- 1二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:51:27
「ネオユニヴァースは明日から『衣替え』の“実行”をするよ」
「ああ、最近暑くなってきたからね」
「トレーナーには“PREV”をして欲しい」
「感想を言って欲しい、ってことかな。うん、楽しみにしてる」
そう言って、担当ウマ娘のネオユニヴァースが微笑んでくれたのが昨日の話。
まだ蝉の鳴き声は聞こえないけれど、電気代が気になってくる時期。
梅雨が明ければ、きっと夏は目の前なのだろう。
トレセン学園でも最近、ちらほら半袖の制服を着ている生徒を見かけた。
切り替えのタイミングは個人の裁量に任されており、彼女は『今』と判断した、ということである。
そういえば、少し前に制服を新調したという話を聞いた。
デザインは変わらないはずだが、『女の子』としては大きな違いなのかもしれない。
何より少しはしゃいでいる様子の彼女が、珍しかった。
つい、歩きながら思い出し笑いをしてしまう。
慌てて周囲を見回すも、辺りには誰もおらず、ほっと息を吐いた。
「……にしても、今日は人とすれ違わないな」
俺は今、ユニヴァースを探してトレセン学園を歩き回っていた。
何故か連絡が取れず、あわよくばゼンノロブロイやエイシンフラッシュなど仲の良い子と遭遇出来ればと思っていたのだが。
今日のトレセン学園は、とても静かだ。
普段ならば、少しうるさいくらいに喧騒に溢れているはずなのに、今日は静寂に包まれている。
まるで俺以外誰もいないのではないか、そう錯覚してしまうほどには。
「────トレーナー君は“暗中模索”をしている? 」
背後から、聞き慣れた声。けれど、聞き慣れない言葉。
反射的に振り返ると、そこには長袖の制服に身を包んだ、担当ウマ娘の姿。
彼女は感心した様子で頷き、次いで困ったような笑みを浮かべた。 - 2二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:51:47
「“日昃之労”、勤勉なところは“同位体効果”なのかな」
不思議な感覚だった。目の前の彼女は間違いなくネオユニヴァース。
けれど言葉を聞くまでもなく、一目見て確信できた。
彼女はネオユニヴァースであっても、『ネオ』ではないと。
気が付けば、俺は目の前のネオユニヴァースに問いかけをしていた。
「えっと、君は?」
「……ビックバン、君からそう聞かれて私は“吃驚仰天”をしているよ」
「それは、その、すまない」
「ネガティブ、これは“シミュレーション”されていたから……改めて『自己紹介』」
だから気にしないで、とネオユニヴァースは少しだけ残念そうに言う。
そして彼女は気を取り直して、襟を正した。
思えばネオに比べれば立ち振る舞いに貫禄があるというか、自信に満ちてる印象がある。
威風堂々、そんな言葉は良く似合う。
まるでとある皇帝の名を持つウマ娘みたいだ、そう思った瞬間、彼女は名乗った。
「私はトレセン学園生徒会長の、ネオユニヴァースだよ」
それはやはりと思う名前と、まさかと思う肩書。
しかし、そう名乗る彼女の声と表情には誇りと矜持、そして理想が込められていた。
その言葉は俺の知る事実と一致していないだけで、真実なのだろうと思えるくらいに。
だから俺はその言葉に頷いてから、自分の名前を口にした。
すると彼女は、きょとんと意外そうな表情を見せた。
「“半信半疑”ですらないんだ、どこに“信頼性”を“検知”したのかな」
「半分は勘だよ、トレーナーとしての」
「もう半分は?」
「君がネオユニヴァースだから、かな」 - 3二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:52:10
自分で言っておきながら、理由になっているのかなと思う。
だけど実際、彼女の言動を信用する理由の半分は抽象的な根拠。
そしてもう半分は、彼女がネオユニヴァースであるから、なのでそう答えるしかない。
しばらく唖然としたように彼女はこちら見つめて、やがて顔を綻ばせる。
「えへへ、“異路同帰”……一種の“量子もつれ”だね」
「……褒めてもらってるのかな?」
「アファーマティブ、ここでもトレーナー君はトレーナー君だったから」
そう言う彼女の顔は、とても嬉しそうな笑顔だった。
笑顔に関しては、彼女と『ネオ』も全く一緒で、こちらも釣られて笑顔になってしまう。
やがて、彼女は満足そうに頷いてから、少し遠くを見つめて言う。
「あまり“ランデブー”していると怒られちゃうから、そろそろ“セパレーション”しないと」
「セパレーション……別れるってことかな? 何か俺に用事あったのかと思ってたんだけど」
「『わたし』のトレーナー君を“観測”することが、私の目的だから……まだ少し“マグネター”だけど」
言ってる意味は掴めないが、とりあえず彼女の目的は果たされているらしい。
それにしては、少し名残惜しそうな表情を浮かべているような気もするが。
「最後に一つだけ、トレーナー君の“粉骨砕身”の精神は“一等星”、でも」
人差し指を立てて、真剣な表情のネオユニヴァース。
一瞬溜めてから────突然のドヤ顔で彼女は言い放った。
「『労働』も過ぎれば“オーバーロード”になるよ、気をつけて」
「……」
「……むぅ、こちらではビックバンだったのに。これが“カーマンライン”」
「……多分関係ないんじゃないかな」 - 4二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:52:29
最後に悔しそうな表情を浮かべた彼女と別れて、俺は先に進む。
ふと、そもそも俺は何故ネオを探していたのだろう、と思った。
探しているのははっきりしてるのに、その理由がはっきりとしない。
それでも何故か進む足を止める気にはならなくて。
その廊下は、ずっとずっと、見えないくらい先まで続いていて。
気づけば、焦りと不安で歩調はどんどん速くなって、走りだす寸前、その時だった。
「“WAY”、トレぴが“KTKR”でウチは“テンアゲ”をしているよ」
横から、聞き慣れた声。けれど、聞き慣れない言葉。
まるで先ほどの再現のような状況、俺は声の方角に視線を動かした。
そこには、両手でハンドサインを作っているネオユニヴァースが立っていた。
胸元が少し開いたYシャツにブラウンのカーディガン、かなり短いスカート。
足元にはルーズソックスと、トレセン学園の制服とは違う制服を身に纏っている。
あえていうなれば、少しギャルっぽい格好というべきか。
意外過ぎるビジュアルに困惑していると、彼女はこてんと首を傾げた。
「……“KS”?」
「えっ?」
「“PIEN”を越えて“PAON”……ウチは“メンブレ”だよ」
ずーん、と暗い表情をして俯くネオユニヴァース。
言葉の意味はネオとは別の方向性でわからないが、悲しんでいるのはわかった。
悲しませるのはこちらとしても本意でないため、俺は慌てて取り繕う。 - 5二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:53:08
「いや、見慣れない服で驚いただけで、君に会えたのは嬉しいと思ってるよ」
「“MJK”? そちらのウチはこういう“ギャルコーデ”はしない?」
「もう少し大人しめで、なんというか、お嬢様っぽいというか」
「ウチがお嬢……『ビックバン』だね、それでそのウチは“きゃわたん”なのかな?」
「うん勿論、とても可愛らしくて、魅力的だよ」
「……なんだか“ヤグる”をされている気分で“ムカTK”」
そう言って、ネオユニヴァースは頬を膨らませて、そっぽを向く。
どうしろと、と思わなくもなかったが、ネオからは見られない表情が見れて新鮮な気分。
改めて、彼女の姿を見ると、なかなかどうして似合っている。
普段ネオの傍にいるせいで気づかなかったが、こういう服装も悪くはない。
「君もとても魅力的だよ、いつも見てる服とは、また違う良さを感じる」
「……本当に?」
「本当だよ、可愛らしさと美人さが上手く引き出されている感じで、素敵だと思う」
「……『スフィーラ』、ウチの“VIBES”が“あげみざわ”していくよ」
ネオユニヴァースは、まるで太陽のような満面の笑みを浮かべた。
彼女はどうもネオと比べると喜怒哀楽の表現がとても激しい。
その笑顔を見ているだけでも周りも楽しくなってきそうな、そんな印象を受ける。
と、ふと彼女は何かに気づいたかのように、ポンと手を打った。
「こちらのトレぴも“オーガナイザー”なんだね」
「……オーガナイザー?」
「『アファーマティブ』、ウチのトレぴはウチを盛る“最&高”の“フィルター”をかけてくれる」
「……君を輝かせてくれる人、ってことかな」
「えへへ、“やばたにえん”……わたしのトレぴも“3150”だった」
そう言いながら、ネオユニヴァースは満足そうに頷きながら笑う。
俺を褒めてくれているような、違う誰かを自慢しているような……そういえば、さっき出会ったネオユニヴァースもそんな笑顔だった気がする。 - 6二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:53:36
「……もう少し“かまちょ”をしたいけれど、もう“ドロン”の時間」
「時間……ってうわ」
寂しそうにネオユニヴァースが呟くのを見て、周囲を見ると、すぐ近くに扉があった。
というか先ほどまで果てが見えないほど続いていた廊下が、いつの間にか行き止まり。
正直なところ、ここがどういう世界なのかは予想出来てきたが、やはり驚きは隠せない。
「お話出来て“バイヤー”だったよ、“あざまる水産”」
「こちらこそ楽しかった……君達のお話を、いつかもっと聞いてみたいな」
「ふふっ、“りょ”だよ、ウチも“ATM”をしているから」
彼女に別れを告げながら、俺のはドアノブに手をかけて、扉を開けた。
────刹那、吹き抜ける風と熱気。
燦々と照り付ける太陽、巻き起こる土と芝の匂い。
扉を開けた先は、見慣れたトレセン学園のグラウンド、その真ん中。
振り向いてみれば扉も、廊下も、ネオユニヴァースも存在していなかった。
「……とりあえず、いつもトレーニングしている辺りにでも」
微かな寂寥感を覚えながら、俺は歩みを進める。
数分歩いていると、俺はまた見慣れた姿を見つけた。
今度は勝負服を着たネオユニヴァースの後ろ姿。
流石に三度目ともなると驚きも少なくなってくるな、そう苦笑しながら彼女に近づいた。
そして直後、前言を撤回することとなった。
「この“清風”は……スフィーラ、やはりトレーナーさんの“凱風”だね」
「ふふっ、ここで出会うのも“運命(ノルン)”かな、“XACF”に“酩酊”をしているよ」
「“アフター5”にはまだ早くて“まいっちんぐ”、追加トレーニングに“レッツラゴー”」
勝負服姿のネオユニヴァースの近くには、体操服姿のネオユニヴァースと、ジャージ姿のネオユニヴァースがいた。 - 7二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:53:57
ネオユニヴァース達のトレーニングを見て、色々と話をして、また別れて。
それからも、何人ものネオユニヴァースと出会い、別れを繰り返した。
ヴィクトリー倶楽部なる組織に所属しているらしいネオユニヴァース。
やたら自分のことを普通であると主張するネオユニヴァース。
目に見えないお友だちと一緒にいるネオユニヴァース。
“DKPI”を主張するネオユニヴァース、こちらをネオユニヴァースにしようとするネオユニヴァース。
様々なネオユニヴァースと出会って、けれど『ネオ』を未だ見つけることが出来なくて。
やがて至ったのは屋上────ネオと、初めて出会った場所。
何時の間にか空はあの時のように暗く、星々が煌めいていた。
そしてその場には、俺を待ち受けていたかのように、こちらをじっと見る一人のウマ娘。
真新しいトレセン学園の半袖の制服に身を包んだ、ネオユニヴァースがいる。
「『お疲れ様』、ネオユニヴァースはあなたとの“CIMN”に『満足』をしているよ」
「……そっか、それは良かった」
「“観測者効果”かな、あなたの“GENY”をいつもよりも“受信”出来た」
「俺もネオユニヴァースの色んな可能性と魅力を知ることが出来たから、お互い様だよ」
「……もしかして“検知”をしているのかな?」
「いや、何もわかってないよ、ここがどこなのか、何で色んなネオユニヴァースがいるのか……ただ」
まだこの状況を、何一つ理解していない。
だけど、それでも、一つだけ確信できることがある。
俺は目の前のネオユニヴァースを真っすぐ見つめて、言葉を向けた。
「────君は『ネオ』ではない、そうだよね?」
今まで出会ったネオユニヴァースの中で、一番ネオに近い存在だった。
けれど、何かが違う、決定的なズレを感じる。
その言葉にネオユニヴァースはピンと尻尾と耳を立てて、驚いたように目を見開く。
「“UNBL”……アファーマティブ、『大正解』だよ」 - 8二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:54:22
ネオユニヴァースはそう言って、夜空を見つめながら、座り込む。
そしてこちらを見ながら、ちょいちょいと手招いた。
俺はその誘いに従って、ゆっくりと近づいて、その隣に腰かけて夜空を見上げる。
まるで明かりの少ない田舎の空のように、幾多の星が瞬いている、美しい夜空だった。
「綺麗な星空だね」
「“UNDY”、とても綺麗な“シンチレーション”」
「それで、どうしてこんなことを? 何かネオに危険があるとか……?」
「“WORR”は“NOST”だよ、これはネオユニヴァースの“IDE”なんだ」
「君の?」
「アファーマティブ、今回の“アブダクション”の目的は……」
沈黙。
空から目を離してネオユニヴァースを見れば、真剣な表情でこちらを見つめている。
じっと、呼吸も止まりそうなほどに目を合わせていると、突然、顔を綻ばせた。
「あなたと『お話』してみたかった────それだけ、えへへ」
思わず、がくっと力が抜けてしまう。
拍子抜けしたというか、安心したというか。
勿論、ネオに何もないことは、喜ばしいことではあるけれども。
ネオユニヴァースはさらに言葉を続ける、話すこと自体が楽しいと言わんばかりに、饒舌だ。
「ネオユニヴァース一人では“MIP”だった、だから“EXAL”、星を集めて“銀河”になった」
「……えっと、つまり他のネオユニヴァースと協力して、この空間を作ったの?」
「“MOOM”の煌めきに過ぎない“ハビタブルゾーン”、でも“SBOS”には必要十分だね」
ネオと出会ったばかりの頃ならば、荒唐無稽の話だと思ったかもしれない。
しかし、俺はすでに彼女から“別宇宙”の話を聞いている。
俺達がいっしょにいるために、力を貸してくれた『彼ら』の存在を知っている。 - 9二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:54:43
とすれば、その『彼ら』がこちらに力を借りることもあり得る話だろう。
まあ、今回は大分個人的な要件だったようだけども。
ネオユニヴァースはふと、少し寂しそうに視線を背けて、遠くを見つめる。
その視線の先を見れば、先ほどのまでの美しい夜空が、歪み、崩れ、壊れていくのが見えた。
「でももう“臨界点”、あなたの“ETD”まであと僅か」
「……大丈夫なのかこれ」
「疑似的に意識を“コネクト”してるだけだから“ART”、地球では『スヤスヤ』だよ」
夢を繋げているようなもの、ということだろうか。
言われてみれば、俺自身の視界にもノイズが走って来て、目覚めの時が近いのがわかる。
ネオユニヴァースはすっと立ち上がり、含みのある笑みを見せた。
「最後に一つだけ『いじわる』をするよ」
そう言うと、ネオユニヴァースはその場で踊るようにくるりと一回転する。
きらきらと金色の髪がなびき、ふわりとスカートが浮かぶ。
崩壊していく夜空を背景にした短いダンスは、言葉にし難い美しさを感じた。
「この制服、『似合う』をしているかな?」
「うん、とても綺麗で、似合っているよ」
「……スフィーラ!」
自分の想像以上に、言葉がするりと出てくる。
その言葉に、ネオユニヴァースは感極まったように身体を震わせて、そのまま飛びついて来た。
突然の勢いに俺は耐えられず、そのまま彼女に上へ乗られる形で倒れ込んでしまう。
「うわっ!?」
「ビックバン、あなたに乗るのは“ファーストスター”だね」
「乗られることはあったみたいな言い方はやめてくれ」 - 10二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:55:22
とりあえずネオユニヴァースに怪我がなさそうなので、そのまま脱力した。
少しずつ視界も削られていき、意識も遠のいていく。
そして全ての感覚が閉ざされそうになる刹那、ネオユニヴァースは悪戯っぽい微笑を浮かべた。
「ぼくのことは、わたしには『ひみつ』をしていてね、『指きりげんまん』」
繋がれる、俺の小指とネオユニヴァースの小指。
その触れた指先の冷たさが、俺が最後にこの世界で得た感触だった。
「────“LESE”? “EVA”が過剰だったのかな?」
そして次の瞬間、目の前には首を傾げるユニヴァースの顔があった。
ぼんやりとしていた思考が急激に覚醒していき、俺は思わず立ち上がってしまう。
見回せばそこはトレーナー室、目の前のパソコンのディスプレイには謎の文字列。
宇宙からのメッセージ……ではなくキーボードに突っ伏して居眠りしてしまった模様。
「すっ、すまない、ネオ、仕事中に寝ているだなんて……!」
「“NVEM”、トレーナーの『頑張り』を、ネオユニヴァースは“観測”しているよ」
「それでもさ」
「ふふっ、『かわいい寝顔』も観測できたから、むしろ“THNK”だね」
「……」
楽しそうに笑うユニヴァースの顔を見て、今後は居眠りはしないようにしようと心に決めた。
……そうだ、『ネオ』だ。
俺はあれだけ幾多のネオユニヴァースを見たのに、自然と目の前の彼女をネオと呼んでいた。
理屈も、理由も上手く言えないけれど、これだけは正しいという確信がある。
それを認識すると、何故かとても安心して、俺は大きくため息をついた。
「……良かった、やっと見つけた」
「……“発見”? トレーナーは“探査”をしていた?」 - 11二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:55:43
ユニヴァースは不思議そうな顔をして、そして何かを思い出したようにぽんと手を打つ。
「トレーナー、これはネオユニヴァースの“新装備”」
そう言うと、ユニヴァースはその場で踊るようにくるりと一回転する。
きらきらと金色の髪がなびき、ふわりとスカートが浮かぶ。
殺風景なトレーナー室を背景にした短いダンスは、とてつもない既視感を覚えた。
彼女の着ている制服は半袖のもので、先ほど見たものと全く一緒のものである。
動きのキレはネオの方がよかったけど、あのネオユニヴァースもなかなかのものだった。
そして、あの非現実的な背景とマッチしていて、妙に印象に残ってしまう。
「……むぅ」
鼓膜を揺らす、不満げな声色。
音の出所に視線を向ければ、そこにはこちらをジトっとした目で睨むユニヴァースの顔。
────そういえば、新しい制服の感想を求められていたのだった。
慌てて思考を巡らせるも、あのネオユニヴァースに言ったことと被ってしまい、なかなか出力できない。
そうこうしていると、彼女は何かに気づいたように耳を立てて、俺に鼻先を近づけた。
「“HSHS”…の色んなウマ娘の匂い? トレーナーは“KSNV”だった?」
色んな、かなあ?
俺が上手く返答を出来ない間も、ユニヴァースは徐々に疑念を膨らませていく。
いっそのこと、正直に全て話してしまおうか。
彼女なら信じてくれるだろうし、このこと自体についても怒らないはずだ。
制服の件に関してだって、素直に話せば、きっと。
――――ぼくのことは、わたしには『ひみつ』をしていてね、『指きりげんまん』。 - 12二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:56:14
冷たい小指の感覚が、俺の小指に蘇る。
……指きり、しちゃったからなあ。
あのネオユニヴァースに完全にしてやられたことに気づいて、俺は思わず笑みを零しそうになる。
まあ、約束は守らないと。
時空を、次元を、宇宙を越えて出会ったネオユニヴァース達の思い出を胸に仕舞い込んで、俺はネオを宥める方法に考え始めるのであった。 - 13二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 00:56:35
お わ り
タイトルの元ネタの映画は明日辺り見に行く予定です
実は下記のスレの『衣替え』テーマのSSだったりします
まあとっくに元スレは完走してるんですけどねウヘヘ
(ようやく分かったSSを書ける人は凄いのだ)21.5|あにまん掲示板「初めてSSを書いてみたら難しすぎて一作品完成させる事ことすらできなかったのだ。スレでハートを50近く貰う人…pixivでランキングに乗る人は雲の上の存在なのだ」 という初代の嘆きに応えて文字書き達が…bbs.animanch.com - 14二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 01:02:09
良いぞ…なんか言語化はし難いが良いぞ…
- 15二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 01:02:45
- 16二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 01:07:36
ただひたすらにネオが可愛かった、すぐに褒めてもらえなくて拗ねてるの良いね…
良SSをありがとう - 17二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 01:10:21
ヒヒーンとかブルルル…とかしか喋らないネオユニヴァースも出てくるかな…て途中までちょっと思ってた
- 18二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 01:29:37
寝る前に色んな可能性の可愛いネオユニを見られて幸せ
"THNK"
『わたし』は『満足』になったよ - 19二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 02:31:59
バースが変わってもネオユニのかわいさは不変なんやな……
- 20123/06/19(月) 07:37:46
- 21二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 08:55:33
生徒会長になると四字熟語を多用するようになってダジャレを言うようになるのか……
- 22二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 09:17:55
表情豊かなネオユニヴァースも良いものだなあ
「可能性」の美しさを感じました
…じゃあなんですか
占いに傾倒してて開運グッズを溜め込んでて愛嬌満点で騒がしいネオユニヴァースもいるんですか
最高じゃないですか - 23二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 09:20:56
DKPIってどっかで見たと思ったらふたばのスレであったな
それと同じかはわからないけど - 24二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 09:23:52
「9」と「7」をアピってくるネオユニヴァースか…
- 25123/06/19(月) 11:23:43
- 26二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 19:27:39
しれっとあにまんバースが混じってて草
- 27123/06/19(月) 20:14:42
あまり中身を見ずにねじ込んだのは反省点です
- 28二次元好きの匿名さん23/06/19(月) 22:53:23
夢の中でのみマルチバースへ旅立てるってオシャレでいいね
- 29123/06/19(月) 23:35:06
ネオユニはこういう塩梅の話が良く似合うと思います
- 30二次元好きの匿名さん23/06/20(火) 02:01:52
- 31123/06/20(火) 07:31:34