わ…私は…Part2

  • 1二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:11:46
  • 2二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:15:00

    立て乙

  • 3二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:16:59

    建て乙
    星歌さんは一体どうしたんだ...

  • 4二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:19:39


    スレ画が虹夏ちゃんに変わってスレタイの言葉も虹夏ちゃんのっぽくなってるのなんかめっちゃいいな

  • 5二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:19:59

    立て乙
    真実は何処にあるのだろうか

  • 6二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:21:38

    そして物語はスレ主も知らない結末へ・・・

  • 7二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:27:53

    星ゅ

  • 8二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:32:28

    おつ

  • 9二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:32:40

    保守

  • 10二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:33:02

    うぽつ

  • 11二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 19:46:41

    >>1

    前スレの流れ


    ぼっちちゃんが虹夏ちゃんの姉を自称し始める

    これはやばいと思った喜多ちゃんが虹夏ちゃんを呼ぶ

    ぼっちちゃんに姉だと思い込む催眠をかけた犯人である虹夏ちゃんが喜多ちゃんにも同じ催眠をかける

    その勢いで山田にも催眠をかけようとして山田を呼ぶ

    山田は話せばわかってくれるかもしれないと思い直して事情を話すことにする虹夏ちゃん

    決裂して山田に催眠を試みるが失敗して失敗した場合の条件として山田の話を聞くことに

    やりとりから虹夏ちゃんも催眠下にあることが判明する

    虹夏ちゃんの状態から推理して真犯人は星歌さん説が浮かび上がってくる

    虹夏ちゃんは星歌さんに関することを認識できないので星歌さんの痕跡を求めて伊地知家へ

    星歌さんの痕跡は何もなかった

    星歌さんは事故ではなく故意に姿を消した?←イマココ

  • 12二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:01:24

    前スレにもあったけど山田って探偵役合うね

  • 13二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:07:28

    こっからどう展開していくだろう
    めちゃくちゃたのしみだわ

  • 14二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:09:47

    シンプルに読み物として面白くてびっくりしてる

  • 15二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:28:38

    意図的に痕跡が消されていることは、もう否定のしようがない。

    もしかしたら私も既に催眠で痕跡に気付けないように認識を阻害されてる可能性もあるかもしれないと、一瞬思ったけれど…それなら、私がこうして店長について様々な言及が出来ていることはおかしいから、それはないのだろう。


    となると……やっぱり手詰まりなのだろうか。


    (いや…まだそうとは限らない)


    私もざっと探しただけだから、まだ見つけられてないだけで…どこかに店長自身が消し損ねた痕跡があったりするかもしれない。

    そう思い、虹夏から家内の細かな探索の許可を得ようと試みる。


    「虹夏、ちょっと家の中細かく捜させて」


    「いいけど、お金なんて出てこないからね」


    ……ちょっと私に対する認識についての抗議をしようかとも思ったが、せっかくあっさりと許可を貰えたので、くまなく探索させて貰うことを優先とした。


    それから細かく、入念に、執念深く探索を続けて……


    そして────


    dice1d3=1 (1)

    1.ひとつだけ…痕跡を見つけることが出来た。

    2.その苦労が実ることはなく…やはり、この家から痕跡を見つけ出すことは出来ずに終わった。

    3.何ひとつ痕跡を見つけることが出来ず諦めかけたその時、虹夏が何かを見つめていることに気が付いた。

  • 16二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:31:12

    お!?

  • 17二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:31:19

    痕跡見つけられてよかった
    苦戦したってことは虹夏ヒストリーもなくなってそうなんだよな…つら

  • 18スレ主23/06/26(月) 20:36:09

    >>11

    まとめありがとうございます!そっかそういうのもすべきだった

    これでスレ主にも結末分からないってマジですか?

  • 19二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 20:55:01

    ダイスだけでここまで来てるからな こんな面白くなるとは

  • 20二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:08:15

    正直言って、半ば諦めての探索だった。
    仮に店長の私物などを見つけたとしても、それを虹夏が『お姉ちゃんの私物』だと認識出来る保証など、どこにもないわけで。

    催眠による認識阻害で、いやそれ私のだよ!とでも言われれば、それで全てが片付けられてしまう可能性もあるのだから。

    だから、見つけるなら『明確』な痕跡──証拠である必要があった。そんなものを…消えてしまった店長が残しておいてくれるものだろうか。

    例えば、催眠の際にそう命令でもしたのか……虹夏のスマホにも、店長の写真は残っていない。
    仮に残っていたとしても、はっきりと二人が姉妹だと分かる写真でない限り、催眠に認識を阻害されてしまう可能性は高い気がするけれど。

    そういうこともあり、重ねて言うことになるが、やはり見つけるなら、『虹夏と店長は姉妹だということが明確』な証拠である必要があったのだ。

  • 21二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:17:25

    本当に、いい加減諦めつつあった。

    そんな気持ちの中で『それ』に辿り着けたのは、店長が虹夏の私物も含めて自分の痕跡を完全に消していることに対して──私が虹夏の部屋に勝手に置かせて貰っている私物類には、まるで手がつけられていないことに気付けたからだ。

    店長が興味を抱くような物もないから、ここは探るまでもないと思われていたのかもしれない。

    ともあれ…だから私は、ここで『店長や虹夏ではなく、私が隠し持っている伊地知姉妹の痕跡』の可能性に辿り着けた。

    そして──『それ』を見つけた。
    私がひょんなことから虹夏に見せて貰って、そのまま間違えて私の漫画棚に紛れ込ませてしまっていた…収録内容が家族写真に絞られた『ミニアルバム』。

    収録されているものと同じような写真を、虹夏は家のあちこちにも飾っていた。
    ある写真は壁に吊り下げるようにしてあったり、またある写真はリビングや自室に置く写真立てに入れられていたり…本当に様々な形で。

    もしかしたら結果的にそれが、目くらましにも似た効果を担ってくれていたのか。
    或いは、目に見える多くの写真を処分し尽くして満足してしまったのか──はたまた、店長自身…写真を処分し続けることにより生ずる心の痛みに耐えられなくなったのか。

    明確な理由は……今ある材料からでは、流石に推理しきれないけれど。

    ただひとつ、結果として…『それ』が家のどこかにあったはずだということを──店長は失念していた。

    そして、私が『それ』を見つけた。

    私は──『ミニアルバム』を、虹夏に手渡した。

  • 22二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:19:17

    写真があれば…さすがに少しは

  • 23二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:20:18

    お願いだ…店長…戻って来てくれ……

  • 24二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:21:12

    いいんじゃないか!?

  • 25二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:22:26

    これでだめなら詰み状態だが…
    頼む

  • 26二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 22:29:06

    虹夏ちゃん部屋の山田ゾーン使う発想がすごい

  • 27二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 23:32:03

    「あっこれ……」

    虹夏が私に手渡されたものを受け取って、そう言葉を漏らした。
    けれど恐らく、催眠による認識阻害で、これが何かまでは──

    「私の『家族』の『ミニアルバム』でしょ!どこいったかと思ってたんだー!良かったぁ…」

    (────…………っ!?)

    虹夏が…この『ミニアルバム』を『家族』に関するものだと認識している…!

    (いや…そうか……)

    これは……この『ミニアルバム』を『お姉ちゃん』に関するものではなく、あくまで『家族』に関するものだと認識しているから……!
    つまり、催眠の──盲点。
    つまり、認識阻害の──ウィークポイント。

    (やっと見つけた…これはもしかしたら、唯一と言えるかもしれない…催眠の突破口だ…)

    だから、

    「……うん、そうだよ。確認の為に、一応中も見てみて」

    私は何食わぬ顔で、これが『家族』に関するものであることを肯定した上で、中までしっかりと目を通すように促した。

    果たして虹夏は、

    「言われなくても!うわーほんと見つかって…良、かっ………………」

    『ミニアルバム』を捲り始めて──すぐにぴたりと、動きを止めた。

  • 28二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 23:36:41

    アルバムには何が写っていたんだ?

  • 29二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 23:38:52

    >>21に書いてあるよ

  • 30二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 23:47:45

    頼む頼む…

  • 31二次元好きの匿名さん23/06/26(月) 23:53:31

    「………………」


    (……………………)


    「…………………………」


    (……………………お願い……)


    私は、黙り込む虹夏を見て、もはや祈ることしか出来なかった。


    嫌な想像が幾つも頭をよぎる。無駄かもしれない。虹夏の中の何かを、現状よりも……悪化させてしまうかもしれない。


    それでも……もしかしたら、もしかしたら。


    それから。


    どれほど時間が経過したか。


    ついに、虹夏が──


    dice1d2=2 (2)

    1.消え入るほど小さな声で「…お姉、ちゃん……?」と呟いた。

    2.無言でページを捲りながら…涙を流し始めた。

  • 32二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 00:00:36

    こんなに何かに祈る気持ちになったの初めてかもしれない

  • 33二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 00:02:39

    めっちゃ引き込まれる

  • 34二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 01:10:02

    「……っ!!にじ──」

    「わかんない……」

    驚いた私が何かを言い切る前に、虹夏がそう言った。

    「──わかん、ない…っぐ……わかんない、わかんない……」

    『ミニアルバム』を捲りながら、泣きながら、泣きながら……そう繰り返した。

    「わかんない…ぐすっ……全然、わかんない…………」

    そう、繰り返して──

    「わかん、ない………ひっぐ…けど………………」

    繰り返して、きっと、頭の中でも、繰り返し繰り返し、何かの問答を、繰り返して──

    「………ぜんぜっしらなっ…えぐっ……はずだし…………わかんない……けど……」

    繰り返して、そして────

    「………………わたし……『この人』に…………逢いたい……」

    そう、言ったのだった。
    崩れ落ちて、その場にへたり込みながら。
    手をつく姿勢で、床に押しつけられて広がる形になった『ミニアルバム』──そのページの中にある『ひとつの写真』を、零れ落ちる……涙の跡で、示しながら。
    小さな虹夏と共に写る、私の見慣れた容姿よりも、幾分若い……『あの人』の姿を、示しながら。

    『店長』を──『伊地知星歌』を、示しながら。

  • 35二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 01:18:20

    あかん泣きそう

  • 36二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 01:25:39

    深夜にこれはずるいて・・・

  • 37二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 04:40:27

    あのスタジオでの写真か

  • 38二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 06:42:25

    催眠は解けなかったのになぜこうもジーンとくる

  • 39二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 10:44:45

    おおっ

  • 40二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 11:15:01

    出奔するにあたり、何らかの事情で催眠かけざるを得ず?

  • 41二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 12:14:20

    どうか幸せになってくれ…

  • 42二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 19:36:24

    保守

  • 43二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 23:06:42

  • 44二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 23:08:30

  • 45二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 23:30:13

  • 46二次元好きの匿名さん23/06/27(火) 23:33:25

  • 47二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 00:04:58

  • 48二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 02:24:48

  • 49二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 05:56:01

     ──どれほど時間が経っただろうか。

     虹夏は、ずっと泣いていた。大きな声をあげることはなくて、ただ、静かに、時折鼻をすすりながら……ずっと。
     様子を見る限りでは落ち着いているし、通常いくら感情が昂ったところでここまで泣き続けることは難しいはずだ。
     それでも虹夏は、ひとしきり泣いて、やがて泣き尽くしたかと思われた頃、またすぐに、何かしらの感情の働きによって補充されたと思われる新品の滴が頬を伝って、零れ落ち始める。泣き始める。
     それを何度となく繰り返していた。

     ちなみに、今の虹夏はもう『ミニアルバム』を開いてはいない。ただし、あくまでページを開いている状態ではないというだけであり、虹夏は……閉じられた『ミニアルバム』を……その胸に強く抱き続けていた。

     その行為はまるで──『誰か』に対して、これ以上どこかへ行こうとしないでと、言葉を投げかける……その代わりのような。
     非難のような。懇願のような。
     不安に対する、甘えのような。
     姉に対する──妹のような。

    (……結局、この『ミニアルバム』に虹夏が目を通すことで、催眠がすっかり解けてくれるなんていう都合の良い奇跡が起こることは…なかったな)

     だが、それでも今…虹夏の中に大きな変化が産まれ始めていることは、現在の様子や…先程「『この人』に逢いたい」という言葉を口にしてくれたことからも、間違いはないはずだった。
     そして…その変化はきっと…現在進行形で虹夏を揺らしているのだ。

     ただ、その揺れ幅は…いったいどれほどのものなのだろうか。
     それを確かめる為にも…まだ邪魔するべきではないと思って、今は邪魔はしたくないと思って、ずっと……泣き続けている虹夏のことを、黙って見守っていたけれど──

    (……そろそろ、試しにひとつ、訊いてみることにしよう)

  • 50二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 06:10:57

    「…………虹夏」


    「…………っ……何…?リョウ…」


    dice1d2=1 (1)

    1.「……ぼっちや郁代のこと、まだ自分の『お姉ちゃん』にしたいとか、そういうことは思ってる?」

    2.「逢いたいっていう『その人』について、朧気な表現でもいいから、虹夏が抱いた色んな気持ちを…今、言葉にしてみてほしい」

  • 51二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 06:34:05

    「……………………」

    「……………………」

    「………………あんまり……」

    「…………うん……」

    「あんまり…………思わ、ないかも……」

    「っ…………あっ…そうなんだ……」

     シンプルに、さらりと、努めて冷静に、言葉を返せたつもりだが。

     その実、危うく──全くもって柄にもなく、私という人間は今、山田リョウが築き上げてきたキャラクターのイメージをぶち壊すことになろうとも、飛び跳ねて喜びを全身で表現しようとしてしまうところだった。
     具体的にはもう…うおっしゃああああああああああ!!!!!という具合に。

     いやはや、危ないところだった。

    「何が?」

     ……今のは声に出ていたらしい。

    「……あと、なんでちょっと笑いを堪えてるみたいな感じなの?」

     ……しかも、顔にはちゃんと表れてしまっていたらしい。

     失礼、でも許してほしい。

     それくらい──嬉しかったんだよ。

  • 52二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 07:41:41

    あ〜〜〜めっちゃいい…

  • 53二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 09:17:29

    今更ながら山田が催眠かかるルートにならなくて本当によかった

  • 54二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 17:54:49

    (…………ともあれ)


     ──ぼっちや郁代を『お姉ちゃん』にしたいという欲求は、とても抑えきれない程のものではなくなってきている。

     きっと、虹夏の言うところの『この人』…『店長』に逢いたいという欲求が新たに湧き上がってきた分、元の……そちら側の欲求が弱まりつつあるのだと思われる。

     そういう意味として捉えることが出来る虹夏の答えは…確実に、全てを解き明かす為の、前進だ。


     間違いなく──明ける為の、光への前進になるんだ。


    「……あっそうだ。じゃあ、ぼっちや郁代にかけた催眠は解いてくれる?」


    「そこまでは……まだ、嫌」


    「……そう、残念」


     これは──仕方がない。催眠の強力な作用が、どうしても虹夏を踏みとどまらせる……或いは、どうしても『お姉ちゃん』を求める方向に、歩かせようとするのだろう。

     虹夏が悪いわけではない。だから、


    「まあ、うん。そこに関しては、今はまだ無理にとは……」


    「──でも」


    「え?」


    「…………り、リョウがさ!」


    dice1d2=2 (2)

    1.「催眠とかじゃなく……形だけでもいいから、私の『お姉ちゃん』のフリ…してくれるなら、この気持ちも、少しは誤魔化せるかも……みたいな?」

    2.「リョウが、どうしてもって、言うなら……解く、かな」

  • 55二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 18:01:35

    確実に前へ進んでるね

  • 56二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 18:03:07

    「…………私が、どうしてもって言うなら?」


    「まあ………………うん」


    「……………………」


    dice1d2=2 (2)

    1.「えっと、じゃあ──どうしても」

    2.「なら今解いてくれるか訊いた時に、そのまま解くって言ってくれれば良かったのに…なんでそんな面倒な手順を…」

  • 57二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 18:14:43

    そういう所だぞ山田
    まあらしいっちゃらしいけど

  • 58二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 18:18:14

    にやにや

  • 59二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 19:04:12

     私がそう言うと、虹夏はうつむき加減だった顔をばっと勢いよく持ち上げて──

    「──────っっつ!!!ばっ…ぅっさいバカ!!!アホリョウ!!!」

     と怒鳴ると同時に、泣き腫らした頬が目立たなくなるくらいに真っ赤な顔をして、大事そうに抱えていたはずの『ミニアルバム』を投げつけてきた。私の方に。

    「ちょっ──」

     結局それは、私が頑張って避けるまでもなく(というか反応さえ出来ずにほぼほぼ棒立ちだった)、大分見当違いの方向に飛んでいくことになったけれど……大事な『家族の思い出』なのに、そんなぞんざいに扱うものじゃないと、私は思う。
     よほど怒りたくなることがあったのだろうか?あまりにも急すぎて、理由は想像もつかないな。
     まあでも、半分床を滑らせるような形の優しい横手投げだったし、表紙も分厚いタイプだから、傷も殆どつかないだろう。

    (とはいえ……一応今回の最大のキーアイテムだったんだけどな……あれ)

     可哀想に。そう思いながら不憫な『ミニアルバム』くんの方を見やっていると、虹夏の方から、

    「……ほんとにさあ…あーもう、なんか……まあ……いっか」

     そんな呟きが聴こえてきた。

     ついさっきまでは、止まることなく泣いていたのに。
     今なんか、瞬間的に顔が真っ赤になる程怒っていたのに。
     今度は、何故だろう。どこか嬉しげな感情が籠った声色で。

  • 60二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 19:20:57

    ここにきて良質なリョウ虹たまらん

  • 61二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 19:57:17

    重苦しい展開の中で虹リョウで深呼吸ができる幸せよ

  • 62二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 20:23:59

     それが気になり、再び虹夏の方を見直してみると──今度は随分と穏やかで……なんというか、冴え渡った空のような表情を浮かべていた。

    「虹夏?」

    「──よく分かんない気持ちでいっぱいになってさ……たくさん泣いて。それから、リョウに怒って。そしたらなんか…すっきりしちゃったし」

    「えっ………私の方は、なんで私が怒られたのかよく分からなくて、今結構もやっとしてる最中なんだけど……」

    「それくらいでいいんだよ。バカでアホで脳みそカラカラなリョウなんて、頭の中に悩みが蔓延してるくらいで、丁度いいんだ」

     ひどい言われようだった。
     だけど、そう言いながら揶揄うように笑う今の虹夏の様子を見ていると…ちっとも悪い気分にならないのだから、不思議だった。

    「…まあ、私の方もね?まだ『ミニアルバム』に写ってた『あの人』のことで、全くもやもやしない訳でもないんだけど…そこはさ。もういっそ──全部リョウを信じてみることに決めたんだ」

    「……全部、私を?」

    「私の味方──なんでしょ?リョウは。だから『あの人』ってのも、リョウが呼ぶところの『てんちょー』っていうのが…きっと、そうなんだよね。それはつまり、私にとってさ………あー、うん…えっと、グダグダしちゃうからまとめると…いや、多分言葉も上手くまとまらないなーこれ…あはは……だ…だから、とにかく…そう。信じるって、決めたんだから!だから……うん──もういいや!とにかく、信じる。信じるから、うん……」

     虹夏はここで、一呼吸置いて、

    「………すぅ……よし!」

     それから立ち上がって、自分で投げた『ミニアルバム』を再び拾いに歩き始めた。そしてそれを手に取って、また大事そうに胸に抱える状態になってから──くるりと私の方に身体を向けて、

    「私がぼっちちゃんと喜多ちゃんにかけちゃった催眠、解きに行こっか」

     それで…まずはちゃんと謝らないとね。と、
     どこか苦々しいけれど…今日一番、虹夏らしいなと思えるような、そんな笑顔を浮かべたのだった。

  • 63二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 20:43:57

    このレスは削除されています

  • 64二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 21:54:42

    【とあるお店】

    「──虹夏、ここに二人はいるの?」

    「うん、電話して確認してみたけど、多分このお店のこと──あっいたいた、喜多ちゃーん!…と、ぼっち………ちゃ、ん?」

    「あっ伊地知先輩!来てくれて助かったわ!お姉ちゃん困ってるのよ…ひとりちゃんがこのキラ盛りシャイニーデコレーションバエールパフェを見た途端泡を吹いてひっくり返ったダンゴムシみたいになっちゃって…ほら、足も二十本くらい──あっリョウ先輩!?挨拶遅れてすみません、おはようございます!なんだ、伊地知先輩の用事ってリョウ先輩との約束だったのね!そうならそうと言ってくれればよかったのに!」

    「あー………うん!それより喜多ちゃん、その……」

    「ああ!今度はひとりちゃんが形態変化してダイオウイカとダイオウグソクムシのハーフみたいな姿に!!!」

    「え!?うぎゃあーーーキモ!!!ぼっちちゃ──ちょ……めっちゃキモイことになってるっ!!それ関節とかどうなってるのさ!?」

    ワーワー。キャーキャー。

    (……なんか、郁代もぼっちもいつも通りだな)

     こうして見ると、確かに郁代の虹夏に対する口調には若干の違和感はあるものの…目の前に広がってる光景はとても見慣れたもので。
     不謹慎かもしれないけれど、私は少し、安心した。

    (いや、ぼっちの状態はとても見慣れたものとは言えないことになってるけど…)

  • 65二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 21:58:31

    コミカルな雰囲気がしみる

  • 66二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 22:03:29

    唐突な原作要素助かる…

  • 67二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 22:17:46

     まあ、この辺の描写はとても愉快ではあったけれど、長くなるので割愛しよう。
     そして紆余曲折を経て、虹夏はぼっちと郁代の催眠を解除することに成功したのであった。めでたい。

     ……割愛すると言ったばかりでなんだけれど、催眠の解除なんかよりもぼっちを通常形態に戻すことの方が遥かにしんどそうだったということは、伝えておきたい。
     ちなみに私は、虹夏と郁代がぼっちを人間に戻す為に奮闘しているのを、郁代が頼んだというなんちゃーらパフェをつつきながらぼんやり眺めていた。

     味は美味しかったけれど、とにかくきらきらしていて目にうるさいパステルなカラフルさで、逆に食欲を削がれてしまう部分はかなりの減点材料だなと思った。

  • 68二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 22:26:44

     さて、閑話休題。


     まず、催眠を解除された後のぼっちと郁代についてだけれど、二人は──


    dice1d2=1 (1)

    1.催眠にかかっていた期間の記憶を、全て保持していた。

    2.催眠にかかっていた期間の記憶を、全て失くしていた。

  • 69二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 22:58:53

     記憶に関しては解除後にどうなるのか、虹夏にもはっきりと分からないところだったらしいが、結果的に二人の記憶が残っていたというのは…むしろ望ましいことだった。

     虹夏は…何よりも先ずそのことを二人に謝る為に、ここへと来たのだから。

    「────っていう感じなんだけど、さ。私がどうかしてたなんて風に、言い訳はしないよ。しないけど……正直言って、今だって、私はきっとどうかしてるんだろうなって、自覚はある。ううん、やっぱり自覚そのものはないな…ごめんね?さっきから言ってること、二転三転して聞こえるよね。ただ…私が信じることに決めたリョウが、私のことをおかしくなってるっていうから、私は今、それを信じることにしてるっていうか……」

     と、この辺まで話したところで、

     いや、こんな話はいいか──と。
     長々と語ってしまっては、それこそ言い訳っぽさが強まるばかりだな──と。
     虹夏は、自分の状態に関する説明を打ち切って、ここで本当に伝えたかった言葉だけを、はっきりと伝えることにした。

    「ほんとに、ごめんね。二人とも」

     短い言葉だった。
     けれど、強い誠意が込められた謝罪だった。

  • 70二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 23:21:25

     とはいえ、虹夏のしたことは二人の心を弄んだとも取れる行為だ。そのことを考えれば、私から見ても…許せないと言われてしまうのなら、それだって仕方ないように思う。


     虹夏は謝罪の言葉を最後にして、完全に黙り込んでいる。二人の……ぼっちと郁代の、返事を待っている。

     私からすれば数秒の、虹夏にしてみれば何分にも感じられているのかもしれない程度の時間が経ち、


     やがて口を開いたのは──郁代だった。


    「……伊地知先輩…」


    dice1d3=2 (2)

    1.「……俯かないで、私の顔、よく見てください」

    2.「結局よく分かんないんですけど…要は今の私達って、リョウ先輩との惚気を伊地知先輩から聞かされてるだけですか?」

    3.「ひとりちゃんがどう思ってるかは分かりませんけど…少なくとも私は、やっぱり…簡単に許してあげちゃおうなんて風には、思えません」

  • 71二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 23:27:23

    やっぱ結束バンド4人でいる空気感いいよね
    ぼっちは全然喋ってないけど形態変化で存在感見せてたし…

  • 72二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 06:31:57

    「え?」


     と、言ったのは、虹夏ではなく私。

     唐突に何を言うのかといった気持ちが、つい言葉になって出てしまった。いやだって、今そんな話してたっけ。


     ぼっちの方を見てみると…あっキョドってる。良かった。私の反応がおかしいわけじゃなさそうだ。

     …まあ、ぼっちの場合は『単にいつも通りに反応がおかしいだけ』って可能性もあるから、一概には言い切れないのだけれど。


     じゃあ虹夏の反応は、というと──


    dice1d2=2 (2)

    1.「え?なんでこの流れでそういう話になるの…?」と限りなく私に近い反応を見せていた。

    2.「な、なん、なな……なんでそうなるかな!?」となにやら狼狽える反応を見せていた。

  • 73二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 10:26:13

    今度はニヤニヤが止まらない

  • 74二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 13:50:35

    っぱこれよ、結束バンドは

  • 75二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 15:08:13

    この空気感じゃないとね

  • 76二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 15:36:31

    あんなに詰んだ感じだったのになんだか解決しそうな気がしてきたな

  • 77二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 20:36:50

    今回はリョウが本当に頑張った

  • 78二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 20:50:03

    「え?違うんですか?」

    「ちち違う、とか…ちっ違わないとか、そういう話じゃなくて、わっ私今結構……てか、100パーセント真面目な話をしてたつもりだったんだけど!?」

     なにやらわたわたと慌て始めた虹夏。なんかぼっちみたいなドモり方までしてるし。
     しかし、ぼっちと郁代に再会してからの虹夏はやたら元気だよね…いいことなんだけどさ。
     
     そんな虹夏を見て、郁代は郁代で「あはは、冗談ですよう」「伊地知先輩慌てすぎ…」「ほんとにリョウ先輩って、存在が罪なんですよね」「今度伊地知先輩の家でお泊まり会開いて、二人きりでそのことについて語りながら夜を明かしません?」「まあ変な男とかでなく伊地知先輩相手ってことなら、特別に見逃してあげましょう」とか本当によく分からんことを言い続けていた。
     私の存在を話に巻き込みながらも置いてけぼりにするとは、随分高度なテクニックだな。陽キャの話術恐るべし。
     ぼっちも郁代の話についていけてなくて困惑してるし……てか今日、ぼっちロクに喋ってなくない?いや、よく考えたらこれもわりといつものことか…。

     さて、そしてひとしきり虹夏のことをからかって(?)満足したらしい郁代は、

    「えっと…じゃあ、真面目な感想言いますね」

     という風に話を戻してから、虹夏の謝罪に対して…

    「──そういうの、いいですから」

     そう言い切った。

  • 79二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 21:11:53

    「…………ぇ……」

     虹夏が血の気の引いた顔で、絶句する。
     多分今の虹夏は、一見大分明るいように見えても、その実心の余裕が大分なくなっている状態にあるせいで、郁代のその言葉が──まるで、拒絶の言葉のように聞こえてしまったのだろう。

    (けど…いや、わざわざ私が割って入って、説明することじゃないな)

     そう私が思うと同時に、郁代が言葉を続ける。

    「だって…伊地知先輩は、なんにも悪くないじゃないですか」

    「そ、そんなこと……!」

    「……先輩、最近元気になってくれて良かったなと思ってましたけど…そうなんですね。行方不明になってしまった店長さんのこと、忘れちゃってたんですね……」

    「……………………」

    「それで…こういう風に言われても、店長さんっていうのが誰のことかは──よく分かって、ないんですよね」

    「………………う、ん…」

    「分からなくて……分からないのに。それなのに、心のどこかでは、結局ずっと、伊地知先輩にとっての店長さん…『お姉さん』を、求めちゃってたってことなんですよね」

    「…………そう、なのかな。……それでも、やっぱり──」

    「伊地知先輩は」

    「……………………」

    「伊地知先輩は、やっぱり、なんにも悪くないですよ」

  • 80二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 21:43:51

    「………………喜多ちゃん…」


    「──ねえ!ひとりちゃんも言ってあげて!伊地知先輩はちっとも悪くないんだって!!」


    「………………あっえっ!!!??」


     と、急に自分の方向に話が飛んできて物凄く驚いた様子のぼっちは──


    dice1d2=1 (1)

    1.しかしすぐに気を取り直して…ゆっくり、自分の意見を虹夏に向かって語り始めた。

    2.「ああああああの、きっ喜多ちゃんと、殆ど、完璧に同意見!!って、感じです!!!」と答えた後に「あっなんの足しにもならないような極薄言葉しか吐けないゴミ虫ですみません…帰ります…深海に…」と言ってテーブルの下に消えていった。

  • 81二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 21:48:10

    自分がやった訳じゃないのになんかドキドキする

  • 82二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 21:49:41

    やったれギターヒーロー

  • 83二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 21:50:00

    1のがよさそうだけど2が想像できすぎて草生えるからそっちもよかったな
    虹夏ちゃんも笑ってくれそうだし

  • 84二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 22:34:47

    「…あ、あの……虹夏ちゃん…」

    「う…うん……なに?」

    「その…わっ私も、虹夏ちゃんが、悪いとか…もちろん、そそそんなことは…全然!思っては、ないんですけど…」

    「…………うん……」

    「……で、でも…………」

     ここでぼっちは一度言葉を止めて……少し、躊躇いを見せる。

     その表情の奥には──この流れで今から虹夏に『こんなこと』を言ってしまっていいのだろうか──と、そういった類いの葛藤が見えた気がした。

     そして、私がそんなことを具体的に思えたのは──きっとぼっちなら、この後はこう言おうとするんだろうなという予感が、既にあったからだ。

     ぼっちと郁代、私はどちらも好きだけれど…どちらの心情の方がより理解、考察、想像をしやすいかと問われたら──私にとっては、間違いなく、ぼっちの方だから。

     だから予感は、既にあった。

     果たしてぼっちは『その気持ち』を虹夏にぶつける決心を固めて、そして、私の予想していた通りのことを、言ってくれたのだった。

    「──わっ悪さとかは、関係なく、ですね。い、今の虹夏ちゃんに対しては……し…正直結構……怒ってます……」

  • 85二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 23:49:26

    できたら相談してほしかったね

  • 86二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 06:52:10

  • 87二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 07:14:46

    肝心な時しか役に立たない女の本領発揮をする時

  • 88二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 08:45:02

    弱音ぶつけてほしかったよね

  • 89二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 10:23:16

    リョウ虹と見せかけてみんなが虹夏ちゃん大好きなだけって感じだな
    とてもいい

  • 90二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 15:12:06

    「…ひとりちゃん……」


     郁代は一瞬びっくりしたようだったけれど…そこは流石にぼっちとすごした時間が一番長いだけあって、すぐにその言葉が意図するところを察したらしく、真剣な顔でぼっちの顔を見始めた。


     一方、肝心の虹夏とぼっちは、


    「……そっそう、だよね!……うん…それは、怒って…当然だよ……」


    「ぁ……あっいや!ですから、そそそそんな顔を、虹夏ちゃんに、してほしいわけでは、なくって…ですね!わっ私こそすみません、いつもいつも言葉足らずで、全然、あの……その…」


     …………なんだか……ここに来てもまだもどかしくなりそうな雰囲気が流れ始めている。


    (………………)


    私は──


    dice1d2=1 (1)

    1.ここは、ちゃんとぼっちが自分の意思で言いたいことを言い切れるところまで、見守ることにした。

    2.少し…本当にほんの少しだけ、ぼっちに助け舟を出してあげることに決めた。

  • 91二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 15:18:39

    後方保護者顔してそう

  • 92二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 18:47:40

    (──郁代と違って、ぼっちは口下手で凄くぼっちなわけだし…仕方ないな。今度は少し、助け舟を出してやるか…)

     そうして口を挟もうとぼっちの顔を見つめたところで…思い留まる。
     いや、そんな必要はないな──と。そういう風に…思い直す。
     だって、この時のぼっちの顔は…とてつもなく真剣だったから。

     上手く言葉に出来なくて、焦って、汗まみれで、それでも本気で、どうすれば虹夏に自分の言いたい言葉が伝わるのかを…考え続けているのが、伝わってきたから。
     きっと、そういう想いの末に出てくる言葉は──強いから。
     だから私が、こんなところで先輩風を吹かせて、お節介を焼く必要もないだろう。

     本当に不思議だ。普段のぼっちはあんなにも脆くて儚い、まな板の上で腐りかけてるナマコみたいなナメクジメンタルのくせに。
     こういう、本当に大事な局面に立たされた時のぼっちは、凄く頼りになるんだから。

    (頑張れ、とも思わないよ)

     だって、

    (どうせ、なんとか出来ちゃうよね)

     ヒーローみたいに。

     そう──期待させてくれるんだ。

  • 93二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 19:20:08

    >>92

    すんげーボロくそに言ってるのに、信頼が厚い

  • 94二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 19:25:31

    ここに来てぼっちに焦点が当たるのいいな

  • 95二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 19:32:06

    結局結束バンドって全員ぼっちに脳焼かれてるんだよね

  • 96二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 21:48:26

    やっぱり結束バンドはぼっちちゃんが中心になるんだよ

  • 97二次元好きの匿名さん23/06/30(金) 22:06:20

    普段の様子の例え草
    やばいツボに入った笑いがとまらん
    あんだけ言ったその上でこれからかっこいいところ見せるって確信してる所が良いよね

  • 98二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 02:04:48

    まな板の上で腐りかけてるナマコ

    なんかグルメバトル漫画で審査員が負ける側の料理を酷評する時に使いそう
    「奴の料理と比べたら貴様の料理は~」みたいな流れで

  • 99二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 10:09:34

     そして、

    「──わ、私は……」

     やっと口火が切られ始める。

    「私は、自分の意見を主張することも、うまくなくて…こういう時、真っ直ぐに自分の気持ちを伝える手段も、全然知らない……」

    「だだだから、失敗が怖くなって──そ…それならいっそって、『最初から伝えることを諦めてしまったりする』ことも、あって……そんな自分が──心底嫌になることも、沢山あって」

    「だから、だからこそ、『そういうこと』になる惨めさを…わ、私は、よく知ってるつもりで……」

     ここで、一度言葉を途切れさせた。何の話だろうと思うかもしれないけれど、きっとぼっちは言葉を選ぶことを止めて…全部を虹夏に伝えようとしているんだ。
     恐らくここまでが、ぼっちの想いの、第一段階。
     内心をぶつける為の吐露というよりはもはや独り言のようで、目線も下を向き、話しているはずの虹夏の顔さえ全く見れていないように見える。
     けれど、ぼっちにはこの方が向いている。下向きこそが、向いている。俯き加減で丁度良い。『そういうぼっち』が、こういう時には──良い。
     虹夏も…返答をすることなく、ぼっちの言葉に聴き入り、その続きを待っていた。
     
     そして、またすぐに…ぼっちは『独白』を再開した。

  • 100二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 11:15:54

    「……別に、虹夏ちゃんの為になるなら、私なんか、どんな風にでも使ってくれれば良かった」

    「どっどうせ…私が自分から虹夏ちゃんの為に出来ることなんか──ギターを弾き続けることくらいしか…ないわけですから。それ以外で虹夏ちゃんの役に立てるっていうのなら…虹夏ちゃんの好きなように、私を振り回してくれても、良かった」

    「そうなった時、私は困った顔をしてしまうかもしれないけど、最後にはそれが虹夏の為になるならって…納得出来る確信も、あった。ありました……あります」

    「だだ…だから…ちゃんと……『最初から伝えることを諦め』たりせずに、そんな、虚しい気持ちを、独りで抱えてしまおうとせずに…私にも──話してみて、ほしかった」

    「す、すごく…鬱陶しくて、重くて、何様だって思うかもしれませんけれど……虹夏ちゃんは…『どうしても、止められない気持ちがあった』って言ってましたけれど…」

    「『それ』でも…わっ私は──まずは一度…頼ってみて、ほしかった」

    「リョウさんには、そうしたっていうように……」

    「私にも……それから、喜多ちゃんにも……助けてほしいでも……分かってほしいでも……許してほしいでも……」

    「なんでもいいから…私達にも……」

    「に…虹夏ちゃんの、気持ちを──教えてみて、ほしかった……」



    「……っ!ご──」

     恐らく、「ごめんね」…と。
     反射的に虹夏は言いかけて…止めた。まだぼっちの話が終わったわけではないことを…その雰囲気から感じ取ったのだろう。
     その想像通りに、ぼっちの『独白』は、最終段階に向けて…続いていく。

  • 101二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 21:16:58

    ぼっちちゃん…

  • 102二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 00:03:44

    >>80

    2でダイオウイカの訳が分かった

  • 103二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 06:38:02

    保守

  • 104二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 11:54:07

    結束バンドの関係は戻りそうで良かった
    ところで星歌さんは今どうしてるのか…

  • 105二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 12:44:22

    >>104

    自分から消えたのは確定だけど「やむにやまれぬ事情があって」っぽいし「虹夏を巻き込みたくないから催眠掛けて忘れさせた」っぽいんだよな

    まあこの二つは推測だからこれからのダイス次第でこないだ見たぼっち写真流出リョウさんみたいになりかねないけど

  • 106二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 14:25:48

    違ったら申し訳ないけどスレ立てたのも同じ人な気もするよね…

  • 107二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 15:01:32

    >>106

    だとしたら今度はハッピーエンドに向かえてそうでよかった

  • 108二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 15:10:07

    しかし妙なのは虹夏ちゃん周りだけ完璧なくせに他三人には何もやってない事
    例え虹夏ちゃんがお姉ちゃん催眠をしなかったとて、他三人が彼女の前で店長の話題を出せばこうなりうる可能性はいくらでもあるのに
    なんで他三人には催眠かけなかった?

    後店長が失踪した事でスターリーの運営はどうなってる?
    虹夏ちゃんはそれについてどう脳内補完して……これは催眠で「そこまで深く考えられない」から大丈夫か
    他三人は失踪した事とかについてどう思ってるんだろ

  • 109二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 21:05:31

    >>108

    スターリーの経営はPAさんが管理してるとか…?

  • 110二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 22:38:49

    >>105

    とりあえず結束バンド解散オチは無さそうで安心した

  • 111二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 08:21:05

    保守

  • 112二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 10:31:55

    >>108

    催眠で虹夏ちゃんに運営の能力を植え付けてたとか‥‥?

    ちょっと無理があるか‥‥

  • 113二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 14:42:24

    >>108

    三人にも催眠かけようとしたけど時間がなくてやむを得ず、とか?

  • 114二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 18:00:52

     と、ここで唐突に、

    「──でも!!わ、私は……それさえも、ほんとは、べべべ別に…良くてですね!!!」

     ぼっちが今日一番の大声をあげた。あわや立ち上がるかといった勢い。
     虹夏が目を丸くしてぼっちを見る。郁代も驚いているのが表情から窺い知れた。ぶっちゃけ私も結構ビクッとした。

     ぼっち自身は、ここが飲食店だということも失念しているのか、自分が張り上げた声が周りにいる他のお客さん達の視線を集めてしまっていることにも──それによってこの場に潮が引いたような静寂が満ちたことにも──気が付いていない様子だ。ただ夢中で、俯いたまま、言葉を振り絞り続ける。

    「だっ……だって、こんなのも、結局私のわがままで言ってるだけのことだから…かっ悲しかったけど、それは、虹夏ちゃんに非があることじゃないから、わわ、私が怒るのは、筋違いっていうか──ぜ、全然違うと、思うので……」

    「私個人のことは、ま、まだ、信用出来なくても、仕方ないです…分かってるんです……どうして、私のこと、信じてくれないんですかなんて……この口が言えるわけ、ない」

    「だって、ほんと、ギター以外の何かで虹夏ちゃんの役に立てる気は、わ…私自身…微塵もしませんし、意見を求められたら、どこか、流されるようなこと、言っちゃいそうにも……なりますし…あっあれ?これさっきも言ったっけ……」

    「す、すみません…ほんと言ってることまとまらないし……ここ、こんなだから、私なんかに…話しても仕方がないと思われるのは、やっぱり、当然で──」

     声は段々と元のトーンに戻り始めていて、集まりかけていた周りのお客さんの視線もまた散り散りになっていた。それでも、私達だけは、もうぼっちから目が離せなくなっている。
     ぼっちの静かな熱量が、完全に私達を惹きつけていた。

    「……ただ、虹夏ちゃんは──」

     そして、目的地も不明瞭な危うい飛行を続けているように思えた『独白』が──ついに核心に着地する用意を始める。

  • 115二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 18:26:42

    「──虹夏ちゃんは、私だけじゃなくて、喜多ちゃんにも…何も話さなかったじゃないですか。お、覚えちゃってるんですけれど、あの時の虹夏ちゃんは……『悩む間もなく』、喜多ちゃんにも催眠をかけてましたよね」

    「喜多ちゃんなら、私なんかとは違って、言葉を見つけるのだって…上手で…虹夏ちゃんの悩みに対して、何かいい案を、思いつけたり…したかもしれないのに…」

    「ま、まさか…虹夏ちゃんが、喜多ちゃんに対してまで、私と同レベルで『役に立たないだろう』とか、思ってたわけは……ないと思います」

    「だって喜多ちゃんは、私の学校でも、色んな子から色んな相談をひっきりなしに受け付けてる、相談受付のアマチュア最強位なんですから!」

    「そそそそれで実際のところ、まとめて必ず解決させちゃうところまではいかなくても、全ての相談者から『喜多ちゃんに相談して良かったー』って感想を引き出してる、グレイテストな全身お悩み解消人間なんですから……!」

     真面目な雰囲気の中にも関わらず、「ひとりちゃんの中での私の評価が高いのか、そうでもなくて小馬鹿にされてるだけなのかイマイチ分からないわ…」と思わず小さな声で呟いてしまった──ほんのり頬を赤らめつつも微妙な顔をしている郁代だが、位置関係的にはぼっちの隣にも関わらず、夢中で話し続けるぼっちの耳に届いた様子は、やはりない。

     そしてぼっちのこの論理についても──そもそも虹夏は(そして私も)、ぼっち達の高校で郁代がどんな風に頼られているのかなど細かく知る由もないので、この論はぼっち視点の勝手な物言いであり、的外れと言えば大的外れではあるのだが──

    「……そ、それで…私、気付いたんです……」

     そんな推論の過程はどうあれ、

    「虹夏ちゃんが、私は仕方なくとも、喜多ちゃんにまで相談を一切しようとしなかったのは…」

     その結論さえ正しければ──それは、虹夏を大きく揺さぶることになるわけで、

    「そもそもあの時…私達にも相談をしようなんて考えは──に、虹夏ちゃんの中で『否定するまでもなく、存在してなかった』んじゃないかな……って」

     それを聞いて、虹夏は、

    「わ、私が怒ってるって言ったのは……そ…『そこ』のこと、です…!」

     はっとしたような、ぞっとしたような──そんな表情を、浮かべていた。

  • 116二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 18:46:06

    「……リョウさんには、話せたんですよね。色々」

    「っていうことは……に、虹夏ちゃんの中には…多分リョウさんなら、どんなに自分が変なことを言っても許してくれるだろうって、強い信頼とか、あ…甘えられる気持ちがあって…それってきっと、お二人の過ごした時間の長さとか、そういう…絆とか、色々と理由が……あって」

    「だから、虹夏ちゃんも、リョウさんに対しては──催眠をかける前に…いいい一度、踏みとどまれて、ちゃんと…話をしてみようって、考えることが、出来たんじゃないかなって…」

    「けっ結果、その後にリョウさんとは、衝突しかけちゃったみたいですけれど…そうなる前に、一度話せたんだっていうのは…やっぱり、虹夏ちゃんの中にある、こ…『このくらいのわがままは言っても大丈夫かも』っていう、気持ちの差だったのかなって。そそ…それが、私達との……差なのかなって、思って」

    「……り、リョウさんに対する嫉妬みたいで、ききき気持ち悪いかもしれませんけど……私や喜多ちゃんには、い、一瞬でさえそんな素振り、見せてくれて、なかったのにって、思っちゃって……つ、つまり……」

    「に…虹夏ちゃんには、『私が役に立てるかどうか』は信じて貰えなくてもいいから、『私や喜多ちゃんが虹夏ちゃんをどれくらい信じているのかどうか』については、もっと悩んで、考えてみて、ほしかった……!ってことで……つまり……つまり………………」

     ここに来てぼっちが、ぐっと唇を強く結んで、虹夏の方を見た。
     そして──

    「──ににに虹夏ちゃんは、多分、私……私達が、『どれだけ虹夏ちゃんのことを大切に思っているのか』を……ぜ、全っ然、分かってくれてないんですよね!!!」

    「私は……私は……」

    「──虹夏ちゃんのこと、こんなに大好きなのに!!!!!」

     ぐっと、勢いをつけて言い放った。
     先程の大声記録を悠々更新する声量で。

  • 117二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 21:10:08

    読んでたら段々画質悪くなったんだけど これってバグかな
    室内なのに雨降ってるし…どうなってんだ…… ウウッ

  • 118二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 21:58:40

    >>117

    明日晴れるために今は雨降ってんだよ

    きっと晴れやかな空が見られるさ

  • 119二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 22:03:17

    「へっ…………あっ…………?」

     覚悟していたタイプの怒り方とは違ったからか、ぽかんとした表情を浮かべる虹夏。再び私たちに集まり出す周りのお客さんの視線。
     そして郁代も、暫くは虹夏と同じような表情で、ぼっちを見詰めていたが、少し経つと──

    「────ず、ずるいわ!ひとりちゃん!」

     と言って立ち上がった。それを見ておっ?おっ?といった感じになる虹夏。どう出る郁代。

    「私だって……伊地知先輩のこと、大好きだもの!!!!!」

    「ちょ……ちょちょちょ……」

     郁代がそんなことを──最近ボーカルとしての技量が上がってきたからか、ぼっちと比べてもやたらと通る声で言うものだから、更に遠くからの視線までこの場所に集まる。ちょっと私もむず痒くなってきた。
     にわかにざわめきも起き始めて、数個程離れた席に座っている女性のお客さんからは何やら感嘆のような声も上がっていた。なんで?

    「ち……ちょっと落ち着いて!ほら、ま…周りの注目集めちゃってるから……」

     虹夏のその言葉で、ぼっちはやっと自分達を取り囲む状態に気が付き、周りを見渡してすっかり青ざめて、縮こまってしまった。しかしヒートアップ状態だったぼっちの熱に完全にあてられてしまっている郁代は──

    「落ち着けません!ひとりちゃんの話を聞いて私もはっとしました!確かに…今回の伊地知先輩は、少しだけ『分からせ』てあげる必要があるのかもしれないなって……つまりムチ!私達は、伊地知先輩に対して、愛のムチを打たなければならないわけですね…心苦しいことですけれど」

    「な、何言ってんの喜多ちゃん……?」

    「ききき、喜多ちゃん……私が言うのもなんですけど、虹夏ちゃんの言う通り、やっぱりいったん落ち着い──」

    「なので、これから私とひとりちゃんは、伊地知先輩が『分かって』くれるまで──伊地知先輩に大好きを伝えることを止めません!!!」

  • 120二次元好きの匿名さん23/07/03(月) 22:08:16

    外から聞いたら痴情のもつれにしか聞こえない

  • 121二次元好きの匿名さん23/07/04(火) 00:12:05

    団長・・・・・・出番だぜ
    思いっきり叫べ
    ぼ虹でもぼ喜多でもぼ山でも山喜多でも山虹でも虹喜多でもない・・・・・・・・・「結束バンド」を

  • 122二次元好きの匿名さん23/07/04(火) 08:24:48

  • 123二次元好きの匿名さん23/07/04(火) 19:13:49

    愛され虹夏ちゃん

  • 124二次元好きの匿名さん23/07/04(火) 23:38:13

    「エッ…「ななな何言ってんの喜多ちゃん!?」

     思わぬ展開に、素っ頓狂な声を上げる虹夏。そして消え入りそうなほど小さかった(というか実際虹夏の声に半分くらいかき消されていた)、「エッ……」という声はぼっちのもの。
     とんでもない羞恥プレイに半ば強制的に参加させられることが確定したその心中は察するに余りある。

    「──ひゃっ!?」

     そして言うが早いか、行動派人間の郁代は素早くテーブルから身を乗り出して虹夏の手をぐっと掴んで、言った。

    「伊地知先輩…好きです!!!」

    「──〜ぐはっっっ!!!!!」

    「ほら、ひとりちゃんも言うの!!」

    「えっ!!?あちょっ……むむ無理ぁや……!」

     そこからぼっちを片手に抱き抱えて無理やり立ち上がらせ、もう片手は変わらずがっしりと虹夏の手を掴んだ状態で、口からマシンガンのように同じ愛(?)の言葉を放ち続ける郁代。
     更にその様を見て、最初はざわついたり困惑していた周りのお客さん達も、なにやらヒューだのキャーだのウヒャーだのと、奇妙な盛り上がりを見せ始めていた。
     現在の状況は、凄まじく混沌を極めている。

    (……なんだこれ…………)

     私がつい数分前までぼっちに期待してたのは、もっと王道な感じのノリによる状況の打破だったんだけどな。期待しすぎるのが、フラグの前フリになってしまったのかな。
     いや、結果的には虹夏の二人に対する負い目も消えた(というか、もはや現状によるパニックで『そんなこと』はすっかり頭の中から飛んでしまった様子だ)から、ある意味ではこれでも成功と言えるのかもしれないけれども──それにしてもほんと、なんだこれ。いやほんとに。
     しかし、頭の中ではそんなことを思いながらも、実際の私は──

    「……ふふっ」

     つい、笑い声をこぼしてしまっていた。

  • 125二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 00:18:07

    しゃあっ最高だ

  • 126二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 00:41:03
  • 127二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 02:16:02

    団長たまに静かになるよな

  • 128二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 06:52:36

    団長が後方理解者面はじめたぞ
    俺も腕を組むか

  • 129二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 08:35:17

    あまりに尊いと団長も静かになるんだな

  • 130二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 13:54:19

    ここは叫ばなくて正解

  • 131二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 21:42:02

     きっと、安心してしまったのかもしれない。
     なあなあでも、不格好でも──目の前に広がっているのは、私が一番大事にしたいと思っている光景そのもので。

     だから、安心して──しまっていたのかもしれない。

     油断していた。

     安心するにはまだ────早かったんだ。

    「さっきから何一人で達観した顔してるんですか!さあさあ、リョウ先輩も一緒に言いましょう!伊地知先輩に向かって、愛の言葉を叫ぶんですよ!」

    「え゛」

     同じテーブルに座っている以上──この流れに私が巻き込まれない保障なんてものは、どこにもありはしなかったというのに。

  • 132二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 22:11:46

    ガンバレ山田…

  • 133二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 22:15:42

    お前も結束バンドなんだから当たり前だよなあ!?

  • 134二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 23:04:41

    「いや、私はそういうの別に……」

    「先輩さっき、私とひとりちゃんが頼んだ映えパフェ、勝手に食べてましたよね?」

    「ゔっ」

    「いいんです。リョウ先輩に奢るその行為自体は──ひとりちゃんはともかく、私にとって、やぶさかでもないことなので。でも……見返りとしてちょっとくらい、今の私のノリに付き合ってくれてもいいんじゃないかなーって、私は思うわけですよ!」

     言いながら、ぶーぶーと口を尖らせる郁代。薄々察してはいたけれど、やっぱり意図的なノリの産物なのか。この混沌とした状況は。
     つまり郁代は、一見完全な勢いにも見えたが、実の所は『計算』でこの空間を産み出していたということになるわけで──そう考えると恐ろしくもあるが、どこかそのことに納得している自分もいた。

     郁代はあのぼっちの言葉──『大好き』という言葉を聞いた時に、今ここで自分が口を挟んでこういう流れを産み出すことこそが、雰囲気を良い方向にぶち壊す為にはベストなのだと、瞬時の──『計算』で、気付けたのだと思う。
     あの時の郁代は、一瞬そういう──ここだ!という小さな決意が表れたような顔をしていたから。本当に空気読みの天才だ。

     ぼっちの良さが『無意識的』な浸透の力なのだとしたら、郁代の良さとはその真逆、『意識的』な感覚の力であるといえる。
     空気を読むのが下手なことが強みにも弱みにもなるぼっちと、空気を読めるからこそ消極的にも積極的にもなれる郁代。
     二人はとてもいいコンビだなと──私は思っている。
     そんな二人のことを、先輩として、数歩程の距離を置いたところからひっそりと暖かい目で見守り続けることこそが、今の私の夢なのである。
     本当だ。信じてほしい。

    「…そんなわけで、私のことなど全く一ミリとて気にしなくていいから、どうぞぼっちと二人で虹夏に──」

    「何言ってるかよく分かりません。ほら先輩も立ってください」

     ──空気を読んでくれ。私のささやかな夢を叶えてくれ。
     なぜこういう時は読んでくれない。私の醸し出してる黒々とした嫌々で鬱々な空気をちゃんと読み取ってくれ。

  • 135二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 23:50:21

    「えっ……り、リョウまでやるの……!?」

    「や、私は全くやるつもりは──」

    「皆さんも聞きたいですよね!?リョウ先輩の愛のひとこと!」

     私の言葉を遮って、郁代が周りに向かいそう問いかけると、わああああああああああああと今日イチの盛り上がりを見せるノリの良い初対面のお客さんたち。なんでだよ。アメリカかよ。
     店員のお姉さんもちょっとワクワクした顔してないでちゃんと注意してください。片っ端から頭引っぱたいてやろうか。十二弦ベースで。フルスイングで。

     ちなみにぼっちはその声援に驚いて心臓が止まって死んだ。さもありなん。復活の呪文は脳内にメモしてあるから、後は「ぼっちよおきろ」と耳元で唱えてやるだけだ。
     とはいえ今蘇生しても助けにはなってくれないだろうし、どうせまたすぐ死ぬだけなので今は放っておくことにした。

    「ほらほらリョウ先輩!伊地知先輩も待ってますよ!」

    「いや待ってないし!もういいってほんとに!顔熱いし…ねえ、私が言うのもなんだけど、今こんな話してる場合なんだっけ…?」

    「今この場に、これより重要なことなんて、何もありません!」

     あるよ郁代。もはや色々と目的見失っちゃってるじゃん。自分で作った空気に自分の意識が完全に呑まれちゃってるじゃん。
     やれやれすぎる。けど──

    (まあでも…もう私が郁代のノリにノってあげないと、事態にも収集がつきそうにないか)

    「………………はあ、仕方ないな」

     そんな感じで、私は観念した。

  • 136二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 07:32:37

    >>134から>>135の一連の流れが好きすぎるw

    にやにやする

  • 137二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 15:34:40

    言ったれ山田

  • 138二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 20:45:52

     すっと立ち上がって、虹夏の方を向く。

     ぎょっとする虹夏。一瞬ざわめくも私の発言を聴き逃さないようにと静まり返る郁代とその他あほギャラリー。死んだぼっち。


     でも、うーん。いざ言葉にしようとするとちょっと詰まるな。まあ「大好き」って言えばいいだけなんだろうけれど、なんかムズムズする。

     まあ──深く考えなくていいか。自然と浮かんで出てきた言葉を、そのまま口に出すだけ。それで郁代プラスその他のやつらを満足させて終わりだ。


     ──よし。


    「…………虹夏」


    「──えっ!あっなっなっ……なにさ…」


    「……あー…………」


    dice1d3=3 (3)

    1.「私も虹夏のこと、好きだよ。好きじゃなきゃ──こうして一緒にバンドやってないから」

    2.「私は虹夏も──郁代のこともぼっちのことも、比べられないくらい大好きだよ」

    3.「…………………………」

  • 139二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 20:52:18

    なんか言えよ

  • 140二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 21:11:45

    「………………」


    「…………………………」


    「………………り、リョウ……?」


    「リョウ先輩……?」


    (あ、あれ、なんかこれ)


    (──やばい、めっちゃ照れくさいな……)


     思い浮かんだ言葉が──そのまま、口に出せない。

     何故かあんな勘弁してみたいな雰囲気を出してたはずの虹夏まで、めっちゃ期待の目で私のことを見つめていて──それを意識すると、どうしてか尚更言葉が出なくなる。ど、どうすればいいんだこれ。


    (くっ…もういい!端的、端的に無心で言うだけにしよう)


    (浮かんだ言葉をそのままとか、それさえも考えなくていい。本当に何も考えず、ただ「大好き」とだけ言えばいい。それで本当の本当に終わりにするんだ)


    (よし、もうカウントダウンでさっと言うから。絶対言う。決めたから。言うぞ言うぞ。さあ、3、2、1……)


    dice1d2=1 (1)

    1.「………………………………だ……だいす、き………………」

    2.無理だった。カウントがゼロになると同時に気恥ずかしさが限界に達した心が爆発して、私は死んだ。ぼっちのように。

  • 141二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 21:24:00
  • 142二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 21:31:38

    ここの山田はサラッと言いそうだけど絶妙に原作山田が混じってるのもいいな

  • 143二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 22:02:46

     よし、言った。言い切った。詰まらずに言えたかは自信がないけれど、大好きという言葉の体裁は保てていたはず。
     さあどうだ、と確認の意味も込めて周りのリアクションを窺ってみると──

    「──ぁ……うん……」

     虹夏は、私から目を逸らしつつそんな反応をしていた。なにそれ。

    「わあ………………」

     そして郁代は、何やら頬を赤らめて感嘆の溜め息を吐いていた。だからなにそれ。なにこの雰囲気。さっきまでみたいにキャーとかワーとかなるわけではないの?

     その他ギャラリーも似たような反応をするばかりだった。たまにまばらな拍手も聴こえてくる。
     苦しい。本当になんだこれ。新手の拷問か何か?
     こんなことになるなら大盛り上がりで茶化された方が遥かにマシなんだが。そっち系の反応に対する覚悟はある程度していたけど、こんな空気になる想定は一切してなかったんだが。

     なんだか死にたくなってきた…このままだと私もぼっちの後を追いかけてしまいそうだ。

     そんな私の気持ちを察してか、郁代がフォローのような言葉を付け加えてきた。

    「あっべ、別にリョウ先輩が滑ったとかそういうわけじゃないので安心してください!ただ、こう……うわあいいもの見ちゃったなあ……っていう気分にさせられちゃったっていうだけの話ですから」

     うんうんと頷くギャラリー。動画回しといて良かったわあ…とホクホク顔の郁代。私が滑ったわけじゃないならこの空気の理由は結局何なのさ……あと今動画って言った?何用?どっかに上げようとしてるわけじゃないよねそれ?やめてね?

  • 144二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 22:32:34

    このギャラリー共さては調査兵団だろ!

  • 145二次元好きの匿名さん23/07/06(木) 23:25:46

    >>144

    そんな壁外調査(部活帰り)みたいな…

  • 146二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 09:11:01

    星ゅ 歌

  • 147二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 18:59:18

    保守

    もしかしててえてえに満足してシリアスに戻る気無くした?

  • 148二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 20:41:56

    part1のドキドキ感が別ベクトルに…

  • 149二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 21:11:06

    虹夏ちゃん説得編→店長の手がかり編→結束バンド集合編って感じ

  • 150二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 08:12:36

    情緒不安定になるな・・・

  • 151二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 10:13:07

    ※この時点で店長の居場所はわかっていません

  • 152二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 16:09:48

    妹や結束バンドのことめちゃくちゃ大切にしてるはずの星歌さんが虹歌ちゃんに催眠かけて他の3人に何も言わずに自分の痕跡消して出ていくって本当に何があったんだろ...?

  • 153二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 22:07:02

    真相編気になる

  • 154二次元好きの匿名さん23/07/09(日) 00:19:51

    >>151

    それだとぼっちちゃんがファミレスを爆破したことになっちゃうだろ!

  • 155二次元好きの匿名さん23/07/09(日) 06:07:47

    ほしゅ

  • 156二次元好きの匿名さん23/07/09(日) 13:53:55

    そういえばPAさんはどこまで知ってるのかな?

  • 157スレ主23/07/09(日) 18:45:41

    すみません保守ありがとうございます
    やる気はちゃんとあるんですけど忙しくて…
    深夜か明日には更新出来るよう頑張ります

  • 158二次元好きの匿名さん23/07/09(日) 22:48:21

    >>157

    めっちゃ面白いっす

    無理のないよう進めてください!

  • 159二次元好きの匿名さん23/07/09(日) 22:53:13

    >>157

    続けていただけるならいくらでも待ちますよ!

    こんな面白い概念が中途半端で終わってしまわないか不安だっただけで、焦らせたいわけではないんです!

  • 160二次元好きの匿名さん23/07/09(日) 23:04:56

    ある程度まとまったらssにしたらよいのでは?

  • 161二次元好きの匿名さん23/07/10(月) 10:52:19

    保守

  • 162二次元好きの匿名さん23/07/10(月) 21:19:03

    ほしゅ

  • 163二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 08:43:10

  • 164二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 11:01:03

    焦らずゆっくり続けてくれ〜

  • 165二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 18:47:12

    「なんなの、もう……」

     戸惑いと呆れ返りで、私がそう呟くのと殆ど同時に──虹夏が吹き出した。

     そこでふと気付く。さっきまでは『ぼっちと郁代に再会してからの虹夏はやたら元気だ』って思っていたけれど──よく考えたら、二人と再会してから虹夏がちゃんと笑ったのって、今のが初だったんじゃなかろうか。

     とすれば、さっきまでたまに見せていた虹夏の元気そうな様子は緊張を誤魔化す為の虚勢のようなものであり、ここに来て、その無理に張っていた気もようやく抜けて、心が自然な状態になれた──ということなのかもしれない。

    「伊地知先輩?」

    「ふふっ、や……ごめ──っと、じゃないよね。もう、謝るのはやめる。これ以上は喜多ちゃん達の想いに、失礼だよね。だから……うん……ありがとう、喜多ちゃん」

     あと死んじゃってるけど、ぼっちちゃんも──と付け加えて。

    「なんかさ。喜多ちゃん達のこと催眠で私の『お姉ちゃん』にしちゃった時、正直、凄く幸せな気持ちだったんだけど……満たされるような気持ちで、いっぱいだったんだけど……」

    「こうしてちゃんと二人とも向き合ってみたら……喜多ちゃん達とは、『こういう関係』でいられる方が、ずっと幸せなんだなって──今は思えるんだ。なんか……不自然さがないっていうかさ。やっぱりこれが正しい形なんだって、思えるんだよ」

    「っ……!」

     郁代がぱあっと嬉しそうな顔をして「ほらひとりちゃん!これはちゃんと聞いとかなきゃ駄目な話よ」と呼びかけながらぼっちの頬を強めにぺちぺちとはたく。

    「──────ッは!??ああああれ、喜多ちゃ……あっそうだ、虹夏ちゃんは……!」

     これにてぼっちも蘇生完了。そういう手段もあるのか。お手軽だな。
     そして虹夏はこれを微笑ましげな顔で見ながらスルーして言葉を続ける。

  • 166二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:40:10

    「──でさ。さっきぼっちちゃんは……私のことを大切に思ってるからこそ、私にももっと、甘えを見せてほしいって……そんな風なこと、言ってくれてたよね」

    「あっ……は、はい」

    「喜多ちゃんもそう思ってくれてるって、考えちゃっていいのかな」

    「もちろんです!!」

    「……じゃあさ、私今から、『二人に甘えて』…………す、すごい……いやもうほんとに。すごくすごく……最低なこと、言うね」

     そう前置いて、虹夏は、また心に溜まろうとした緊張を入念に解すかのように、一度深呼吸をする。

    「……ん。まず、いきなり蒸し返すようでなんなんだけど……わ、私が二人にしたことってさ。やっぱりなんだかんだ言っても、簡単に許されていいことではないと思うわけ。だからさ────」


    「──二人にしたことを、私自身全部最初からなかったことにしたいから……二人の中でも、私にされたこと……全部なかったことにしてもらえたりしないかな?」


     そんな、本当に突飛でとんでもないことを言ってのけた虹夏だが、その言葉を聞かされたぼっちと郁代は、一瞬たりとも迷うことなく──

    「「──はい!」」

     微笑みながらそう即答した。当然だが催眠などを施されたわけではない、はっきりとした──彼女達の意思でだ。

    「──『ありがとう』、二人とも」

     虹夏がそう返して、郁代が「じゃあこの話はこれで本当に終わり!ですね!」と締めて、これ以降私たちがこの話題に触れることはなくなった。
     一見、こんなものは、何の意味のないやり取りに思えるかもしれない。
     けれど──『甘える』ことと『それを受け入れる』こと。
     今の最後のやりとりは、それがやっと出来るようになったのだということを、『虹夏』と『ぼっち・郁代』のお互いが形にして、認識し合う為の確認作業のようなものだったのだろうと、私は思った。

  • 167二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 19:47:21

    (それなら……これで虹夏は、もう本当に大丈夫だ)

     私達──結束バンドは、もう大丈夫。
     以前にも増して強く結びついたこの結束力は、もうちょっとやそっとのことで揺らぐことはないと、そう言い切れる。

     だから、私達の問題は、これで解決した。
     私達だけの話は──これで、完結した。
     したけれど、同時に、分かっていた。

     それはつまり、

     もう『何が起きても』私達の関係が揺らぐことはないとしても、その『起きるかもしれない何か』を放置しておくわけには、やはりいかないだろう──ということ。

     それを、私達は、もちろん分かっていた。

     だからここからの話は、それに向き合う時間ということになる。
     その、真の解決の為に。そうはならなくとも、せめて、全てに結論をつけて、全てを完結させる為に。

     私達は全員で──この店はもう人目が集まりすぎて集中して話すことが困難なので──人目を気にせず話すことが出来る静かな場所へ向かうことにした。

  • 168二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:25:03

    (拍手喝采で送り出す調査兵団)

  • 169二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 06:01:20

    調査兵団確定なのか…

  • 170二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 07:33:36

     ──『予定してる集合場所』に向かう道中。

     前の方で談笑している虹夏と郁代をぼーっと見つめながら歩いていると、


    「あっあの……リョウさん」


     ぼっちが私に潜めた声で話しかけてきた。


    「ん?なに、ぼっち」


    「ににに、虹夏ちゃんは、店長さんに関すること全部思い出せなくなっちゃってるってことですけど……」


    「……うん」


    「────す、STARRYのことは……?」


    「……………………」


     ぼっちと郁代のところに向かう道中でも、私は虹夏に色々と質問をしており、その中でSTARRYに関する質問も──当然した。

     具体的には、店長と密接に関係することが思い出せなくなることは確かだとしても──いったいどの辺りまでをラインとして、思い出せない領域扱いになってしまうものなのか、ということについて。


    「……そのことについては、私も虹夏に訊いてみたけど──」


    「はっはい……」


     その結果──


    dice1d2=2 (2)

    1.「虹夏は……どうやらSTARRYの存在自体も、殆ど思い出せない状態にあるみたい」

    2.「STARRYの存在自体や、STARRYで私達がしてきた会話やライブ……そういうエピソードのあれこれは──やっぱり店長に関する部分は改変されてしまいながらも、わりと思い出せる状態にあるみたい」

  • 171二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 09:08:27

    「そ、そうなんですね……それは良かったような……そそ、そうでもないんですかね?やっぱり」


    「いや、良かったよ。絶対に」


     店長がかけたと思われる催眠は、粗が多い。その理由はまだ分からないけれど──少しでも取っかかりになる部分が多くなってくれるなら、そっちの方がいいに決まっている。


    「……そっそれで、リョウさん。『今向かってる場所』って……」


    「うん──その、STARRY。まあ鍵とか持ってるわけじゃないから、なんとか入れそうならって感じで向かってはいるけど、駄目ならそのまま伊地知家の方に上がり込んで作戦会議だね」


     とはいえもうあの家にめぼしい店長の痕跡は残っていそうにないので……可能ならば、やっぱりSTARRYを探索してみたい。静かだから話し合いもしやすい環境だろう。


    「や……やっぱりSTARRYなんですね……」


     「でも──」と、更に小さな声で囁くぼっち。虹夏の方を気にしながら。


    「うん、言いたいことは分かるよ」


     そう、分かる。だってSTARRYは──


    dice1d2=1 (1)

    1.店長がいなくなってから、長期の休業中だ。待っていても、開くタイミングがあるとは考えにくい。

    2.まだ外見的には以前と変わりない形で残ってはいるけれど──お店としては、既に完全閉店してしまっているのだから。

  • 172二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 10:57:57

    閉まってたのか
    そりゃそうだろうけど

  • 173二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 11:17:00

    休業ってことは戻ってくる予定なのかな

  • 174二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 14:53:31

    (まあ休業と言っても、傍から見たらそういう状態にあるとしか思えないってだけで……唐突に店長がいなくなってしまった今のSTARRYが公的にはどういう扱いの場所になっているのかは、私達にもよく分からないんだけど)

     とにかく、行ってみる価値はあるだろう。そう思っているうちに──

    「リョウ先輩、言われるままに来ちゃいましたけど……目的地って、『そこ』であってますか?」

     私達はSTARRYが目と鼻の先という所にまで到着していた。
     道中で察していたとは思うが、それでも一応の確認のようにSTARRYを指さしながらそう訊いてきた郁代に、私も「うん」とだけ言葉を返す。そして一人早足で抜け出し、地下へ向かう階段を降りて、入口に鍵が掛かっているかどうかを確認してみた。が──

    (……まあ、やっぱり掛かってるよね)

     まあ、当たり前だった。そしてSTARRYは防音を理由にして地下に造られる、よくあるタイプのライブハウスだから、当然他の出入口や窓なども存在はせず──

    (どう足掻いても入れそうにはない、か……仕方ない、諦め──)

    「STARRYに入りたいの?」

     そう言ったのは、
     私に続いて階段を降りてきた──虹夏だった。

  • 175二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 21:03:50

    >>174

    虹夏ちゃん⁉

  • 176二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 01:13:27

    まあ身内だし店の手伝いもしてるし、
    鍵くらい持っててもおかしくないよな

  • 177二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 07:10:49

    ほんと自分の存在と関係する記憶だけ封印してったんだな

  • 178二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 16:27:11

    此処がキーポイントか…

  • 179二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 21:14:27

    このレスは削除されています

  • 180二次元好きの匿名さん23/07/13(木) 23:05:20

    保守

  • 181二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 07:23:25

    保守

  • 182二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 18:21:43

    流石にスレ主もどうすればいいか悩んでるか

  • 183二次元好きの匿名さん23/07/14(金) 22:46:51

  • 184二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 01:03:25

  • 185二次元好きの匿名さん23/07/15(土) 11:06:35

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