- 1まずは自分から23/06/25(日) 23:11:28
「トレーナー、皆今日は終わりなんだろ?私も帰って良いか?良いよな?」
「ダメだ、近いうちにレースあるんだから追い込んでくからな」
「えぇ…」
俺の担当は…力はある。
そう、力はあるのだ。
ただ、隙あらば練習をサボろうとしたり手を抜こうとするのがひたすらに困る。
時にはパドックで「この世の終わりを見るかのような目をしている」などと評価されることもあるぐらいのやる気のなさ。
ゲートに入った瞬間さっきまでの地獄が嘘のような力を出してはくれるのだが、見てる方からすればどうなるか分かったものではないのだから心中穏やかではない。
「んじゃお先に~…」
「逃がすかァ!!」
「なんだよー、私が無理やり動かされても力でないの分かってんだろー?」
「力出そうとしないの間違いだろ!きっちり仕上げるからな!?しかも今日は広報の取材までいるんだから真面目にしてもらわないと尚更困る……!!」
「…わーったよ、走れば良いんだろ、走れば」
「おお…!?いや、ありがとう!」
……で、素直に動いてくれるのなら俺は今頃苦労などしていないわけで。
「あの、トレーナーさん?あれが追い切りですか…?」
「あ、あまりにもやる気がない……」
若干察知はしていたが、案の定仮にもダートで爆走できるウマ娘とは思えない程のあまりにも酷い追い切りになっていた。
「サイアクだぁ…」 - 2二次元好きの匿名さん23/06/25(日) 23:13:01
- 3二次元好きの匿名さん23/06/25(日) 23:13:30
- 4123/06/25(日) 23:20:44
- 5二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 00:21:19
「私は綺麗、それは世の理において当然のこと、それは分かるわね?」
自分は静かに頷いた。
彼女はまだ話の続きのようで黙って聴いてみることにした。
「だけど、綺麗なものを愛でたいだけならば、そこら辺の可愛らしい動物でも、綺麗な装飾品でも眺めていれば良い。私はそういう目で見られるのは嫌い。私という存在を「モノ」として見られて消費されるのは我慢ならないわ」
[だから、レースで見返す?]
「見返す、というのは違うわね。私は劣等感でこの場にいる訳じゃない。
認識を改めて貰うだけよ、私という気高き女王に魅入られるが良いわってね。だから…」
「私はまず桜のティアラを頂きに行くわ。この白い髪に桜色のティアラは似合うと、貴方は思わない?」
そう高々と宣言するその子の髪は、風になびいていて、とても美しく目に写った。
彼女は華やかな見た目に対してとても猛々しい。
…だが、それに美しさを感じるのは、自分だけではないだろう。
いや、周りにも必ずそう思わせる。
[お供します、女王陛下]
「…貴方が初めての臣下よ、励みなさい」
これから、女王(かのじょ)とのトゥインクルシリーズが始まる。 - 6二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 00:25:30
便乗させてもらったがこんな感じでやってみた
伝わると良いが… - 7二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 00:27:47
ソダシかな?
阪神JFのことがないから間違ってるかもだけど - 8二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 01:00:10
ソダシだねぇ…
桜花賞のイメージ強すぎて阪神JF忘れてたねぇ
腹切り案件だねぇ…… - 9二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 01:32:05
個人的なマイナスイメージの転換じゃなくてただの付加価値として考えてるの最高に偉そうですき
- 10二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 03:08:29
重たい雲に、じめじめとした湿気、纏わりつくような暑さ。
まさに梅雨、というような気候に気持ちを落としながらも、私は柔軟を続ける。
「……うん、痛みはない、大丈夫、大丈夫」
軽く足首を回したり、その場で足踏みをして、状態を確認する。
────最後のレースから、すでに一年以上経過していた。
自分で言うのもアレだけれど、それまでの私は、かなりの注目株だった。
レコードタイムを記録したことだってある。
重賞にだって、かなりの接戦だったけど勝ったことがある。
華々しいG1レースの大舞台で走ったことだってある。
……まあ最後のはスタートでゲートに顔をぶつけるという、ちょっとした汚点でもあるけど。
一時期は、スプリントならば世代最強候補、なんて言ってくれる人もいたくらい。
だけど、ある重賞レースの直前に、怪我をして。
「まさか、こんな長引くだなんて思わなかったなあ」
最初の診断は、捻挫。
その年の年末には復帰できる、そのはずだった。
けれどドンドン復帰するはずの時期は伸びていって、気づけば春のG1も終わって。
ようやく決まった次走は、この梅雨を突き抜けた先の、夏の舞台だった。
「ふっ……!」 - 11二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 03:08:45
柔軟を終えた私は、坂路を走る。
今日はトレーナーは不在、軽めのトレーニングで流すようにと指示されていた。
あまり無理はせず、走りの感覚を確かめながら、一歩一歩踏みしめるように走っていく。
一年前、たくさん貰っていたファンからの応援の手紙はかなり少なくなった。
世代最強候補に私の名前を出してくれる人は、もう殆ど見かけない。
重賞ウマ娘の肩書は残っているけれど、それはもう過去の栄光だ。
今の私ではG1レースに出走することすら難しい。
背負っていた期待や夢は、一年で擦り減って、風化してしまって。
今は────とっても、軽い。
「ふふっ、それにしてもトレーナーも、まさかのレースを選んだもんだね」
私の次走は、新潟芝1000m。
カーブは一切ない、ただ真っ直ぐ走り抜けるだけの電撃戦。
とにかく本番の舞台で全力で駆け抜けたい私にとっては、ぴったりのレースだ。
一旦トレーニングを中断し、息を整えながら、空を見上げた。
どんよりとした雲の間から眩い光が差し込んで、梅雨の終わりと夏の始まりを予感させる。
「……ああ、もうすぐ、もうすぐなんだ」
私の復帰戦まで、もう少し。
絶対に勝つ、誰よりも早く、誰よりも先にゴールへと辿り着いてみせる。
そしてにっこりと笑って、言ってやるのだ。
ずっと走れなかった私を、それでも応援し続けてくれたファンの人達に。
私のことなんて忘れてしまった、元ファンの人達にも。
────お待たせしました、ってね! - 12二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 03:09:11
G1未勝利だけどままえやろ……
- 13二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 03:10:47
これはジャングロ 復帰待ってるぜ
- 14二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 03:12:53
not現役あり?
- 15二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 03:23:06
正解、俺もずっと待ってたんだ……
- 16123/06/26(月) 07:18:11
- 17二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 09:56:52
喜びは二倍、悲しみは半分。
プロポーズの決めぜりふとしてポピュラーな言葉。
私とトレーナーはそんな関係じゃない、というかそうなったらトレーナーが社会的にヤバいけど、でも私とトレーナーの関係性を表現するなら、この言葉がぴったりだ。
デビュー直前に怪我をしても、それがなかなか治らなくてどんどんデビューが遅れても、トレーナーは私を見放さなかった。そして回復してついにデビューが決まった時は、自分のことのように喜んでくれた。
だから私はこの恩をレースで返さないといけない。
そう思って勝ち星を重ねるうちに、私とトレーナーは名物コンビになった。
トレーナーの名字が名字だから、人間の女の子二人が出てくるギャグ漫画を連想する人もいるようだけど、覚えてもらうことだって大事だ。
実際その漫画の原作者にも覚えてもらえたし、掴みは順調。それはレースも一緒で、私自身怪我で悩んだのを忘れそうになってしまうくらいだ。
大きなレースはまだまだ遠い夢の先だけど、皆が私たちのことを考えて、釘付けになっちゃうくらいの存在になるために、今日も私たちはレース場を『揺るがす』のだ。 - 181723/06/26(月) 09:57:16
地方の子だけどいいよね…
- 19二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 10:46:06
地方か…他の人の助力も欲しいな
- 20二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 10:48:48
地獄と大井を揺さぶるコンビ、ヘルシェイク矢野
- 21二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 11:04:26
「ごめん……君の引退まで一緒にいてあげられなくなった」
咳き込みながらトレーナーは言う。
自分は元々平地で走ってたけど、才能がなくて障害競走へ。絶対王者が君臨してる世界に飛び込まざるを得なかった。一方でトレーナーはまだ若いこともあって大きなレースに勝ったことは無かった。担当するウマ娘を求めて今は障害メインで指導をしている。
自分の転向からずっと一緒に戦ってくれたトレーナーだけど、もっと前から共に居たという病魔は彼から体力勝負の仕事ができない身体にしてしまった。
「君の次のレース、この重賞が僕の最後のレースだ。けど気負わず君らしく走ってくれ」
中京で行われるJ・GⅡ。強い子達が出走表明しているレースだが、果たして自分は彼に最高の思い出を作れるのだろうか。
引退済み&G1勝ちしてない障害馬です - 221723/06/26(月) 11:28:04
- 23二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 11:33:59
- 24二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 11:34:57
- 25二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 11:35:43
- 26二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 11:38:19
投稿希望列入りまーす
- 27二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 12:05:09
色なき風が吹き、葉っぱが赤く染まる季節。
今日は雲一つない快晴で、もう少しで冬とは思えないくらいに暖かい。
出来うることなら、このままのんびり日向ぼっこと行きたいところだけど。
「まあ、そういうわけにもいかないよねえ」
わたしはジャージに包まれた身体を一伸びすると、ストレッチを始める。
トレーナーさんはまだ少し遅れるみたいだから、ゆっくりやろうかねえ。
そう考えていた矢先、突然、背後から名前をかけられる。
振り向けば、長い黒髪の、まだまだ駆け出しといった雰囲気のウマ娘が緊張した様子で立っていた。
……はて、知り合いの子ではないねえ。なんか、誰かに似たような感じもするけども。
とりあえず、彼女に微笑みを向けて緊張を解してあげながら、言葉を返す。
「はぁい、何かわたしに用事でも?」
黒髪の子は最初よりはいくらか力が抜けていたものの、まだガチガチに緊張している。
ふむ、わたしはそんなに怖いかねえ……少しショックかもしれないねえ。
しどろもどろになりながら、彼女はゆっくり、少しずつ言葉を紡いでいく。
────そして、一つの名前を、口にした。
「ちょい待ち、今のウマ娘の名前をもう一度言ってみてくれる?」
一瞬びくりと、黒髪の子は身体を跳ねあがらせると、震える声でその名前を口にした。
そして付け足す、その人が私に走る楽しさを教えてくれた人なんです、と。
ほほう、なるほどなるほど、いやはや実に懐かしい名前だねえ。
いや、そうでもないかな、当時は毎日のように目にして耳にしたし、今でも結構頻繁に聞く。
一緒のレースで走ったこともある同期の桜……桜で済むかねえ、月下美人とかの方が相応しいかも。
とはいえ、そこまで彼女と仲が良かったわけでもない。
悪いわけでもなかったけれど、正直住む世界が違うと思えるほどのレベルの差があった - 28二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 12:05:21
強いて言うならば同期で一緒に走ったことがある『だけ』という関係性。
わざわざ声をかけるほどなのかねえ、と疑問を抱いてしまう。
ただ、黒髪の子はあの子の名前を出した時から、表情が和らぎ、流暢に話し出していた。
「ふふっ、あの子も良い先生をしてるみたいだねえ」
彼女は大分前に引退して、今は後進をウマ娘を育てていると風の噂で聞いている。
去年早速教え子がG1を制覇し、今年はティアラ三冠ウマ娘を出したとかで大騒ぎだった。
当時は近づきがたい雰囲気だった気もするけど、丸くなったのか、それとも元々そうだったのか。
……もう少しお話をしてみても良かったのかもしれないねえ。
微かな寂しさを覚えながら、黒髪の少女の口からあの子の近況を聞いていく。
やがて、これが本題と言わんばかりに表情を真剣なものに変えて、彼女は問いかけた。
────どうすれば、長距離専門で、そんなに長く走り続けられるんですか?
シンプルで、真っすぐな質問。
なんか老兵呼ばわりされてる気がするのが、ちょーっと気になるけれども。
とはいえ後輩を導いてあげるのも、先輩の役目。
あの子がやっていたのだから、わたしだってやってあげなくてはいけない。
「んーそうだねえ、とにかく規則正しい生活を繰り返すことかねえ」
わたしの答えに、黒髪の子はそれだけ? と言わんばかりにぽかんとしていた。
んー、わたしとしては出来るだけ簡潔に答えたつもりだけど、シンプル過ぎたかねえ。
そう考えて、わたしはタブレットを手渡して、自分の一週間のスケジュールを見せた。
あまり人に見せるものではないかもしれないけれど、見せて困るものでもない。
彼女はそれをじっと見つめるも、まだ表情は晴れない。
それはそうだろう、そのスケジュール自体はハードでもなければ、珍しいものでもないからだ。
わたしはタブレットを見つめる彼女の後ろから覗き込み、操作を行う。 - 29二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 12:05:36
「これが一か月のスケジュール、これが一年のスケジュール、そしてこれが来年のスケジュール」
画面が切り替わるごとに、黒髪の子の目は見開かれて、表情を硬くしていく。
ふむ、やっぱりここまできっちり決めるのは、少数派みたいだねえ。
トレーナーさんと話して、一緒に決めてきたローテーションだけど、やっぱりあの人は特別なんだ。
そのことが、何故かとても嬉しくて、思わず笑みが零れてしまう。
「ふふっ、勿論常にこの通りとはいかないけれど、可能な限りはこの通りに動くんよ」
トレーナーさんが作ってくれたスケジュールを守って、規則正しい生活を、何年も続ける。
きっと、それがわたしが何年も走り続けられているコツ、少なくともわたしはそうだと確信していた。
黒髪の少女は少しだけ引きつった笑みでタブレットを返すと、小さな声で、新たな問いを発する。
────どうして、そんなに長く走り続けるんですか?
さらにシンプルになった、真っすぐな質問。
それは、何度も別の人達から聞かれた質問。
正直もう衰えも感じている、成績は安定していないし、同期もほぼ残っていない。
レースだけでフルマラソン4回分以上の距離を走っていると聞いたこともある。
それでも走るのをやめない、走り続けたいと思っている理由は。
「……あなたの先生のせいかねえ」
黒髪の子は驚いた表情で、凍り付いたように固まる。
あの子は、伝説を残した。
たくさんのウマ娘、トレーナー、ファンの脳を焼いた。
皆の瞳に、記憶に、心に、魂に、流星の如く深い衝撃を残した。
それは金輪際現れることがないとすら思ってしまうような、眩しすぎる輝き。
わたしも、その光に目を焼かれてしまった一人だ。 - 30二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 12:05:55
「わたしも、あの子みたいに何かを刻みたくて、それでずっと走り続けているんやね」
その言葉に、黒髪の子は、困ったように、呆れたようにため息をついた。
……あらま、予想外の反応。別に悪い気もしないのだけれど、ちょっとだけ気になってしまう。
彼女は、今日はありがとうございました、と深々と頭を下げて、わたしも釣られて頭を下げる。
別れる寸前、彼女はこちらを一度振り向いて、微笑みを浮かべた。
――――もうとっくに刻まれていますよ、先生もそう言ってました。
去っていく黒髪の子を見送っていると、その方向からトレーナーさんがやってきた。
ちらりと彼女を見やってから、珍しいものを見るような表情で知り合い? とわたしに聞く。
わたしは少し考え込んでから、口を開いた。
「知り合いの知り合い……いや、他人の知り合い……やっぱり知り合いの知り合いかねえ」
トレーナーさんは何それと苦笑してから、情報を告げる。
あの子、今度君が出るレースで出走するウマ娘だよ、と。
……ほほう、なるほど、そっちが目的だったのかねえ。
まあ同期の近況も聞けたし、彼女に悪い印象も受けなかったし、良い時間だったとは思う。
ただまあ────面白いことをしてくれたお礼は、きっちりとしてあげないとねえ。
「ふふっ……久しぶり燃えて来たよ、トレーナーさん♪」 - 31二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 12:06:16
すまねえちょっと長くなった、引退馬です
- 32二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 12:07:45
- 33二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 12:53:00
「私、トレーナーさんと出会えてよかったです」
レースを3日前に控えたとある日。ミーティングが終わる間際に、私はそう呟いた。
私が今のトレーナーさんと出会ったのはクラシック級の、それも5月頃になってようやくのことだった。トレーナーさんは未勝利戦でくすぶっていた私を見つけて、スカウトしてくれた。たしかスカウトの時、
「僕はまだ新人トレーナーで実績もほとんどない。だけど、僕とコンビを組んでほしい。君となら、重賞──いや、もっと遠い所を目指せる気がするんだ」
なーんて言ってましたっけ。まあ、実際にコンビを組んでからはトレーナーさんの提案してくれた距離延長のおかげで2連勝できたし、その後もなんとか頑張って、遂に念願のG1出走も決まった。といっても、そのG1には前年の覇者や2年連続2着の先輩、それに同期の菊花賞ウマ娘も出走してくる。いっぽう私は──というか、トレーナーさんにとっても今回が初めてのG1挑戦。厳しいレースになるのは誰の目にも明らかだろう。
───それでも、精一杯走り切ってみせる。それが私にできる唯一の恩返しだから…」
「当日は雨が降るかもしれないから足元に気を──うん?今なにか言ってなかった?」
「いやいや、大したことじゃないですよ」
「そうか、じゃあ続けるよ。京都レース場の坂は───」
危ない危ない、口から出かかってました。こんなこと聞かれてたらたまったもんじゃありません。それに今はまだ、物語の途中。スペシャルサンクスを記載するのは───最後の最後と、決まっていますから。 - 343323/06/26(月) 12:54:17
現役・重賞未勝利
ヒントは多めにした…つもり - 35二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 13:32:52
- 363323/06/26(月) 14:15:29
そこまでいったなら…もちろんバ名もわかるよな?
- 37二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 15:01:04
用事あるんで帰ってきたら書いてもいいですかね?
かなり前の子なんですけど - 382623/06/26(月) 15:10:55
「は?迷子ぉ⁉」
半泣き状態の担当ウマ娘からかかってきた電話に、トレーナーは素っ頓狂な声をあげた。
現在チームから2名の担当を引き連れて海外遠征中。つい数時間前にホテルに到着し、荷解きやブリーフィングを終えたところで、ついさっき大浴場に向かう二人を見届けたはずだが……
『話してたはずなのにはぐれちゃって……探してたらわけわかんないとこに出てぇ……トレーナーここどこぉ…?怖いよぉ……』
「いやホテル内ではあるだろ?エレベーターか何かでロビーまで…」
『ムリだよぉ~!看板なんて書いてあるかわかんないし!ホテルの人忙しそうだし!もうだめだぁ僕ここで死ぬんだぁ!』
「うそでしょ……」
どうやら初の海外という影響を甘く見ていたらしい。そういえば飛行機内でも普段とは打って変わってポンコツになってた気がする。
『うう……耳がキーンってする……外がこわい……食欲でない……』
『もー、デザート食べないなら貰っちゃうよ~?もったいないし』
『うん……もう寝る……。…………手、にぎっててほしい…』
『はいはい、しょうがないな~』
てっきり新しい環境にかこつけて姉貴分に甘えてただけかと思っていたが、思ったよりシリアスだったらしい。なんということだ。ぶっちゃけ面白い。
「とりあえず三人で合流するから、ちょっとそこから動かずに待ってろ。あとそっちでも連絡取ってみて…」
『うぅ……助けてカワイイカ』ブチッ
どうやらもう一人の担当ウマ娘の方が先に見つけたらしく、トレーナーが発見した頃には泣き止んでよしよしされているところだった。手を繋いで女湯へと消えていくベソ泣き娘と保護者を見届けながら、トレーナーは苦笑した。
「『あの娘が無理なら日本は世界に敵わない』とまで言わしめたウマ娘の姿か?これが……。」
なお数日後にその世界の壁が2バ身半差で崩れ去ることになるのだが、それはまた別の話。 - 39二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 15:14:11
- 402623/06/26(月) 15:28:13
- 41二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 15:37:09
- 42二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 15:52:56
- 43二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 15:57:11
- 443323/06/26(月) 15:57:13
- 45二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 16:03:37
- 46二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 16:15:59
白状するとにエンドロールの細かいキャリアは把握してなかったんで、
出走ライバルの顔ぶれと京都ってところから今年の春天かな?って当たりをつけて出馬表見に行った
そこで馬名と鞍上の名前を見て「あーあーなるほど」と理解した
- 47二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 17:12:05
あたしはアイツが嫌いだ。
スイカを指でつついて粉砕するとか、ホムセンで売ってるようなハンマーだけでコースの土手に丸太を埋めるとか、自己流かつワケわからん練習ばかりなのに、ちゃんと結果は出しやがる。
トレーニング自体をやめるのはあたしのプライドが許さないからしないが、マジメにやってるのがアホくさくなってくるのは事実だ。
「お〜いマ」
「殴るぞ」
「まだ何も言ってねーだろー!?」
「そのあだ名で呼ぶことを許すほど仲良くなった覚えはねえ!」
ムカつくポイントは他にもある。
チームメイトくらいにしか教えてない、子供のころのあだ名で呼ぼうとしてくるところだ。聞き流すのが最適解なのは分かっている。けれど嫌なものは嫌だ。
ファンはアイツの名前とレース運びを結びつけて『不沈艦』と呼ぶが、あたしからしたら免許取りたてのイキリ初心者が操縦する、ムダにキレのあるムダな動きをするモーターボートだ。
互いにレースの世界に身を置くなら、結果で黙らせるしかない。そう思ってレース生活に心身を捧げている。アイツとは何度か直接対決しているが、今のところ勝ち越せているのでこのまま逃げ切りたいところだ。
「お母さんが見つかるまで、お姉ちゃんたちがついててやるからな!」
「ぐすん…ほんと?」
「任しとけ!」
ただでさえ広いトレセン学園に、ヒトもウマ娘も大勢が押し寄せるファン感謝祭。そこで毎年発生する問題がある。
―――迷子だ。 - 48二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 17:13:34
見回りの最中に4歳くらいの迷子ウマ娘を見つけたあたしは、怖がらせないようにできるだけ屈んで、できるだけの笑顔で話しかける。
「迷子センターはここから徒歩で3分27秒です。頑張って歩けますか?」
「さんふん?」
同じく見回りを任されているエイシンフラッシュは、いつもの口調を崩さず、しかし迷子を元気づけるため心なしか優しそうに語る。ドイツ出身らしく時間にシビアすぎるし融通はきかないが、アイツよりはよっぽど付き合いやすい。
「まあすぐ着くってことだ!着いたら海の向こうまで届くくらいの声でお母さんを呼んでやるから、来るまで一緒に遊んで待ってようなー」
「うん、ありがとうお姉ちゃん!」
そしてプリファイのオープニングテーマを一緒に歌いながら少しばかり歩いたところで、一番会いたくないやつに出くわしてしまった。
―――法被を羽織り焼きそばを売り歩くアイツだ。
特になにか言うでもなくあたしたちを見つめるアイツは、基本的にはうるさいせいかどこか不気味だ。いつもならなんか言えよ、くらいあたしから言うところだが、迷子を怖がらせるわけにはいかない。
「なあ」
「今忙しいんだけど」
「お前がどうしたいかは知んねーけど、お前こういう仕事の才能あんじゃね?サマになってんじゃん」
「いやちょっとそれどういう…」
急に冷静に、しかもよりによってアイツに向いてそうな仕事に言及されてなにがなんだか、というあたしなんかに目もくれず、アイツの焼きそばを求める客が列を作り始める。
応対している隙に乗じて、あたし達はその場から離れて迷子センターへ急いだ。
「…ゴールドシップさんは間違ったことは言っていないと思いますよ」
「…は?」
几帳面がウマ娘の形をしているようなフラッシュがあのモーターボートに同調するとはなかなか信じられず、あたしの頭の中にはハテナマークが浮かんでは消える。
「理解できそうにないことはたくさんしますし言いますが、他人を陥れるようなことはしない方ですから。むしろ他人をよく見ている側です」
「そうかな」
「人間でもウマ娘でも、子供と関わる仕事を検討する価値はあるのではないでしょうか?」
「…」
レース生活もいつかは終わる。そもそも『将来』という二文字が嫌でもまとわりついてくる年齢だ。
漠然と描いていた未来の中に急に滑り込んできたその提案を、あたしはしっかり噛みしめるのだった。 - 49二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 17:17:12
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- 5047、4823/06/26(月) 17:18:33
ごめんなさいミス
※2009年生まれですでに引退しています。
※ゴルシとフラッシュとは対戦経験があります。 - 51二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 17:27:37
- 52二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 17:27:56
- 5347、4823/06/26(月) 17:39:42
- 54二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 18:03:11
初めてSS書くから大目に見てくれ〜(〇〇はウマ名が入ります)
「〇〇ちゃんやっぱり強いね!!」
「流石〇〇さん、負け知らずって感じかしら」
「「「___もう誰も、あの子には勝てないよ」」」
………いつからだろう、皆からの尊敬の眼差しが『畏怖』に変わったのは。
クラシックではあと少しが届かなかった。でも、シニアになってからは負けなしだった。クラシックでは負けた同部屋のあの子にも、現役最強と噂されていた先輩にも勝った。褒められているはずなのに、満たされているはずなのに、何故か虚しかった。
だけど、
一人だけ、アイツだけは変わらない。
どこまでも呑気なのに強くて、思わず目を奪われる。
誰かが言った「アイツはもうお前に勝てない」「海外に行って終わってしまった」って。
「___そんなの、私が誰にも言わせない」
ただ一人だけ勝ち越せられない、私を恐れない、そんなアイツが外野に好き勝手言われるなんて我慢ならない。アイツの強さを周りに決められてたまるものか。
「だからさ、もう一回私と走ってよ………」
どこまでも強いアンタの弱みをこれ以上見せないで。わたしと走って。他の皆はもう良いんだ。アンタと走る間は、間だけは、虚しさなんて感じない。どんなに凄いレースの熱も、アンタとの走りには到底敵わない。
「___次に勝つのは私だ、〇〇」
「___望むところだよ、〇〇!」
私たちの決着は、まだつかない。 - 55二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 18:25:14
- 56二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 18:26:12
- 573323/06/26(月) 18:29:08
- 5854だよ23/06/26(月) 18:33:10
- 59二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 18:46:04
姉達には、才能があった。
芝で、ダートで、G1をとるような輝かしい成績を残した姉もいる。そんな中で私は落ちこぼれだった。
メイクデビューこそ勝てた。けどその後はなんだかうまく行かなくて、3勝できたあとは大敗することが増えた。緊張しいでレース前は不安で不安で、なかなか本気が出しづらい性格だというのもわかっている。みんなの期待に応えられなくて、抱き枕やぬいぐるみを抱えて泣いた日もあった。
G1どころか重賞も夢のまた夢な私は、ある日戦場を変えることに決めた。
「君が、あの……。よろしくね」
彼もまた「戦場を変えた」トレーナー。一年目の新人で、競走トレーナーとしては勝ったことのない人。そんな彼について行くことにしたのだ。まずは春の福島で、姉たちとは違う路線を走り出す。 - 60二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 18:48:50
- 61二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 18:52:48
たぶん難易度☆1
「――いい顔になったじゃない」
中山の地下バ道。憧れのひとは、そう言っていつものように一流の笑顔を浮かべていた。
「私に並んだぐらいで、満足したようなへっぽこな腑抜け顔をしていたときは、どうしようかと思ったけれど」
私は俯く。――あの勝利のあと、気が抜けていたのは事実だった。
何度負けても諦めなかった彼女の姿に憧れて飛び込んだトレセン学園。適性が合わないと解っていても挑んで、跳ね返されたクラシック。勝ったと思った瞬間、全くノーマークだった相手に大外から差し切られたNHKマイルカップ。あと一歩で勝てない悔しさは、嫌というほど味わってきた。
『貴方には貴方の走りがあるのよ』
スランプに陥っていた私に、彼女はそう言って道を指し示してくれた。彼女の全てを撫で切る末脚に憧れてこだわっていた走りを捨てて、彼女とは全く違う逃げで掴んだ重賞、そして彼女と同じGIタイトル。やっと憧れのひとに追いつくことができた。並ぶことができた。――もう、これでやるべきことはやったと、そう思ってしまった。
だけどまだ、やるべきことがある。目指すべきものがある。掴み取りたい夢が、ある。
「貴方は、私を超える権利を手にしているのだから。――超一流の戦士になっていらっしゃい」
「――はい!」
彼女の背中を追い越して、私は中山のターフへと向かう。
月桂樹の冠を、もう一度。王から戴く、そのために。 - 62二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 18:53:54
- 63二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 18:54:58
- 64二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 18:57:02
正解 ウオスカ世代の話やるときは絶対ウマ娘に来て欲しい1頭
- 65一勝クラスの馬です23/06/26(月) 19:31:42
ワァァァァと大きな歓声が控室にまで聞こえてくる。レースが決着したのだろうか。次はいよいよ私の番だ。
以前の2走は良いところが見せられなかった。
もう未勝利戦も数ヶ月しかないのに、このまま突破できなかったらどうしようか。
そんな事を思うと足の震えが止まらない。
私は昔からこうだ。大きな試練を前にすると酷く緊張して、全力が出せなくなってしまう。
その原因は分かってる。
私には偉大なパパとお姉ちゃんがいる。
荒々しいけれど優しくて、かつてトレーナーとして活躍していたパパが。
そしてJpnⅠにも勝った強いお姉ちゃんが。
2人の功績は私にも期待として重くのしかかる。
いつも応援していますと言ってくれたファンの人達、頑張ってこいよと見送ってくれたチームメイト、私に印をつけてくれた解説者の方々。
皆の溢れんばかりの期待と夢に応えるには、私の心は脆すぎたのだ。
今もバクバクと心臓が早鐘を打ち、呼吸のリズムは不規則になり始めている。
いっその事、怪我をしたことにして逃げてしまおうか。 - 66二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:32:41
そんな卑屈な思考で一杯になった私の耳に、コトンと小さな物音が飛び込んでくる。
思わず視線を向けると、そこには2体の倒れた人形があった。
あれは、この前ママが作ってくれたパパとお姉ちゃんの人形だ。
あがり症の私が落ち着けるように、私が幼い頃にお気に入りだった人形を改造して贈ってくれた特別な人形だ。
柔らかく微笑む2人を手に取って、キラキラと輝く瞳を見つめていると、私の心のざわめきは次第に落ち着いてきた。鼓動も緩やかになり、呼吸の間隔も正常に戻る。
そうだ、私にはパパとお姉ちゃんが付いてる。偉大な2人が一緒にいるんだから、何も恐がることはないんだ。 - 67二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:34:04
その時、ドアの方からコンコンと軽快なノックの音がした。
「アッアッアッそろそろ君の番だぞ!パドックに行こうか!」
トレーナーさんだ。相変わらずおかしな笑い方だなぁ。
私はハーイと返事をして、2人を抱えたまま部屋を出る。
「よしよし、今日は随分と落ち着いているではないか!君のお母さんに送ってもらった薬はしっかり効いたようだね!」
「そうなんです。2人を見てると本当に一緒にいるような気がして、緊張がなくなっちゃいました」
「それは素晴らしい!」
トレーナーさんは、私の様子に安心したのかニヤリとして軽口をたたき始める。
「そこまで効果があったのなら、わざわざ君のお母さんに頼み込んだ私の苦労も報われるというものだよ!今度は私の人形も作ってもらうといいぞアッアッアッ!」
「もう、トレーナーさん!今回のことは感謝してますけど、あんまり調子に乗らないでください!」
「アッアッアッ!いやぁすまないねえ!」 - 68二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:35:00
まったくもう。指導は優秀なくせにすぐに調子に乗るんだから。
私は、悪びれずに笑う彼の手に人形を押し付ける。
「これ、持っててください。ウィナーズサークルで返してもらいますからね」
「ああ、待ってるぞ。行っておいで」
「行ってきます」
トレーナーさんと最後の挨拶を交わした私は、パドックの方へ向き直りフゥと一息入れた。今日こそ、絶対に勝って未勝利戦を突破してやるぞ。
そしていつか、トレーナーさんをGⅠウマ娘のトレーナーにするんだ。
決意を新たにした私は、まだ見ぬ夢へ向かって最初の一歩を踏み出す。
私の名は──────。
皆の思いに負けずに戦うウマ娘だ。 - 69二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:36:53
アイノセンシかよ!
- 70二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:39:38
ありがとうございます、正解です!
- 71二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:47:56
東京レース場の地下バ道。
うちの後ろには、張り詰めた空気を纏った多数のウマ娘達。
当然やね、今日は一生に一度だけの夢の舞台、日本ダービーの日。
まあ、うちにとっては『二回目』の夢の舞台やけれど。
今でも、昨日のことのように思い出すんよ。
溢れる大歓声、たくさんの人達、うちの名前を呼んでくれるファンの皆。
期待を込めて背中を押してくれたトレーナーはんのおっきくて、あったかい手。
そして────どんどん遠くなっていく、17人の背中。
あの日、うちの夢は終わってもうた。
日本ダービーに参加するウマ娘達の、先頭に立ちたいというウチの夢。
それは全く反対の形で、現実になってしもうた。
うちに、芝の適正はなかった。うちは、ダートウマ娘やった。
小さい頃から脚の悪いうちを、面倒見てくれたトレーナーはん。
君はダートに収まる器じゃないと、大きな期待を寄せてくれたファンのみんな。
あなたなら十分勝負になるよと応援してくれとったクラスメート達。
その全てを裏切って、うちはボロ負けして、大粒の涙をターフに零したのを覚えてとる。
「あはは、うちも若かったさかい……思い出すと顔が熱くなりそうや……」
そんなうちをトレーナーはんは、ファンの人達は、クラスメートは、励ましてくれた。
うちはなんとか立て直して、鍛え直して、ついに別のダービーを勝利したんよ。
あんとき一緒に走ったウマドルはんも、皐月賞ドベだったな、これも運命なんかな。
それからは完全にダートに切り替えて、走って、走って、走り続けたんや。
……まあ、あん時期は化け物が多すぎて、なかなか苦労したもんやけどね。
それでも、その化け物を倒していくつかのG1を制覇して、なかなか充実したレース生活やった。
「さあ、そろそろ時間やで~? 蹄鉄とかの点検は、十分以上にしといてや?」 - 72二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:48:17
時計を見ながら、背後のウマ娘達に声をかける。
ギラついた目をする子、緊張でガタガタ震える子、落ち着いてる子、ぽやっとした子。
多種多様の反応をしているも、その全員の視線は、一人のウマ娘を捉えとった。
今年は皐月賞とった子もいたるさかい、うちの時はおらんかったしな。
すごい強い子で、今年は三冠あるかもって、同僚がハシャいどったわ。
うちは引退後、URAの職員になった。
主な担当は、パドックから本バ場まで皆を連れて来る誘導係。
レース前に観客を出迎えたり、掛かったウマ娘達を宥めたり、結構大変なんやで?
引退後、URAの方からお誘いがあった。
どうやらうちはうちが思っている以上に人気があったらしく、是非にと。
うちもトゥインクルシリーズには感謝しとるし、盛り上げたいと思ったさかい、喜んで引き受けた。
……まあ、うちのロボット作られたり、おしりマウスパッドなるものを打診されたりするとは思わへんかったけど。
色々大変な仕事やけど、とっても充実していて、楽しくて仕方がない。
そして今日、うちが長らく希望を出していた夢が、ついに叶った。
「……時間や、ついてきとう」
日本ダービーの、誘導係。
うちが夢見て、夢破れた舞台に、もう一度立ちたい。
毎年のように上司に嘆願して、希望を出し続けて、それが今年ようやっと実を結んだ。
さっき、こっそりトレーナーはんも来てくれて、祝福してくれた。
当時のクラスメートやファンの人達からも、いっぱいメールや手紙をもろうた。
激しく打ち鳴らし始めた心臓を、後ろの子達になんとか隠しながら、うちはターフへと踏み出す。 - 73二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:48:49
レース場は、不気味なくらいの静寂に包まれていた。
今年のダービーは、とある事情により、無観客開催。
溢れる大歓声も、たくさんの人も、みんな名前を呼ぶファンも。
なんもあらへん、あの時走った東京レース場とは、まるで違う。
けれど────踏みしめるターフの感触はあの時のなんも変わらへん。
見てる人はおらへんけど、ここは間違いなく夢の舞台、日本ダービーや。
ふと、後ろを振り向く。
地下バ道から出ようとする18人のウマ娘達。
うちは今、そんな彼女達の先頭に立っておった。
「……ぷっ、ふふっ、あはは」
堪えきれず、うちは吹き出して、笑ってもうた。
それに気づいた何人かのウマ娘は、こちらを見ながら不思議そうに首を傾げる。
あーあ、やってもうた、こら後で大目玉間違いなしやな……。
でも、それでもええか、そう思えるくらいには今は清々しい気持ちでいっぱいだった。
────今の夢と、昔の夢が、同時に叶ったんやからな。 - 74二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:50:35
- 75二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:06:28
正解!!!!!
- 76二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:22:34
「なあトレーナー、起きてるか?」
「起きてるよ。どうかした?」
人生二度目のG1レースを翌日に控えたアタシは、なんだか落ち着かなくてトレーナーに電話をかけた。
「いやあ、何となくアンタと話がしたくなってさ」
以前のトレーナーの退職に伴って紹介されたのが今のトレーナーだ。先代は「きっとお前と気が合うよ」なんて言っていたが、初めて会った日の印象は最悪だった。だって弱っちそうな見た目になよなよした喋り方、おまけにトレーナー歴の割に実績が心許ないものだったから。何でこんな奴の下で走らなきゃいけないんだってイライラしたし、長いことPre-OPで燻っているウマ娘にはこの程度のトレーナーがお似合いだと言われたようで悔しかった。
最初の頃は生来の頑固とアイツへの反発心が合わさって、練習メニューをガン無視したり声を掛けられてもテキトーに返事してしまっていた。それでもアイツは怒ることも諦めることもなくトレーナー業をするものだから、変に反抗するのも馬鹿らしくなって大人しく話を聞くようにしたのだ。
そこからの活躍は自分でも信じられないほどだった。
それまで掲示板ですら外しまくっていたのに5戦連続で入着したと思ったら、その勢いのまま重賞ウマ娘にも負けず10番人気から重賞勝利を決めたのだ。アタシにとって初めての重賞タイトルだったしアイツにとっても初めての芝重賞だったから、肩を組んで喜び合ったっけ。
もちろん何もかもが上手くいった訳じゃない。この流れに乗るぞ!と意気揚々と挑んだグランプリであっさりG1の壁に跳ね返されたし、自信があった前走は1/2バ身差の2着に終わって悔しい思いもした。トレーナーがあの敗戦をめちゃくちゃ引きずってたのは流石に笑ったけど。 - 77二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:23:07
「なあトレーナー、アンタのお陰でアタシは立派な重賞ウマ娘だ。ありがとうな」
「どうしたの急に。変なものでも食べた?」
「お前なあ!可愛い教え子からの感謝の気持ちだぞ!ありがたく受け取れよ!」
「あはは、ごめんごめん。普段そんなこと言わないからびっくりしちゃったよ。それを言うなら、俺だって君に感謝しなきゃいけない」
「おっと、アタシ何かしたっけか?」
「長いこと結果が出せてなかった俺が重賞の舞台に上がれるようになったのは、間違いなく君のおかげだ。ありがとう」
ずっと結果が出せずに燻っていたのはトレーナーも一緒だ。それがアタシとの出会いでG1戦線にも顔を出すトレーナーになれたんだから、そりゃあ感謝の一言も言いたくなるか。アタシの頬は自然と緩んでいた。
「そんじゃトレーナー、明日はもーっとアタシにありがとうって言いたくなるようにしてやるよ。初G1、一緒に掴もうぜ」
「うん、楽しみにしてるね!」
明日はいよいよ本番。無敗の三冠ウマ娘にマイルの女王、破竹の勢いの皐月賞ウマ娘も出走するという、アタシ史上過去イチ役者が揃ったレースだ。今までにないくらい緊張しているけど、やることは変わらない。いつもと同じように走って、そして勝つだけ。
「んじゃお休み。明日に備えて早く寝ろよ」
「それはこっちのセリフだよ。おやすみなさい。いい夢が見られますように」
トレーナーらしい一言で通話を終えると、猛烈な眠気に襲われた。喋って気分を落ち着かせようという作戦は大成功のようだ。部屋の電気を消して大人しく布団を被る。明日は必ず勝ってみせる。そう強く思いながら、アタシは静かに眠りについた。
引退済みの重賞馬がモチーフです - 78二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:28:21
- 79二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:29:11
「なぁ…本当に自分でいいのか?」
彼女と契約を結ぶ時、自分はたしかにそう言った。そりゃそうさ、一時は担当すらいない底辺トレーナーだったもん。
「ねぇトレーナー、次はやっぱりNHKマイルカップだよね?他のレースに目標変えたりしないよね?!」
「ここまで来ちまったんだ…今更変えられるかよ。目標は当然、NHKマイルカップだ。…大丈夫。中山と東京の1600は、違うはずだから」
皐月賞をパスして選んだNHKマイルカップへの道。ニュージーランドトロフィーの思いがけない敗戦は、きっと糧になると前向きに捉えるほかなかった。
そして自分たちは今、東京レース場の控え室にいる。
「来ちゃった…もう…引き返せないね」
「…あぁ」
「あっそうだ、今日は思い切って直線に全てを賭けようと思うんだけど…トレーナーはどう思う?」
「まぁ…東京ほど長い直線なら、大丈夫だよ。きっと、うまくいく。それと、自分のリズムを崩さないで。自分から言えるのはこれだけだよ…あとは、君の頑張り次第だ」
それだけ言い残して、彼女をターフに送り出した。もう自分は、彼女のために届くかもわからないエールを送る以外何も彼女のためになることをしてやれない。
ゲートが開いた。彼女は後ろの方で末脚を炸裂させる瞬間を今か今かと待っている。
そしてウマ娘の一団は大欅を通過した。ペースは流れている、これなら後方脚質にもチャンスが出てくる。
直線に入る、残り400を通過するがまだ後方にいる。堪らず自分は彼女の名を叫んだ。
「〜!〜行け!差し切れ!」
その瞬間、彼女の末脚が炸裂した。内から伸びようとするウマ娘の方が先に先頭に立ったが、ゴール板の手前で、纏めて、撫で斬りにした。正直、何がなんだかわからなかった。涙が溢れて止まらなかった。最後に嬉し涙を流したのは、何年前だっけ。
トレーナー視点です
モチーフは引退済みですが今年も会えた方もいるはずでず - 80二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:30:43
「トレーナーさん…一つ聞いてもいいですか?」
「ん?どうした?」
「トレーナーさん、本気で私のレースローテ考えてます?」
最近になって思うことがある。トレーナーさんは私で遊んでいるんじゃないかと…
「本気で考えてるぞ。実際にこの間の重賞じゃ掲示板に乗ってライブで歌えていたじゃないか」
「いやいや確かにそうですけど!というか1年前から変な事をやり過ぎですよ!いきなりドバイのダートを走らせたら、今度はイギリスの中距離を走らせて!帰国したら何ですか!?急に短距離走らせて!絶対に遊んでいますよね!?」
「いや遊んでないよ…君の適性が余りにも訳が分からないから色々と走らせているだけで…。実際にどんなレースに出ても掲示板には入ってるじゃん」
そう…全ては私の適性が変だからこうなっている。そんなことは分かっているのだ。
クラシック期で惨めな結果に終わった後に心機一転して色々な所で走ってみたところ、これまで気付かなかった適性がじゃんじゃん判明したのだ。だとしても、この適性は余りにもやり過ぎている訳で…
「中央の芝も欧州の芝も走れて、地方中央海外のダートも走れる我ながら変態だと思いますよこの適性…」
「そうなんだよね。だから君にあったレースをどうにか見つけようとこうして探している訳で…」
「…じゃあ次のレースは何ですか」
「もっかいイギリス行ってみようか」
「やっぱり遊んでますよね!?」
ま、別に楽しいから良いんだけど。 - 8176&7723/06/26(月) 21:00:24
大正解です!
- 82二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 21:15:40
ついに、届いた
何度も挑戦して、何度も悔しい思いをして、何度も涙を呑んで
辛いことも悲しいこともあった
その度に友人やライバル、先輩後輩、妹…そしてだれよりもトレーナーに慰められて
諦めずに手を伸ばし、ようやく届いた頂
喝采の中、私の眼からは溢れんばかりの涙が流れていた
「やっ………たぁーーー!お姉ちゃんが勝ったーーー!おめでとーーー!」
棒立ちしていた私に抱き付いた妹が大声で祝福する
まるで夢の中にいるような、しかしこの温もりと喝采は現実で、観客席のファンたちも皆が私を祝福して…
「もう、お姉ちゃん!せっかくG1を勝ったのに泣いてばかりじゃダメだよ!オレがG1を勝ったときもお姉ちゃん泣いてばかりだったでしょ?」
「ほら………──────!」
重賞馬です、ヒント少ないかも - 83二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 21:44:41
- 84二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 21:47:53
このレスは削除されています
- 858223/06/26(月) 22:02:13
- 86二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:08:24
- 878223/06/26(月) 22:10:53
正解!
- 88二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:14:21
初書きですが、ご容赦を
私の競争人生にずっと付き合ってくださり、本当にありがとうございます。
春先で怪我してクラシックを棒に振っても、翌年の春にも怪我をしても、この秋で初めてG1を取ることが出来たのはトレーナーさんのおかげです。
なんてったって2連続レコードですよ、2連続。ぶいぶい。
けど、「ルドルフ相手でも、あの条件なら俺たちが勝つ」なんて、よく言えましたよ。ちょっと恥ずかしかったですよ。
同期のあの子は、まぁ、運が悪かったと思います。3連続同じ着順なんてそうそうないですよ。うん。
──このクラブの子たちも、私以上に活躍させていってください。トレーナーさん。
季節外れの祭囃子に、豊かなる道を思い浮かべ───
まぁ簡単なほうだとは思います - 89二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:22:17
華々しい活躍をする同期たちの姿を、どこか遠く見ていた。
誰より強く一番に、そしてどこまでも続く夢の扉を開く子がいた。
酔狂で常識外れの、けれどどこまでも格好いい道をゆく子がいた。
70秒にも満たない、しかしどこまでも不滅の夢を見せた子がいた。
あの子たちが眩しくて、悔しくて、眠れない夜もあった。
それでも。それでも、アタシの気持ちは──"勝ちたい"という一心は、変わらない。
そうだ。
このままさよならなんて、誰が言ってやるものか。
アタシだって、この心の叫びを見せつけてやるんだ。
どこにいたって見えるような──
「……よっし! 気張っていくよーっ!」
──花火のような、大輪の桜を。 - 90二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:30:27
正解っ!
- 91二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:39:46
- 92二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:42:30
んー不正解
- 93二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:46:01
- 94二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:49:11
- 95二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 23:08:06
妹って文字が見えて「あっこれ姉の方か!」と思い消しちゃった
ちなみに84の全文は
「オレハマッテルゼかな
ほらのあとは「笑顔を見せて」かな」です
「これでバッチリ」
姐さんが勝負服のタイを最後に整えて、肩にポンと手を置いた。
「出走しないアタシでも緊張するくらい大きなレースだけど、いつものアンタらしい走りを見せてきなさい」
うん、オレもそのつもりだよ。姐さんとトレーナーに一礼し、パドックに出た。
程よい緊張と会場の熱気が合わさって感じたことの無い雰囲気がオレら6人の周りを取り囲む。少しエキサイトしちゃって落ち着きがないオレに、海外のウマ娘が話しかけた。
「キミがニホンのEscape Kingだね。絶対に逃がさないデス!ニホンらしく言うと……えっと、"正々堂々"戦いマショウ!」
上手な日本語で話しかけられたのに「あのえっと……英語分かりません!」とか返しちゃった。トレーナー、はダメだ。今度姐さんに英語教えてもらおう。
結果から言うとオレは逃げ切った。けどあの人は最後までオレを目掛けて追いかけてきた。
「次は負けナイ!またDubaiで会いましょう!」
- 96二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 23:19:25
小さい頃ね、大好きなパパが言ってくれたの
「君はパパたちのに夢とロマンをくれた、ダイヤモンドなんだ」って
それを証明するときがやっときた
ティアラ路線一冠目、桜花賞
出走メンバーは阪神JFの上位3名にクイーンC勝者と強敵揃い
望むところよ、ダイヤモンドは磨かれて美しくなるんだもの
強い相手であればあるほど勝った瞬間が輝くもの
「一番美しい宝石が誰なのか……思い知らせてあげるわ!」 - 9747、4823/06/26(月) 23:25:45
- 98二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 23:26:31
- 99二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 23:29:17
- 100二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 23:31:55
- 101123/06/26(月) 23:32:30
全然大丈夫ですよ
なんならソダシ回も自分ですのでじゃんじゃんどうぞ~ - 10247、4823/06/26(月) 23:43:19
- 103二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 00:12:10
待ってるだけとかおんぶにだっことか、そんなヒロインは流行らない。
私が産まれたのは、ちょうどそんな風に言われ始めた頃。実際私の名前にも、新しい時代のヒロインのように明るく、そして強くあれという願いが込められているらしい。
けれどデビュー戦からなにもかもうまくいって、3戦めでG1に手が届きいい気になった私から、三女神様は魔法の力を奪った。
嘘みたいに上がらない調子にケガ、どんどんティ路線の先を行く同期たち。
トレーナーまでケガしたときは、こんな目に遭うのは私だけでいいのに、って泣きそうになったりもした。
私の夢に平和はいつくるの?と何度も思いながら自分と向き合って、ついにまたG1の舞台に立てる日がやってきた。
結果はまあ…って感じだったけど、ここでへこたれたら新時代のヒロインが廃る。かつての輝きも落ち込む気持ちもいったん忘れて、ひたすらトレーニングに励んだ。
今日はティアラ路線を征くウマ娘の、それも最高峰クラスがひしめくレース。メンバーには経験豊富な子も、プリンセス通り越してクイーンかというくらい活躍した同期もいる。
こんな私を赦してくれた三女神様に恥じないレースを、と思いつつも、やっぱり緊張するものはする。手の平に『人』と書くところを『入』と書いていた私に、緑と黒で大人っぽくまとめた勝負服のウマ娘が声をかける。
「確かに強いコだらけだけど、でもなにもできないなんて…」
「…ぶっちゃけありえない!」
気合いを入れ直すために両手で強くほっぺを挟んでから、私は彼女と地下バ道を進んでいった。
難易度0.5くらいなんでヒントはなしで! - 104二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 00:13:18
- 10510323/06/27(火) 00:13:26
ティ路線てなんだよティアラ路線だよ…
- 10610323/06/27(火) 00:21:31
- 107二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 04:14:27
- 108二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 06:20:36
頂点を。
G1というタイトルを奪うには、力技ではどうにもならない時がある。
むしろその方が多いだろう、確かに最後は今まで積み上げてきた身体と心が物を言う時はあるだろうが、それでも色んな作戦が交錯し、お互いを嵌めあう。
私は勢いだけで押し切れるような力は持っていない。
だからこそ相手を知る。
だからこそレース研究は欠かさない。
だからこそ──
「…っし、じゃあ行ってきますよ。ちゃーっと3000m走ってきまさぁ~」
「気抜けてるなぁ…ま、その方が良いか」
「トレーナーさーん、今の私は二十面相ってやつでーすーよー?
……何を考えてるか分からない、というのは私にとって十分な有利ですから。」
「調子十分だね…頑張って!」
「はいはい~」
今回は別に「速さ」が要らなければ「運」も要らない。「強さ」さえあれば良い。
なら、こちらは罠を張らせてもらおう。
幻惑に惑わせた、かのトリックスターのように。 - 109二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 06:44:17
- 110二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 07:07:14
- 111二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 08:15:40
「このレースのファンファーレクッソ難しいよな…」
「高音域が人間技じゃないというか」
「作曲者の顔が見てみたいわー」
部活仲間と話をしながら、重い気持ちを紛らわせる。
ウマ娘たちのレース開始を彩るファンファーレ。それを演奏するのは非常に名誉なこととされ、特にG1レースでその大役を任されたら一生自慢できるレベルらしい。
しかし地方のレース場になると、地元の高校・大学の吹奏楽部に任せることも多い。だから自分たちは今こうしてレース場に向かっているわけだ。
そもそもウマ娘みんな美人だから花束の中の霞草にもなれないかもしれないが、せめて少しでも華を添えられたらと思い、楽器に息を吹き込んで温める。
そして本番、事件は起きた。
\プペペポピー/
作曲者を恨みたくなるような高音域に、部員たちはなすすべなく崩れ落ちた。
一人のウマ娘の顔が見る間に青くなっていく。そりゃそうだ。もう元々どんなメロディかもよく分からない曲になっているのだ。
「…」
それぞれが自分のせいだと言うかのように、自分含む部員たちはそっと目配せした。
〜〜〜〜〜
父さんはオペラ歌手、母さんは音大の先生。
私はウマ娘だから走ること一辺倒で楽器とかはからっきしだけど、それでも質のいい音楽にずっと囲まれて育った。
だからレース前のファンファーレはしっかり聴く方だったりする。今回の団体は上手いな、とか、この高校の吹奏楽部はもっと伸びるな、とか、そういうことも他の子よりは分かるつもりだ。
今回出るレースのファンファーレは難しいことで有名で、それを近くの大学の吹奏楽部が演奏するらしい。
私も頑張るから、貴方達も頑張って!
そんな気持ちでゲートに入ったところで、事件は起きた。
\プペペポピー/
…いや確かに難しいし向こうもプロじゃないけど、こんなことある!?っていうかなんか大学生たちも大学生たちで居た堪れなくなってきてる!というかその前に耳がもげる!頭が割れる!
――レースの結果は散々だった。
耳の周りでひたすらクラクションを鳴らされているような気分は、控室に戻った今も続いている。
耳が肥えているのも、考えものだ。
例のアレで分かりそうなので、ノーヒントで - 112二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 08:18:40
- 11311123/06/27(火) 08:27:59
- 114二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 10:24:12
- 115二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 10:27:53
- 116二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 10:31:26
- 117二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 10:32:27
- 118二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 10:59:28
目を開ける。見慣れない白い天井と、独特な香り。
眠っていた前の事はあまり覚えていない。
確か、私はレースに出ていたはずで……。
まだボヤける視界で周りを見渡せば、悲痛な面持ちで私の左手を握っているトレーナーさん。
今にも泣いてしまいそうなその顔に何時もの私なら笑わせようとアクションを起こすけど、今だけは出来そうも無い。
「トレーナー……さ、ん」
漸く絞り出せた声で話し掛ける。
驚いた顔の後、ナースコールすら押す事を忘れて静かな部屋の中に涙声の謝罪の言葉だけが響いている。
「大丈夫、だ、から」
私も真似て、トレーナーさんの手を握り返す。
思い出した。私はレース中に倒れたんだった。
そうか。私は怪我をしたんだね。
でも、大丈夫。まだ、大丈夫だよ。
「……列車は、止まっていないから」
早く治してもう一度。
皆の目を奪ってしまう様な走りをもう一度。 - 119二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 12:04:34
- 120二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 12:41:29
- 121二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 15:40:26
このレスは削除されています
- 122二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 17:06:43
「……私は、あの方へ捧げるのに相応しい走りをしたい。
そして何より……私がこの舞台に立てたことを証明してみせます」
強い意志を感じさせる目で、彼女は前を見据えていた。
まだレースは先というのに、もう既に勝負師の顔になっている。
「あの方が今、どこかで見ていてくれるかもしれないから。長い長い旅路から、帰ってくるのを導く灯台になれるようにと願いを込めて……自由とはここにあると」
いつも通りのレース前の異様な入れ込み、だが不思議と悪い気はしない。気分が奮い立ってトレーニングも、インターバルも出来ないくらいに熱くなってしまうこともあるが。
「大丈夫だよ、お嬢さん。焦らないで行こうか」
その背中を軽く叩いてやると、少しだけ表情を和らげてくれた。
顔には出さずとも、彼女は片手を握りしめて武者震いしていた。……その覇気に満ち溢れた横顔を見ているだけで、こちらも圧倒されてしまいそうだ。
「……ええ、そうですね。私らしく行きましょう。私らしい、荒々しいまでの走りで」
「うん、それでいい。でもお行儀良くね?」
「はい。トレーナーさん、これからも私についてきてください。貴方となら、迷わないから」 - 123二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 17:11:25
- 124二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 18:23:54
- 125二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 18:44:42
- 126二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 18:56:47
- 127二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 20:42:23
ちょっと長めかも
「…オペラオーさぁん、あの子まだいますよ…?」
「ああ、まるで呪われし赤い靴の意のままにされる乙女のようだ」
合同トレーニングを終えて寮に戻るテイエムオペラオーとメイショウドトウの視界に飛び込んできたのは、延々と走り込みを続けるウマ娘の姿だった。
大外の枠番を引いた想定なのか、非常に大回りでコーナリングをしているが、その姿は頭で考える前に足だけが先に動いているようにも見える。
それに彼女は、オペラオーとドトウがトレーニングを開始したときにはすでにあの場で自主トレに励んでいた。オーバーワークも甚だしい。
大事なレースが控えているだろうことは分かるがその前に身体を壊しては元も子もない。見かねた二人は走り続けるウマ娘に歩み寄る。
「――キミを訪ねてくるロミオのためにダンスの練習をするのは素晴らしい心がけだが、それで疲れてしまっては、本番美しく踊れなくなってしまうよ!」
「そ、そうですよぉ、このままじゃ体調崩しちゃうかもしれないですし…」
「うわあああ〜!?」
よほど集中していたのだろう。声をかけられて初めて二人に気づいたウマ娘は、まるで街中で大物芸能人でも見かけたかのような叫び声をあげる。
「誰も寝てはならぬとは言うが、そんなものは氷の姫君のワガママに過ぎない。安息の地までボクたちがお供しよう!」
「休めってことですかね?お気遣いありがとうございます、でもぼくはまだまだ頑張らないといけないので〜…」
オペラオーの提案を断るかのように、疲れた様子のウマ娘は食い気味に返す。艶のある黒髪は、それが台無しになりそうなほどの砂埃にまみれている。
「どうしてそこまで…?」
「周りのみんなが強いのはそうですけど、それに加えて運も無いから、その分練習量でカバーするしかないかな〜なんて…ぼくスタミナはまあまああるんで〜。あっありがとうございます〜」
おそらくなにも口にしていないのを看破したドトウが秘蔵のおやつを差し出すと、黒髪のウマ娘はそれを受け取り、口にしながら語り始めた。 - 128二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 20:42:47
「重賞ウマ娘になれて、さあ次はG1ウマ娘を目指すぞ〜ってところで躓いちゃってる感じなんですよね〜。自分の状態はよくても不利な枠引いちゃったりとか、海外から戻ったばかりで体調管理が甘かったとか、敗因は言い出したらキリがないですが」
きちんと飲み込んでから話す所に育ちの良さを感じつつ、オペラオーとドトウは黒髪重賞ウマ娘の話に耳を傾ける。
「応援してくれるファンのみんなはたくさんいて、お陰で今年もグランプリレースに出られることになったんですけど、そろそろマジで結果出さないとただの口だけウマ娘だし、みんな愛想尽かしちゃう気がしてて〜…」
「いいや、それは違う!」
納得する結果を出していない自分はいつか見限られてしまうかもしれない。そんな不安を吐露するそのウマ娘に向け、オペラオーは腹の底から力強く叫んだ。
「ボクと同じ時を彩った仲間も、かつて同じ理由で悩んでいた。太陽のようなウマ娘なのに、その輝きはどんどん曇り、あわや天の岩屋伝説の再来か、というところまで沈んでしまった」
「…」
「けれど『他ならぬ自分だから皆が応援してくれる』ということに気づいた彼女は、時間はかかったがその輝きを取り戻し、ボクも霞むかと思う程眩しい存在になった」
「…え〜っと?」
「キミのファンだって同じさ。栄えある重賞ウマ娘だからじゃない、キミがキミだからこそついてきてくれているのさ!」
黒髪のウマ娘は、ハッとしたような面持ちで目の前の仰々しく語るウマ娘を見つめる。
「そしてその中に、今日からボクたち二人も加えさせてもらいたい。まずは名前と、その大事なレースについて教えてくれないか?キミの舞台を目に焼き付けておきたいんだ」
「あ、はい、え〜と…」
こうしてそれぞれ自己紹介をしたあと、今度こそ過酷な自主トレは終わることになった - 129二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 20:43:30
「たまにサボりたくなっちゃうわたしなんかより、あの子はずっと頑張り屋さんです。全部乗せのお好み焼きにデザートまでついちゃうような、最高においしい思いをさせてあげて下さい。むにゃむにゃ…」
「いよいよ一肌脱いでやるときが来たな!ゴルシちゃんパワー注ッ入ッッ!」
来るグランプリ当日。黒髪の彼女のファンクラブにはヒシミラクルとゴールドシップが加わっていた。プールや各種呼び出しから逃げる過程であの黒髪の彼女をしょっちゅう見かけていたようで、気にはなっていたらしい。
「お前も念送るの手伝え」
「ええっ、わ、私ですかぁ!?」
「大は小を兼ねるって言うし、多くて損はないんだよ!今から手本見せるから、ゴルシちゃんから目を離すなよ〜」
「は、はいぃ…」
右隣で神に祈るヒシミラクルをよそに、左隣のドトウを巻き込んで、かの有名な体内エネルギーを一気に撃ち出す時のポーズをするゴルシ。
この人頭もいいしキレイなのになんでこうなんだろうな…と思いつつ、ドトウはゲートインを見守る。
「さあ、幕開けだ」
オペラオーがそう呟くのを待っていたかのようにファンファーレが鳴り響き、そしてゲートが開いた。
「…あー惜しいなー!5着かー!念が足りてなかったのか!?」
「神様のいけず〜。理科の先生〜」
「でもでも、あの状況で掲示板に入ったのは立派なことだと思いますぅ…!」
思い思いに落ち込む芦毛の二人をなだめつつ、ドトウは黒髪のウマ娘のレース運びを分析する。
「ドトウの言うとおりさ、彼女は素晴らしい舞台を観せてくれた。落ち込むのはそこまでにして、今は彼女を讃えようじゃないか!」
オペラオーの号令に賛同するかのように、先程まで落ち込んでいた芦毛の二人がドトウとともに立ち上がり、掲示板入りを果たした彼女に拍手を送る。
「この世界は嵐の中だ。しかしキミなら乗り越えられる。まだ見ぬ世界が、栄光が、キミを待っているよ、学園のアリーテ姫」
ロマンチックに語るオペラオーの目線の先では、あの黒髪のウマ娘がはにかみながら手を振っていた。 - 130127~12923/06/27(火) 20:44:48
※現役馬です
※最大のヒントはミラ子とゴルシかもしれない
※RTTTについては劇場で応援上映してくれないかなと思ってます - 131二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 21:03:15
- 132二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 21:16:22
- 133二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 21:19:33
僅差で逃したクラシック、写真判定で敗れた天皇賞、前壁に泣いた有馬記念。
そういう星のもとに生まれてしまったのかと自分の運命を呪った。
それでも、自分は諦められない。みんなのために、大レースを勝つこと。だから私は今日もゲートに入り、ターフを駆ける。
思い出すなぁ。初めて生のレースを見たのは、9年前のこの日だったっけ。あの大雨の中、泥まみれになって駆け抜けたあのウマ娘みたいに、みんなから応援されるようなウマ娘になりたい。そうなれるように、ひたむきに頑張ってきた結果がこれだよ。あの人と違って重バ場は苦手なのに、未だに無冠ってところ、そっくりじゃないか。
おっと、最後の娘が入ったな。
ガコンッ! - 134二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 21:20:18
始まったか、さてまずは…いかにもハイペースになりそうな展開だから中団前目につけよう。
予想通りペースは流れて、かと思えば一周目のホームストレッチでは極端に遅くなって…随分ヘタクソな逃げ方だな。いや、前の3人でハナの奪い合いをしているのか。んで、後ろに2人、そこから7バ身離れて私がいる。
向こう正面から上り坂にかかるところで、1人が垂れてきた。ここだな、位置を上げて前との差を詰めに行こう…おっと、まだ下り坂があったな。
ここで一首、『長距離の淀のレースの正念場三角の坂如何で下らむ』
下り終わる頃にはもう1人垂れて、前の3人との差も殆どなくなってきた。直線を向く頃には2人垂れて、最後は叩き合いに持ち込む間もなくかわして1人先頭に立った。
後は足を伸ばす差し追い込み勢の追撃を凌がなければならない…とはいえ唯一来たのはグランプリウマ娘サマただ1人だけ!迫ってくるアイツに、有馬の借りを返す時が来た!そしてその後ろは5バ身くらい離れている!
一騎打ちだ!ダービーで!秋の天皇賞で!私が負けた一騎打ちの展開だ!だけど…今日は大丈夫だ!ゴール直前大体100m、まだリードは2バ身ほどあるはずだから!
そしてアイツよりも、私が一足先に、憧れのゴールに飛び込んだ!
そして結果が確定して…ついに…ついに無冠を返上してやった…!やったぞ!私が天皇賞の覇者なんだ!やっと実力を証明できたんだ! - 135二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 21:24:35
グレード制より前の𓃗です
ヒントは『無冠の貴公子に春が訪れてから9年目、無冠のプリンスにも春が訪れました』 - 136二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 23:11:00
モンテプリンス!!?
- 137二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 23:15:24
このレスは削除されています
- 138127〜12923/06/27(火) 23:30:21
モーイ◎
今年の宝塚記念の馬番がミラ子(2003)、ゴルシ(2013)と同じだったことから二人を出し、艶のある黒髪で魅惑のこしあんボディーを表現しました。
あとなんとなく一人称がぼくのイメージでした。
オペラオーとドトウは主戦の和田騎手が宝塚記念前にドットさんに会いに行った繋がりです
あとオペラオー語ってめちゃくちゃ書き手の教養が試されるなと思いました。一番しんどかったです
- 139二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 23:47:13
私は小さい頃から、男みたいだよねと言われていた。
身体つきが生まれながらがっしりしていて、女性らしい柔らかさに乏しい。
それに同世代と比べて成長が早かったため、名前も相まって良く男子にイジられた。
私が海外からの留学生だったことも、それに拍車をかけていたのだろう。
一時期は、こんな身体に産んだ両親を、恨んでしまったこともある。
まあ、トレセン学園に入学してから、全く気にならなくなったけども。
イジってくるような相手がいないのもそうだが、まああまりにも皆個性豊か過ぎる。
殿下と会った時は腰が抜けるかと思った、なんでいるのあの人。
……それはともかく、今はむしろ健康に産んでくれた両親に感謝している。
あの時言ってしまった謝罪も込めて、G1の勲章を、両親に贈りたい。
そう考えているのだけど。
「手に届きそうで、届かない」
虚空に、手を伸ばす。
思い出すのは去年のマイルCSと今年の安田記念。
笑いながら前を駆ける背中と、風のように吹き抜ける背中。
前年の覇者たるウマ娘達に、私の手は、脚は、届くことがなかった。
自分で言うのもアレだけれど、私はかなり安定した成績を収めている。
過去のレースでは一度を覗いて、全て連対。
その一度だって直前の怪我が完治できなくて、無理矢理走った結果だ。
でも、それでも、G1の勲章には届かない。
安定だけでは足りない、あの二人のような、爆発力が必要なのだろう。
何か、何か私にもないのか、あの子達にも負けない何かが。
「はい、一人で悩まない。君の悪い癖だよ」 - 140二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 23:47:27
ぽんと、突然頭に手を置かれる。
見れば困ったような笑みをこちらに向ける、トレーナーの姿。
もう、シニアのウマ娘なのに、まだ子ども扱いだ。
そのことが嬉しいような、悔しいような、複雑な気分になりながら手をどけた。
「連続で惜敗を繰り返せば、悩みもしますよ……」
「でも良い走りだったよ、大丈夫、君の強さは皆認めてるさ」
それは、わかっている。
ファンの人達は、私を何度も一番人気に推してくれていた。
だからこそ、その期待に応えられない自分が情けなくて、悔しくて。
気づけば目頭が熱くなって、握り締めた拳にポタポタと雫が落ちてきた。
そんな私の頭を、彼は優しく撫でる。
何度も繰り返して、私の心に大きな落ち着きが現れるまで、やめない。
「気楽に行こうよ、手堅い王道の走りこそが、君の武器なんだから」
「…………でも、私は、勝ちたいんです」
「うん、俺も君と勝ちたい。だからこそ、一人で考えないで欲しい、俺は君のトレーナーなんだから」
その言葉にハッとする。
気づけば私は、自分一人の力で勝利をつかみ取ろうとしていた。
ずっと私のことを支えてくれていた、トレーナーさんがいたのにも関わらず。
初めての重賞制覇を、自分のことのように喜んでくれた彼の笑顔。
怪我を隠して出走した時、気づかなかったことを謝罪しながら怒ってくれた彼の姿。
すり抜けていったG1レースの後、私を励ましながら、強く握り締められた彼の拳。
────トレーナーとウマ娘はお互いに吸収し合うのが最高の関係なんだ。
契約したばかりの頃、トレーナーさんが言ったこと。
悔しさで視界が狭まって、いつの間にか忘れてしまっていた。
私は頭を撫でてくれている彼の右手を両手で降ろして、ぎゅっと握り締める。 - 141二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 23:47:44
「……ごめんなさい、私は、私を見失ってたみたいです」
「気にしないで、俺ももっと早くに声をかけてあげるべきだった」
「ふふっ、じゃあ二人で反省しましょうか、なんたってトレーナーとウマ娘は」
「お互いに吸収し合うのが、最高の関係だからね」
そう言って、二人で笑ってしまう。
うん、もう大丈夫。
私には応援してくれる人、期待してくれる人、そして支えてくれる人がいることを思い出したから。
心はとても晴れやかになって、頭はすっきり軽やか、全身には力がみなぎってくる。
もう私は落ち込まない、後悔しない、自分を曲げない────絶対に負けない。
手の届きそうで届かなかった勲章を、必ず掴んで見せるのだから。
「……そういえば聞きたかったんですけど、なんで私をスカウトしてくれたんですか?」
ふと、気になった一つの疑問。
デビュー前の私はそこまで期待されておらず、声をかけてくれたのは彼だけだった。
模擬レースだって他の子の方に注目が集まってたし、何でなのだろう。
「……ダンプカーのようにどっしりとした良い走りだったから」
「……それ女の子に対する褒め言葉ですか?」
「いや、まあ、その、誤解をしないで欲しいんだけど」
走りが良かったのは大前提として、と前置きを置くトレーナーさん。
彼は少し恥ずかしそうに目を逸らして、言葉を紡いだ、
「君が名前と同じで愛らしいウマ娘だったから、つい目で追っちゃってね」
「…………ばか」
ぺしん、と軽く尻尾でトレーナーさんをはたいて、私は顔を背ける。
……赤くなった顔を、見られたくなかったから。 - 142二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 23:48:09
引退馬です
- 143二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 23:48:10
良スレを見つけたので投下。一応G1勝ってる馬だけどG2レースをチョイスしました。わかる人ならわかる
「桜が…満開だな」
「どしたの、トレーナー」
何時にもましてしんみりしたトレーナーに疑問を抱きながらも、そのウマ娘は身支度をする。レース前でも彼女はしっかり、髪型を整えていた。ピンと張った体に整えられた髪、ずっと前を見据えるその瞳は、今までの彼女とは別人のようだった。
「本当はな、俺はお前を日経賞に出すのが怖かった。去年はそこでケガをしたんだ、もう痛い目には合わせたくなかった」
申し訳なさそうな顔をしたトレーナーは、ずっと昔のことを思い出すかのような目でぽつぽつと語り出した。それを見つめる彼女は、同情する訳でもなく、かといって怒る様子でもなく、ただじっとトレーナーの顔を見つめていた。
「っ!!」
「なんだ…悪寒か…?」
その時、別の場所で準備をしていた黄色と黒の勝負服をきたウマ娘は、異様な殺意のような冷ややかさに身震いをしていた。
「大丈夫だ…あいつは有馬記念で負かした…負けるわけがない…天皇賞に出るために、勝つしかないんだ」
そう自分に言い聞かせ、そのウマ娘はレースへと向かうーーー
「大丈夫だよ、アタシはもう、失うものなんて何一つないんだから」
「あの人と同じ3200mの天皇賞の舞台に立つ、その為ならアタシ、何だってする」
「皐月賞以上のパフォーマンスを見せてあげるんだから」 - 144133-423/06/28(水) 06:30:06
正解よ
- 14513923/06/28(水) 17:07:23
連対じゃなくて複勝圏内の間違いですね……
- 146二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 17:08:53
「え〜本当にオーストラリア行っちゃう感じじゃん、寂しくなっちゃう」
「あとでコアラの写真送って!」
旅行雑誌から分厚い人文学書まで、オーストラリアのことが記載されたありとあらゆるジャンルの本とにらめっこするあたしに、クラスメイトが話しかけてくる。
「行く行かないは関係なく、あんなふうに言われたらちょっとは調べるっしょ」
なお騒ぐクラスメイトをよそに、あたしページをめくる。当然だけど、旅行雑誌はなんの参考にもなりそうにない。
―君は最高のウマ娘だ!ぜひ自分の故郷で走って欲しい!きっと胸が踊るようなレースができる!
短期間の出向という形でオーストラリアのトレセン学園からやってきたそのトレーナーの心にあたしの何が刺さったのか、事あるごとに英語でそう話しかけられるようになった。
G1に手は届かないまでも中長距離のレースで結果は出せている。けれど彼はきっと、あたしの黒歴史を知らないからあんな歯が浮くような台詞が吐けるのだ。
初めてのG1、あたしはゲートを出た瞬間盛大に躓いた。その後背面跳びでラチを飛び越えるまでの記憶がないから、たぶん頭が真っ白だったんだろう。情けないやら恥ずかしいやらでしばらく起き上がれなかった。
それが原因なのかどうかは不明だけど、程なくしてケガも見つかった。色んな意味で終わったわ、とふて寝する日々がしばらく続いた。 - 147二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 17:09:37
彼との出会いは復帰戦になる冬の長距離レースに向けて調整する最中だった。出向後はしばらく色々なチームのサブトレーナーとしてウマ娘を指導することになるらしく、当然あたしがいるチームにも来た。
結果として彼のアドバイスはかなり役立ち、あたしは最高の走りができた。別のチームに行ってからも何かとあたしを気にかけてはいるようだったが、ついに件の台詞である。あたしはそれはもうめちゃくちゃ困惑した。
「それでも海外で本格活動ってだけで、一段上のウマ娘になれる気がするじゃん」
「なにより向こうのイケメントレーナー直々のスカウトだもんね〜」
「…お別れみたいな空気感出してるけどあたしまだ何も返事してないからね!?ってか顔の話ならあたしのチームのトレーナーだってイケメンだから!何もかもが不満ですみたいに見えるだけで!」
おいしいコーヒーも淹れてくれるし!と叫びながら、あたしは今度は図書館で借りた『世界のレース史』という本に手を伸ばす。それによればオーストラリアは短距離レースが多いが、一番人気があって盛り上がるのは長距離レースだという。
今までは海外なんて日本に敵がいなくなった奴がより強い奴に会うために行く場所で、縁なんかないと思っていたが、そこまで太鼓判押すなら…と、その気もちょっとだけ湧くのだった。
住めるレベルの英語力は、全くないけれど。
最初にもうほぼ答え書いてあるので、ノーヒントで - 148二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 23:37:21
「大寒桜を散らしながらの4コーナーから18人!最後の直線だ!!」
電撃6ハロンの最後の力比べ。自分の前を走るウマ娘たちが蹴り上げる泥が私の顔を、勝負服を汚していくが全く気にならなかった。皆んなやっぱり強い。だけど私にだって負けられない理由がある。
以前、トレーナーへのインタビュー記事を見つけた。何気なくそれが載った新聞を取り、目を通した瞬間に私の目に焼きついたのは
『彼女となら、きっとG1にも手が届くと思います』
そう言い切ったトレーナーの言葉。知らなかった、そんな風に思っていたなんて。
トレーナーは天才じゃない。何度も葛藤してる姿も、人一倍の努力を重ねる姿も見てきた。不器用でも諦めない、一つ一つを積み重ね担当ウマ娘に向き合うような人なんだ。
だからこそ、どうしても彼と一緒に勝ちたかった。
もうバ群を怖がる『私たち』じゃない。彼と一緒に磨き上げたこの末脚に全てを賭け、内を突いて一気に踏み込む。隣を走る子の息遣いさえもはっきりと聞こえる中、縺れるようにゴールに飛び込んだ。
膝に手を付き息を整えていると場内に拍手が沸き起こる。掲示板を見上げれば、1着の横には私の番号が光っていた。
ぱっと振り返ってトレーナーのいる方を見るともう顔を拭っている。これからウイニングライブもあるのに早いなあ、なんて思っていたその時ー
「自分の担当ウマ娘が勝ったんだ!もっと喜べ〜!!」
野次というには温かすぎるその声が聞こえたのかトレーナーは大きく片手を上げる。顔は涙でぐちゃぐちゃになっているし、ガッツポーズはへろへろ。それでも、今までのどんな時よりもトレーナーは格好良く見えた。そうか……やっと……
「自身のトレーナーさんにとってG1初勝利になりましたが、それについていかがですか?」
「こんな大きな舞台で恩返しできたと思うと、とても幸せです」
かなり簡単だと思うのでノーヒントで - 149二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 05:51:47
- 150二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 06:06:35
- 151146、14723/06/29(木) 07:55:18
正解です◎
実はウマ娘化した場合の設定を考えるスレの159でシルヴィー書いた者です
「大人しく見えるけどやんちゃ」というところから、一見マジメそうだけど喋ったら割とギャル寄りの感じをイメージしました
ちなみにクラスメイトに特にモデルはいません
もしもあの競走馬が公式ウマ娘化されたら|あにまん掲示板容姿、性格、絡みそうなキャラ、ストーリー、起こるイベント、目標レースetc...それらを想像して楽しむスレ。妄想・予想、なんでもどうぞ。以下は、スレ主の考えるエリモジョージ。・タキオン、ゴルシに引けを…bbs.animanch.com - 152二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 10:13:34
- 153二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 10:19:01
- 154二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 11:51:19
今までに何人ものトレーナーさんの指導を受けた。だけど、中々これぞという人には出会えないまま季節は巡り、気がつけば秋のレースが始まっていた。
新しい私のトレーナーさんは、過去にトリプルティアラを達成したウマ娘や当時のダートG1最多勝利記録を持つウマ娘を担当したことがあるすごい人だった。
「トレーナーさん、次のレースって」
「うん、エリザベス女王杯」
「えっ」
普段と変わらない、穏やかな微笑みを崩さずに彼はそう言った。
この間3勝クラスを勝ったばかりの私がG1の舞台に?重賞ですら勝ち星を挙げられていない私にとって、それは果てしなく遠いものに思えた。
「どうしよう……」
布団の中でころりと寝返りを打つ。私の独り言が虚しく残った。同室だったあの子も、G1の直前に故障で引退してしまった。
『良か?大事なんな自分ば信ずること、それからトレーナーさんば信ずることと。ウマ娘とトレーナーさんの間には不思議なキズナの力があるって言うばい?うちはずっと応援しとるから!!』
ふと思い出したのはあの子の言葉と交わした指切り。そうだ、弱気になってちゃダメ。パシっと自分の頬を叩いて気合いを入れる。阪神レース場は私の得意な舞台。それにこのレースが何かに繋がっているのかもしれない。
掴み取ったこの好機をものにできるかどうかはきっと私次第、だけどやってみせる。
クラシック戦線でティアラを戴くことはできなかった。だけどこの女王の座は譲れない。
「麗しく火花を散らす、秋の女王決定戦です!さあ、ゲートイン完了!」
運命とは、ただ巡り合わせを待つことじゃない。チャンスを手繰り寄せることなんだ。 - 155二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 15:23:55
- 156二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 17:06:44
「私、シンデレラが……大好きなんです。あの、童話の……」
「結構前に話したと思いますけれど……やっぱり大切なレースの前ですから、伝えたくて」
レース前の最終調整が終わったあとに、そう言った。一世一代の頼み事だった。
グリム童話から書店で発売されているものまで、古今東西のシンデレラストーリーを一夜で網羅した代償は大きかった。
「ほんと、うはっ……もっとあとで言わなきゃって思ってたんですけど……ごめんなさい!」
読み切ったあとの妙な達成感はあったのだが、同時に疲労もピークに達していた。当然その分思考力も低下しているし、勢いも余ってそう告白してしまった。
小さい頃から、ずっと憧れてて。私が似合うような物語じゃないかもしれないけれど。絵本にビデオ、アニメに実写映画、何回読んだか、何回見たかも分からないくらいだった。フジさんに絵本をプレゼントしてもらったことも覚えている。どんなお話でも、どんな映像でも、私の見るシンデレラはすっごくキラキラしていて、綺麗で。 - 157二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 17:07:33
シンデレラみたいにキラキラできるのは、同期のトリプルティアラウマ娘やヴィクトリアマイルを連覇したウマ娘みたいな強い人だけで。だから私なんかじゃ無理だって分かってるんだけど……。でも、どうしても夢を見るのは諦められない。
「私、シンデレラが魔法をかけられる瞬間が好きで。えっと、ガラスの靴を履いて王子様に会いに行くところとか、舞踏会で踊るシーンとか、本当にドキドキして……」
ねずみのウマ娘に、ウマ娘の護衛、大きなかぼちゃのバ車は、私の元には来なかったけれど、ずっと大きな舞台で走る彼女たちに憧れていた。今はまだ遠いけれど、夢は見ていればきっと叶うはずだから。
シンデレラみたいに紆余曲折の果てに掴んだ栄光なんて無くても、夢を見るのは誰にも止められない。
「私を今でもこうして走らせてくれているのは本当にありがとうございます。私は……こんな風に走っていいのかなって何度も思ったりしました」
いつもG1戦線を彩るのはクラシック級やシニア級一年目だったり二年目だったり、とにかく最初からキラキラしているような娘たちばかりだ。大きなタイトルを手にしていなくて、まだ現役を続けている娘は殆ど衰えつつもなんとかレースに出続けているという状態だけれど、あと少しで夢が叶いそうなところで引退……ということも少なくはない。
だけれど、シンデレラみたいに、同期の皆みたいに、一瞬でもキラキラしたいから12時の鐘が鳴るまで、私は走り続けるだけ。
「……だから、お願いします。私に魔法をかけてください。ずっと解けないような素敵な魔法を」 - 158二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 20:59:30
ストレイトガール!
- 159二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 01:53:29
「『最強の短距離ウマ娘』は誰だと思う?」
………まーこの質問は荒れるよね、ゴメン!
そうだよね、「最強」の定義ってヒトによって全然違うもん。
いっぱい勝ったウマ娘が最強か、少ないレース数でも無敗のウマ娘が最強か、勝利数こそ少なくてもGⅠいっぱい勝ってるウマ娘に勝ったウマ娘が最強か………
でもね、「最強」は無理でも「最速」なら決まってるよ。
数字ってね、どんなに頑張っても覆せないものなんだ。レースにおける数字は何個かあるけど、アタシの「数字」は「タイム」。この脚で叩き出した、まだ誰も破れていないタイム。芝1000m、コーナーも何もない一直線のコース。53.7秒の一瞬。この脚には1200mすら長い。でも、この脚にはあの名刀すら届かない。
「___行ってしまうぞ行ってしまうぞ!!」
___そうだよ、ちょっとでも油断したら、もうアタシには届かないんだよ。この1200mを制するのはこのアタシ。そして、「最速のウマ娘」もアタシ。今回は影さえも踏ませてあげない………スズカ先パイじゃないけどね。
「___あはっ!やっぱり走るの楽しいー!!」
だから、アタシから目を離さないでね。
ちょっとでも離したらどこかに行っちゃうから。
1分8.9秒の小さな逃走劇、魅せてあげる。 - 160二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 01:57:50
- 1611/223/06/30(金) 02:51:18
いつものようにトレーナー室に入ると、そこには見慣れない物体があった。
「うわっ!?何だこれ?!」
「ヨギボーの先輩にもらった〜」
その物体──特大サイズのクッションの上で大の字になった『彼女』が、気の抜けた声で答える。ヨギボーの先輩というのは、よく『彼女』の並走に付き合ってくれる少々風変わりなウマ娘のことだ。
「そ、そっか……。良かったな……」
とりあえず、そう言っておく。
「んあ、エピちゃん先輩には内緒ね〜。張り合おうとして変なモノ寄越してきそうだし〜」
(やっぱり声に力が無いな。何かあったのだろうか……?)
『彼女』は昨年秋に脚を故障し、現在は休養中の身。徐々に快方に向かっておりトレーニングも再開したが、まだリハビリも兼ねた軽めのメニューを中心としている。だからどうしても身構えてしまうし、些細な変化も見過ごせない。
しかしそんな大事な時期だからこそ、『彼女』のメンタル面にも細心の注意を払う必要がある。そう思って慎重に、適切な言葉を探していると──。
「……ねぇ、トレーナーならもちろん全部見てるよね?この前のドバイワールドカップデーのレース」
暫くの沈黙の後、『彼女』はポツリと言葉を漏らした。
「なんか、遠く感じちゃったんだ。あの子のことも、姉御のことも。これまで以上に、すっごく遠く……」
"あの子"は『彼女』と同じレースでメイクデビューし、その後クラシック級の間に盾の栄誉を手にして世代のエースとなった同期。
"姉御"は『彼女』と同郷で幼馴染みだという、この数ヶ月で一気にダート界の頂点まで上り詰めた先輩。
いずれも先日、ドバイのGⅠで栄光を掴んだ者達だ。 - 1622/223/06/30(金) 02:52:13
「メイクデビューの時に見せられたあの子の背中には、まだ追い付けそうにないどころか更に差を着けられてる。姉御もダートを走り出した途端にみんなを追い抜いて、誰も届かない所まで行っちゃった」
『彼女』が寂しそうに語るのを、ただ黙って聞いている。
「ま、自己管理もロクに出来なくてケガするようなあたしがあの人達に追い付こうなんて、おこがましい話だけど……。でもさ、自業自得なのは分かってるけどさ……それでもやっぱ、ゲートに入ることすら出来ないのはつらい。そのせいであたしだけ置いてけぼりになってる気がして怖い。こんなにしんどいなら、いっそ辞めようかな?とか考えたりして……」
これまでも思うように走れないもどかしさを吐露することはあったが、辞めたいと言ったことは一度も無かった。だからその発言には驚き、戸惑い、『彼女』に掛けようと思っていた言葉はつい飲み込んでしまった。すると──。
「でも、あたしは辞めない。レースを引退して進学することになった親戚と約束したから」
そう言いながら『彼女』はスッと飛び起きた。親戚というのはおそらく、先日引退を表明した尾花栗毛のオープンウマ娘のことだろう。
「その親戚が引退するの、実は事前に教えてもらってたんだ。そしたらその時『アンタはまだ辞めないで』って頼まれちゃって。あの時のあの人、珍しく真剣な瞳でまっすぐにあたしを見つめてきてさ……だから、分かったって言うしかなかった」
『彼女』の口からそんな話が聞けたのは意外だった。そして何だか、それがとても嬉しかった。
「だったらまずは、万全の状態で復帰しなきゃでしょ?"日本代表"達には届かなくても、せめてティアラ路線のみんなに借りを返して、ジュニア級女王の意地を見せるくらいはしないとね?」
「……ああ、そうだな!」
気づけばすっかり調子が戻った様子の『彼女』を見て、こちらも平常心を取り戻す。
「てなワケで今日もトレーニングじゃイェェェイ!!」
「あかんあかん待って待って落ち着いて!落ち着いて行こう!な?!」
威勢よくトレーナー室を飛び出した『彼女』が無茶をしないよう、慌てて後を追った。 - 163二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 08:54:25
- 16415923/06/30(金) 10:32:52
カルストンライトオ正解!
- 165二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 10:37:06
アカイイト正解です◎
- 166二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 11:17:32
- 167二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 16:28:26
なかなか答えが出なさそうなのでヒント。80年代
- 168二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 16:33:39
- 169二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 18:34:10
YES、正解
- 170161/16223/07/01(土) 04:38:02