(SS注意)ゼファーをモフる話

  • 1二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:44:59

    「見てくださいトレーナーさん、クラスの方に作っていただいたんです」

     楽しそうに、踊るようにくるりと自分の姿を見せつけるゼファー。
     その姿は普段の制服とも、体操服とも、ジャージとも全く異なる姿であった。
     全身を包んでいるのは、見るからにふわふわとしたブラウンの生地。
     着ぐるみのように全身が一体化していて、頭には耳と目のついた大きなフード。
     何より特徴的なのは手から足の間に広がっている膜のような布。
     後ろからは彼女本来の尻尾が揺らめいている。
     それは、ムササビを模した、パジャマのような着ぐるみだった。

    「すごい出来栄えだね、今度の聖蹄祭用なのかな?」
    「はい、動物達の風貌でカフェを。それで私はハンカチさんの衣装を作っていただいて」
    「なるほど、それは当日が俄然楽しみになってきたよ」
    「はい、是非風待ちにしててください……それで、どうでしょうか?」

     そう言うと、ゼファーはどこか期待したような目でこちらを見つめた。
     他の人が着ると、どこか周囲から浮いてしまいそうな服装。
     けれど自然を愛する彼女が着ると、むしろ周囲が森になったような印象を受ける。
     今にも草木の匂いや鳥の囀りが聞こえて来るような、そんな空気感。
     ただ、俺の語彙では上手く言い表せないから、出来るだけ単純に、ストレートに伝えた。

    「すごく可愛らしくて、似合ってるよ、このまま一緒に森に行きたいくらいだ」
    「ふふっ、それはひよりです。まだ試作品なので、外に出るのは難風ですけど」

     そう言ってゼファーは嬉しそうに笑みを零す。
     ……完成品だったらそのまま外に出るつもりかもしれない、というのは覚えておこう。
     とはいえ、少しだけ不安は残る。
     彼女は自然を愛して、その中でも特に風に強いこだわりを持っていた。
     服装も出来れば薄着が良いと考えている節があり、今の着ぐるみは対極に当たるデザイン。
     その辺りは大丈夫だろうか、そう問いかける前に、彼女の方が言葉を紡いだ。

  • 2二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:45:22

    「風を感じられないのはあなじですけど、触り心地は軟風で、綿毛のたんぽぽさんみたい」

     ゼファーはふわふわでもこもこな生地を頬で感じながら、口元を緩める。
     まあ、とりあえずは問題なさそうかな。俺は肩の力を抜くこととした。
     それを見て、彼女は急に思いついたように、尻尾をピンと立てる。

    「トレーナーさんも、是非この松籟を浴びてみませんか?」
    「えっ」
    「私が好風と思ったものを、共に感じて欲しくて……ダメでしょうか?」

     ポテポテとゼファーはこちらに近づいて、下から見上げるように懇願する。
     その瞳には純粋な善意と期待と、ちょっぴりの不安の色。
     こういうお願いをされては断るという選択肢は存在しない。
     わかったよ、と彼女に伝えから、俺は恐る恐るそのふわもこの生地に、そっと触れた。
     それは────まさに革命的であった。
     そっと触れた指先は柔らかな感触に包まれて、無限の心地よさを伝えて来る。
     まるでシルクのような感触でありながら、暖かさも決して蔑ろにしていない。
     何度触っても決して飽きることのない、ずっと触っていたくなる、極上の手触り。

    「うわ、すごいなこれ、ふわふわで、もこもこで……!」
    「ふふっ、でしょう?」
    「ずっと触っていられる、やばいな、これは想像を越えてる……!」
    「はい、私にとっても未知の風でした」
    「なんというか、人生で最高の触り心地かもしれない」
    「……はい?」
    「ぬいぐるみとかあったら、ずっとそれだけを触ってしまいそうだ」
    「…………むぅ」
    「作ってもらえるように頼もうかな……なんて……」
    「………………」

  • 3二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:45:35

     ふと、冷たい風を感じて、ゼファーの顔を確認する。
     するとそこには、ジトっとした目で、不満そうにこちらを見る彼女の姿。
     最後は冗談のつもりだったのだけど、少し軽率過ぎただろうか。
     慌てて謝罪の言葉を口にする、前に彼女は行動を起こした。
     突然、頭のフードを取り払い、素の顔と耳と髪を晒して、にっこりと微笑む。

    「トレーナーさん、ふわふわでもこもこな緑風は、ここにもありますよ?」

     そう言って、ゼファーは耳をぴこぴこと動かし、自身の大きなおさげに触れた。
     全く持って予想だにしていなかったアクションに、俺は何も反応できない。
     そうこうしていると、彼女は不思議そうに首を傾げた。

    「どうかされましたか? 突然凪いでしまわれて」
    「えっと、その、どうすれば良いのかわからなくて」
    「風来と私に触れていただければ」
    「……いや自由にと言われてもね? 流石に気安く触るのは不味いかなと」
    「先ほどまで軽風に撫でまわしていましたけど」
    「人聞きの悪いこと言わないで」

     今までのあくまで着ぐるみに触っていただけである。
     しかし、ゼファーはそんなことは知らないと言わんばかりに、待ち望む目を閉ざそうとしない。
     彼女は割と頑固な部分がある、今回もこちらが触らなければきっと退かないだろう。
     俺はため息一つ、剥き出しになっている彼女の頭に手を伸ばした。

    「…………♪」

  • 4二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:45:49

     その手に気づいて、ゼファーは少しだけ頭を俯かせて、目を閉じる。
     さて、どこに触れるのがベストか。
     その少し大きめな耳か、ボリューミーなおさげか、あるいはその他か。
     耳はウマ娘にとっては特別な部位なので、避けた方が良いのだろう。
     おさげは少し興味はあるけれど、ちょっと、意味合いが変わりそうなので却下。
     ……まあ比較的無難な、頭のてっぺんとかが良いだろうか。
     
    「じゃあ、触れるね」
    「はい」

     一声かけてから、俺は自身の手をゼファーの耳の間に持って行った。
     後はそのまま手を下に降ろすだけなのだが────不意に、視線が奪われた。
     彼女の前髪の中央、大きく存在感を示している、流星。
     何故かそこがすごく気になって、目を離すことが出来ない。
     ……自由に触れろと言ったのは、彼女だ。
     それに頭のてっぺんも前髪も、きっとそこまで差はない、そうに違いない。
     俺は自身の手を彼女の流星に合わせて、そっと指を絡ませた。
     さらりと、艶やかで、ふんわりとした感触が指先をすり抜ける。
     すると彼女の爽やかでどこか木々の香りを感じる匂いが、鼻先をくすぐった。

    「…………っ!?」

     予想外な箇所を触れられたせいか、ゼファーは目を見開く。
     丁度こちらも近づいていたため、俺と彼女の視線は至近距離で正面衝突を起こしてしまう。
     ただ、俺の方はそれどころではなく、彼女の流星の手触りに夢中になっていた。
     柔らかく、ふわっとしているのにハリやコシを感じる触感。
     クセのないさらさらな髪質はとてもツヤがあって美しい。
     ふわふわで、もこもこで、さらさらで、つやつやで。
     一生触っていたくなるような、極上の触り心地。
     気づいたら片手ではなく両手で、指先ではなく手のひらで、彼女の流星に触れていた。

  • 5二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:46:07

    「ひゃっ……んんっ……とっ、とれーなーさん……トレーナーさん!」

     とんとんと、ゼファーに身体を叩かれるまで、俺は完全に意識を流星に取られていた。
     声がようやく脳に届いて、自分の愚行に気づき、さあっと全身の血の気が引く。
     慌てて彼女の様子を見れば、顔は紅葉のように真っ赤で、瞳には涙を貯めたように輝いている。
     呼吸も少しだけ乱れていて、自分がどれほど乱暴になっていたのを物語っていた。

    「ごっ、ごめん! すぐに離れ────」

     身体を退こうとした刹那、ゼファーは飛び込むように抱き着いて来た。
     さながらそれは滑空するムササビのように。
     ふわふわもこもこの全身をなんとか受け止めるて、体勢を整える。
     近づいたせいで彼女の体温が、匂いが、ふわふわさが直接伝わってきてしまう。
     心臓が暴れ出すのを感じている隙に、彼女は俺の耳元でそっと囁いた。

    「顔を見られるのは恥ずかしいので……これで、貴方の、風の向くまま」

     ゼファーは顎をすりすりと俺の肩に擦りつける。
     それはムササビのマーキング行為である、と何かで読んだことを俺は思い出した。

  • 6二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:46:41

    お わ り

    下記のスレを参考にして書いたものです

    さわりたい ゼファーの大きな|あにまん掲示板もふ流星bbs.animanch.com
  • 7二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:47:29

    もふもふ……ふわふわ……

  • 8二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:47:30

    素晴らしいSSありがとうございます!
    やはり可愛いふわふわは万病に効きますね…!

  • 9二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:50:16

    素晴らしい作品をありがとうございます

  • 10二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:53:46

    ふわふわ…!

  • 11二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 22:54:45

    >>6

    スレ立てした者ですが、ふとこぼした願望と、そこから生まれ膨らませてもらえた概念を素敵なSSにしていただけて感無量です……ありがとうございます……!

    素晴らしきゼファふわの輪……

  • 12二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 23:01:14

    素晴らしいSSだ

  • 13二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 23:10:07

    完璧だ
    もはや全てが完璧である

  • 14二次元好きの匿名さん23/07/11(火) 23:21:30

    ムササビ→ハンカチさんが納得感すごくて本編で言ってたっけ?ってなった。すごい。
    ゼファーの機嫌を風で読み取ってる凱風だいぶ染まってんな

    ゼファーはモフモフだけどお肌はバブいタマゴ肌(ヘリオス評)で超〜キレイ・ありえんくらいきめ細かくてモチモチ(パーマー評)なんだぜ…頬擦りとか凶器だよ

  • 15123/07/11(火) 23:53:22

    感想ありがとうございます

    >>7

    アヤベさん……!

    >>8

    可愛いふわふわは良いよね……

    >>9

    至って健全だから……ふわもこを楽しんでるだけだから……

    >>10

    アヤベさん……!(二回目)

    >>11

    こちらこそ良いスレをありがとうございました

    >>12

    そう言っていただけると幸いです

    >>13

    ありがとうございます

    >>14

    ムササビ→ハンカチさんはアプリの方で出てる台詞ですね(キャラストだったかな……?)

    肌もそれならきっと髪の毛もすごい手入れされてるんでしょうねえ……

  • 16二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 03:43:44

    連荘で風使いのSSを読めるとは…ツイてるなー
    元ネタスレも読んでたので二度おいしい形になったぜ!

    流星ってただの模様ではあるんだろうけど、唯一無二の個性だからウマ娘的には何かしら意識してそうだよね
    触られるとか、褒められるとかそういう所にも特有の礼儀作法がありそうではある

  • 17123/07/12(水) 06:52:58

    >>16

    感想ありがとうございます

    密かなこだわりとかジンクス的なものはありそうですよね

  • 18二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 07:59:05

    頭を撫でて
    頬擦りされて
    ふわふわの服着て
    抱きつかれて
    いい匂いがする
    うまだっちしてしまう…いろんな意味でバレたくないな…

  • 19二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 14:08:09

    もっとふかふかもここもに埋もれて
    未知の風を感じて欲しい

  • 20123/07/12(水) 18:35:18

    >>18

    色んな意味で攻撃力高いよね……

    >>19

    もっとイチャイチャしてほしいよね……

  • 21二次元好きの匿名さん23/07/12(水) 22:46:24

    ふわふわモコモコの感触と
    ふわっとしたゼファーの雰囲気と見た目のダブルパンチだ

  • 22123/07/13(木) 00:12:59

    >>21

    良い概念ですよね……

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