【SS・♀トレ】相合傘しましょう!

  • 1二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 00:07:24

    ある日のトレーナー室。
    生憎の悪天候で、屋外でのトレーニングは断念。屋内のトレーニング施設も予約が埋まってしまっているため、今日のトレーニングはお休みになった。
    まあ、代わりに英語やら何やらのお勉強をすることにはなったのだけれど。

    「これが梅雨ってやつですかね〜」
    「もう少ししたら明けるとは思うんだけどね」
    「これじゃあヒマすぎてヒマミラクルになっちゃいますよぉ」
    「うーん、座布団没収かな」
    「ひどいっ!?」

    机を挟んだ向かい側では、トレーナーさんが資料を整理している。
    ちょっと借りて読ませてもらったけど、わたしにはちんぷんかんぷんだった。もはや別言語でしょ、アレ。

    「よくそんなのスラスラと読めますよねえ」
    「伊達にトレーナーやってないからね」

    シャーペンをくるくる回しながら、トレーナーさんに視線を向ける。
    トレーナーさんは資料から視線をそらすことなく、わたしの話に答えてくれていた。
    ……いやホントに、何ならできないんだ、このヒトは。まあ、そういう「仕事人間!」みたいなところもカッコいいと思っている。

    「トレーナーさん、ここの語順なんですけど」
    「あー、そこはね──」

    トレーナーさんの協力を得つつ、問題集と向き合うこと数十分。
    何とかノルマを達成したので、少し休憩をとることにした。

  • 2二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 00:10:39

    「トレーナーさん、よくそんなに色んなこと並行してできますね」
    「そうかな?」
    「そうですよ、トレーニングのメニュー考えたり、レースの作戦練ったり……今もこうして、お仕事中なのに勉強教えてもらっちゃいましたし」
    「まあ、好きでやってることだし」
    「いいなぁ〜〜……」

    「でも、ミラ子も十分すごいと思うよ」
    「ほぇ?」
    「トレーニングとか、ライブのためのレッスンとか、学業とか」
    「そ、そうですかね〜……」
    「他にも、料理できるし、アロマとかの息抜きにも詳しいし」

    ……うん???
    これはなんだか、イヤ〜な予感。

    「そして何よりめちゃくちゃかわいいでしょ、話してて楽しいでしょ──」
    「ちょいちょいちょい!!ストーップ!!!」

    あーあ。やっちゃった。
    トレーナーさんのホメ殺しスイッチを入れてしまった。もうトレーナーさんとの付き合いも長くなるが、これだけはどうにも慣れない。

    「ごめんごめん、でもこれだけは言わせて」
    「……なんですか」
    「レースのときのミラ子、すっごくかっこいいよ」
    「──トレーナーさん、それ他の子に言っちゃダメですからね」
    「ミラ子以外に言わないよ」

    わたしはちょっとむくれて、机に突っ伏した。
    あ〜〜……顔あっつい…………。背中に変な汗かいちゃってる……。
    トレーナーさんのこういうところ、ホントにずるい。どうにかして、トレーナーさんを照れさせたい……!!

  • 3二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 00:13:04

    わたしは突っ伏した姿勢のまま顔を上げて、トレーナーさんに視線を投げた。

    「トレーナーさん、トレーナーさん」
    「うん?なんかあった?」
    「ちょっと散歩しません?」
    「いいけど……雨降ってるよ」
    「だからこそですよ。ちょっと特別な散歩ってことで〜……どうです?」

    ーーーーーーーーーーーー

    「おぉ〜、雨ですねぇ」

    外は土砂降りほどではないけれど、それなり──いわゆる「ふつ〜」な感じの本降りだった。
    わたしは傘をさし、一足先に外に出る。

    「ささ、トレーナーさんも入った入った」
    「ええ?」
    「相合傘ですよ、相合傘!」
    「うーん……じゃあ、遠慮なく……」

    トレーナーさんとわたしの身長は幸いにも同じくらいで、特にキツい体勢にならずに済んだ。ラッキ〜。

    「いやあ、雨の中の散歩もなかなかオツなもんですねえ」
    「確かに、なんか新鮮かも」
    「それよりトレーナーさん、どうですか?」
    「え?だから新鮮かも〜って」
    「そうじゃなくて〜」

  • 4二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 00:14:13

    これですよ、と傘を示す。
    トレーナーさんはほんの少し考えるような素振りを見せたあと、

    「ちょっと、恥ずかしいかも」

    いよしっ!「恥ずかしい」いただきました!!
    勝ったなガハハ!!!

    「フ。そうですかそうですか〜」
    「教え子に傘持たせちゃってるし」
    「…………」

    そういうのじゃなくって〜〜!!

    「ほら、もっとこう、他にあるじゃないですか」
    「ほか?」
    「その……照れる、とか」
    「あ〜〜〜……」

    あ〜〜〜〜〜〜????
    そのリアクションはビミョーなやつじゃん……。
    くっ、結局これじゃだめなのかぁ……?

    「……まあ、照れるっちゃ照れるけど」
    「ほ〜う、どこがです?」
    「ほら、尻尾」

    相合傘に照れているわけではないことに疑問を覚えながら、トレーナーさんに言われるまま、尻尾の行方を追う。
    その先は、見間違いようもなく、トレーナーさんの脚にくるんと絡みついていた。

  • 5二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 00:15:37

    「もしかして……気づいてなかった?」
    「〜〜〜〜〜〜っ」

    顔が沸騰しそうなくらい熱くなるのを感じて、咄嗟に尻尾を解く。


    やばい。


    やばいやばいやばいやっちゃった〜〜……!!


    「えとですね、これはなんと言いますか、その、えっと、無意識、で……!!」

    視界がぐるぐると回る。汗がどんどん溢れてくる。
    わたしは半ば自分に言い聞かせるようにして、言葉を並べ立てた。

    「あの……忘れてください。めちゃ恥ずいんで」
    「ごめん、あまりにもかわいかったから無理かも」
    「きゅぅ…………」



    もう、お嫁に行けない…………。

  • 6二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 00:17:41

    おしまい

    ミラ子のエミュが難しいよ〜〜!!

  • 7二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 00:19:43

    良い…実に良い…(灰になる音)

  • 8二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 00:23:47

    すばらしい

  • 9二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 00:54:09

    >>7

    >>8

    ありがとうございます、活動の励みになります!!

  • 10二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 01:51:14

    可愛いやん…良い…

  • 11二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 08:00:03

    朝から良いもん読ましていただきました

  • 12二次元好きの匿名さん23/06/28(水) 16:01:06

    最近SSスレ多いね

  • 13二次元好きの匿名さん23/06/29(木) 03:28:22

    ミラ子×︎︎ ♀トレ概念好き過ぎて辛い……ありがとう…

オススメ

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