【SS】気ぶり妖怪に取り憑かれたお兄ちゃんとカレンチャン

  • 1二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 04:40:02

    お兄ちゃんは悩んでいた。
    カレンチャンの元気がない。本人曰く
    『なんだか最近、変な夢ばっかり見て眠れないの……』とのことだった。
    内容を聞くと『お兄ちゃんが冷たくしてくる夢』だという。

    カレンの寝不足も心配だったが、

    「夢の中で冷たかったんだから、こっちでは優しくしてね♡」

    なんて言って身を預けてお昼寝してくるのもお兄ちゃんにとっては非常に悩ましかった。
    カレンチャンの小さく柔らかな身体といい匂いのする髪に理性を削られる時間が増えた。

    それに付随してもう一つ。

    カレンが夢に毎日出てくるのだ。夢の中のカレンは薄布1枚でこちらに近づき、
    こちらを誘惑してくる。いけない、いけないと必死で耐えていると、やがて目が覚め夜が終わる。
    そんな夢が、毎日毎日続いていた。そんなこんなで、お兄ちゃんもまた寝不足だったのだ。

    お兄ちゃんは推測した。おそらく俺とカレンは、同じ夢を見ている。
    そんなことは通常あり得ないが、ここは中央トレセン学園。
    何が起きてもおかしくはない場所だ。

  • 2二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 04:40:25

    というわけで、お兄ちゃんは相談した。
    相手はマンハッタンカフェ。
    オカルト関係ならこの子しか思い浮かばなかった。彼女ならこの現象の原因と対策を知っているかもしれない。
    そうして相談して、帰ってきた言葉が。

    「これは……然るべき専門家に相談してください。私の手には余ります」

    「そ、そんなにやばいオバケなのか?」

    「いいえ、オバケではありません。これは……妖怪です」

    「妖怪ぃ?」

    「はい、妖怪があなたとカレンさんに取り憑いています。専門外なので詳しくはわかりませんが……おそらく夢を見せている犯人はその妖怪でしょう。それ以上のことは分かりません」

    「そっか……教えてくれてありがとう」

    かくして、お兄ちゃんはカレンチャンと二人で、トレセン近郊の大きなお寺に赴くことになった。
    そこで事情を話すと本堂に通され、和尚さんが話をしてくれた。

    「なるほど。これは『妖怪気ぶり変化』の仕業ですな」

    「気ぶり変化?」

    「はい。くっつきそうでくっつかない男女に取り憑き、お互いが異性として意識してしまうような夢を見せるのです」

    なんとも理不尽な妖怪である。お兄ちゃんはそう思った。

  • 3二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 04:40:42

    「それで、どうすれば解決するんですか?」

    「一番早いのはあなた方がさっさとくっつく事なのですが……」

    カレンチャンが目を輝かせてお兄ちゃんの方を見る。
    お兄ちゃんは冷や汗をかきながら見なかったことにした。

    「それが出来ないというのなら、一つだけ。あなたたち二人が丸24時間同じ部屋で過ごし、何も行わずに出ていくことです。もしお望みならば、部屋はこちらで用意します。いかがなされますか?」

    それで解決するなら……と、お兄ちゃんはその条件を呑み込んだ。
    お兄ちゃんが承諾すると、二人は専用の部屋に通される。

    「いいですか、絶対に出ないでくださいね」

    そう言って和尚がバタンと扉を閉める。
    部屋の中は異様な光景だった。ピンク色の壁に大きなベッド、おまけにシャワールームまで用意されていた。

    「ラブホやんけ!!!!」

    お兄ちゃんの叫びが木霊する。なんでお寺の本堂にこんな部屋がある????ありえない話し!!

    「お兄ちゃん、もしかして……そういうホテル、入ったことあるの?」

    カレンチャンが潤んだ瞳でお兄ちゃんを見る。お兄ちゃんは慌てて首を横に振った。相手もいないのに入るわけないだろう!!

    「そっか、よかった。カレン、びっくりしちゃった♪」

    言葉とは裏腹に、カレンチャンはあんまりびっくりしてなさそうだった。それはそれで何だかなあ……とお兄ちゃんは思った。

  • 4二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 04:41:00

    とりあえず椅子に座り、どうやって過ごそうものか思案していると、カレンチャンがお兄ちゃんの隣に座った。

    「ねえ、お兄ちゃん。お話、しよっか」

    「どうしたんだ、突然?」

    「あのね……最近、こうやって二人でゆっくり話すことってあんまり無かったから。だから、ね」

    それもそうだ。お兄ちゃんの思考に、少しずつ冷静さが戻ってくる。

    「私ね、お兄ちゃんとまた出会えた時、ホントに嬉しかったんだ。お兄ちゃんがトレーナーになってくれたときは、もっと嬉しかった」

    カレンチャンがぽつぽつと話しだす。
    『カワイイカレンチャン』ではなく、一人の女の子、カレンチャンとして。

    「今まではお兄ちゃんに振り向いて欲しくて、色々やってたけど……この際だからはっきり言うね。お兄ちゃん」

    カレンチャンの目がギラつく。お兄ちゃんはびくっと身を竦める。手をガッチリと握られている。逃げられない。

    「カレン、今からちょっとだけ、カワイクなくなっちゃうから」

    カレンチャンはウマ娘特有のパワーでお兄ちゃんを持ち上げ、そのままベッドまで直行する。
    普段カワイイに徹しているカレンチャンが、はじめて乙女心を捨てて勝負に出たのだ。そのパワーは計り知れなかった。

    「お兄ちゃん……大好き♡」

    マウントポジションになったカレンチャンが迫る。
    この時お兄ちゃんは、ヘビに睨まれたカエルの気持ちを理解した。

  • 5二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 04:41:18

    「ああっ、すごいよっ、お兄ちゃんっ……♡」

    詳しく書くと規約違反になるので詳細は省くが、カレンチャンとお兄ちゃんのレースは凄まじいものだった。カレンチャンがスプリンター特有の瞬発力でお兄ちゃんを圧倒し、何もさせなかった。
    そのままの勢いでレースを完走し、カレンチャンはお兄ちゃんにしなだれかかる。

    「お兄ちゃん……大好き……♡」

    お兄ちゃんはその言葉に答える事なく、無言でカレンチャンを押し倒し上下を交代する。
    カレンチャンは勘違いしていた。完走などしていなかった。
    お兄ちゃんが今まで我慢していた、数年分のパワーを甘く見ていた。
    1200mを完走してもなお衰えぬそれはまさにウマ並と言っていい。
    お兄ちゃんはステイヤーだったのだ。

    そこからは、もう滅茶苦茶だった。
    詳しく書くと規約違反になるので詳細は省くが。

  • 6二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 04:41:30

    「ゆうべはお楽しみでしたね」

    24時間後。部屋の扉を開けた和尚が開口一番にそう言った。
    なんでこんなラブホみたいな部屋用意されてるんだと問うと、

    「気ぶり変化に取り憑かれるウマ娘とトレーナーは結構来ますのでな。もっとも、24時間何もせずに出てきた人はおりませんがな」

    とだけ言った。

    こうして、一つだけ大人になったトレーナーとカレンチャン。
    その後の二人の関係がどうなったかと言うと……。
    実は、あんまり変わっていなかったりする。
    強いて言えば、お兄ちゃんが覚悟を決めたことくらいだろうか。

    なんにせよ、新しいカップルの誕生に立ち会えて嬉しい限りである。
    私も気ぶった甲斐があるというものである。
    次はどんなカップルをくっつけようか。今から楽しみだ。

    おわり

  • 7二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 04:42:48
  • 8二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 07:25:36

    気ぶり妖怪の仕業ならうまぴょいするのも仕方ないよね

  • 9二次元好きの匿名さん23/07/07(金) 07:34:24

    これ妖怪の本体和尚じゃね?

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