【SS・♀トレ】それはまだだめです

  • 1二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 23:13:26

    ある日のこと。わたしはトレーナーさんと商店街へお出かけに来ていた。
    今回のオトモははちみーとクレープ。そして、トレーナーさんに持ってもらってるたい焼き。

    「ふふー。はちみーにクレープ、それにたい焼き〜。……本当に、こんなに食べちゃっていいんですか?」
    「レース頑張ったからね。いつものゴホウビだよ」
    「やたっ!」

    明日からはちゃんとトレーニングするからね、というトレーナーさんの言葉を半分聞き流しながら、わたしはクレープにかぶりついた。

    「ん〜ん〜♪やっぱ甘いのってさいこ〜」
    「私もひとくちもらっていい?」
    「もちです!どーぞっ」

    ぱくっ。
    トレーナーさんに「あーん」をするような形でクレープをあげると、たちまちその顔が綻んだ。それを見て、わたしも思わず口元が緩んでしまう。

    「……んふふ」

    ──やっぱり、一緒に過ごす時間が楽しい。
    そんなことを考えつつ、わたしはもう一口クレープを頬張る。
    生クリームが詰まったそれは、なんだかさっきよりも甘く感じた。

  • 2二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 23:13:46

    しばらくして、日が傾いてきた頃。
    歩いているうちに、やがて公園に着いた。
    せっかくだし休んでいこうか、というトレーナーさんの提案で、手頃なベンチに腰を落ち着ける。

    「ふぃ〜。歩いたあとのはちみーは効くなぁ……」
    「もう、そんなおじさんみたいなこと言わないの」
    「だって、ほんとに美味しいんですもん。いつも飲んでるやつなのに、いつも以上に美味しいっていうか」
    「……いつも?」

    途端に、トレーナーさんの眼光が鋭くなる。
    ……やば。やっちゃった。

    「あー……えっとですね」
    「ミ〜〜〜ラ〜〜〜子〜〜〜???」
    「違うんですっ!これにはプールや海よりもふか〜〜〜いワケが」
    「へぇー。ワケ、ねぇ?」

    聞くだけ聞いてやろうじゃないの、とニヤニヤしているトレーナーさん。
    トレーナーさんのことだから、きっとバレちゃってるなー。

    「……新作が、出ててェ……」
    「うんうん、それで?」
    「毎日のトレーニングで、もう疲れちゃってェ……」
    「うんうん、それで?」
    「全然動けなくってェ……」
    「うんうん、それで?」
    「ちょっと、サボっちゃおうかな〜……って……」

  • 3二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 23:13:59

    「こらっ」

    ぺちっ、とデコピンを食らう。
    痛……くはないけど、ちょっとジンジンする。

    「こりゃ、プールの刑かな?」
    「ひどっ!?それだけはどうかご勘弁を〜!」
    「勘弁しません〜」

    やいのやいのと言い合っているうちに、とん、と何かが足に当たる感覚。
    足元を見てみると、小さなボールが転がってきていた。
    ややあって、その持ち主らしき女の子がとてとてと駆けてくる。

    「あ、みゆのボール!」
    「このボール、あなたの?」

    ボールを手渡してあげると、息を切らした女性がやってきた。……お母さんかな?

    「すみません、わざわざ拾っていただいて」
    「いえいえ。大丈夫ですって〜」
    「ありがとうございます。ほら、みーちゃんも」
    「うん!おねえちゃん、ありがと!」

    そう言って、みーちゃんと呼ばれた女の子はボールを持って戻っていった。

    「元気でいいね」
    「ですね〜。幸せになれよぅ」

    ──みーちゃん、かあ。
    わたしは、お父さんに「クーちゃん」と呼ばれていることを思い出した。

  • 4二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 23:14:16

    「トレーナーさんって、ご両親になんて呼ばれてます?」
    「私?私は普通に名前かな。ミラ子は?」
    「お父さんに、クーちゃんって」
    「おー、かわいいね」

    「トレーナーさん、トレーナーさん」
    「ん?どしたの」
    「クーちゃん、って、呼んでみてもらえます?」

    柔らかく笑うトレーナーさんを見て、ちょっとだけ試してみたくなった。

    「……クーちゃん」
    「──っ!?」

    ……。
    …………これは。
    なかなかに、破壊力が──。

    「あはは、クーちゃん、顔真っ赤だよ」
    「ちょっ、ちょっとタンマ!」

    顔が熱くなっているのを自覚しつつ、わたしは顔を手で隠す。そんなんでガードできるわけでもないのに。

    「っ、やっぱ無理!ミラ子のままでいいですっ!」
    「えー。私はかわいいと思うけどなぁ、クーちゃん」
    「かわいいかどうかじゃないんですって!」
    「ふふ、ごめんごめん」

    ……これは、しばらくはいじられそうだなぁ。
    そんな確信めいた予感を抱きつつ、わたしはため息をつくのだった。

  • 5二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 23:14:52

    おしまい
    ミラ子はつよつよトレーナーにたじたじになってもいいし、こっそりトレーナーに愛を囁いてもいいと思っています。
    ひと粒で2度おいしい。

  • 6二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 23:17:02
  • 7二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 23:17:11

    良いものを見た

  • 8二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 23:25:54

    ありがとう……

  • 9二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 23:32:39

    貴殿か、毎回素晴らしいSSをありがとう…

  • 10二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 23:40:03

    >>7

    >>8

    >>9

    感想ありがとうございます!

    次回も頑張ります

  • 11二次元好きの匿名さん23/07/01(土) 23:47:03

    >>2

    >新作が、出ててェ…

    ティアキンなのかはちみーなのかどっちだ?

  • 12二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 00:07:56

    あんたか!!ありがとう

  • 13二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 00:31:06

    スゴいペースで書いてるのに毎回面白い!
    ありがとう!

  • 14二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 00:44:51

    >>11

    >>12

    >>13

    感想ありがとうございます!

    1日1本を目標に書いております

  • 15二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 07:35:58

    あげ

  • 16二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 07:44:23

    コログ構文で言い訳するミラ子でちょいわろ
    クーちゃんって呼ばれて照れるの可愛いね

  • 17二次元好きの匿名さん23/07/02(日) 18:06:09

    ミラ子かわいいよミラ子

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