キングヘイロー「進路調査ねえ……」【SS】

  • 1二次元好きの匿名さん21/12/07(火) 22:33:11

    スカイさんとの間にはさまれた教室の机の上には進路調査の用紙があった。
    「私たちまだ中等部なんだから気が早い話じゃな~い?」
    「トゥインクルシリーズを終えたらすぐ別の道に進む子もいるもの」
    ぼやくスカイさんがさぼらないように見張りながらペンを弄ぶ。
    彼女を諭したものの私もレースを終えた後のことはあまり考えたことがなかった。
    白紙のまま目の前の少女に尋ねる。

    「スカイさんは卒業したらどうするつもりなの?」
    「釣りとかしたいね~」
    「漁師は朝すごく早いらしいけど」
    「……キング、私を養ってみる気ない?」
    「おばか」

    少しだけどきりとしたが、きっと気のせいだろう。

  • 2二次元好きの匿名さん21/12/07(火) 22:33:59

    二人で顔を突き合わせて悩んでいると教室の扉が開いた。
    「スカイさんいらっしゃいますか?」
    ひょこりと赤い耳当てが覗く。
    「フラワー。どうしたの?」
    「お弁当を作ってきたのでよかったら一緒に……」
    彼女の手には少し大きめのお弁当が乗っていた。
    スカイさんが手招きをすると嬉しそうに駆け寄ってきた。
    フラワーさんが机の上にお弁当を置こうとすると、机の上の用紙が目に入ったらしい。
    「進路調査、ですか」
    「そうなんだよね~、フラワーはなにやりたいとかあるの?」
    フラワーさんは少し顔を赤らめてスカイさんに耳打ちをした。
    途端にスカイさんの顔が真っ赤になる。

    「お、おおお、およめさんって、フラワー気が早い……!」
    「ちょっとスカイさん、声に出てます……!」

    頬を染めたまま見つめ合う二人。
    私は肩をすくめて席を立った。
    「私はお邪魔みたいだし、進路調査は寮で書くわ」
    スカイさんがあわてて裾を引っ張ってくる。
    「ま、待ってよキング!ほら、フラワーがたくさん作ってきてくれたし私たちじゃ食べきれないよ」
    フラワーさんもこくこくとうなずく。
    ふっと笑いながらスカイさんの手に構わず歩き出す。

    「悪いけど友人の恋路を邪魔する趣味はないもの」

    うまく笑えたかどうかはわからなかった。

  • 3二次元好きの匿名さん21/12/07(火) 22:34:14

    寮の自室でまた真っ白な用紙とにらみ合う。

    『……キング、私を養ってみる気ない?』

    頭に浮かぶのは空色の瞳で私を見つめる彼女の顔。
    ペンを持ってゆっくりと一字一字丁寧に書き上げる。

    “およめさん”

    次の瞬間、頭の中の彼女は私じゃなくフラワーさんを見つめていた。
    ぶんぶんと頭を振って消しゴムで書いたばかりの文字列を消す。
    熱い頬の感覚をごまかすように別の文字列で上書きする。

    筆圧が強かったせいかぼこぼこしていて書きづらかった。

  • 4二次元好きの匿名さん21/12/07(火) 22:35:21
  • 5二次元好きの匿名さん21/12/07(火) 22:38:27

    書けばいいじゃねえか不憫じゃないキングをよ…
    今回も楽しませてもらいました

  • 6二次元好きの匿名さん21/12/07(火) 22:41:31

    個人的なイメージだけど、キングは勝負服のデザイナーで、セイちゃんは実家の農家を継いでまったり生活してそう

  • 7二次元好きの匿名さん21/12/07(火) 22:42:00

    辛い…

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