。
自宅の扉を開けた青年の目に飛び込んできたのは、妹の顔に包帯を巻く姉巫女と呼吸を荒げて痛みに耐える妹巫女の姿であった。 - 46二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 18:05:18
姉巫女は妹に死んでほしいわけではない。ただ嫉妬の炎を抑えられなかっただけ。だからこそ、冷静になるととにかく手当てをしなければならない思考でいっぱいになった。
生業こそ外道であったが、彼女らは決して悪人ではなかった。心根まで腐っていたわけではなかった。
この雪山に閉ざされた町では家庭の薬の備蓄などたかが知れている。
「わたくしは恵民署まで薬草を頂きに行ってまいります。」(恵民署:平民たちのための病院)
雪道を走り出した姉巫女は終始、妹を案じていた。
矛盾
血を分けた実の妹に対して顔を焼けと命じる悪辣と、一も二もなく雪道を駆ける親愛と・・・
姉巫女の心はぐちゃぐちゃにかきむしられている。走りながら涙がこぼれてくる。周りには誰もいない。足がもつれて倒れ込んだ姉巫女の美しい顔に、雪と土と泥がこびりつく。
顔を上げたその瞬間、彼女が見たのは、自らが手にかけ、地の底に埋めて雪をかけて隠したはずのマニューラの姿であった。
かなり遠い。だが、確実に青年の家の方へと向かっている。
姉巫女は妹のために薬を取りにいくはずが、またしても悪心に侵されてしまった。
彼女の足は今、青年の家へと向いている。 - 47二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 18:09:37
パオジアンって剣に切られまくった有象無象の無念の集合体だったよな…?
- 48二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 18:45:15
- 49二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 19:13:08
もしかしてえっちじゃないやつ?
- 50二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 19:22:40
- 51二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 19:34:09
こっから有象無象を百人斬りするんだ!
- 52二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 19:35:05
ば、ばか!
平和に進んでたのにスレ主に発破かけやがったな! - 53二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 20:01:13
妹巫女が顔焼かれてる時点で平和ではないんだよなぁ
- 54二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 20:07:36
このレスは削除されています
- 55二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 20:51:35
マニューラ先輩かっこいい
- 56二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 20:57:42
- 57二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 21:00:59
姉巫女のさらけ出された胸元に全裸の波動を感じる
- 58二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 21:10:37
ぜんらのはどう
威力 120
命中 90
ルカリオ!ぜんらのはどう! - 59二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 23:21:12
例の剣がどんな形で出てくるか楽しみな気持ちとまたあのしんどさが来るんだろうな……という気持ちが同時に存在している……
- 60二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 00:15:16
守る剣ってことを強調されてたな
攻撃に使うんか…姉の顔を刻んだり…まさかね - 61二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 09:28:32
相変わらずじごくで草
- 62二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 11:47:16
自宅で妹巫女の傷の手当をしていた青年であったが、想像もしなかった訪問者に驚きを隠すことができなかった。
「ニュラ!どうしたんだ!?」
傷を負って今にも瀕死なようすのマニューラ。相棒の姿は明らかに人為的な傷によって覆われている。
「誰だ!誰がお前を・・!」
普段は温厚な青年だが、長年寝食を共にしてきた相棒を徒に傷つけられたとあれば、怒らないはずはない。背中の剣の柄に手が伸びるのも自然なことであった。
そのとき、妹巫女は息を荒げながら、とつとつと語り出した。自分たち一族のこと、姉妹のこと、ここに来た目的のこと・・・
相棒のマニューラに包帯を巻きながら青年は妹巫女の話を聞く間、心に氷の剣を刺されたような気持ちになっていたが、それでも彼女の話を遮りはしなかった。
妹巫女の話を聞き終えた青年がその次にとった行動は、彼女を正面から抱きしめることであった。
言葉は多くなかった。
ただ一言、愛していると青年は伝えた。そして、彼女の罪を共に背負い、寄り添い、共に償うことを誓った。
青年は、妹巫女の焼けただれた顔をじっと見つめ、その唇にゆっくりと口づけをする。
姉巫女は扉の外から妹の独白と青年の決意を聞き、そして接吻の一部始終を見て、膝を折りただひたすらにあふれて落ちる涙を止めることができずにいた。 - 63二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 12:05:34
NTRやんけ~!
- 64二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 12:25:10
- 65二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 13:18:50
まあどうせ皆寝る(永眠)ことになるんだし!
- 66二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 14:01:01
御しきれない心の痛みは猛烈な波となって姉巫女の心身をざわめかす。サイキッカーである彼女の精神が大きく揺さぶれることはすなわち、巨大な力が制御を失うことを意味する。
姉巫女は今まで幾度となく災害を引き起こし、人々に致命的な害が及ぶ前にそれをせき止めていた。その繊細な制御をポケモンの力を借りることなくやり遂げていたのは、彼女の才覚とたゆまぬ努力によるものである。
だが、今回ばかりは彼女も止めることができなかった。
この小さな雪町を中心に、大山が鳴動し、峰は折れ、地がうなる。
ただならぬ気配を感じ取った青年は、妹巫女の肩を抱きつつ、背中の剣を抜く。
「ニュラ、彼女を頼む。世話をかけるな、相棒」
痛みに耐えつつもマニューラはニヤリと笑って青年に応えた。
剣を取って家を奔りでる青年。扉を開けたその瞬間に目に入ったのは、姉巫女が倒れている姿であった。息はあるが抱き起こしても意識が戻らない。ひとまず自宅の中に引き入れてマニューラに後を託し、町の様子を見に行くことにした青年。
不自然なほどに冷たい空気が青年の肌を刺し、剣を凍てつかせる。
周囲には何かの悪意が満ちているかのような、または怒りのような気配がある。姉巫女はこの「何か」にやられたのか、それとも妹巫女が言っていたように姉巫女が引き起こす災害とは「これ」のことなのか・・・
青年には分からない。そのうちに、青年をふくめ、町の人々は信じがたいものを目撃する。
もはや数え計ることもばかばかしく感じるほどの、巨大な雪の塊。
大雪崩が町を目がけて猛スピードでやってきている。青年は己の剣の無力さを知った。守るために剣を取ったはずが、剣ではどうしようもないものが相手となったのである。
頑丈な屋内に逃げ込むよう大声で叫んでまわり、自身も急いで家へと戻っていく。彼が最後に家にたどり着くことができたのか、それは今となっては知りようもない。町すべてがぶ厚い雪の底に沈んだからである。 - 67二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 14:14:12
雪崩がおさまってから数日間、雪の底から這い出てくるものはいなかった。ただ、三日月が満月へと育ち、再び鋭さを取り戻してきた頃、深い雪の底からうごめき出てくる者が、独りだけいた。
青年の相棒、マニューラである。
すでに瀕死であったが、氷タイプであることも幸いして雪の下敷きになっても生き延びることができていた。
もちろん、ダメージがなかった訳ではない。這い出てきた時点でもはや命は風前の灯火であった。
生の最後の瞬間になって、自分の周りには何もなく、雪の下深い底から無念と嫉妬と恐怖と怒りと・・・あらゆる負の感情が湧き出てくるのを感じるマニューラ。
彼は自らの重傷など気にも留めずに一心不乱に雪を掻き掘りだした。本来二足歩行のポケモンであるマニューラが四肢を地に、いや、雪について、ひたすらに掘っている。
まるで何かを探しているようであった。
いや、探しているのは何かではなく、「誰か」であろうか。延々と掘り続けている内に、マニューラの意識はもうろうとしてきた。
限界である。
じきに彼も息絶えるのであろう。
彼が探し物にたどり着いたのは、彼の意識はもはや途絶え、肉体だけがふらふらと直前の動きを続けているときであった。
がちっ
その氷の爪が、「それ」にぶつかったとき、彼の肉体も動くことをやめた。
「それ」は、青年が父から受け継ぎ生涯かけて磨き続けてきた、幼かったニューラを助け、ともに人々を守ってきた宝刀であった。 - 68二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 14:20:57
ふう、ようやく刀が出てきました。ここからは楽しい話になるように頑張りますね!
- 69二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 14:21:21
- 70二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 15:15:01
さて、この作者が今まで言ったことをまとめてみましょう
健全なものを書く→全員全裸
平和なものを書く→冤罪でチオンジェン化
ほのぼの系を書く→村人皆殺し周辺国全滅
今回はどうなる!? - 71二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 15:23:52
- 72二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 15:54:53
先の展開が気になるな
- 73二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 15:57:08
アオハル今だ!行け!ゴーゴーゴー!!!
- 74二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 17:01:03
ちなみに、ホミカのSSも書いてたんですが、ホミカの全裸ライブに感化されてイッシュ全土が全裸地方になった時点で、なんか変態チックだなって思いまして、最初から書き直しているところです。
- 75二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 19:16:47
それから幾星霜が流れたか、大雪崩が運んできた雪がすべて解けてなくなり、一本の若木が古木となって山野を見下ろすようなった頃、町があったはずのところは人の気配のしない更地となっていた。
雪山に棲む多くのポケモンたちもなぜか立ち寄らない。凶暴なポケモンたちが来ないということから、深山に入り込む修行者や野盗の類がときおり野営をすることはあったが、それでも定住する者は皆無であった。
あるとき、一組の野盗がこの地の土くれの中から一口(ひとふり)の剣を見つけた。
「おかしら~!なんか見つけやしたぜ!」
野盗は生まれながらして野盗であり、粗野に育っていたため、気がつかなかった。風月を経てもなお、さび一つ付かないこの剣の不自然さに・・・ - 76二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 19:39:11
引きが毎回怖いんよ!
- 77二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 22:19:15
- 78二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 23:05:40
良かったけど良くないのですわ
- 79二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 23:16:44
良かった(生き埋め全滅から目そらし)
- 80二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 23:34:22
図鑑説明を忘れるという痛恨のミスの結果二部構成になってて笑う
- 81二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 23:48:21
この作者さん、全ぺの時からミスするとクオリティ上がるというワケわからん特性持ってるからな
- 82二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 08:37:12
続きが楽しみなので保守
- 83二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 11:09:12
保守
- 84二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 11:12:12
ちょい仕事入っちゃいましたけど、今日も書いていきます!ss楽しいね!
- 85二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 14:45:23
過去作気になる リンク誰か持ってないか
- 86二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 14:57:11
- 87二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 15:12:35
ありがと
- 88二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 16:14:32
「でかしたじゃねえか、どれ見せてみろや」頭領と呼ばれている男が剣を受け取る。
剣はまるで先刻まで露の中にあったかのように、しとりと濡れ、その光沢はとても悠久の年月など感じさせるものではなかった。そしてなにより、どこか名状しがたい魅力がその刀身に宿っていた。
野盗たちにはその価値の判断などできようもなかったが、高値で売れるだろうことだけは確信できた。実際、彼らが闇市で剣を見せるや、すぐに想像のはるか上をいく買値がついた。普段なら多少ごねて買値をつり上げる彼らだが、今回ばかりは即断即決であった。
剣はその後商人の手を通じて好事家の大領主のもとへと渡った。その大領主には息子がおり、彼は剣を嗜む実直な青年であった。その目は奇しくも、姉妹巫女と同じ青い光を宿していた。
商人が持ってきた剣は不思議な気配をまとっていたが、春と夏そして秋が暮れるまでは何事もなく、その麗身をもって見る者を愉しませていた。
そして冬。
吹雪の夜であった。 - 89二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 16:15:01
夜も更け、使用人たちも家令を除いては皆帰宅した頃。領主の屋敷の門を叩く音が響いた。鈍い音である。主人たちは早めに寝入っていたため、家令が門越しに対応する。
「どちら様ですかな」?
「旅の者でございます。」
「何用ですかな?」
「吹雪にて立ち往生しております故、一晩の屋根をお借りしたく。」
「なるほど、ではしばしお待ちくだされ」
「承知いたしました。」
家令は恐縮しながらも就寝中の主人を起こし、是非を問うた。起き抜けであったが、領主は迅速に事情を把握し、すぐに部屋を用意するように告げる。
こうして、領主の屋敷に独りの女が入っていった。特別な美人であった。 - 90二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 16:15:21
屋敷の中には領主が育てているポケモンもおり、特にゴーストタイプが多かったが、彼らは突然やってきた女を不審がって近づこうとはしなかった。
普段ならば領主のもとに相談にきた農民やその付き添いの子供を驚かしたりして、共に戯れる姿が見れるものだが、なぜか今回はそうならなかった。
朝となってから、改めて領主とその息子のもとへ女が挨拶に向かうと、息子の方は彼女を一目見るやその美貌に惚れこんでしまった。
女の方も急ぐ旅ではないとして、しばらく滞在して友好を暖めることとなった。 - 91二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 16:15:36
女の心身がそろそろこの屋敷での生活になじんでくるかどうか、そんな辺りのある日の晩、彼女は堂に飾られた一口(ひとふり)の剣を眺めたいた。
ふと気が付けば、目を離せないでいる。まるで剣が意思をもってヒトの目を引き付けているかのような得体の知れない何かを感じる。剣の中で何かがうごめいているようにさえ感じる。
屋敷のゴーストポケモンたちは剣の飾られたお堂には近づかない。もし、誰かが通りがかったりすれば、この呪縛は解けただろう。
ただ、そうはならなかった。己の意志を無視して剣に吸い寄せられていく四肢に、女の恐怖はより強まる。
剣の柄に女の手が触れた瞬間、彼女の脳裏に浮かんだのは、光景でも思想でもなく、純粋な「感情」であった。 - 92二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 16:15:57
わけも分からぬうちに死にゆく無念、最後のときまで貫かれた愛、思い人の心を奪われた嫉妬、主人のもとへ帰りたい忠心・・・
愛憎善悪あらゆる感情が嵐のように渦を巻く。
堂の中に音はない。ただ、女の耳には轟音が鳴り響いているように聞こえている。無数の人間の感情の奔流に飲み込まれ、女の自我はすりつぶされていった。
そうしてしばしの時が経った。いや、正しくは、経ったように感じられた。実際にはほんのひと呼吸程度の短い時間である。
女の中には、もはや彼女はいない。
あの人のもとへ・・・主人のもとへ・・・死にたくない・・・・
そんな感情たちが女の口を借りて紡いだ言葉は、
「生きる・・・」
であった。
女の足は領主の息子のいる修練場へと向いている。その手には自らを振る肉を得てよりいっそう鋭い光を放つ、宝剣が握られている。 - 93二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 16:18:35
お待たせいたしました。これから虐殺パートです。宝剣を妖刀にするまでが大変でした。
ちょっと姪っ子来ちゃったんで遊んできます。夜には再開します! - 94二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 16:25:27
姪っ子ちゃん逃げた方が良くない?
- 95二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 16:28:17
- 96二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 17:14:03
虐殺厄災パートに突入だヒャッハー
- 97二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 17:27:35
ソソゲ→雪げに続いて見事だ…大好き
虐殺パートかぁ待ってま(せんで)した! - 98二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 19:51:20
青年のいる修練場にやってきた女。生き残った女中の証言によれば、その様はまるで何かを探しているように見えたとのことである。
中にいたのは青年と数名の同門剣士たちであった。彼らはみな武を嗜む者たちである。そのため、視界に入ってきた女が正気の様でなく、その手には凶器が握られているこの状況を瞬時に察知し、臨戦態勢を取った。
一目ぼれしている相手とはいえ、この状況で色恋を持ち出すほど彼は呆けてはいない。青年の所作は師から伝えられている通りの見事な運びであった。
剣士たちがまず先に狙ったのは、右手にある宝剣。武装を解除して取り押さえるためである。通常なら対話を試みるべきだが、女が明らかに正気を失っていると判断し彼らは制圧を試みたのである。
彼らの薄情を責めるのではなく、英断を褒めるべきであろう。ただ、その英断もよき結果にはつながらなかった。
物言わず包囲を築いた剣士たちの中心で、女は舞うように剣を振るいだした。その様は神職の行う巫者の舞のようでもあり、剣士の剣舞のようでもあった。
最初はゆったりとした剣閃は徐々に速度を増していく。そして速度と共にその太刀筋には明らかに不自然な膂力がこもってきている。
青年は剣士たちが築いた包囲の一枚外側に位置していたが、その動きの速さをみて呟いた。
「つるぎのまい・・・?」
一部の刃を持つポケモンが使う技 「つるぎのまい」
舞によって心身を研ぎ澄まし、攻撃力を大きく引き上げる一手である。だが、それはポケモンの話。
人間が剣を振り回したところで、多少遠心力が乗る程度。膂力が増すなどあり得ない。
確かなことなど何一つ分からない。ただ一つだけ確実に言えることは、目の前の美しい女がすでに人外へと変わり果てているということ。
瞬きのうちに取り囲んだ剣士たちを肉塊へと変え、青年との距離を詰める女。初太刀をなんとか受け止めるも、女の細腕とは思えない力で吹き飛ばされる青年。
それでも彼は血を吐きながら立ち上がり、無我夢中で剣を突き出した。無数にかわされる剣閃。そのひとつが女の心臓を捉えたのは青年の腕ではなく、単なる偶然であった。 - 99二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 19:58:30
惚れた女を手にかけた衝撃は思いのほか小さく、青年は冷静に女を見聞する。明らかなのは、この女性が細腕で剣を振るって同門の達人たちを物言わぬ細切れへと変貌させたという事実。
なかなか受け入れらることではない。狼狽しそうになるのを強靭な精神力で抑え、改めて女を確認する。特にその握られた宝剣には何か細工がありそうに感じた。
青年にとっては、長らく自宅の堂に安置されていた装飾刀剣である。馴染みが深いわけではないが、この剣が何かの原因になるなど想像できなかった。
だからこそ、なのかもしれない。
武術の達人である彼がなんの警戒もなく不自然な剣に触れるなど、本来ならあり得ないこと。
尋常ならざる力で硬く握られてた女の手から、なんとか剣を引きはがし、改めて握ってみる。
その瞬間、青年の脳裏に浮かんだのは・・・・、
感情の奔流であった。 - 100二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 20:10:35
舞→巫女姉妹
女乗っ取り→姉
剣技→青年
何かを探してる→マニューラ
かな? - 101二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 23:08:10
- 102二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 23:51:49
もう本当にかっこいい
- 103二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 23:52:14
カミエシ…!?
- 104二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 00:59:08
どことなくペパーみを感じる•••
- 105二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 07:15:04
あー感情が伝染していくよぉー…
- 106二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 08:57:40
加害者兼被害者を増やしていくタイプの怪異か
- 107二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 14:43:21
その日、領主の屋敷から出てきた人間はいなかった。ただ、全身に白とも黒ともつかないような靄をまとった人外と化したかつての青年、その姿をした「何か」がひっそりと門から出て来たのを、人々は知らない。
剣に宿った数多の無念、羨望、嫉妬、執着は歳月を経て解けることなく鬱積し、触れる者を狂気へと誘う。
剣がしばらくの間大人しく装飾品の身に甘んじていたのは何故だったのか、旅の女が剣に触れたのがいけなかったのか、今となっては誰にも分からない。剣自身も語りはしない。
青年の肉体をもって、剣はその本分を取り戻した。剣の本分とは、「切る」の一念である。かつて町を守るために独りの青年が振るっていた剣は無数の呪縛に蝕まれ、悲劇を生み出す妖刀へと変貌した。屋敷にいたゴーストポケモンたちはいつの間にか影もなく。
青年、といっても肉体だけで彼の精神は霧消しているが、彼は剣と共に領内の各所に現れ、その剣技をもって無念と恐怖の念を集めていった。だが、意外にもあっけなく警吏とそのポケモンたちに包囲され、なます斬りとなってその身を沈めが、次に剣をとった警吏の者が次の演者となって悲劇の続演を告げる。 - 108二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 14:43:40
この世にはあらゆる災害が存在する。突如として不作に見舞われ滅んだ国もあれば、土地神の禁忌に触れ地の底に沈んだ国もある。だが、今回は得体の知れない人間とポケモンたちの感情により生み出された悲劇である。
この悲劇が終演を迎えるまで幾度目かの冬を待つこととなった。終わりといっても正しくは被害を受ける者がいなくなったという意味では、真の終わりではないのかもしれない。
最初に剣の傀儡となった旅の女、次の被害者である領主の息子、その後の被害者たちも皆一様に「何かを探しているような姿」をしていた。
剣に最後に念を吹き込んだのは青年の相棒のマニューラである。そのマニューラは最後に重傷を負いながらも青年を探して雪を掘り続けた。すべては共に生きたい一念である。 - 109二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 14:43:54
最後の演者の肉体も朽ち果てたころ、滅びた町の路傍に打ち捨てられたように転がるに剣に雪が降り積もっていった。
雪は小さな氷の結晶である。マニューラの氷の爪を思い出したのか、それとも巫女姉妹の執着が形をもち始めたのか、ぞるぞると音を立てながら雪が形を成していく。豹のようなしなやかな形をなしていく。
そうしてうごめきだした何かが剣を口にくわえると、まるで「最初からそう作られていたかのように」刀身はふたつに折れ、豹の牙を模した姿となっていった。
嫉妬、執着、無念、愛憎・・・あらゆる負の感情を押し込めてその何かは小さく呟く。もう意味も分からなくなった剣の本分を・・・。
「・・・キル・・・キル!」
厄災ポケモン パオジアン その誕生である。 - 110二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 17:04:27
- 111二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 17:14:37
この場合はどっちかというと人の心の方が怖いわぁ
これは不完全な世界 - 112二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 19:41:22
初めて明確な自我を持ったパオジアンが一番最初にしたことは、「探す」ことであった。何を探しているのかも分からない。それでも雪を掘り、洞を穿ち、山を駆けて方々を探し回る。
時に大雪崩を引き起こし、その中を出入りして必死に探し回る。この姿を遠方から見る者がいたら、まるで無邪気に遊んでいるようにすら見えるだろう。
あの人はどこに・・・
愛しい人を探しているのか、親愛なる主人を探しているのか、家族か友か
形をもつほどに溜まり溜まった無念の鎖は、パオジアンの心身をがんじがらめにしている。
いくつの山を回っただろうか、何度雪崩を起こしただろうか、その際に飲み込まれた村や街は数知れない。 - 113二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 20:33:15
無邪気に遊んでいるように見えて、本人(本ポケ)は必死に何かを探してるのエモいな
まあ探したところで恋人も主人も守るべき者もみんな死んでるんだけどな - 114二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 21:09:54
- 115二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 22:18:30
おのれアブソル!
- 116二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 00:31:47
胃が痛えよ
- 117二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 09:26:48
パオジアンかわいいし神絵が生産されてるしこの後が楽しみ
- 118二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 09:38:11
数多の無念と妄執に突き動かされて、山々を揺るがし街を沈めてきたパオジアンは、疲れ果てていた。
探せど探せど見つからない。もはや記憶のどこにもいない、あの愛しい人を探して、愛する家族を、守るべき人々を探して、幾年月が経っただろうか。
パオジアンはもはや何も叶わないことを悟り絶望する。その身を保つことすら放棄したためか、真っ白な雪の身体は解けて、あとには剣だけが残った。
不思議なことに真っ二つに折れたはずの剣は再び一本の宝剣として姿を整え、雪を失いむき出しになった山肌に深々と刺さっている。
そのまま数年の歳月が流れた。
行商人がその剣を拾ったのは、辺りに山の麓に深緑が芽生えだす初春のことであった。
西へと進む行商人の荷馬車には、積みあがった木簡とくすんだ金属の鼎(かなえ)が共に積まれていた。 - 119二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 11:30:07
パオちゃん友達できそうで良かったね!
- 120二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 13:58:32
曇らせだったり全裸だったり忙しい作者や
- 121二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 18:58:31
アオハル待機中
- 122二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 20:06:29
ここから爆発サンドイッチまでいけるんか?ホントにいけるんか?
- 123二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 22:44:43
西へ西へと進むにつれて、行商人たちを取り巻く風景も大きく様変わりしていく。道中新たに宝玉を加えて、一行は旅を続ける。今までの世界は主たるが白銀の雪の色であったが、緑も黄も赤も実に見事な絵画のように調和して訪問者たちを迎えてくれた。
パルデア帝国
豊かな自然と文化の栄える一大国家である。そのパルデアの国王への献上品として多くの品々が選ばれた。
その中には行商人の持ってきた剣も入っている。
剣は静かに宝物殿へと運ばれ、物言わず安置されていたが、王宮にうずまく人々の念に呼び起こされたのか、再び形を変え、パオジアンへと変貌していく。
そこからは我々もよく知っている通りである。
同じく目を覚ましたウツワと木簡、宝玉とともに、パオジアンは厄災と化して町を人を呑み込んでいった。
ここでもパオジアンは何かを探しているようであったが、その身に纏う念からはもはや無念と絶望以外のなにものも感じ取ることができなかった。
大雪崩を引き起こし、半狂乱になって駆け回るパオジアンの目に涙が浮かんでいたのを見止めた者はいない。 - 124二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 22:54:55
高名なポケモン使いがパオジアンと対峙したとき、ポケモン使いの繰り出したマニューラの姿にパオジアンは何かを思い出しそうになったが、穴ぐらに閉じ込められる最後の瞬間まで、それが一体なんなのか知ることはできなかった。
暗闇の中でもパオジアンは必死に何かを探している。愛しいあの人を、守るべき主人を。
剣の本分である「切る」という行為を没収されてから、パオジアンはただひたすらに待つということしかできなかった。
そして、数百年の歳月を超えて、再びその目に光が映るときがやって来た。その少女はパオジアンを見るや、にかっと笑い、ひと言。
「勝負だよ!」と言った。
「キル…!キル!」パオジアンの返答はもはや人の言葉のうわべでしかないが、少女には十分すぎたのであろう。
少女の笑顔は実に雄々しく、その目はあの青年に、町を守るために剣を振るったあの青年にそっくりな色をしていた。 - 125二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 23:12:47
- 126二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 23:57:41
- 127二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 01:08:44
- 128二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 07:24:19
ほしゅー
- 129二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 10:05:49
服の有無を疑われてるの草
そりゃあるだろ - 130二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 11:31:15
ホントにぃ?
- 131二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 11:51:31
少女の繰り出したファイアローは縦横無尽に空を駆け、パオジアンを攻め込んでいく。対するパオジアンも負けじと地を駆けその牙を届かせる隙を伺う。
タイプ相性としてはパオジアンが不利だが、長い年月の中で下してきた敵の中には弱点タイプなど両手両足では足りないほどに居た。弱点をついた程度で沈められるほど、パルデアの厄災は軽くはない。
互いに優れたスピードを持つ攻めの戦巧者。一瞬の隙を狙いあう両者の戦いをヒトの目で追い的確な指示を出す少女もまた、つくづく達人である。
夢中になって戦いに興じる。それがこんなにも楽しいことだとパオジアンは知らなかった。否、「忘れて」いた。それは数多の剣士たちの記憶だろうか、相棒として野を駆けたマニューラの記憶だろうか。
少女の額ににじんだ汗が一筋の雫となり、頬を伝ったそのとき、パオジアンの両目に入ったのは、燃えるようなパルデアの太陽の光であった。もちろん偶然などではない。少女の指示で、相手に気づかれないように太陽を背にしたファイアローの細やかな技巧である。
まばたき。時間にすれが顎に到着した汗が水滴として顎を離れるその一瞬よりも更に短い時間。
だが、ファイアローには十分すぎる隙であった。 - 132二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 11:51:44
猛火の強襲 フレアドライブ
強烈な一撃はファイアロー自身をも強打するが、燃え盛る両翼の向こうでパオジアンはどさっと短い音をたてて倒れた。
少女とファイアローの勝利である。だが、それは同時にパオジアンにとってこの楽しいひとときの終わりでもあった。
さくっ・・・さくっ・・・
ゆっくりと歩み寄る少女。パオジアンはまた孤独の闇の中に閉じ込められ、永劫の無念に苛まれるのかと絶望したが、少女のひとことは予想もできないもので・・・、
「一緒に来る?」
幼いころに共に遊んだ巫女姉妹のどちらかの記憶だろうか。そう言って笑う少女の屈託のない笑顔に、パオジアンはついに探していた何かを見つけた気がした。
「・・・キル!」
「切る」とは切断を意味する。つながった何かを断つことを意味する。それはときとして攻撃であり、決別であり、離別であり・・・・そして加護でもある。
非業の運命を断ち切ったパオジアンの新たなる生が、少女とともにようやく始まろうとしていた。 - 133二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 11:53:53
も、もしかして、このアオイちゃん、全ペ時空と同一人物・・・・いや、そんなまさか・・・でもファイアロー持ってる・・・
- 134二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 11:56:51
戦闘がほんとにカッコイイ
技とかもそうだけど地形とか状況も考慮してるのが、トレーナーといる方が強くなるって感じで好き - 135二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 12:00:53
- 136二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 12:12:30
少女はパオジアンとともにパルデアの各地を駆け巡った。とくに雪山を駆けたときは山のジムリーダーが血相を変えて𠮟りつけてきたのが、パオジアンにも印象的であった。叱られた直後に走り出して、怒られながら追いかけられるときなど、本当に楽しくて仕方がなかった。
パオジアンはもう雪崩を起こすことはない。探し物が見つかったからである。愛しい主人を、守るべき主人を、守護の剣としての使命を見つけたからである。
海を駆け、砂漠を走り、山野を跳び・・・
パルデアの全土を回ったとすら言えるほどに少女はパオジアンを連れまわした。そのすべての瞬間が煌めいていて、本当に幸せであった。
途中、生気のないくたびれた男を連れた髪の長い女性が訪ねてきたことがあった。物腰は穏やかで終始笑顔を絶やさない女性であったが、パオジアンは絶対にこの女性とは敵対してはいけないと直感した。
実際、快闊な少女もこの女性の前では年恰好相応に小さくなっていた。あまり羽目を外しすぎてはいけないと忠告されてから、少女とパオジアンは学校へと帰ることにした。
パオジアンにとっては初めての学校である。
少女はパオジアンにある女性を紹介するといった。パオジアンは胸が躍った。自分に会いたがっている者がいると聞いて嬉しくなった。
そして後日、本に囲まれた空間でその女性は開口一番にこう告げた。
「ウッヒョ―――!!!!!!!」
と。
パオジアンは後悔した。 - 137二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 12:20:33
後悔しちゃったかぁw
ウッヒョーーでかくも安心してしまうとはなぁ良かったねパオ… - 138二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 12:24:59
パルデアの厄災(なんやこの男、辛気臭いなぁ・・・)
- 139二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 12:27:34
グルーシャくんブチギレしてて草
- 140二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 12:32:35
妖刀誕生フェーズ→パオジアン誕生フェーズ→厄災フェーズ→アオイちゃんフェーズ
長かったな、パオちゃん・・・ - 141二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 12:53:11
- 142二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 14:12:13
あれ?ペパーが服着てる・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!
ゾロアークか!!
- 143二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 14:40:42
»後悔した
ここで駄目だった。 - 144二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 14:58:21
厄災にすらドン引きされてるレホ先w
- 145二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 15:11:11
その女性は狂喜してパオジアンの全身を撫でまわし、ほおずりし、匂いを嗅ぎ、ブツブツと何かを呟きながら両の牙をときおり口に含んだりした。
訳の分からないことを延々と呟かれ、パオジアンは初めて「理解できないことの恐怖」を感じるに至った。孤独と絶望の中で涙を浮かべたことはあったが、純粋に怖すぎて助けを求めて泣いたのは初めてのことであった。
パオジアンが解放されるまでそう時間はかからなかったが、もし彼が人語を発することができるなら一日千秋ということわざを作った者と会心の握手をかわすだろう。
しかも、その女性は少女に定期的に会わせてほしいと言っている。予防接種を受けた犬のごとく、心意気がぽっきりと折れてしまったパオジアン。その尻尾はへなへなと曲がって垂れている。
あまりに目に見えて落ち込んでいる姿を見て、少女はパオジアンを連れて仲間たちと一緒にピクニックに行くことにした。
ピケタウンのすぐそば、雄大なナッペ山を眺められる特等席。
パオジアンは物言わず、雪に彩られたナッペ山を見つめる。その瞳には郷愁に似た何かがこもっているように見えた。 - 146二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 15:12:34
追いかけられてるアオイちゃん、めっちゃいい笑顔w
- 147二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 15:58:21
レホ先に絡まれて落ち込むパオジアンかわいいけどかわいそう
- 148二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 16:06:57
- 149二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 18:04:14
厄災はレホ先の洗礼を受けないといけないルールでもあるのか・・・
- 150二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 19:37:39
パオジアンのすぐ隣にやってきた少女。ゆっくりと空気を吸い込み、思い切り伸びをしてパオジアンに話しかける。
「いい天気だねえ。ナッペ山見てたの?きれーだよねえ。私も大好きだよ。ね、そろそろゴハンたべよっか!」
屈託のない笑顔。その明るさを守ることこそ、新たに与えられた使命である。数多の非業をもたらした古の妄執、パルデアの厄災は加護の剣となって少女を、そして少女が愛したこの大地を守ることを堅く決意する。 - 151二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 19:44:41
少女が作ると言ってくれたのは「さんどいっち」をいうものであった。
当然パオジアンの記憶の中にはない食物である。主人が見せてくれる新しい世界に心が躍るパオジアン。
手際よく食材を並べていく少女の動作は流麗ともいうべきもの。とくに食材を切っていくその手際など、快刀乱麻を断つとはまさにこのこというのであろう。
だが、こと「切る」という動作において、主人が励んでいるのに自分が黙って待っているわけにはいかない。
「キル!キル!」
パオジアンは自分が野菜を切ると主張し、少女はそれをにこやかに了承した。
「一緒になって料理を作る」
もはや記憶のどこにもない姉妹巫女の幼少の頃、一緒になって食事を作る真似事をして父と母に褒められていたその記憶。それが蘇ることはなかったが、パオジアンの中に温かい何かがあったことは確かであった。 - 152二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 19:53:20
見事な技巧で切られた具材をパンの上に彩っていく少女。パオジアンは隣で尻尾を振って今か今かと完成の瞬間を待っている。
振り替えれば先輩にあたる赤い地竜のコライドンも完成の瞬間を心待ちにしているようである。
天高く舞うチルタリスの歌声が、少女の周りに鳴り響く。
チルタリスの讃美歌の中、少女は神々しい光を纏って、パンを高く持ち上げた。
パオジアンは美しいとは何かを知ったようにすら感じた。パンを高く掲げる少女の姿はそれほどに勇壮な美を体現していた。
少女の両手によって天を睨まんばかりに掲げられたパン。さしずめそれは、民衆を導く革命の旗手のような勇ましさを纏っている。
そしてその革命のパンはチルタリスの歌声は最高潮に達したとき、太陽がちょうど真上にやってきたとき、天と地と人とポケモンたちすべてが一体となったとき、強く強く、それでいってほんのわずかな哀愁を纏って皿の上で待つ具材たちへと叩きつけられた。 - 153二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 19:58:41
- 154二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 20:01:24
おいおい、そいつを言うのは野暮ってもんじゃないか
- 155二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 20:24:45
パンが下で待つ具材たちへと飛び込んでいったその瞬間、少女の仲間たちは天高く雄たけびを上げて、サンドイッチの完成を祝福する。強き者が作った強き料理には、雄々しい祝福がよく似合う。
したたかに打ち据えられた具材たちはその衝撃をもって自身を高らかに跳躍させ、打ち付けられた当のパンそのものはもはや忘却の彼方へと消え去り、あとにはただただ歴戦を思わせる残骸だけが残った。
勇ましい戦いのあとを表現しているのだと解釈したパオジアンは、サンドイッチという料理の深淵を垣間見たような感動があった。
すっかり興奮したパオジアンは少女の周りを跳ねまわって、その意気を表現する。
両牙として据えられた剣から冷たい気配は消え、温かい何かがあふれてきているようであった。
パルデアの冬は終わり、春がまたやってくる。
暖かで、穏やかな春がまた・・・。
~パオジアンSS 完~ - 156二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 20:55:12
かっこよく言い換えてるけどつまりそれは…サンドイッチはつまり…あー……
芸術だったってわけだ!うん! - 157二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 21:07:55
未だかつて、ここまで爆発サンドイッチを美しく描写したスレがあっただろうか
- 158二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 21:13:08
パオジアンSS、これにて完結です!
いやあ途中で迷走しちゃいましたが、神挿絵といろんな感想もらってで持ち直した感じですね。
とりあえず、作者の別の四災SSも・・・
閲覧注意 チオンジェンSS|あにまん掲示板チオンジェンいいよね、お尻可愛いよね、SS書くねbbs.animanch.comディンルーSS|あにまん掲示板ディンルーかわいいよね、お尻可愛いね、SS書くねbbs.animanch.comこれで後はイーユイだけか・・・
- 159二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 21:14:19
サンドイッチ爆発待ってました!!!(白目)
そしてお疲れ様でした今回もとても楽しませていただいきました
高らかなパンの描写とパオジアンの後悔が好きすぎる - 160二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 21:16:41
- 161二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 21:22:11
- 162二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 22:04:39
- 163二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 22:20:25
このレスは削除されています
- 164二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 23:02:40
問答無用で脱がされてて草
- 165二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 23:09:06
テル先輩がペパーになるのか、ショウ先輩がアオイちゃんになるのか、それが問題だ
- 166二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 23:24:06
テルショウ好きなので次回作が楽しみです
- 167二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 06:50:48
やっぱ全裸の人呼びは避けられんね!
- 168二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 09:31:14
もうすっかり全裸の人で定着しちゃった感。脱がないSSも書けるのに全裸の人とは、第一印象って大事ね!
- 169二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 09:31:57
「全裸の人」はこの場合誉め言葉として機能する
- 170二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 09:59:56
ホミカSSの没ネタ供養は別スレ立てましたんで、よかったら・・・
- 171二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 13:49:36
- 172二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 15:31:45
このレスは削除されています
- 173二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 18:36:47
最後は救われるのがいいよねこのシリーズ
(爆発物から目を逸らす) - 174二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 20:01:48
良かったな守るものを見つけられて
サンドイッチも守れたらもっと良かったかもな! - 175二次元好きの匿名さん23/06/16(金) 00:41:04
いつも最後でサンドウィッチが爆発するの草
これは一つの爆発オチなのでは…?