- 1二次元好きの匿名さん21/12/09(木) 15:29:42
私にもたれかかる彼女の髪はしっとりと湿っていた
「ウララ、キチンと頭を拭けていないじゃないか拭き直してきなさい」
「えっー!じゃあトレーナーが拭いてよぉ」
「なら、タオルとドライヤーを持ってきなさい」
はぁいと気の抜けた返事をしトコトコと脱衣所に歩いていった彼女を見て思う
中等部とはいえまだまだ子供だな…と
合宿場の談話室で雨に濡れた後の彼女の頭を拭き温風を吹きかけ乾かす
「トレーナー!乾いた?」
「んー、ヨシ終わりだよ」
彼女はそれを聞くと背後の私の足に倒れ込む
よかったどうやら完全に乾いているようだ
「トレーナー!ハルねやっぱり走るのが楽しいよ!うーんいつになったら雨が止むのかな」
「ウララ、残念ながら今日は一日雨降りだね
今日は室内トレーニングだよ」
「えぇ〜でも〜」
「デモもテロもないよウララ、ほら行くよ」
「はーい」
生返事をするが何処となく嬉しそうにする彼女をいつものように背負いトレーニング場へ向かう
そのままトレーニングをし今日1日を終えた - 2二次元好きの匿名さん21/12/09(木) 15:29:52
自室に戻り荷物を軽く整理した後
写真立てを手に取り覗き込む
そこに移る一番大切だった2つの宝物を見て思わず言葉が口を突いて出てきてしまう
「もう随分と色褪せてしまったな…
ハル、お前にそっくりな娘が私の担当バになってこの前初めて勝つことができたんだ、お前と同じで外で駆け回る事が一番好きな娘だよ。
勇里、春香にそっくりな娘を受け持つことになったんだ
彼女は自分のことをハルと呼ぶから余計に春香のことを思い出してしまうよ」
感傷に浸っていてはいけない
明日は彼女が楽しみにしていた屋外トレーニングなのだ
私ももう若くないのだから体力を回復するためにも早く寝なければな
そう考え、部屋の電気を消し布団に入り込んだ - 3二次元好きの匿名さん21/12/09(木) 15:31:26
- 4二次元好きの匿名さん21/12/09(木) 15:32:45
しまった良かれと思ってハートつけてしまった・・・
- 5二次元好きの匿名さん21/12/09(木) 15:51:19
さて、自分のことをハルというウララは娘の呼び方をしっているのか、それとも偶然か…
ウララは誰かから聞いたがそれをトレーナーを知らないという状況は私性合 - 6二次元好きの匿名さん21/12/09(木) 15:53:57
- 7二次元好きの匿名さん21/12/09(木) 15:54:00
朝、目が覚める
いつも聞こえる彼女の声だ
「トレーナー!朝だよ〜
お〜き〜て〜」
こういう朝早くに起き私を起こしにくるところまでそっくりだ
「ウララ、先に朝頂いてきなさい
私は着替えてから向かうから」
返事が聞こえドアの前から足音が遠ざかる
時計を見ると5:50分
私も急がなければトレーニングに遅れてしまう
急ぎ着替え下に下り食堂に向かう
一つハルとウララの違いがあるとすると彼女はまだ食事中だった
当然だ人間とウマ娘の食事量は大きく違う
「ウララ、そんなに急いで食べると喉に詰まらせるよ」
「だいじょ〜ぶ!だって早くトレーニングをしたいもん!」
私も近くに座り朝食を頂く、急いで食べなければ彼女のヤル気に失礼だ
早く食べたつもりではあったが気がつけば時計が天地を指していた
口の中身をお茶で流し込むと彼女もちょうど食事を終わらせていたようだ
「よし!じゃあウララ外に出てトレーニングを始めよう、まず腹ごなしにストレッチからだね」
「よーし、ハル頑張るよ!」
食器を下げ外に駆け出す彼女を見ながら思う
ハル、今日も父さんは頑張るよ
そんな日常 - 8二次元好きの匿名さん21/12/09(木) 16:10:28
妻と思わしき人物
勇里は
ヒロイン→主人公→勇者から
勇を取りました - 9二次元好きの匿名さん21/12/09(木) 17:35:59
ある日の事
過去の資料を探そうと資料保管庫に向かう途中
慣れ親しんだ声が聞こえた
いけない事と理解していながらどうしても気になってしまい足を止め聞き耳を立てる
「ウララさん、あなた初めて会った頃はご自分のことをウララって言ってましたよね
どうしてハルに変えたんですの?」
「えっとね〜トレーナーに名前を教えた時に
ちょっとビックリした顔になってたんだー」
そうだ彼女に名前を聞いた時に思わず息を飲んでしまったのだ
「それとねトレーナーが私の名前を呼ぶ時に悲しそうな顔をしてウララって呼んでた事があったの、それでもしかしてトレーナーにとってウララって名前が何か悲しいことなのかなって思ったの、だから私はハルって言おうと思って変えたんだ〜」
私はウララの名前を呼ぶ時にハルのことを思い出してハルウララとは呼べなかったのだ
あまりにも似過ぎていた為に…
しかしまさか担当バにそのような気遣いをさせてしまっていたとは私はトレーナーとしてまだまだ未熟だ
「それとね…ゴニョゴニョ」
気づかれないうちに離れよう
そう思いその場を後にした - 10二次元好きの匿名さん21/12/09(木) 17:44:39
しばらく資料を漁りウララのトレーニング計画を立てる
過去に同じような脚質のウマ娘がいないか
どのように成長したか、どんなトレーニングを受けたかを調べ上げる
ペーペーなら先輩に聞けば終わる話だが今や自分よりも経験が多いトレーナーを探す方が難しい
己の足で情報を探し当てるしかないのだざっと必要な洗い出しまとめ資料保管庫を施錠する
来た時と同じ道を歩き印刷室に足を向ける
道中チャイムの音が鳴る
「あっ!そろそろトレーニングの時間だバイバ
イ!キングちゃん!」
私の担当バだ
「あっ!トレーナーだ!先に外で待ってるよー!」
「はいはい、しばらくかかると思うから先に自主トレをしておいてちょうだい」
「わかった!じゃあね〜」
駆け出すウララを見送り資料を急ぎ整頓することにした
「よしウララ、今はどのような具合だい?」
「バッチリ!いっぱい走れるよー!」
元気よく応えるウララを見て今日のトレーニング内容を記したプリントを渡すことを決めた
「出来そうかい?少しいつもよりも多いけど」
「うん!ハル頑張よ!」
先程耳に入れた会話を思い出す
彼女に無理をさせてハルと言わせているのではないかと、自分のことをウララというように促した方がいいのかと考えてしまう
考えているうちにウララは走って行ってしまった - 11二次元好きの匿名さん21/12/09(木) 18:07:26
やがて時間が経ち無事トレーニングを終えることができたウララが戻ってくる
「お疲れさまウララ、どうだい?続けられそうかな」
「う〜ん、大丈夫!ハルはまだまだ平気だよトレーナー!」
「そうかい?じゃあ明日もこのメニューをベースに考えていくよ、無理はしないようにね」
ウララに明日の集合時間を伝え解散をしようとするがハルの件を思い出した、ここで伝えておくべきだろう
「ウララ、いやハルウララ「えぇ⁉︎どうしたのトレーナー!急に私のことをハルウララって言って⁉︎」そこまで慌てることじゃないよ」
「もしかして今日のあの話を聞いたの…?」
ウララに芯をつかれてしまった
正直に言うしかあるまい
「ごめんねウララ、気になって少し耳に入れてしまったんだ、僕が悲しそうな顔をしたから気を使わせてしまっていたんだね」
それを聞くと少しウララがホッとしたような顔になる
「ううん!大丈夫!私は自分のことはハルって言うの!だからトレーナーはウララって言ってね、そうしたら名前がすぐにわかるでしょ!」
少し違うような気がするが本人がいいならヨシとしておこう…
「でもトレーナーもひどいよ〜ナイショなのにこっそり聞くなんて〜」
「ごめんねウララ…じゃあ1つだけ言うことを聞いてあげるよ」
「え〜ほんとぉ!じゃあねハルがトレーナーのことを名前で呼んでもいい?」
「いいけども、それだけでいいのかい?」
それだけでいいなら願ったり叶ったりだが
「うん!いいよ!じゃあ呼ぶよ!音尾さん!」
今度にんじんパンでも買ってあげようかな…