七夕に願うは少女の秘め事 【CP&SS注意】

[1 二次元好きの匿名さん 23/07/07(金) 21:40:48]

「短冊に願いを書いて笹に吊るす、ねぇ…」

食堂の隅に作られた特設スペースの前で独り言を呟く。さっきの言葉からも分かる通り、今日は7月７日の七夕の日である。そのせいかなんとなくだが今日はみんな浮き足だって見える。

「こーいうのっていざ書こうとすると意外と思い浮かばなかったりするんだよねー」
「確かに。改めて聞かれると何を書いて良いか分からないって言ってる人もいた」
「ま、適当に何か書けば良いんでしょ？『ムビョーソクサイ』とか」
「「……え？」」
「ん、何か変なこと言ったかしら？」

2人からよくわからない反応があったので振り返ってみる。するとなぜかそこにはモジモジしてるイリヤと少し呆れた顔の美遊がいた。

「何よ、2人してその反応は。こんな内容、別に普通でしょ普通」
「……だってクロは……って書くと思ったから…」
「ちょっと、途中よく聞こえなかったんだけど」
「うう〜///美遊、パス！」
「分かった。クロ、多分イリヤは『マスターともっと仲良くなりたい』ってあなたが書くんだと思った…そうだよね？」
「！…そ、そう！それ！」
「は、はぁ！？なにそれ、なんで急にあの人が出てくるのよ！」

突然美遊達から投げ込まれた爆弾発言に狼狽えるわたし。でもいくら記憶を探ってもそうなる理由が見当たらない。なので、とりあえず2人に聞いてみることにする。

[2 二次元好きの匿名さん 23/07/07(金) 21:41:31]

「…それで、なんであなた達はわたしがマスターのことを書くって思ったのかしら？」
「ん、クロはもしかして気づいてない？」
「みたいだね。ってことはわたし達は無意識に惚気られてたんだ…」
「なにそれ、どういう意味よ」
「えーっとね…最近のクロ、わたし達と一緒にいる時マスターさんの話をすることが増えてたよ？」
「……ほんと？」
「うん、わたしもそうだと記憶してる。一番新しいのは確か膝枕したら寝てるマスターに名前を呼ばれて嬉しk…」
「ちょっ！？ストップストップ！わかったから！」

一気に顔どころか全身が熱くなってくる。イリヤ達が言う通り、気づかない内に彼のことばかり話していたらしい。正直なところ、ここ最近わたしの中で彼について考えることが増えていたのは自覚していた。けれど、ここまでその存在が大きくなっていたとは夢にも思わなかった…

「わたしとしたことが一生の不覚ね…」
「そんなに落ち込まなくても……あ、噂をすれば」
「グッドタイミング？ってやつだね！」
「……まさか」
「3人ともおつかれー。もしかして絶賛七夕中だった？」
「ちょうど今願い事について相談してたところです」
「わたしと美遊は書けたんだけどクロがまだ悩んでるみたいで…良ければマスターさんにも手伝って欲しいな」
「イリヤ！？」
「そうなの？役立てるかわからないけどそういうことなら手伝うよ」
「お願いします……と言いたいのですが、わたしとイリヤはこれから地下図書館の方に用事があるので席を外さなくてはならなくて…」
「ちょっと調べものがありましてー……クロのことをお願いしても良いですか？」
「了解。一度引き受けたわけだし、今更断らないよ」
「ありがとうございます。それじゃ、行こっかイリヤ」
「うん！……ファイトだよ、クロ！」
「…2人とも後で覚えておきなさいよ」

下手したら何か呪いでも出せるんじゃないかと錯覚するぐらい恨みのこもった視線を向ける。でもそんなわたしなど意に介さず、何事もなかったかのように2人は出ていってしまった。その結果、残ったのはのほほんとしてるマスターとまだ気持ちの整理がついていないわたしの2人だけとなってしまった。

[4 二次元好きの匿名さん 23/07/07(金) 21:45:49]

「……」
「…クロ？何か調子でも悪かったり…」
「……なんであのタイミングで来るのよ！バカ！朴念仁！」
「急な罵倒！？というか朴念仁って…」
「全く…」

これはただの八つ当たりでしかないし、マスターに対して最低なことをしているのは分かってる。でも言わずにはいられなかった。だって、こんな見透かしていたような瞬間に来るとは思ってなかったから。

「あのー、クロエさん？」
「……さっきのは言いすぎたわ。ごめんなさい」
「いや、別にそれは全然気にしてないんだけど。クロがいつもと違って見えるから心配になって…」
「！……ほんとそういうところよ、だからわたしも…」
「？」
「なんでもないわよ。それより、願い事を書くの手伝ってくれるんでしょ？」
「そうだったね。ちなみに何も思いついてない感じ？」
「そうねぇ……9割はできてるって感じかしら」
「あれ、意外と進んでる…俺いらなそう…」
「そんなことないわよ、あと足りないのはわたしの勇気だけ。そのためにあなたが必要なの」
「そういうことなら任せて！……でも勇気って？」
「それは今から身体で教えてあげるわ」
「なんか言い方が….っ！？」

ただ話していただけなのに、言葉を急に跳ね上げるマスター。その理由は簡単、わたしがすぐ隣にいた彼の手を握ったからだ。慣れないことをしたせいか、今度は胸の鼓動が早まってきた。どうやらわたしは思っていたよりも"よわい"、というやつらしい。それはそれとして思っていたよりも大きい彼の手の感触を堪能しておくが。そしておそらくではあるが彼も同じように心臓を高鳴らせているはず…というかそうなら嬉しい。

「……これが勇気？」
「そうね。正確には手を握った後が大事なんだけど……うん、やっぱりこれに決めた」
「書けそう？」
「もちろん。あ、手は握ったままでいてね、離したら許さないわよ？」
「…キモニメイジテオキマス」

[5 二次元好きの匿名さん 23/07/07(金) 21:46:48]

手を握ったまま、空いた方の手で短冊に願い事を書き込む。その間妙にソワソワしている彼がなんとも可愛らしかった。

「……よし、できたわ。後はこれを吊るすだけね」
「終わった？それならもう手を離しても…」
「まだダーメ。ほら、片手じゃ上手くできないから手伝って」
「ダメですかー……こんな感じ？」
「ん、そうそう。ここに通して……なんかこうしてると共同作業みたいで良いわね」
「！？…ま、まぁそうではあるのかな」
「んー？もしかして照れてる？」
「そりゃあ…ね」
「あははっ、正直でよろしい……っと、遊んでる間にできたわね」
「おー……なんで裏返しに？」
「そりゃそうよ。乙女の願い事なんて本当は胸に秘めておくことなのよ？これぐらいはさせてもらわないと」
「そういうもの？」
「そういうもの。さてと、やることも終わったしこのままあなたの部屋に遊びに行ってもいいかしら？」
「別に良いけど…手は繋いだまま？」
「そうだけど？」
「ですよねー。ま、良いか。何もない部屋だけど頑張ってもてなすよ」
「ふふっ、期待しておくわね」

予想外の出来事ではあったが、無事乗り越えることができた……なんだったら今のこの時間だけで少しだけ願いが叶った気がする。その内容は今手を繋いでいる彼には絶対言えないが。

「それじゃ部屋に帰ったら何して遊ぶか話しましょうか？マスター♪」

[6 二次元好きの匿名さん 23/07/07(金) 21:47:17]

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誰もいなくなった食堂に何故かひらりと一陣の風が迷い込む。それは何か意思を持っているかのように先ほど少女が願いを込めた短冊へと向かっていった。風に流され、くるりと回る短冊。そこには近くに寄らないと見えないぐらい小さな文字でこう書かれていた…

『この先もマスターのそばにいられますように』

と。

[8 二次元好きの匿名さん 23/07/07(金) 22:33:23]

>>7

こちらこそありがとうございます！

ついでと言ってはなんですが、以前テーマを募集した時に載せられなかったものもここに投下しておきます

≠からかい

[10 二次元好きの匿名さん 23/07/08(土) 00:15:18]

いい…クロ可愛い…

[11 二次元好きの匿名さん 23/07/08(土) 09:09:22]

>>8

ありがてえ

[12 二次元好きの匿名さん 23/07/08(土) 16:24:36]

イリヤだけじゃなくて美遊も気ぶってる辺り、相当惚気られてたんだろうな

[13 二次元好きの匿名さん 23/07/09(日) 01:32:58]

ありがてぇ……

[14 二次元好きの匿名さん 23/07/09(日) 13:30:37]

ぐだクロス好きだ…………

[15 二次元好きの匿名さん 23/07/10(月) 01:28:49]

可愛い

[16 二次元好きの匿名さん 23/07/10(月) 09:21:04]

何故かスレがまだ残ってるんでもう一個お蔵になったやつも投げておきます

クロエが添い寝するだけの話(全年齢向け完全版)

[17 二次元好きの匿名さん 23/07/10(月) 19:25:03]

>>16

ありがとうー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

[18 二次元好きの匿名さん 23/07/11(火) 01:33:04]

>>16

とても助かる…………