- 1二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 20:11:36
「こんにちは、トレーナーさん。あの、お出かけですか?」
「こんにちは、ダイヤ。ああ、昨日、傘が壊れてしまってね。急遽、傘を買いに行くところ」
昨日はコンビニに行った帰り、突然のゲリラ豪雨に見舞われて、おかげで使っていた傘がトレーナー寮に変える間に壊れ、濡れながらも急いで帰って洗濯物を取り込む羽目になった。
今日の天気予報を見る限り、一日中曇りみたいなので、雨が降る前に新しい傘を買うのにはちょうどいいだろう。そう思い、買い物に出かけようと校門近くに行く途中に、担当しているサトノダイヤモンドと出会ったのだ。
「なるほど。それじゃあ、今、トレーナーさんは傘を持たずに外に出るわけですね……」
ダイヤはこちらの事情を聞くと、手を口に当て、少し考えた様子を見せたあと、彼女は両手を重ねながら、
「トレーナーさん、よろしければ、私も一緒に行ってもいいですか? 昨日みたいに突然の雨が降っても、私の傘がありますから」
どうやら、ダイヤなりに気を遣ってくれているようだ。確かに彼女の言う通り、昨日の今日なので、また突然の大雨に襲われる可能性もあるため、傘があるならそれに越したことはない。
それにダイヤは雨が苦手で、ここ最近は雨が立て続けに降っていて、彼女の元気がいつもより少なくなっているように思えたので、気分転換も兼ねて、彼女と出掛けることにした。
「うん、ありがとう、ダイヤ。それじゃあ、ここで待っているから、行く準備ができたら声をかけてくれ」
「はい! すぐに支度してきます!」
俺は嬉しいそうに微笑み返したダイヤが校舎の中へと入っていくのを見届けたあと、空の様子を確かめるため見上げてみると、まだ雲はあるものの、先程までに比べると晴れ間が見えていた。これなら、大丈夫そうだなと思いながら、彼女が戻ってくるのを待つことにした。 - 2二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 20:12:23
しばらくすると、小走りで戻ってきたダイヤと一緒に、学園の外へと向かう。
「トレーナーさんはどんな傘を買われるつもりですか?」
「うーん……とりあえず、丈夫そうな奴かな。デザインとか色は特に気にしないよ」
「ふむふむ、分かりました。私にお任せください」
「……あまり派手じゃないもので頼むぞ」
嬉しそうに返事をする彼女を見ながら、派手なものを選ばないように釘を刺すのであった。
「昨日はゲリラ豪雨の時、ダイヤは大丈夫だったか」
「はい。私は寮にいたので、大丈夫でしたけど、キタちゃんは外にいたのでずぶ濡れになってしまい
ました。幸いにも風邪はひかなかったので良かったです」
「それは災難だったな……。まぁでも、ダイヤが無事で良かったよ」
「えへへ、心配してくれてありがとうございます」
昨日のゲリラ豪雨について話をしながら歩いているうちに、先ほどまで僅かに晴れ間が見えていた空がだんだんと暗くなってきた。やはり、この季節、予想通りにはいかず、しばらくして小雨が降り始めた。 - 3二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 20:12:55
「あっ、雨が降ってきましたね。さぁ、トレーナーさんは、私の傘に入りますか」
「すまない、お言葉に甘えて入らせてもらうよ。傘は俺が持つよ」
悪戯っぽく笑う彼女に苦笑しながら、俺は彼女の傘の中に入り込み、彼女の手から傘を預かる。
彼女の傘はシックな黒色だが、先にはフリルが付いていて、ひらひらしていて可愛らしい。
「ふふっ、相合傘ですね。なんだかくすぐったい気持ちになります」
「そうだな、普通は男女二人で一つの傘に入ったら、恋人同士に見られるだろうからな」
「そ、そうですよね……」
冗談交じりに言ったのだが、不意に肩が触れ合う距離にいる彼女の顔を見ると、ほんのりと頬を赤らめていることに気づいた。
そんな彼女を見ていると、こちらも変に意識してしまい、思わず少しドキッとする。
しかし、お互いに照れくさくなりながらも、俺たちは雨が降る中、傘を差しながら歩き続けた。日頃は意識しない雨音がこの時は、心地よいBGMのように流れるようだった。 - 4二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 20:13:50
「着きましたね、トレーナーさん」
「ああ、ここだ」
傘を閉じてから、傘立てに傘を預け、ショッピングモールに入り、雑貨屋に進む。
店内には傘やレインコートなどはもちろんのこと、靴下やハンカチといった小物類、台所用具なども置いてあり、かなり品揃えが良い。
「トレーナーさん、傘売り場はこっちみたいです」
ダイヤはそう言いながら、手招きしながらこちらを呼んでくる。
それに従い、彼女が呼ぶ方向へ足を運ぶ。 そこには色とりどりの傘が並んでいた。
「トレーナーさん、これなんてどうです?」
一足先に傘売場に来ていたダイヤは、傘を一本をこちらに渡してくる。渡された傘を手に取り、説明文を見ると撥水性がよいなど書かれ、傘の生地も手で触ると良いものだと分かる。
ただ、良いものだけに値段が高く、正直、傘にこの値段はと思い。
「ごめん、ダイヤ。別のを頼む。」
「お気に召さなかったのですね。それではこちらはどうですか」
などとダイヤと相談しながら、傘を選ぶ。傘を選ぶ最中に可愛らしい柄の傘を見つけて、はしゃぐ彼女に適度な相槌を打つ。その彼女の楽しそうな表情を見て、一緒に出掛けて良かったと思う。 - 5二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 20:14:24
「よし、これにしよう」
結局、最終的に選んだのは、丈夫そうな深緑色の傘にした。色的には黒や紺のほうが無難だと思うのだが、何故だがこの深緑色の方が良いと思ったのだ。
「それじゃあ、レジに行くから、ダイヤは待って
いてね」
「あっ、待って下さい。トレーナーさん。私も買います」
そう言って、ダイヤは俺と同じ傘を手にレジにに行こうとする。その行動に驚き、つい訳を聞いてしまう。
「ダイヤは傘をもう持っているから、いらなくないか」
「いえいえ、トレーナーさん、苦手の雨の日でも楽しめるように気分で傘を選びたいのです。それにトレーナーさんは私がお揃いの傘を買うのはだめですか」
彼女は上目遣いで、俺の顔を覗き込むように見つめてくる。その可愛らしい顔を曇らせたくないなと思ってしまう。
「いや、駄目ではないけど……」
「それなら、いいですよね。お会計に行きましょう」
有無を言わさず、俺はダイヤに引っ張られ、傘のお会計を済ませた。 - 6二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 20:14:53
傘を買って、外に出ると、まだ雨が降っていた。俺は買い物を付き合うのと、傘を貸してくれたお礼も込めて、
「ダイヤ、どっかお茶していかないか」
と提案すると、彼女は嬉しそうに微笑み返し、首を縦に振ってくれた。
「わぁ、ありがとうございます、トレーナーさん。それでどこに行きますか」
「うーん……そうだな。確かこの近くに美味しいケーキの喫茶店があるんだけど、そこでどうかな」
「すごく楽しみです。さぁさぁ、行きましょう」
そう言うと、黒いフリルの傘を持って、ダイヤは買ったばかりの傘を指して、雨の中へと飛び出した。
その後ろ姿を見て、嬉しそうなダイヤの姿に満足感を覚えつつ、彼女の後ろを追いかけるように同じように傘を指して歩き出した。
お揃いの傘一組が仲良く、雨に打たれながらも楽しそうに歩いて行くのであった。 - 7二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 20:18:04
この時期、特有の雨や傘を題材に書きました。
- 8二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 20:18:46
かわいい
まともなダイヤちゃんだ - 9二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 20:18:59
「いえいえ、トレーナーさん、苦手の雨の日でも楽しめるように気分で傘を選びたいのです。それにトレーナーさんは私がお揃いの傘を買うのはだめですか」
ここかわいい
女の子って感じ! - 10二次元好きの匿名さん23/06/15(木) 20:43:44
お揃いにしたがるダイヤちゃん可愛い……
良かったです