- 1◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:45:32
- 2◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:46:04
あの日がいつだったのか、正直憶えていない。
一年の内でどの日だったのかは重要ではなくて、どんな出来事だったのかが大切だったから。
ひとりぼっちになって泣くことしか出来ない私は、誰かに会いたい、見つけてほしいって願うしかなかった。
そのお願いは、叶えてもらった。私ひとりだけでは敵わない、助けてもらった日。
それはきっと、生まれたばかりのお星さまが誰かに見つけてもらえるように。
あるいは、昔のお話にあやかって願い事を書き、笹に吊るすように。
何でもない日であっても、特別な日であっても。その出来事があった日は、私にとって大切な日。
その誰かは、私を探してくれる。ううん、私を知らなくても見つけてくれる。
だって、あの日も今日も。私は―――――― - 3◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:46:35
「アヤベさ~ん……聞いてくださいよぉ~……」
「さっきから聞いているじゃない」
七月に入って間もないある日。
私たちの部屋でカレンさんが愚痴を零している。かれこれもう何十分といったところで、いったいいつになったら終わるんだろうと思う。
内容は、彼女のトレーナーが講習で学園を離れるというもの。正確にはもう離れていて、それは私のトレーナーも同じ。だから、そんなに何度も話さなくても分かるのに。
でもまあ、愚痴というのはそういうものなのだろうとも理解出来る。赤の他人であれば、長時間それに付き合うというのは難しいのだろうけれど。
本来であれば。いいえ、少し前の私であれば、『やめなさい』の一言で切って捨てていたことだろう。
あの子……今となっては私の中から消えてしまった妹の為だけに行動していた私であれば。 - 4◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:47:06
それが紆余曲折あって、今の私に至っている。たった四文字で表せてしまうけれど、本当に色々なことがあった。
カレンさんがルームメイトになった頃は、まだひどくなかったと思う。私にも少し余裕があって、彼女にふわふわを贈ったり星のことを教えたりした。安らいで眠れるように歌を聞かせたことも。
いつから余裕がなくなったのだろう。高等部に上がる直前? それでも、何か決定的な出来事があったわけではない。少しずつ、私が私を追い込んでいった。それだけ。
たったそれだけなのに、いとも簡単に私は壊れていった。出来の悪い玩具のメッキが剥がれていくかのように。
あの人と契約したのは、それから少ししてから。煩わしい、いいえ、邪魔とさえ感じていた存在を、ただレースに参加する為に利用しようとしていた。面と向かって言い放った私を、それでも受け入れてくれたトレーナーさんには感謝している。
でもその頃の私は、相変わらず周りに迷惑をかけていた。トレーナーさんに対しては言うまでもなく、カレンさんに対しても。安心して眠ってもらうどころか、私がうなされ続けることで睡眠を邪魔してしまっていた。
そんな私に、カレンさんは不平不満を一言も言わなかった。それどころか、絶えず私を心配してくれていた。そのことを知りつつ、私はそうしてもらう価値はないと思っていた。あの頃の私は、そうだった。
あの時だってそう。トレセン学園の門を叩く者であれば憧れてしまう一生に一度のレース。その内のひとつで、一着を取ることが出来た日。 - 5◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:47:38
寮に帰ってくれば、カレンさんがケーキを買って待っていてくれた。私のお祝いだと。久しく彼女に何もしていなかったというのに、私の為に。
正直、嬉しかった。もう何年も前に過ぎ去ってしまったかのような昔が思い出されて、一緒に食べようとした。
でも、私には出来なかった。美味しくなかったわけじゃない。私が一度だけ話した好みに合わせてくれたケーキだったのに、半分も食べられなかった。
それは、私の頭の中によぎった一言。『ねえ、お姉ちゃんだけ?』今振り返ってみれば分かる、あの子の殻をかぶった私の罪悪感による言葉。
具体的な内容は何もないというのに、それだけで私は蹲ってしまった。それから後のことは、あまり憶えていない。思い出したくない。
言えるのは、私はカレンさんにひどいことをしてしまったということ。それまでも、それからも。だというのに、カレンさんは許してくれた。一層気に掛けてさえくれた。
そうして、私は私だけになった。語っていないこともたくさんあるけれど、カレンさんへの恩はもう十分過ぎるくらいだ。
この恩もあるし……何より、カレンさんもトレーナーさんやあの子たちと同じくらい大切な存在だから、どんな話でも聞こうとは思う。
そのこと自体は構わない。でも、こうして半ば思考に身を浸している私にずっと話し続けているカレンさんの様子は、どこかいつもと違っていた。 - 6◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:48:09
「……それなのにお兄ちゃんってば、『あ、明日から講習だから』ですよ~? ひどいですよね~……?」
「あなたのトレーナーさんも忙しかったんでしょう? こっちも同じようなものだったし」
明確に指摘出来るかというと、とても難しいことだった。同じクラスのあの子ではないけれど、ほんのちょっとした部分がとにかくすごく違う、というような曖昧さ。
愚痴を零しているのだから、気を落としているのは分かる。耳がしおれて前に何回も折れるのもその証拠。
「アヤベさんのところは何でもお話してくれてるんですよね? でもお兄ちゃん、どこか抜けているっていうか……」
「あなた、いつも話してくれるじゃない。そういったところがあるから、あなたの言うところの、お、お兄ちゃんに、か、カワイイの見せ甲斐があるって」
「そうなんですけどぉ~……」 - 7◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:48:48
……おかしい。いつもであれば私のさっきの隙を突いて、『アヤベさんもアヤベさんのトレーナーさんをお兄ちゃんって呼びません?』『アヤベさん、カワイイを恥ずかしがっちゃ駄目です! さあ、カレンに続いて? アヤベさんカワイイ!』などとまくし立てるというのに。
それに、カレンさんはこんな愚痴の零し方はしない。たとえぼやくのだとしても二言三言で終わって、今回の話題であれば、『自分のトレーナーとのコミュニケーションエラーは自分のカワイイが足りないから。次はいかにもっとカワイイ自分を見てもらうか』というように、自らの努力不足に目を向ける筈。彼女は意外にも、生産性のない行動はしない。
「寂しいなぁ~……お話したいなぁ~……」
「そんなに言うなら電話でもメッセージでも可能でしょう?」
「えっ……それは、その……」 - 8◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:49:32
まただ。普段のカレンさんは、どんな短い時間でも彼女のトレーナーとコミュニケーションを取ろうとする。もちろん相手の予定や早朝、深夜など遠慮することはあるけれど、こんな形ではない。本当に、どうしたのだろう。
珍しいことにもじもじと体をくねらせるカレンさんを横目に、ふと私は壁に掛かったカレンダーを見た。誤解を恐れずに言うならば、カレンさんがおかしくなったのは5月の中旬頃から。それから徐々にひどくなってきている。
最近はお互いにレースの結果も悪くなく、プライベートで何かトラブルといったことも聞いていない。はっきりとした原因がないのであれば、何か気分転換になるものがあればいいのだけれど――――――
そこで、私はあることを思いついた。視線を固定したままのカレンダーに記されている数日後の日付。昔、カレンさんがその日にまつわる伝説になぞらえて、私を織姫様だと言ってくれたことを思い出す。
私は自分に抱きついたままのカレンさんを見下ろして、こう提案した。
「ねえ、カレンさん。今度の金曜日なのだけれど……」 - 9◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:50:04
だめ、ダメ、駄目。こんなの、全然カレンらしくない。
何が原因かなんて分かりきっている。きっかけは、間違いなくあの日を過ぎたから。
でも、どうしてその日なの? あの日から、もう何日も……ううん、何年も経っている。もうとっくに慣れたと思っていたのに。
家から離れて、学園にいるから? 家にいた頃よりも、もっともっと離れてしまったから?
そんな。ここに来てすぐにお兄ちゃんにトレーナーになってもらって何年も経つのに、今更?
毎週は無理だけど家に帰ったら兄さんにも会いに行ってるのに。どうして。
アヤベさんも元気になって、こうして愚痴にも付き合ってもらえてる。こんな内容はカワイくないけれど、アヤベさんとお話できるのは嬉しい。
お兄ちゃんがいないのは寂しい。でもお仕事で、自惚れなしにカレンのために頑張ってくれてるんだもん。ワガママなんて言えない。 - 10◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:50:35
それなのに、どうしてこのもやもやは晴れないの? どうして不満が零れていくのを止められないの?
このままじゃ、カワイイカレンでいられない。何とかしなくちゃ。だって、ずっとひとりで出来ていたんだから。カワイイの勉強みたいに、ひとりで。
そうしなきゃ、アヤベさんにもお兄ちゃんにも迷惑をかけちゃう。何とか、何とかしないと………………え?
お出かけ? それも、アヤベさんからのお誘い?
いつものカレンだったら嬉しい筈なのに、カレンダーのその日が目に入って別の悩みが増えた。
ああ、どうしてその日なの? お兄ちゃんに初めて会えた日。違う、そんなの幼くてはっきり憶えていなくて。カレンがイメージと勝手に結び付けた日。
違うの。その日は本当に嬉しいことがあった日なの。寂しくなんてない。
その日を無事に過ごせれば、カレンはカレンに戻れる? カワイイカレンのままでいられる?
その日までもう何日もない。私に出来ることは……………… - 11◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:51:05
7月7日。放課後に私はカレンさんと一緒に街に来ていた。我ながら疑問に思うけれど、私の方から誘った。
今日の夜に私たちのトレーナーが講習から帰ってくるというので駅に迎えに行くのと、それまで時間をつぶそうと考えたのだ。
その提案をした当初はぎこちない反応だったカレンさんだったけれど、今私の隣にいる当の本人は。
「デート~♪ デート~♪ アヤベさんと、デート~♪」
その時間つぶしをデートと称して浮かれている。お互いに私服で待ち合わせたものの、おしゃれに疎い私でも彼女の装いは力が入っていることが分かる。楽しみに、していてくれたのかしら?
どこから見ても、カワイイカレンさんといった感じだった。彼女が日頃から口にしている姿勢がそのまま表れている。
「まったく。そういうのは自分のトレーナーとすればいいでしょう」
私の言葉にカレンさんが目をきらりと光らせた気がする。 - 12◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:51:36
「あっれ~? アヤベさんも、アヤベさんのトレーナーさんとデートしたいんですか~?」
「そ、そうは言っていないでしょう。私はあなたのことを……」
「じゃあ、アヤベさんはデートしたくないんですね?」
「そんなこと! ……い、いえ、私があの人としたいとかそういうわけではなくて」
「ふ~ん? で、も~……今日はカレンとデートですからねっ♪」
「もう……」
すっかりカレンさんのペースに乗せられてしまったわ。カレンさんも、元に戻ったのかしら?
まあ、デートかどうかはともかく。楽しまなくては、ね。そう思って私は手帳を取り出した。
「わっ!? アヤベさん、ページにびっしりじゃないですか。もしかして、それ全部見て回るつもりですか?」
「さ、流石にそこまで時間はないわ。ただ、その……」
「その?」
「その、遊びに行くってどういうことか分からなくて、それで調べたらたくさん出てきて……何か参考になるかもと思って書いていたら……」
「……全部、書いちゃったと」 - 13◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:52:07
恥ずかしくて頷くしかなかった私をカレンさんは暫し見つめていたかと思うと、突然抱きついてきた。
「アヤベさん、カワイイっ!」
「ちょ、ちょっと、離れて……!」
「離れません! さあ、どこから行きます~? まずはウィンドウショッピングかな~」
「分かったから、抱きついたまま歩かないで……! あ、歩きにくいわ……」
結局カレンさんは完全に私から離れることはなく、手を繋いだまま私のメモから行けそうなところを向かうことになった。 - 14◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:52:38
……大丈夫、アヤベさんにも不審がられてない。ファンのみんなの前みたいに、Currenでいるみたいに意識していれば、大丈夫。
せっかく、アヤベさんが誘ってくれたんだもん。二人でいっぱい、楽しまなくっちゃ。
大丈夫、カレンはカワイイ……カレンはカワイイ……………… - 15◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:53:09
「ふわふわ……」
「ア・ヤ・ベ・さ・ん! 何分この売り場に張り付くつもりですか!? もっと他のところにも行きましょうよ!」
「でもカレンさん、これみんな新商品なのよ? これはぜひ買わないと」
「だったら全部買えばいいじゃないですか!?」
「いえ、学生の身で浪費はいけないと思うの。吟味して選ばなければいけないわ」
「いっつも布団乾燥機で電気、ふわふわなものに飛び込んで時間を浪費しているアヤベさんが言いますぅ!?」
「こっちは弾力性が素晴らしいわね……ああ、こっちは柔らかさを重視している分包まれる感覚が……」
「カレンの話を聞いてください! レビューはお部屋のスリッパだけにしてくださいってば!」
お店でふわふわに囲まれている私をカレンさんが引っ張り出そうとしたり。 - 16◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:53:40
「見てカレンさん。さっき買ったこれ、ハンカチなのに濡れてなくても冷たいなんて。やるわね」
「誰と戦ってるんですか、もう。ほら、ちょっと休憩しましょう?」
「ここ、もしかして」
「そうです。あの時のケーキ、ここで買ったんですよ」
「その、ごめんなさい。あの時は……」
「いいんですよ。買ってすぐにここで食べられるみたいですし、さ、何食べます?」
「そうね……」
「今はレースも近くないですし、いっぱい食べられますよ!」
「夕ご飯もあるし、そもそもそんなに食べられないわ」
「そうですよね、もしそんなに食べたらアヤベさんのお腹もふわふわじゃなくて、ぶよ……」
「カ・レ・ン・さ・ん?」
「い、いひゃい!? ほっへふへははいへふははい~!?」
「同じ柔らかいといってもふわふわとそれは雲泥の差があるの。こんな風にカレンさんの頬のようにはいかないの。いい……?」
ケーキ屋で余計なことを言いかけたカレンさんを私が引っ張ったり。 - 17◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:54:12
時間はあっという間に過ぎていった。誰かと遊ぶということは、こんなにも楽しかったのね。
それとも、カレンさんと一緒だったからなのかしら。きっと、そうね。
- 18◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:54:46
ひとしきり楽しく過ごした私たちは広場の前に来ていた。楽しむことに夢中になりつつ、それでも私はちらちらとカレンさんの様子を盗み見ていた。
あまり他人の観察というものは得意ではないけれど、特段変わった様子はないようだった。
(気のせいか……あるいは、思い過ごしだったのかしらね)
内心呟く私にカレンさんが話しかけてきた。
「……あ~~っ、楽しいですね、アヤベさん! ね、次はどこに行きましょうか?」
「そうね……」
外出届は出しているとはいえ、あまり遅くまで外にいるのはよろしくない。それに、そろそろあの人たちが帰ってくる時間も近い筈。スマートフォンを取り出して確認しようとすると、私は何か人だかりを見つけた。
何事か答えを探そうとすれば、すぐにそれを見つけた。模造か天然か、笹の葉と長机が設置されていて、人々が短冊に書きつけては結び付けている。そう、今日は七夕だった。 - 19◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:55:17
「カレンさん、私たちも何か書く?」
私はそうカレンさんに提案した。何気なく発したことであって、特に意図したものがあったわけではない。
でも、カレンさんの顔を見てすぐに私は言うべきではなかったのだと悟った。
カレンさんはおよそ彼女らしくない表情をしていた。短冊が吊り下がっている笹の葉をじっと見つめている。どのような意図があるのか、私には分からなかった。
強いて言えば、何かを恐れているような。嫌いなものから顔を背けたいけれど、動くことすら敵わないような。
何がそうさせるのかは分からないけれど、私はカレンさんを連れてここから離れようとした。
「ねえ、カレンさん。他に行きましょう?」
「……え? あ、そう、ですね」
何日も前に戻ったかのように、カレンさんはぎこちなく笑いかけてくる。そのまま足を動かす前に、私のポーチから音が聞こえてきた。 - 20◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 03:56:17
とりあえずここまで。後半部分は夕方か夜に投稿します。
- 21二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 13:23:23
保守
- 22◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:07:09
これから後半部分を投稿します。
- 23◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:07:41
七夕。短冊。願い事。織姫様と彦星様が一年に一度会う日。
そんなの、お出かけをする前から分かりきったことだった。
それでも、私はアヤベさんのお誘いを断らなかった。だって、それは本当に嬉しかったから。
同時に、アヤベさんに知られたくなかった。カレンがカレンでなくなりかけていることを。
アヤベさん、ようやく元気になったのに。あの頃に戻ってなんかほしくない。
それなのに、私はまたカレンをやめてしまいそうになる。 - 24◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:08:12
あの日、遊園地で迷子になった日。寂しかった。誰にも気付いてもらえなくて、歩き回った足は痛くて。
違う、お兄ちゃんに見つけてもらえた。嬉しかった思い出はちゃんとある。
あの日、兄さんと離れることになった日。寂しかった。いつも一緒だったのに、会いたい時に会えなくて。
違う、今でも兄さんには会いに行ってる。楽しかった思い出はちゃんとある。
あの日、アヤベさんに怒られた日。怖かった。でも、幸せな思い出はいっぱいだった。
私に掴みかかってくる。噛みつかれそうな。違う、謝ってくれたし、元に戻ってくれた。
私は泣いているのに去っていってしまう。私が泣いているのを誰かが来て止めてくれる。
私が泣いているのに笑いかけてくれない。私が泣いているのを笑いかけてあやしてくれる。
私の泣いているところを知らない。私が余計なことをしても見捨てないでいてくれる。
思い出がぐちゃぐちゃに頭の中を飛び交う。全部本当なのに、順番はめちゃくちゃ。 - 25◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:08:43
何度も何度も願った。お願いします、どうか私の願いを叶えてください。
そのお願いは叶った。叶わなかった。叶った。みんな、私では叶えられなかった。
私は諦めた。だって、自分が努力しなきゃいけないと思ったから。私の近くにいてくれると思ったら、すぐに離れていっちゃうから。
だから、カワイイのお勉強もトレーニングもレースも、頑張った。頑張ってる。
それなのに。ねえ。どうして、私はカレンでいられないの?
音が聞こえる。私のじゃない。たぶん、アヤベさん。やっぱり当たってる。
アヤベさんは、私の手を放した。私から、アヤベさんが離れていく。
まるで天の川で隔たった向こう側へ。私は織姫様でも、彦星様でもない。渡れない。
アヤベさんは、遠い空の向こう側。私は、見上げるだけ。 - 26◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:09:22
「……ん? ごめんなさい」
「あっ………………」
その正体である着信音に気付いて、私は今度こそ肩掛けのポーチに入れてあるスマートフォンを取り出そうとする。
そのためにカレンさんと繋いでいた手を放して、中を探る。さっきまで話していた相手の顔を見ないまま。
画面に表示されていた名前は私のトレーナーさんからだった。迷わず通話をタップする。
「もしもし」
『……あ、アヤベ? 今大丈夫?』
「ええ、構わないわ」
『そろそろ駅に着きそうだから、一応連絡しておこうと思って』
「ああ、もうなのね。迎えに行くわ」
『えっ?』
あの人の戸惑った声が聞こえてくる。表情まで分かってしまいそうでくすくすと笑いながら言葉を続ける。 - 27◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:09:55
「実はね、カレンさんと二人で街まで来ているのよ。その、驚かせるつもりはなかったのだけれど……」
『そうだったのか。いや、丁度一緒にいるんだよ。ほら……』
最初は意味が分からなかったけれど、すぐに彼の意図することが理解出来た。カレンさんにも聞こえるように、彼女に画面を向ける。
先程よりももっとひどい表情で凍り付いていたカレンさんに気付いた時にはもう遅くて、スピーカーからはカレンさんのトレーナーさんの声が聞こえてきた。
『カレン?』
その声を聞いた途端に、カレンさんはびくりと体を震わせた。そのまま私から数歩後ずさる。
「カレン、さん?」
「どうして……お兄ちゃんまで、そっち……? 向こう側なの……?」 - 28◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:10:27
言葉は聞き取れるのに、意味を汲み取り損ねてしまう。いったい、何を言っているの?
「いや……」
「ちょっと、カレンさ」
「いやぁっ!」
怯えるように叫んで、カレンさんは走り出してしまう。突然のことに咄嗟に私は動けずにいて、手の中からの二人の心配する声でようやく我に返った。
「カレンさん!!」
もう人混みの中に消えてしまった彼女を、私は慌てて追いかけた。 - 29◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:10:58
私は、人混みを縫うように走り続ける。お祭りくらいに混んでいるわけじゃないから、ぶつからないようにするのはそこまで苦じゃない。
厄介な人たちと"お話"出来ない時用の逃げるイメトレが、こんな形で役に立つなんて。
「あれ、Curren?」
どこからかそんな声が聞こえてくる。すぐにカレンのトレードマークの、リボンが結ばれてある両耳のカバーを脱ぎ去る。
Currenでも、カレンでもいたくない。今の私は、誰にも見つけてほしくない。
目的地もないまま、私はひたすら走り続けた。 - 30◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:11:28
レースだったらひどくバランスの悪いペース配分で駆け続けた私は、とうとう息を切らして足を止めた。
広場から続く通りはまだまだ先があるけれど、また走る体力も気力もなかった。
よろよろともう閉まっているお店の壁に寄りかかって、ずるずるとそのまま地面にへたり込む。
膝を抱えて、そこに顔をうずめて。私は荒い息を腿に当てる。梅雨のじめじめした空気がまだ残っているのか、じっとりと私の体が濡れていくようだった。
もっと自分を抱きしめると、手の中のイヤーカバーの存在も感じられる。捨ててしまいたいくらいなのに、捨てられない。
拒んだくせに手放す気はない。私は、ずるい。
さっきだってそう。アヤベさんを置いて走ってきちゃった。私が、置いていった。
でも、その前に私は置いていかれた。さっきも、前も、ずっと前も。 - 31◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:11:59
あちこちに散らかったままの記憶を片付けないまま、私はぼうっと考える。
私の夢、何だったっけ。お姫様? ううん、お兄ちゃんのその問いかけを私は否定した。
私の夢は、宇宙一"カワイイ"私。お兄ちゃんに素敵だねって、言ってもらった夢。
でも、お兄ちゃんもあっち側だった。あれ? でも、お兄ちゃんは私のトレーナーさんで……
私は、七夕が嫌いだったのかな。お願いを叶えたり、叶えてくれなかったり。それとも、花火と同じでみんな見上げて、私を見てくれないから?
あの空の中に、兄さんは見つけられなかった。だからあんまり、お星さまは好きじゃなかったのかもしれない。
でも、アヤベさんはお星さまの名前で、お星さまの物語をたくさん話してくれて、すごく楽しくて……
アヤベさんのことは嫌いじゃなかったのに、私を置いていっちゃった。
でも、私が置いていっちゃって、今頃、きっと困っていて…… - 32◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:12:30
考えがまとまらないまま、またぼうっとして。何も思い浮かばない私はしばらく誰もいないストリートを見ていた。
何分経ったのか、スマートフォンを取り出す気はなかったけれど。ふと私の口から何かが零れていった。
「アヤベさんに、ごめんなさい、しなきゃ……」
自分の言葉なのに意味が理解出来なくて、誰かに教えてほしいなって思った。
誰もいないよねって次に思っていたら、誰かが答えてくれた。
「……まったく、そうしてもらっても、いいと、思うの、だけど?」
何を言われたのかも分からなくて、少しだるくなってきた体を一生懸命動かして、声が聞こえてきた方を見上げた。
そこには、ぜーぜー息を切らしているアヤベさんがいた。追いつかれちゃった。
ちょっとそのままで固まっていると、アヤベさんの言ったことが分かった。そっか、謝らなくちゃ。 - 33◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:13:01
「……ごめんなさい」
「………………」
言われた通りに謝ると、アヤベさんは奇妙な顔をした。謝ろうと思っていたことは本当なんだけれど、嘘だって思われたのかな。
それとも、すぐに謝らないで言い訳をすると思ったのかな。私には、よく分かんない。
アヤベさんは私を見つめていた。私も見つめ返していると、何かを私の中に見つけたみたいだった。
それも聞こうと思ったら、アヤベさんは踵を返していた。ああ、また置いてかれちゃう。でも、しょうがないよね。
諦めかけていたら、アヤベさんが足を止めた。あれ……自動販売機?
そのまま飲み物を2回買ったみたいで、両手にペットボトルを持ってまた戻ってきた。
1本を一気に半分くらいまで飲んだアヤベさんは、もう1本を私に渡してきた。あ、スポーツドリンクだ。 - 34◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:13:31
「飲みなさい。頭、回っていないでしょう」
私はのろのろと手元を見た。手のひらに冷たさが伝わってくるけれど、体にまでは伝わらない。腕は冷たいのを通してくれないのかな?
はあ、と頭上で溜息の音が聞こえる。たぶんアヤベさんだ。そのままずい、と私の隣に座って、手からペットボトルを取り上げる。
「もう……ほら、飲んで。ゆっくりよ」
アヤベさんが私の頭の後ろに手を添えてくれて、浅く傾けてくる。あんまり飲みたくないなと思ったけれど、アヤベさんが言うなら飲んでみようかなとも思った。
こくり、こくりと自分の喉が鳴る音が聞こえる。それと同時にお腹の辺りも冷たくなっていく。
ぷは、と一息ついてアヤベさんから改めて受け取る。熱中症とまでいかないけれど、だいぶ参っていたみたい。
私の様子を確認して、アヤベさんも安心したようだった。そして、少し躊躇いながら口を開いた。 - 35◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:14:02
「……ねえ、いったいどうしたの?」
これは、さっきのことを尋ねているのかな。それだけじゃなくて、ずっと前からおかしくなっていたことも、なのかな。
アヤベさんは色々なことを知っているから、きっと気付いたよね。ああ、迷惑かけちゃった。
Currenでも、カレンでもない。私のことを話すのは、気が重い。あまり話したくないというのが、本当の気持ち。
でも、アヤベさんを困らせちゃったからこれ以上は駄目だよね。きっと幻滅するだろうな。
ぽつり、ぽつりと私は話していく。出来る限り順番通りに話そうと思っていたのに、結局ばらばらに散らかっていった。
その内容だって、あんまりカワイくない。面白くもないし、ためにもならない。アヤベさんがしてくれたお話のようにはいかなかった。
おまけに、喋っている私が一番ひどかった。途中から涙が出てきちゃって、何度も拭っても止まらない。
せっかく飲ませてもらった水分がどんどん抜けていく。それと一緒に、私がぼろぼろと零れていく。 - 36◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:14:33
長い時間をかけて話し終えた私は、泣くことしか出来なかった。かつての幼い私のように、ひっく、ひっく、って。
もうどこにも行けずに泣きじゃくるばかりの私。自分の努力を放棄して、誰かに願うしかなかった私。
こんなのウマスタで人気のCurrenの顔じゃない。こんなのカワイイを目指してきたカレンの声じゃない。
もう何も取り繕えない、私でしかなかった。
アヤベさんは変わらず隣にいてくれるけれど、戸惑っている様子は顔を伏せていても分かった。
そうだよね、こんなカワイイが剥がれ落ちちゃった私なんて見せたことないもん。
アヤベさんの震える吐息が、何かを言う準備をしている。何度か深呼吸に似たリズム。
何を言われてもしょうがない。私は諦めて、その言葉を待っていた。
そして、とうとうそれが聞こえてくる。 - 37◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:15:05
「カレンさん………………ごめん、なさい」
私は耳を疑った。どうして、アヤベさんが謝るんですか?
私もまた戸惑っている間に、アヤベさんの言葉は続く。
「ごめんなさい。あなたも……あなたも私の傍に、ずっといてくれたのに、ひどいことをしてしまって。こんなにも、あなたを困らせてしまって」
アヤベさんが私の頬にハンカチをあてがってくれる。せっかく買ったばかりの新品なのに、私なんかに使わないでください。
押しのけようとしても、アヤベさんは放してくれない。
「あなたへの恩を返すどころか、ああ、悲しませるなんて………………ごめんね………………」
アヤベさんは私に腕を回して抱きしめてくれる。雨なんて降っていないのに、アヤベさんも濡れている感触が伝わってくる。
逃げようとしても、アヤベさんは離れてくれない。 - 38◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:15:37
「や、やめてください……! 何も、カワイくなんてない私に、そんな価値……!」
咄嗟に出てきた言葉だった。その自分が発した筈のものに、私は驚いた。
あの時、アヤベさんが言ったことが思い出される。私に、価値なんてない。
私とアヤベさんは、同じだった? あんなにお姉さんで、だって私、兄さんみたいになれないのに。
「そんなことないわ。あなたも私にとって、大切な人なの。それに……」
「だ、だって! 私、お星さまじゃない……」
「え?」
「きらきらしていないし……お星さまの名前も、もってない……」
まるで子供のように拗ねた言い方をしてしまう。そんな私に、アヤベさんは微笑んだ。 - 39◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:16:08
「……バカね。何を言っているのよ」
そう言って、またハンカチで涙を拭いてくれる。そして、私が遮った話の続きをしてくれる。
「それに……私にとって、あなたは星にも負けないくらい輝いているの。だから、もしあなたがどこかで泣いているのであれば」
「たとえ雲があなたを覆い隠していたって、すぐにかき分けて見つけてしまうから」
だから、今日のように逃げるのはおすすめしないわ。そう締めて、アヤベさんは静かに拭い続ける。
そのハンカチは、冷たく感じられるように特別な生地で出来ているのだという。アヤベさんもお気に入りのふわふわの感触で、気持ちよくて。
ああ、でも。今の私には冷たくなんて感じられない。
「あったかいですね……」
だって、そのハンカチを通して。アヤベさんの温かさが伝わってくるから。
だって、私は見つけてもらえたから。 - 40◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:16:39
私はアヤベさんと、長くなってしまった街路を駅に向かって歩いている。お兄ちゃんたちも、心配しているよね。
またアヤベさんに手を繋いでもらって、時々鼻をすんすんと言わせながらもう一方の手には相変わらず耳に着けていたカバーを握っている。
何だか今は、このままでいたい気分だった。
「ねえ、カレンさんは星になりたかったの?」
アヤベさんがそう聞いてくる。いきなりお星さまじゃないとか言い出したから、疑問に思うのも当然だよね。
「……私、空にあるものはあんまり好きじゃないんです。特にきらきらしているものは、何だって。花火とか……お星さまとか」
「それは、どうして?」
「だって、私よりみんなの目を奪っちゃうんですよ? 悔しいじゃないですか」
「悔しいって、あなた」
アヤベさんから呆れたような視線を向けられる。しょうがないじゃないですか。私、負けず嫌いなんですから。 - 41◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:17:16
「それに、お星さまは別の理由もあって好きじゃなかったんだと思います。お願いをしても、叶ったり、叶わなかったり。じゃあ自分だけで頑張るぞーって」
「だから、笹の葉を見て狼狽えていたのね」
「うぅっ……掘り起こさないでくださいよぉ。それで、七夕のお話も憧れとか全然なくって。でも、あの……」
「?」
言葉を詰まらせる私をアヤベさんが不思議そうに見てくる。その目から逃げるように少し背を向けながら、私はぎこちなく呟く。
「アヤベさんのことは、その……きらいじゃ、ない、です」
私たちの間に沈黙が流れる。アヤベさんがどう受け取って、何を考えているのかさっぱり分かんない。
振り向こうか、このままでいようか悩んでいたら、私の頭にあったかいものが乗せられた。アヤベさんが空いている方の手で頭を撫でてくれていた。 - 42◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:17:48
「ど、どうして撫でるんですかぁ!?」
「え? だって、その」
「その!?」
もういっかいアヤベさんを見ると、くすくすと笑っていた。
「カレンさん、可愛いもの」
その言葉に、かあっと私の頬が熱くなる。いつも離すことがない"カワイイ"の筈なのに、何だか少しだけ違って、少しだけ恥ずかしい。
「可愛くないです!」
「でも、カレンさん普段から言ってるじゃない。"カワイイ"って」
「そ、それはそうですけどぉ~……私の言ってる"カワイイ"とアヤベさんが言ってくれた可愛いはぁ、同じですけど同じじゃなくてぇ……!」
要領を得ない私の反応に、アヤベさんはさらに可笑しそうに笑っている。 - 43◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:18:20
「ああ、もう!」
私は小さい子のように癇癪を起こしてしまう。それでも、アヤベさんとの手を放す気にはなれなかった。
そのまましばらく歩くと、またアヤベさんが話しかけてきた。
「カレンさんは、織姫様には憧れない?」
さっきの話の続きで、昔の話を思い出させる話題。
「うーん……やっぱり、あんまりかなー……? お姫様よりも、宇宙一"カワイイ"私! がずっと夢だったので」
「そう……でも、あなたを知っている人はそうじゃないみたいね?」
「?」
今度は私が不思議に思ってアヤベさんを見れば、視線の先のその人は私たちが歩く方向を指差した。
そのまま視線を動かせば、二人の男の人が遠くから走ってくるのが見えた。あやべさんのとれーなーさんと……お兄ちゃん、だった。 - 44◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:18:51
「ね? 彦星様が見つけてくれたわ。織姫様?」
アヤベさんにしては珍しく、からかうような響きだった。それに触発されて、私も悪戯っぽく言った。
「アヤベさん。私の彦星様、取らないでくださいね? アヤベさんの方は……取っちゃうかもしれませんけど」
もちろんそんな気持ちはない。私にはお兄ちゃんしか目に入らないから。でも、アヤベさんは思わぬ反撃だったのか面白いくらいにあわあわしていた。
そして、一瞬こっちをじとーっと見たかと思うと、すぐに小さく吹き出して仕方がないという表情になって。
そのまま、この流れに合わせた言葉を発した。 - 45◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:19:22
「そんなことにはならないわ。あなたは優しいし………………それに、あの変な人には私くらいしか合わせられないから」
まさかそんな発言がアヤベさんから出てくるとは思わなくて、わたしはまじまじと隣を歩く人を見つめた。
やっぱり恥ずかしくなったのか段々と赤くなっていって、最後にはぶんぶんと手を振って遠ざけようとする。それでも、アヤベさんも手を放そうとはしなかった。
二人の彦星様が二人の織姫様を呼ぶ声が聞こえてくる。四人を遮る天の川はここにはなくて、晴れているから邪魔するものは何もない。もう雨は、やんじゃった。
まずは、お説教かな。それとも、心配したっていわれるかも。ううん、私から先に謝らなくちゃ。それと、ありがとうって。
私を可愛いって言ってくれる、大切な人たちへ。 - 46◆zrJQn9eU.SDR23/07/07(金) 19:21:29
以上です。短めに、と思っていたらこんなにも膨らんでしまいました。
【SS】時を越えて、時が実る|あにまん掲示板bbs.animanch.comこちら前作です。下のレスでさらに過去作を載せていて、それぞれの先に行けば見れます。よろしければお読みください。
- 47二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 20:28:00
>二人の彦星様が二人の織姫様を呼ぶ声が聞こえてくる
ああよかった救いはあったんだねぇ