- 1二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 15:17:26
「失礼します!トレーナーさん!キタサンブラックですっ!」
トントンと扉を叩き、部屋にいるはずのトレーナーさんに呼びかける。……けど返答はない。
「おかしいな……?ここにいるはずなのになぁ……?」
首を傾げながら、う~んと考え込む。
今日は休日でトレーニングはないけれど、何となくトレーナーさんに会いたくてトレーナー室までやって来た。……流石にそのままお邪魔するのはあれだから、砂糖菓子も持ってきたんだけどね。
まぁそれは置いておいて。
外から見た時、部屋の明かりがついてたから居るって思ってたけど……。外に出てるとかかな?
少しだけ肩を落とし、一応扉を開こうと動かしてみた。……ってあれ?
「扉が開いてる……」
開かれた扉に戸惑ってしまう。扉を閉めずに何処かに行くことなんてあるのかな……?何となく不安になってしまう。
でもそっか……開いてるのか……。それならトレーナー室で帰りを待ってもいい……よね?会いに来たことと手土産があれば許して……くれる……と思う……から……。
何となく感じる不安よりも会いたい気持ちが勝ってしまい、忍び足で部屋の中に入ってしまう。……忍び足になってるのは、悪いことしてる気がするからなのかもね。心の中でトレーナーさんに謝った。
「し……失礼しま〜す……」
入ってからいうのはどうなんだろうね……。罪悪感は増すばかりだ。
それでも忍び足を継続しつつ、キョロキョロと辺りを見渡す。特に変わりはない。う~ん……いつも通りのトレーナー室だ。
トレーナーさんがいないならソファーで座って待ってようかな……。
そう思って視線をソファーに向ける……と……。って、あれ!? - 2二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 15:17:44
「トレーナーさん……寝てる……」
そこには、グッスリと横向きに眠っているトレーナーさんがいた。
あ、あんなにキョロキョロと見渡したのに……。何で気づかなかったんだろう……。もしかしたら、灯台もと暗し……みたいなものかな?
まぁいっか!トレーナーさんは見つかったんだからね!弾む心のままソファーに近づくことにした。
音を立てないように……ゆっくり……ゆっくり……近づいてっと……。ふぅ……やっと来れた……。
近くに来たので、トレーナーさんの顔を覗き込んでみた。うん……それにしても……。
「こんなにグッスリ寝てるなんて……」
穏やかな顔で眠っていて、思ったよりも眠りが深い気がする。トレーナーさんがいつも座っている
いつものあたしなら、何も言わずに砂糖菓子だけ置いて帰ったはずだ。
だけど、何故かそれをせずに、あたしはそのままトレーナーさんを眺め続けてしまっていた。
「…………」
ツンツンとトレーナーさんのほっぺたをつついてみる。
うん……起きない……。きっと暫くはこのままのはずだ。それに今日は休日のトレーナー室。誰か来ることはあんまり無いはず。
今なら……何をしてもバレない……。そんな考えが頭の中に浮かんできた。
「そうだよね……今なら……」
持ってきた砂糖菓子を机に置き、もう一度ソファーに近づく。
……うん。やっぱり寝たままだ。そ、それなら……あれをやっても……いいのかな……?
あたしの中にあるちょっとした悪い心に火がついてしまう。 - 3二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 15:18:05
「ごめんなさい……トレーナーさん……!」
小さく謝りながら、寝ているトレーナーさんの隣に横になる。
あ、あはは……やってしまった……。トレーナーさんと……添い寝を……。相手の許可をとらないなんて……あたし悪い子になっちゃった……。
大きくなる罪悪感。だけど、それ以上にこのままここに居たい思ってしまう。そんな不思議な気持ちがあたしの中にはあった。
ソファーはふたりも横になるのは難しくて、どうしたって相手との距離が近くなってしまう。
「すぅ……すぅ……」
聞こえる息遣いは穏やかで、聞いているとこちらまで眠くなってしまいそうな……。そんな気持ちに包まれてしまう。
頭をゆっくりと胸に近づけて、耳をピトッとつけてみる。
ドク……ドク……ドク……
波打つように穏やかな心音。それがあたしを安心させてくれるかのようだった。
「あっ……これ……」
近くなんだから当たり前だけど、トレーナーさんの匂いがいつもよりも近くに感じる。
何だろう……?凄く安心する……。このままここに居たいってそう思わせるような匂い……。
えへへ……これ……いいな……。胸に顔を何度か擦りつけた。
「そうだ……あれしてみたい……」
思い浮かんだ考えを実行するために、ゆっくりと頭を上げる。
そのままトレーナーさんのほっぺたに手を置いてみる。……ドラマとかで見たことがあるほっぺたに手を置くやつ。あっ……少しほっぺたカサカサしてるや……。
そのままトレーナーさんの顔を見つめ続けながらほっぺたを撫で続けた。
そして、やってみて分かったことがある。 - 4二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 15:18:23
「これ……相当むず痒い……!」
トレーナーさんの体温が手のひらから頭の先まで伝わってきて、全身が何だか熱くなってきた気がする!これ今の関係でやるやつじゃないのかも!じゃあどんな関係でやるのかな?いや分かんないや!
よくわからない罪悪感がさっきまでの好奇心を勝った気がした。熱に浮かされた結果やったことで、正気に戻るとは思いもしなかった。
「は、早く離れないと……」
これ以上一緒にいたら、全身の熱で溶けて消えてしまいそうだ……。
震える手でほっぺたから手を離し、体をもぞりと動かす。
「うぅん……?」
あっ……トレーナーさんが反応してる……!お、起きるかもしれない……。
焦りが徐々に広がり起きたいのに、中々起きることが出来ない。
不味いよこのままじゃ……!
「う~ん……」
うわわ……トレーナーさんが動き出した……!
そう思っていたら、自分の背中に何かがギュッとしがみつくのを感じた。
何々!?何が起こったの!?慌ててキョロキョロ首を動かすけど、後ろに気配は感じない。
巻き付いた何かが強くなった気がする。
ま、まさか……お化け……!?怖くなって咄嗟にトレーナーさんにしがみついた。もっと巻き付きが強くなった。
……あれ?これってもしかして……?
ゆっくりと視線をトレーナーさんの腕に向けてみる。あっ……やっぱりだ……。
「良かった……これトレーナーさんの腕なんだ……」
良かった……お化けじゃなく……。
ホッとしてしがみついた腕を離す。よし……ゆっくり起きるかな……。後ろに下がって起きようとすると、トレーナーさんの腕がそれを許してくれなかった。 - 5二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 15:18:41
…………………………あっ。起きれないじゃんあたし!?
心の中で頭を抱えた。
「どうしよう……!本当にどうしよう……!」
さっきよりも密着してて、あたしの顔はトレーナーさんの胸に引っ付いてしまう。
あっ……トレーナーさんの匂い……えへへ……やっぱり安心する……。って、そんなことを言ってる場合じゃないのに……!
穏やかな心音とは裏腹にあたしの心はバクシンで、安心する匂いで抵抗する気力を奪われていて、まさに絶体絶命だった。
うう……悪いことなんてするもんじゃない……。改めて自分がどれだけのことをしたのかを自覚した。
「三神様ごめんなさい……。もうこんな事しません……」
許されることではないけれど、せめて懺悔しないと……。
心の中で三女神様に謝っていると、想像中の三女神様は何故か三者三様ではあるけど笑っていた。何で……?怒るところではないんですか……?
そんなことは今はいいや!抜け出さないと……!
えい……!えい……!後ろにどうにかして下がってみる。
「抜け出せない〜……」
いつものあたしならこんなの余裕のはずなのに……。安心する匂いとドキドキする心のせいで力が出ないよぉ……。
もう駄目だ……。このままトレーナーさんが起きるまでこうしないといけないんだ……。父さん……母さん……ごめんなさい……あたし悪い子になっちゃった……。
そんな風に諦めてこのまま抱きしめられ続けて、怒られる覚悟をしたその時。 - 6二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 15:19:01
「うぅん……」
その声とともに、さっきまで強かった腕の力が弱くなっているのに気づいた。今のあたしでも何とか抜け出せる気がする……!
い、今なら……!
そう決断して、震える腕でゆっくりとトレーナーさんの拘束を解いて後ろに下がる。
でも、このままぐるりと回ると尻尾でトレーナーさんが起きるかもだから……。
「ギリギリまで後ろに下がって……」
尻尾で高さを確認して……うん。これなら大丈夫かも。
体をそのまま床に下ろしていく。尻尾で体をしっかりと支えながら降りることで、何とかゆっくり降りることが出来た。
良かった……尻尾鍛えてて……。
こんなところで、自分のやってきたことが実を結ぶなんて思っても見なかった。
気を取り直して、ぐるりと体を回して床から立ち上がり、そのままトレーナーさんの様子を確認する。
「起きてはない……?」
そう思っていたけど、もぞりと動くトレーナーさん。これってもしかして……。
思った通り、ゆっくりと瞳が開いていき、あまり力が入っていない感じで座ろうとしていた。
そして、何とか座ったかと思うと、ゆっくりと伸びをしてボンヤリとした様子でこっちを見ている。
どうやら起きたみたいだ。
「あ、危なかった……!」
小さな声でそう呟き肩を下ろす。
ボンヤリしたトレーナーさんも徐々に覚醒してきたみたいで、瞳がパチリと開いてきていた。
「あれ……キタサン……?」
まだ声は眠気混じりだけど意識はしっかりしつつあるみたいだ。 - 7二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 15:19:19
……良かった。ギリギリのタイミングで起きることが出来て……。タイミングが遅かったら……。
そのことを思うと心臓がバクシンして止まらない。
だけど、今はトレーナーさんに挨拶を返さなきゃ……!
「おはようございますトレーナーさん!」
心の中の焦りを感じさせないように、笑顔でトレーナーさんに挨拶した。
「ああ……おはよう……?いや……何でキタサンがここに……?」
うう……意識はハッキリしつつあるから挨拶だけじゃ誤魔化せないよね……。ええと……それなら……あっ……そうだ……!
「お休みでもお仕事頑張ってるトレーナーさんにお菓子をと思って!ほらあそこ!」
建前で持ってきていた砂糖菓子を指差して、トレーナーさんにあたしがここに居る理由を伝える。
嘘はついていない。これも目的の一つだから。うん。
「本当だ……ありがとうキタサン。君は本当に優しいな……」
「あ、あはは……」
ふわりと笑うトレーナーさんに目を合わせることが出来ず、視線を横に向けながら笑うしかない。
ごめんなさいトレーナーさん……貴方が寝てる時に悪いことしてました……。もうこんな事しません……。
心の中で謝ってゆっくりと部屋から去ろうとする。
「あれ?もう行くのか?」
「はい……お菓子持ってきただけなので……また……明日……」
「ああ……また明日……」 - 8二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 15:19:39
そう言ってゆっくりと扉を開けた。
あたしの行動に疑問を覚えているような様子のトレーナーさん。だけど、これ以上居る訳にはいかない。
だって……あの時の感触はあたしの中でまだ残っているのだから……。
ドキドキする胸を何とか抑えて扉を閉める。
ゆっくりと校舎を歩き。靴を履き。外に出て。
「うわあ!!!!」
そのまま寮まで一直線に走ることにした。
走ればきっと忘れられる。そう信じて走り続ける。
だけど走れば走るほど、胸の中のドキドキは消えてくれなくて。あの時のことが鮮明に思い浮かんで。
「消えてくれないよぉ……」
空が何色かなんて考える暇もないくらいあたしに余裕なんてない。
今日は……眠れそうにないな……。
何となくそんなことがひっそりと頭に浮かんで消えた。 - 9123/07/08(土) 15:20:35
一緒に眠る話を書きたくなったので書きました。
- 10二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 15:30:16
保守兼ねて乙
- 11123/07/08(土) 15:37:15
- 12二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 16:32:39
三女神にちゃんと届いてて草
純真な乙女キタちゃん良き… - 13123/07/08(土) 16:41:39
- 14二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 16:42:24
可愛らしい魔が差したキタちゃんからしか得られない栄養素がある
- 15123/07/08(土) 16:44:20
- 16二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 16:49:46
"何となく感じる不安よりも会いたい気持ちが勝ってしまい、忍び足で部屋の中に入ってしまう。"
乙女なキタちゃんかわいいね
"これ今の関係でやるやつじゃないのかも!じゃあどんな関係でやるのかな?いや分かんないや!"
我に返るキタちゃんかわいいね。尻尾きたえててヨカッターするキタちゃんもかわいいね……
はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~可愛かった。
心が健康になった。ありがとう。 - 17123/07/08(土) 16:53:24
見て頂きありがとうございます。
好きな部分を引用して感想を書いて頂いて申し訳ない気持ちもあります……。
尻尾の部分は……ギャグになってますけど凄いことですよね……尻尾で重いもの持てるみたいですし……。
こちらの方こそ本当にありがとうございます。
- 18二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 22:18:08
抱けっ!抱けーっ!
抱いた! - 19123/07/08(土) 23:49:49
- 20二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 23:51:08
このレスは削除されています
- 21二次元好きの匿名さん23/07/08(土) 23:54:48
読んでて背中痒くなった