- 1二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 13:50:16
本拠地、京都で迎えた対足利戦
先発新田が大量戦死、公家大将たちも勢いを見せず惨敗だった
洛中に響く民衆のため息、どこからか聞こえる「大覚寺統の御代も終わりだな」の声
無言で帰り始める武家達の中、現在の天皇後醍醐は独り宮中で泣いていた
討幕戦で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる部下・・・
それを今の京都で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」後醍醐は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、後醍醐ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい床の感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って大聖歓喜天浴油供をしなくちゃな」後醍醐は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、後醍醐はふと気付いた
「あれ・・・?武士たちがいる・・・?」
ベンチから飛び出した後醍醐が目にしたのは、洛外まで埋めつくさんばかりの武士だった
千切れそうなほどに錦の御旗が振られ、地鳴りのように君が代が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする後醍醐の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「帝、全軍突撃だ、早く行くぞ」声の方に振り返った後醍醐は目を疑った
「ま・・・正成?」 「なんだ帝、居眠りでもしてたのか?」
「じ・・・授翁宗弼?」 「なんだ帝、かってに万里小路(藤房)さんを引退させやがって」
「千種忠顕・・・」 後醍醐は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:大塔宮護良親王 2番:菊池武時 3番:楠木正成 4番:足利尊氏 5番:新田義貞 6番:名和長年 7番:千種忠顕 8番:四条隆資 9番:赤松円心
暫時、唖然としていた後醍醐だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
一宮尊良親王から宝刀を受け取り、洛中へ全力疾走する後醍醐天皇、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌月、吉野で譲位を反故にして再び決起した後醍醐天皇が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った