【SS・♀トレ】埋め合わせしてくださいね

1123/07/05(水) 20:01:07

｢こんにちは〜、今日もあなたの担当ウマ娘が来ましたよ〜っと｣

勢いよくトレーナー室の扉を開ける。
でも、返ってきたのは静寂だった。
どうやら、トレーナーさんはまだお留守みたい。

｢なんかあったっけ｣

壁にかけてあるカレンダー──お互いのスケジュールとかが記載されている──を見ると、そこには｢会議｣の二文字。
あちゃ〜、忘れてた〜。

ぴろん。
スマホから木琴みたいな音が鳴って、LANEの新着メッセージを知らせる。トレーナーさんからだ。
内容はいたってシンプル。
『ごめん、会議長引きそうだから待ってて！』。

なーんだ、会議長くなるんだったら、ちょっとカフェテリアとかでゆっくりしていけばよかったかも。
……でもなー。今からわざわざ行くのもめんどいんだよなぁ……。

｢……ま、いっか｣

とりあえず、テキトーに時間つぶそーっと。
そう思い、本棚に立ててある本を眺める。

トレーニング理論。ちんぷんかんぷんだからパス。
レース雑誌。わたしが取材を受けたやつもある。これもだいたい読んだからいいや。
アスリート向けのレシピ本。……いつか作ってくれるのかな？楽しみにとっておこうっと。
レースの優勝トロフィー。いやあ、わたしも結構がんばったなー。
……こんなもんか。

2123/07/05(水) 20:01:24

トロフィーはまだしも、他のものはあまり読む気にはならなかった。
本棚を漁るのも飽きてしまい、ソファに横になる。
スマホを取り出し、ウマスタやウマッターを眺めることにしたけど、すぐにタイムラインを見尽くして、こちらにも飽きてしまった。

……。
…………。
どれくらいの時間が経ったかな、と思って時計を確認すると、まだ15分しか経っていなかった。

｢……もう｣

なんだか腹が立ってきた。
ほらほら〜、トレーナーさーん？あなたの担当ウマ娘が退屈してますよ〜。早く帰ってきたらどうですか〜？
わたしはソファの上で足をぱたぱたさせる。
……遅いなぁ。

もう一度スマホを見るけど、新しくメッセージは来ていない。
……なんでこんなにモヤモヤするんだろ？わたし、こんなにめんどくさかったかぁ？

｢う〜〜〜っ！｣

足のバタつきが大きくなる。
ああもう、やめやめ！こんなことしててもしょーもないし！
……トレーナーさんが帰ってきたら思いっきり甘えてやろーかな。

3123/07/05(水) 20:01:40

そう思ってソファから起き上がると、不意にドアが開いた。

｢ただいま。ごめんね、遅くなっちゃって｣

そこには、待ちに待ったトレーナーさんの姿。
わたしはわざとらしくむくれてみせる。

｢遅いですよ、トレーナーさーん？｣
｢ごめん、終わって爆速で来たから許して──わわっ｣

わたしはトレーナーさんをソファまで引っ張って、隣に座らせた。

｢もー、わたしがどれだけ待ったと思ってるんですか？｣
｢ご、ごめんって｣
｢まあいいです。ささ、ミーティングやりましょっ｣
｢は、はぁ……｣

トレーナーさんは困惑しつつも、そのままミーティングを始めた。

わたしって、これまでどうやって暇つぶししてたっけ。
記憶を辿ってみる。おしゃべりしたり、おやつ食べたり、お散歩したり。
でもその隣には、いつもトレーナーさんがいたような。

｢──てなわけで……ミラ子、聞いてる？｣
｢はいはい、聞いてますよ〜｣

わたしは普段より手のひらいっこぶんぐらいトレーナーさんに近づいて座り直した。
……今は、これぐらいで許してあげます。
でもいつかは、ちゃんも埋め合わせしてくださいね♪

4二次元好きの匿名さん23/07/05(水) 20:02:27

このレスは削除されています

5123/07/05(水) 20:04:00

おしまい

こちら、下記スレのお題『あなたを待つ時間』で書かせて頂きました

↓↓↓

(ようやく分かったSSを書ける人は凄いのだ)24｜あにまん掲示板「初めてSSを書いてみたら難しすぎて一作品完成させる事ことすらできなかったのだ。スレでハートを50近く貰う人…pixivでランキングに乗る人は雲の上の存在なのだ」という初代の嘆きに応えて文字書き達が…bbs.animanch.com