気乗りしなかったけど｜あにまん掲示板

1◆5XnobFEZUQ21/12/06(月) 23:06:28

「ほら　アンタの足が遅いから時間なくなったじゃん」
「ごめん！」

二人は結局時間いっぱい、いや、門限を過ぎてしまうまでクリスマスを過ごしてしまっていた。

「ほんとごめん！　寮長にはちゃんと謝っておくから！」
「ん……まかせた」
「まかされた！」

返事だけはいいななどと思いつつ、イルミネーションよりも眩しい笑顔のトレーナーとナリタタイシンの問題はひとまずは解決する。

「今日は楽しかった？」
「なんか眩しくてクラクラしちゃったかも」
「大丈夫かタイシン！？　背負ったほうがいい！？」
「ああもう！　モノの例えだっての！」

吐く息は白く、手のかじかむ季節だというのに、このトレーナーはとても暑苦しい。おかげで一緒にいれば寒さを忘れさせてくれるだろう。

そもそも門限を過ぎたのは一緒にいるのが楽しかったからだ。焦るトレーナーを尻目に、本当に気づいていないのか、それぐらいわかれと、ナリタタイシンは心の中で悪態をつく。

「楽しいと時間ってあっという間に過ぎちゃうな……今度からアラームつけとかないと」

なんなんだコイツと自身のトレーナーのズレっぷりに、ナリタタイシンは最早怒りよりも諦めに近い思いしか芽生えなかった。

2◆5XnobFEZUQ21/12/06(月) 23:07:15

「お詫びってわけじゃあないんだけど──はい！　メリークリスマスッ！」
「え……？」

そして唐突に渡されるプレゼント。こういうのはもっとムードとか色々とあるのだろうが、このトレーナーに求めるのは酷であろう。

「かわいいの選んだ！」
「……嬉しいけどさ　アタシにかわいさなんて求めんなっての」
「似合うと思う！　絶対！」

歯に衣着せぬ言葉を、満面の笑みとサムズアップを掲げてナリタタイシンに言いきる。
クリスマス仕様に包装された袋の中には"メリークリスマス"というメッセージカード共に、モコモコとしたピンクの手袋が入っていた。

それは、勝負服と同じ色だ。

3◆5XnobFEZUQ21/12/06(月) 23:07:51

「また来よう　寒い思いなんてさせないから」

純粋な瞳がナリタタイシンの目に映り、離さない。
この眼が素質を見いだし、レースへの道標となった輝きである。

（本当に……本当にアンタは──）

胸に火が灯ったかのようにあたたかい。いつだって信じてくれたから、苦しむ自身に好きな気持ちを教えてくれたから、今、"ナリタタイシン"はここにいた。

「──もらってばっかはイヤだから」

ぶっきらぼうに差し出した袋。中にはタイシンがトレーナーのために選んだマフラーが入っていた。

「一応アタシが選んでみた　アンタに似合う……と思う」
「ありがとうタイシン！　大切にするよ！」
「ん……ならいい」

ナリタタイシンとそのトレーナーは今日この日、お互いに心あたたまる贈り物と、穏やかな思い出を得た一日となったのだった。

「ちなみにこれウマ娘用とかじゃないよね？」

「蹴るよ！」