- 1二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 00:17:52
「……“DIPR”、解決には“ブレイクスルー”が必要かな」
「あの……ユニさん? どうかされましたか?」
昼休みの図書室。
何やら難しい顔をして課題と思われる紙に向き合っているネオユニヴァースへ、ゼンノロブロイは声をかけた。
ゼンノロブロイからしてみれば、それはとても珍しい光景だったからだ。
ネオユニヴァースというウマ娘は、非常に頭が良い。
無論、ゼンノロブロイも成績優秀であり、優等生に分類される生徒ではある。
だがネオユニヴァースの『それ』は天才的というべきか、次元の違うものであった。
故に、その彼女が頭を悩ませる『課題』というものに、強く興味を惹かれたのである。
「ゼンノロブロイ……ネオユニヴァースは“レゴリス”に悩まされているよ」
「この課題のことでしょうか? 少し見せてもらっても?」
その問いかけに対して、ネオユニヴァースはこくりと頷いた。
ゼンノロブロイは遠慮がちにその紙を手に取って、内容を確認する。
その内容は、極めて短く、簡潔なものであった。
『十年後の夢について、英語で記してください』
その下には広い空間。
ゼンノロブロイは思わず首を傾げてしまう。
全文英語記述、というのは難しいといえば難しいが、内容には自由度がある。
彼女自身も十分こなせる課題であり、ネオユニヴァースなら尚更簡単なはず。
────と、そこでゼンノロブロイは気づいた。
英語記述が問題でないとすれば、問題なのは別の点ということになる、すなわち。
「…………もしかして、十年後の夢について悩んでいるんですか?」
「アファーマティブ……“ABSS”を越えた先のことは“ダークマター”だから」 - 2二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 00:18:08
ネオユニヴァースはどこか申し訳なさそうに、ゼンノロブロイを見つめて言う。
その表情に首を傾げながらも、ゼンノロブロイは思考を巡らせた。
未来をを見通しているような、達観した雰囲気を持つネオユニヴァースが見せてくれた意外な一面。
彼女の友人の一人として、何とか力になってあげたいと、ゼンノロブロイが感じた。
「私個人の考えですが、自分の将来というのは必ずしも一人で描く必要はないと思います」
「……“MUTX”、誰かと協力して当たる“ミッション”?」
「はい、英雄譚や伝記なども、決してその人だけで書き記したものではないはずです」
過去を書き記したものですら、本人だけでなく他人の視点を含めて記述される。
それならば、未来の話だって誰かと話し合って考えても、何の問題もないはずだ。
ゼンノロブロイはそんな話を、ネオユニヴァースに頑張って伝えた。
そして、ネオユニヴァースはその話を噛みしめるように頷いて、微笑む。
「“THNK”、“コペルニクス的転回”だね……“軌道”が見えてきたよ」
「……はいっ! 少しでもお力になれたら良かったですっ!」
「ふふっ、じゃあ早速“REQU”をしようかな」
「えっ?」
「ゼンノロブロイが“想起”する『英雄譚』、教えて欲しいな」
「えっ、ええええっ!?」
数分後、顔を真っ赤にするゼンノロブロイと、それを楽しそうに眺めるネオユニヴァースが目撃された。 - 3二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 00:18:35
「……“THRF”、トレーナーにも“ランデブー”して欲しい」
「うん、ゼンノロブロイが流れ弾を食らったのは良くわかった」
放課後、トレーナー室にて。
大きなレースの後だったため、軽いトレーニングを終えたネオユニヴァースはトレーナーと課題について話していた。
トレーナーは今日の昼休みに行われた惨劇に、思わず苦笑を浮かべてしまう。
ゼンノロブロイには彼自身も色々とお世話になっていたため、なんとも言えない気分になった。
今度お礼に何か差し入れようかな、そんなことを思いながら、彼は一先ず眼前の課題に目を向ける。
「十年後の話か……そこまで難しく考えなくても良いと思うけど」
「トレーナーの“観測”する最大の“赤方偏移”をネオユニヴァースは知りたいな」
「うっ、まあこの流れならそういうことになるよな……」
ゼンノロブロイに話をさせておいて担当トレーナーの自分がしない、では筋が通らない。
少なくとも彼はそう考えて、自信が考える未来の話を、彼女に伝えることにした。
しばらく頭を整理して、無表情な、けれど目を輝かせているネオユニヴァースに彼は向き合う。
「そうだな、とりあえず、十年後もトレーナーでありたいとは思ってる」
「うん、トレーナーならきっと“ALT”、大丈夫、だよ」
「ははっ、ありがとう……それでもっとたくさんのウマ娘と、栄光を掴みたいかな」
「…………“MAZN”? ネオユニヴァースは“NIZR”をする?」
ネオユニヴァースはショックを受けたように、悲し気な目で、トレーナーを見た。
失言だったな、と彼は後悔の念を積もらせた。
彼女は消える、忘れられるということに対して、敏感な面を持っている。
そのため、もう少し気を遣って発言をするべきだった、そう彼は自省した。
けれど────これはいずれ、必ず訪れる未来の話だ。
彼は微笑みながら、彼女の頭を優しく触れて、優しい声色で告げる。 - 4二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 00:18:54
「ごめん、無神経だった。けど、ずっと君のトレーナーではいられない」
「……ネガティブ、わたしは、あなたと」
「でも、それで繋がりが消えるわけじゃないよ、君が望むなら、いつまでも」
「“REEN”は、繋がる?」
「勿論、それに俺の中から君が消えることはあり得ないよ」
トレーナーは思い返す。
ネオユニヴァースが見せてくれた様々な光景を。
ターフで、学園で、遠くの地で、遠くの時間で、地球で、宇宙で。
その全ての姿が、彼の脳裏に今でも焼き付いて、決して消えることはなかった。
自分が口にした夢が、ひどく曖昧だった理由を、彼も今理解できた。
「君が俺にとって────『夢のウマ娘』だから」
ネオユニヴァースは彼自分の運命を変えてくれたウマ娘だ。
人生の半分くらいは彼女に助けられるのだろう、そんな風に思ってしまうほどに。
だから、彼の中からネオユニヴァースが消えることなど、絶対にあり得ない。
その言葉を聞いて、彼女は驚いたように目をぱちくりとさせた後、ふわりと微笑む。
「……スフィーラ」 - 5二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 00:19:16
その笑顔を見て、トレーナーも思わず笑みを浮かべて、そして顔を赤面させた。
一体俺は何を熱弁しているのか、そう思いながら彼は前のめりになっていた身体を戻す。
その様子を見て、幸せそうに目尻を下げて、口元を隠した。
「ふふっ、トレーナー、とっても“DIGG”だったよ」
「…………うん、まあ、力になれたなら良かった」
「でも、ネオユニヴァースはトレーナーの“コネクト”していたいから」
そう告げると、ネオユニヴァースはペンを取り出して、さらさらと課題を書き始める。
まるで書き写しでもしているかのように、その動きは流麗で、躊躇がない。
瞬く間に用紙いっぱいに英文を書き込むと、彼女はドヤ顔でそれを見せつける。
「“MICO”、トレーナーとゼンノロブロイにはとってもありがとうだね」
「流石に早いな………………えっ」 - 6二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 00:19:43
翌日、図書室。
ゼンノロブロイは、先日とは打って変わって機嫌良さそうに本を読むネオユニヴァースを見つけた。
きっと課題が上手くいったのだろう、そう思って、彼女に近づいた。
そして、夢について説明させられたことを思い出し、赤面しながら声をかける。
「あっ、あの、ユニさん」
「……ゼンノロブロイ、昨日は“APPR”。無事“着陸”を終えたよ」
「それは良かったです…………それで、あの」
ゼンノロブロイは知りたかった。
ネオユニヴァースが描こうとしている英雄譚、その先の話を。
だが、流石に聞いても良いものか、と彼女は言葉を詰まらせた。
自身も話したのだから聞いても良いのはないか、という思いも正直あったのだろう。
その葛藤は杞憂に終わる────ネオユニヴァースが自ら課題の紙を取り出したために。
「これがネオユニヴァースが“想起”する『英雄譚』」
「……読んで良いんですか?」
「“UNDY”、もちろん、だよ」
「では遠慮なく……………………ええっ!?」
静かな図書室の中、ゼンノロブロイは思わず大きな声を上げてしまう。
その内容は、固有名詞こそないものの、つらつらと愛を語るポエムのような文章。
そして最後には、その長文に相応しくないほどの、簡潔な彼女の『夢』が記されていた。
────『lovely bride』、と。 - 7二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 00:20:59
- 8二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 00:41:06
『ズッ友』ユニロブの絡み好き
ドヤ顔ユニちゃんかわいいねぇ - 9二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 01:05:46
かわいくてすき
- 10二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 01:13:18
無二の者へ、一途に愛を。
ネオユニヴァースの想いを感じますね。
素敵。 - 11123/06/21(水) 06:02:11
- 12二次元好きの匿名さん23/06/21(水) 16:49:31
いいものみたわ
- 13123/06/21(水) 19:31:58
ありがとうございます、今後も精進したいと思います
- 14二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 01:37:48
素晴らしい物を見た...
満足して寝れますありがとう - 15123/06/22(木) 06:45:45