【SS閲覧🀄意】

  • 1二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 08:42:57

    麻雀の素人が書いています。対局シーンは深く考えないで下さい
    一部のキャラクターを悪役にしています。心臓の弱い方はお控え下さい

  • 2二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 08:43:37

    「樫本トレーナー、グラッセを助けて下さい!」
    「どうしました、転倒でも?」
    「人手が要るかィ?」
    「アタシも行った方がエエかな」
    「……何があったんです?」

    グラウンドで他のトレーナー達と立ち話をしている所に、リトルココンが血相を変えてやって来た。
    が、様子がおかしい。負傷なら具体的な説明をしそうな物だが、言い辛そうにするのみだ。

    「先輩~、石灰満タンにして……おや、大勢で穏やかじゃないですね」

    “彼”がライン引きを提げて姿を見せ、ココンはいよいよ狼狽える。だが意を決して言った。

    「お願いします、全員で来て下さい。グラッセを、早く……!」

    全員ココンの後に続き、駆け付けた先は倉庫だった。

    「さっきは誰も居なかったけど」
    「上です。二階の奥です」

    確か二階には、主に聖蹄祭の用具などの使用頻度の低い物が置かれており、人の出入りはほぼ無い。奥には資料庫か何かがあると記憶しているが、何故こんな場所に?
    と思っていると、硬いものがぶつかるような小さな音が聞こえて来た。――音の出所はもちろん、奥の部屋だ。

    「グラッセ!」
    「~っ……ココン……」

    その異様な光景に、一瞬理解が追いつかなかった。中に居たのは三人。手前にビターグラッセ、小さなテーブルを挟んでナカヤマフェスタ、そして奥にはゴールドシップが悠然と座っている。そしてテーブルには――雀卓?

  • 3二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 08:44:19

    「呼ばないでって言ったのに」
    「そんな事言ってられないでしょ!」
    「練習抜けて麻雀とは……どういう状況やの、コレ」
    「おっと、誤解の無いように頼むぜ。私達はトラブルにならないように気を使ったんだからな」
    「っつーと?」
    「グラッセちゃんがグラウンドの使用権を賭けて勝負だ、なんて言ってたからよ。本来アタシらは走りでケリ付ける所だが……そんな大層な物賭けて、力んで怪我でもしたら何やってんだかわかんねーだろ?
    で、公平かつ平和的にテーブルゲームで勝負しなよ、と提案したのさ。……初心者をアッサリ負かしちゃ悪いと思って、オール一翻ルールでなぁ」

    ニヤニヤと説明するナカヤマフェスタとゴールドシップに対し、ビターグラッセは真っ青になって震えている。

    「エゲツない事しよんな」
    「……オールいーはん、とは?」
    「……麻雀は安い手を組み合わせて高得点に出来るから、慣れた人には大したハンデじゃないんです。むしろマグレで大物が入るチャンスが無くなるので、初心者にとって苦しいんですよ」
    「合意の上だからな。後から文句つけんなよ、グラッセちゃん?」
    「アプリの対人戦では……良いとこ行くのに……!」
    「ハハッ、あんなの文字通りお遊びだろう。大事な物賭けてた奴が居たか?とんだ井の中の蛙だな」

    ビターグラッセにも非はありそうだが、いくら何でも無知につけ込んでやり過ぎではないだろうか。

    「よォ、今いくら負けてんだ?」
    「私が知った時には、使用停止二ヶ月を賭けてて……」
    「それはさっきまでの話。……来たぜ、七対子ドラ2、裏が2の、槓裏で6か。手を伸ばしたくて槓したのが裏目に出たな。まぁそれが無くても……今のでトンだろ?」
    「ぐっ……!がっ……!」

    その瞬間、勝利に見放されたグラッセは鼻も顎も痩せ尖り、周囲の空気さえぐにゃあ……と歪んで見えた。

  • 4二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 08:45:04

    「これで五連敗、停止四ヶ月。もう切り上げたらどうだ?勝ち逃げはしないが、これ以上負けが込むのは見てられないな」
    「アンタら、こんなアホな事……」
    「ま、理事長代理サマが出張ってるんだ。止めろと言われれば仕方ねーが」
    「負けが消えて無くなる訳じゃない。どうやって埋め合わせるつもりだ?」
    「……勝って取り戻せ、ってかヨ」

    確かに、強引に幕を引いても問題は残る。指導者としては首肯しがたい事ではあるが、もうそんな事は言っていられない。

    「……仕方ありませんね」
    「おっ理子ちゃん、話せるゥ♡」
    「“理子ちゃん”は止めなさい」

    ここに来て彼が前に出た。

    「少し話をさせて下さい。
     やあゴールドシップ、久しぶりだね、元気してたかい。思えば君とは……」
    「そりゃアンタとは一度は契約も考えたし、何かと気にかけてくれたがよ。
    『僕の顔を立ててくれ』、なんてつまんねー事は言ってくれるなよな」
    「私らのトレーナーに泣きつくのも諦めな。会議中に呼びつけて、話を大きくしたくは無いだろ?」

    バッサリやられた彼が心底申し訳無い、という顔で振り返る。

    「何の成果も……得られませんでした!」
    「だろナ」「せやね」
    「とは言え確かに知らねー仲でもねーからよ、出血大サービスだ。ナカヤマ入れて二対二のつもりだったが、アタシだけで受けてやる。一対三でアタシに勝ったら停止四ヶ月は棒引き、やるかい?」
    「ナイスだ」「やるやん」

    コントのような掌返し。――これが全てドッキリであったらと、私はこの日、最後まで思っていた。

  • 5二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 08:45:45

    「それじゃ確認するぜ。三万点を割った時点で脱落、半荘一回でアタシに勝つ……つまり1位にさせなきゃ良い。で、誰が出る?」

    三人のトレーナーが一斉にこちらを向くが、答えは決まっている。

    「すみません、麻雀知らないです」
    「じゃ始めようか。アタシが振るぜ」
    ――――――――――
    「御無礼、五百オール!」

    おかしい。二局目?をもう3回やっている。そしてアガっているのは開始からずっと、ゴールドシップ一人。

    「今、どうなっているんです?」
    「……彼女の手は、ほとんどがノミ手と言われる安い手です。しかし……」
    「点数自体は充分逆転できますヨ。俺達に手が入れば、の話ですが」
    「で、でも聞いた事があります。麻雀は三人で一人を狙われたら勝てない、と」
    「そない言われてはいますが、早すぎる。アタシらが何も出来ん内にアガってる……つけ入る隙があらへん」

    三人のトレーナーは額に汗が浮かんでおり、状況が良くないのは素人目にも明らかだ。

    「それじゃ、少しずつ点を失うのを待つだけなんですか」
    「少しずつ?そんなに時間はかからないでしょう、彼女は“八連荘”を狙ってます」
    「八連続でアガれば、どんな安手でも役満になります。以降の全てがネ」
    「そんな事が出来るものなんですか?あまり疑いたくは無いですが……」
    「もちろん最初から警戒しとります。けどこの子、イカサマの気配が無いんですわ。完全に運と地力だけで早アガリしてます」

    打てない私に代わって席に着いた時には頼もしかった彼らの背中が、まるで煤けたように見える。

  • 6二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 08:46:25

    「来たぜぇ、白のみ!」
    「……四巡目やで……」
    「ハク、とはその白い牌ですよね。さっきから二つだったり三つだったり……最初のリーチのみ、さっきのハツのみ以外は大体入ってるような?」

    全員ハッとして、注目する。

    「アタシの美しい芦毛に惹かれて寄って来んじゃねーかな?」
    「確かに美しいナ、俺にも見せて貰って良いか?いや髪じゃねェ。……うん、キレイな、真っ平らだ……」
    「オイオイ、プラスチックを素手で削れるかよ。漫画じゃあるまいし」

    その後も何の奇跡も起こらず八連荘が成立――三人は一度もアガる事無く敗北。お通夜の如き雰囲気を押しのけて、ゴールドシップが口を開いた。

    「これで負け分は停止八ヶ月と。続けても良いけどもう打つ気にならねーだろ、お開きかな?」
    「ぐぅ……こんな事が……」
    「あり得ねェだろうがヨ……」
    「ゴメンなぁグラッセちゃん……」

    後ろのナカヤマフェスタが牌ケースを開く。このまま終わらせるのは拙い。

    「待って下さい!勝ち逃げはしないと言っていましたね。最後にもう一度、私と勝負して貰えますか」
    「へぇ。樫本サン、打てないんじゃ?」
    「はい。ですので、私に解る方法でお願いします」
    「OK、席に着きな。でも負けたら一年以上になるって分かってるよな」

    勝負の間ずっと腕の中に居たビターグラッセが、ひときわ大きく震えた。立っているのがやっとの彼女を女性トレーナーに任せ、対面に座る。
    テーブルの中央にはサイコロの目のような牌の①が三つ、②が三つ。端に除けられた他の牌はナカヤマフェスタが片づけ始めていた。

  • 7二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 08:47:29

    「『牌本引き』って知ってる?」
    「知りません。麻雀の派生ですか」
    「元は花札らしいが、知らなくてもいーや。細かい点数は関係ねーからもっとシンプルにいくぜ。アタシの出す牌が①か?②か?当てるだけの三本勝負だ」

    同じ牌を三連続で出す事もあり得る、運と心理の読み合い――しかし、まだ足りない。私が勝つためには今一歩。

    「いいえ。さらにシンプルに、使うのは二つだけ……ビッグ・オア・スモールの一本勝負でよろしいですか」
    「おっそう来たか、もちろんアリアリよ。じゃあ一応確認だけどさ」
    「賭けましょう。負け分の八ヶ月を取り戻すため……さらに八ヶ月!」

    テーブルの上には①と②、ただ二つの牌。私達は後ろを向き、トレーナー達の監視の中でナカヤマフェスタがシャッフルする。向き直ったその時、それぞれの正面に伏せた牌が一つ。

    「大した勝負度胸じゃん。さあ、どっち選ぶ?」
    「……このまま手前の牌を」
    「なら早く捲ってくれよ。②を出せば勝ち、だぜ」
    「いいえ捲るのはあなたの牌です、ゴールドシップさん。①なら私の勝ち、②ならそちらの勝ちですね」
    「なにっ」「な……なんだあっ」

    二人が同時に目を丸くして驚く。全くの予想外といった風情だ。

    「おや?どちらでも同じ事でしょう」
    「うっ……くう……ッッ!」

    タン!硬い音とともに開示された目は……①。

  • 8二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 08:48:12

    「私の勝ちですね。ビターグラッセの負け分は棒引き、でよろしいですか」
    「……ああ。アタシらの負けだ」
    「そしてこれは理事長代理として。この部屋は今後立ち入り禁止、賭け事もです。今回はビターグラッセにも非がある様なので不問としますが、次は許しません」
    「了解」
    「ではトレーニングに戻りましょう。片付けを見ていて下さい。グラッセ、あなたにも話があります」

    二人と彼を残して退室する際に、会話が漏れ聞こえて来た。

    「……本当は適当な所で負けるつもりだったんだよな?」
    「ふん、知るかよ」

    タン!ともう一つ、硬い音。その目は見なくとも解っている。
    ――――――――――
    ビターグラッセの指導と各々のトレーニングを終えた夕方、再び先刻の顔ぶれが集まった。

    「……知ってはったんですか?」
    「余分な牌を片付ける時、ナカヤマさんがうっすら笑っていたので。おそらくすり替えて来るだろうとは思っていました。
     ……いえ、最後の大勝負でただの運任せというのは彼女達の性格上ないだろうと、半ば確信しての事です。
     仮に仕掛けて無くても元の五分五分、それで負けたなら仕方ありません。十六ヶ月をどうするかは頭が痛いですが」
    「それなんですが。僕、あの二人は最初からそんな気無かったと思います」
    「でしょうね。おそらくはグラッセに痛い目を見せて大人しくさせ、負け分はどうにか有耶無耶にする筋書き……
     しかし、私達が現れて予定が狂った。最後の勝負は私が迷っている内に、自分から負ける気でいたんでしょう。しかし彼女ら主導で終わらせてはいけない」
    「それにしても、牌は俺達がずっと見てたんですがネ。よく読み切ったモンです」
    「私は賭け事は分かりませんが、“悪い人”はどこにでも居ました。……どうにかして、やりおおせるんですよ」

    解散した帰途、制服に着替えたビターグラッセが待っていた。

  • 9二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 08:49:02

    「寮に帰ったはずでは?……あの二人はもう気にしなくて大丈夫ですが、顔を出し辛いなら明日は休んでよろしいです」
    「樫っ……トレ゙ーナ゙ぁ~」

    もう流し尽くしたはずの涙を溢れさせ、私にしがみ付いたまま詫びを繰り返す。今日ばかりはやり過ぎたと感じて、行く先に不安を覚えたのだろう。
    ――どうして見放すものか。私のチームだけでは無い。少々賑やかな子、ちょっと自由な子、いささかマイペースな子、そして……悪い事を知ってしまった子だって、可愛い生徒だ。きっと私達で守り、導いてみせよう。
    ――――――――――
    「へっくし!」
    「風邪か?もう戻るぜ、私は」
    「待てって。丁半なら理子ちゃんも出来るだろ?アタシの髪はまず見えないからさ。“毛返し”の練習、付き合えよォ~」
    「アホ、賭け事自体禁止されたろうが。それにもう懲りた。あの人とは二度とやりたくねえ」
    「う~ん……じゃあアタシ一人でやるしかねーな」
    「だからなぁ」
    ――――――――――
    きっと、そう、きっと。

  • 10二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 08:49:53

    終了 麻雀はよく分からないけど麻雀の漫画は好きなんです……真似事したくなって書いたけど、きっと変な所いっぱいありますね

    内容の割に思ったより文字数がかさんで、冗長な感が強いかな?読んでくれた方、ありがとうございます。色々仕込んだ細かいネタに気付いてくれたら嬉しいです


    理子ちゃんSS書き始めて丸一年になりました。狙った訳では無いけど少しずつ書いた話を続けてUPです

    ↓直近の作

    ンフッフww理子ちゃんwwとかww|あにまん掲示板「無礼らぇたモンですよ、私こう見えてチーム・ファーストのトレーナーですよ、理事長・代理なんですよぉ~……聞いてます?」「ええ聞いてますよ、理子さん」GWの大連休も、業種によっては並の仕事と変わらない。…bbs.animanch.com
    【SS】疑惑の珈琲、慕情に左様なら|あにまん掲示板「えっ?襟に血が付いてるぞ!」「マジでか?……なんも無い。もしかしてハート型と違うか?」「あ。赤い糸」ネーサンが最近始めた“ダーニング”の練習台に、小さな穴を幾つか繕ったらしい。ポケットやタグの縫い目…bbs.animanch.com
  • 11二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 18:46:00

    ウインディちゃんの方は

    (ようやく分かったSSを書ける人は凄いのだ)|あにまん掲示板「初めてSSを書いてみたら難しすぎて一作品完成させる事とすらできなかったのだ。スレでハートを50近く貰う人…pixivでランキングに乗る人は雲の上の存在なのだ」bbs.animanch.com

    この一連のスレが元です 自分の中では繋がりつつ単発でも読めるように、と思ってましたが説明不充分でしたね……

    お題で大勢がSS書かれています、今もPartスレとして続いてますので是非どうぞ

  • 12二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 22:19:11

    前作のウインディちゃんは見逃したけど今回の代理は間に合った
    グラッセはワンマンで動くからどっかで代理から叱られてそう。でも代理は生徒を「注意」することはできても、はっきり「怒る」のはかなり時間が要りそう
    自分がそこまで踏み込んでいいのだろうか、という自信の不足。あとグラッセの方が受け止められるだろうか、という信頼の不足がそこまでの指導を躊躇させてきたと思われます
    このお話ではその辺の信頼関係が構築されたからグラッセは泣きながら抱き着くし、代理は心の中で自分が生徒の為に何をしたいのか素直に言葉にできたんでしょうね

    すいません一つだけ。セリフが連続すると誰のだかが分かりづらく感じました

  • 13二次元好きの匿名さん23/06/22(木) 23:07:39

    応援隊スレから来ました
    ゴルシの白牌引き寄せる豪運が、麻雀漫画に出てきそうなオカルト能力っぽくてすき
    あと鼻も顎も痩せ尖りで草

  • 14二次元好きの匿名さん23/06/23(金) 00:16:03

    感想ありがとうございます!

    >>12

    ウインディちゃんのは14時に落ちるって出たので、午前中に保守しようかなと思ってたら朝に落ちてまして……

    セリフについては、一人称や口調を変えたりはしてますが、もっと工夫が必要ですね。今後の課題とさせてもらいます。

    >>13

    麻雀漫画の有名どころから、少しずつネタのつまみ食いをしてます。白については偶然か、能力か、あるいはイカサマか?分からないように書きました。

  • 15二次元好きの匿名さん23/06/23(金) 07:31:34

    理子ちゃんSS書き始めた時にゴルシやスイープを名前言わずに出して(会話で分かるけど)、担当かどうかも曖昧にしていたのですが、↓と合わせて整理出来ました。細かいけど「彼」はモブトレです。

    【SS】理子ちゃんと耳かき|あにまん掲示板――最近、耳クソ取るのが流行ってるらしいじゃねえか。――耳かきとか言って下さいよ。て言うか、流行るような物なんですか?どこかに置き忘れたペンを探しながら通った道筋を辿ると、印刷機の近くから話し声が聞こ…bbs.animanch.com

    前スレ飛ばして貼ってました……

オススメ

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