- 1冬木の一般魔術使い21/12/11(土) 12:25:02
聖杯戦争が終わった翌日。
衛宮士郎はイリヤスフィールの住む城に呼び出された。
応接間で待っていたのは、怖い顔のメイドと、ぼうっとした顔のメイド、そして……イリヤの魔力で現界を続けているバーサーカーだ。
「改めてご挨拶します。使用人のセラと申します。こちらはリーゼリット。そしてご存知の英霊バーサーカーです」
「◾️◾️◾️◾️◾️!!」
「は、はぁ。なんでバーサーカーが?」
「イリヤ様のお父上の代理だとお考え下さい。本日はイリヤ様とご交際を始めようというダニ……もとい男性がどのような方か確認する為にお呼び出ししました。お越し頂き感謝します」
最後の一文の後、セラが小声で「お陰で始末が楽になりそうです」と言ったように聴こえたのは気のせいだろうか。 - 2二次元好きの匿名さん21/12/11(土) 12:26:54
ふーん、続けて?
続けてください! - 3冬木の一般魔術使い21/12/11(土) 12:29:52
「さっそくですが、士郎様はどのようなお仕事をなさってますか?」
「え、まだ学生なんですが」
「はぁ……嘆かわしい。イリヤ様と添い遂げようという方が年収/zeroの甲斐性なしとは……」
「◾️◾️◾️◾️…」
「バーサーカー様も、そうだそうだと言ってます。せめて家畜小屋の掃除くらいの仕事はしろという事ですね」
「えぇ……」
バーサーカーの言葉は分からないが、どちらかと言えばドンマイと言ってくれたような仕草に見えた。
……帰りたい。 - 4二次元好きの匿名さん21/12/11(土) 12:32:43
なんだこのお義父さんと姑の恐ろしい部分が融合したかのようなセラは...
- 5冬木の一般魔術使い21/12/11(土) 12:38:54
「まぁ、肩肘を張りすぎるのも考えものです。気楽に粗茶でもお飲み下さい」
「は、はぁ。では遠慮なく頂きます」
セラは自分のカップを手に取り、紅茶を飲む。来客である士郎に気を使わせない配慮だろう。
士郎も眼前のカップを手に取り、一口含む。
芳醇で柔らかく、安らぎを感じる風味の紅茶だ。きっと高価なものに違いない。砂糖やミルクを入れずとも、いつまでも口に入れていたいほどの美味だった。
「ところで士郎様はロリコンですか?」
「ブッフォッッッ!!」
不意打ちの質問に盛大に紅茶を吹き出してしまう。
セラは露骨に眉をひそめ、
「まぁ! なんてはしたない! 士郎様は礼儀作法がなってないのですね!」
などと理不尽な罵倒をしてきた。
バーサーカーは首を振っている。
「見なさい! バーサーカー様も『はぁ、つっかえ』とおっしゃってます! このお方はイリヤ様のサーヴァントなだけでなく、偉大な英雄であらせられる方ですよ! そんなお方を失望させるなんて……!」
「い、今のどう考えても変ですよね……」
……早く帰りたい。 - 6冬木の一般魔術使い21/12/11(土) 12:47:44
セラは咳払いを一つした。
「こほん。まぁ、過ぎた間違いは一旦置いておきましょう。水には流せませんが。
それより、先の質問の答えをお聞かせ願えますか」
ここは正念場だ。
士郎は深呼吸した後、セラをまっすぐ見つめた。
「俺は、イリヤが好きなだけです。この先イリヤがどうなろうと、俺が守り続けるつもりです。きっと……イリヤの本当の父親も、イリヤを守ってくれる男を望んでるはずだと思います」
セラはしばらく無言で士郎の目を見ていた。
バーサーカーはどこか満足げに頷いている。
1分間、リーゼリットが茶菓子を食べる音以外静寂が続いた。
そしてセラは、頬を赤くして目を逸らした。
「いやらしい! そうやってお嬢様だけでなく私まで誘惑する魂胆ですか! このすけこまし!」
「なんでさ!」
……そろそろ帰ってもいいかな?
士郎は肩を落とした。 - 7冬木の一般魔術使い21/12/11(土) 12:49:59
(まだ続けたかったけど、時間切れ。スレ残ってたら夕方にでも書きます)
- 8二次元好きの匿名さん21/12/11(土) 12:52:59
待ってます。
- 9二次元好きの匿名さん21/12/11(土) 12:55:32
日本人はみんなロリコンなのよ!
- 10二次元好きの匿名さん21/12/11(土) 12:56:04
いいぞいいぞ!
- 11二次元好きの匿名さん21/12/11(土) 15:01:38
日本人(推定)なんだが
- 12冬木の一般魔術使い21/12/11(土) 18:55:13
「士郎様は、ご趣味や特技などはお持ちですか?」
「それなら特技ってほどでもないですけど、家事はある程度できます。料理も一通りはなんとか」
「そうですか。料理が……」
セラはその言葉を反芻し、少し熟考していた。
士郎にも緊張が走る。
「士郎様が料理上手なのはイリヤ様から伺っております。なんでも『シロウが主人公の料理アニメなら覇権が取れる』と力説されてましてね」
「そ、そっか。イリヤがそういったのか。はは……」
「何をヘラヘラと……。イリヤお嬢様は高貴な方です。普段はあなた方のような下々の食事など召し上がりません」
「す、すみません。なにぶん庶民なので……」
「まぁ、いいです。それよりもイリヤ様が聖杯戦争の間、士郎様の家にお泊まりになった日がありましたね。何を作りましたか?」
どんな料理をイリヤの為に作ったか。それは単にイリヤに対するもてなし方だけでなく、料理の腕前を探る質問だと士郎は察した。その証拠に、バーサーカーも腕を組みながら「ここはしっかり答えておけ」という励ましの視線を送ってくれていた。
士郎は平常心を保ちながら、正直にイリヤに作った料理を挙げた。
「朝はご飯と味噌汁、それから鯵の煮付けです。昼は洋食がいいかなと、オムライスにしてみました。デミグラスソースと自家製で」
セラの表情が次第に緩やかになっていく。
どうやら少しは見直し始めてくれているようだ。
よしいけるぞ、と士郎は内心でガッツポーズを決めて話を続ける。
「夕食は外が寒いので、おでんにしました」
「hoden!?(ドイツ語で『睾丸』)」
「えぇ、イリヤに身も心もあったまって気持ちよくなってもらおうと考えました。え、セラさん?」
「なんて破廉恥な! 本性を現しましたね!」
「本性!? おでんの何がいけないんです!? 日本の女性なら、みんなおでんが大好きですよ!」
「黙りなさい! よくもこのアインツベルンの城でそんな不潔な言葉を……! もはやこの場で切り捨てもやむを得ませんね!!」
「なんでさ!?」
「セラ。それhodenじゃなくて、おでんの事だと思う。コンビニで売ってる煮物みたいなアレ」
沈黙を破ったリーゼリットに、士郎は間一髪で命を救われるのだった。 - 13冬木の一般魔術使い21/12/11(土) 19:27:13
「取り乱してしまい、失礼しました……」
顔から火が出るほど真っ赤にして謝罪するセラ。
士郎も何か誤解があった事に気づいて大人の対応。
「別に気にしてませんから。まぁ、色々とすれ違いもありましたし、では今日はこの辺で」
「あ、それはダメです」
「ぐぬっ」
隙あらばと脱出を試みたが、あっさり阻まれてしまう。どうやらまだこの尋問は終わらないらしい。
「士郎様は、イリヤ様を幸せにできる自信はおありですか?」
おそらく本命と言える質問だ。
士郎は胸を張って答える。
「はい。イリヤは、俺が必ず幸せにします」
士郎の答えに、バーサーカーは無言で親指を立てた。それを見たセラも頷く。
「バーサーカー様は『分かった娘はくれてやる。その代わり一度でいい。奪っていく君を……君をクリティカルバスターで殴らせろ』とおっしゃってます」
「死ぬけど!? それに明らかにサムズアップしてない!?」
……もうおうち帰りたい。
士郎は深くため息を吐いた。 - 14二次元好きの匿名さん21/12/11(土) 19:29:31
このリゼプリヤっぽいリゼだな…
- 15冬木の一般魔術使い21/12/11(土) 20:18:40
その後、士郎は何故か中庭に案内される。
「あなたの軽薄な言葉だけで私たちの信頼を勝ち取れるとは思わないで下さい。真にイリヤ様を愛しているなら、言葉ではなく行動と実力で示して下さい」
「えっと、それ言い出したら今までの面接の意味がないような……」
もはやセラが嫌悪感を隠そうとともしない事に、士郎は諦観せざるを得なかった。
「それで、ここで何をすればいいんです?」
「はい。バーサーカー様と決闘して下さい。心配しなくても1回キルを取れば士郎様の勝ちとします。それにバーサーカー様は一度殺されたぐらいで死ぬような方ではありません。ライフが12個あるのはご存知でしょう?」
「俺のライフは1つしかないのもご存知ですよね?」
唐突に訪れた死闘の刻。
バーサーカーはとりあえずその場のノリで戦う気になっていた。さすがバーサーカー。
「殺って下さい、バーサーカー様! その男はイリヤ様に睾丸をしゃぶらせようとする下衆です!」
「……やっちゃえ、バーサーカー」
何やらセラとリーゼリットはバーサーカーを過度に扇動している。
士郎は頭を切り替えるように冷静に思考して、バーサーカーに勝利する事だけに集中する。
……落ち着け。ヤツは強力だ。12回分の命のストックがあるだけでなく、高ランクの攻撃でなければダメージにすらならない。その上一度受けた攻撃は二度と通用しないチートだ。だが今までバーサーカーと衛宮士郎が交戦したのは最初の夜に一度イリヤと出会った時のみ。その後すぐに共同戦線になった。あの頃はまだ自分が投影魔術が使える事など理解していなかった。つまり結論として……
「勝てる。ヤツは一度も俺の攻撃を受けた事がないんだ。『投影開始』!」
勝負はほんの一瞬だった。
イリヤや遠坂凛の陣営との協力、最優のセイバーに助けられてきたとは言え、仮にも聖杯戦争から生還した猛者だ。
イリヤを聖杯の運命から救った衛宮士郎に敵などいなかった。
「悪いな、バーサーカー。俺は……正義の味方になるのをやめてでも、イリヤの味方になるって決めたんだ。切嗣の為にもな」
士郎が投影したカリバーンが、バーサーカーの胸を貫いた。 - 16冬木の一般魔術使い21/12/11(土) 21:06:11
士郎がカリバーンを引き抜くと、微動だにしなかったバーサーカーの身体がピクリと動いた。
手応えはあった。『十二の試練』の1つくらいは破れたはず。
「◾️◾️敗◾️◾️ぞ」
「え?」
狂戦士は、その目を混沌に曇らされても尚、気高く士郎に語りかける。
「お前なら守れるだろう。任せたぞ」
彼は確かにそう言った。束の間の、狂気をも超えた強き想いだった。
……あぁ、受け取ったよ。バーサーカー。
セラは精魂尽き果てたよう深く息を吐いた。
「本当に、あなたは……イリヤ様を愛しているのですね」
「あぁ。……そろそろ帰ってもいいか?」
忍耐の限界が来ていたせいか、ついに敬語を忘れてしまう。
セラは「愚かなお方です」と呟く。
「衛宮士郎様。あなたの父はアインツベルンの裏切り者です。あなたがイリヤ様と本当に添い遂げようとするなら、アインツベルンは聖遺物を盗んだあなたを許さないでしょう。必ずいつか、アインツベルン家と戦う事になります。それでも、あなたは……」
「あーーー! セラ! 何してるの!」
噂をすれば、お姫様の帰還だった。
「もう! シロウは家にいないし、帰って来てみれば! しかもバーサーカー1回死んでるじゃない!
セラのバカー!」
「お、お嬢様……こ、ここれにはわけが……」
イリヤの言葉に顔から冷や汗が溢れ、慌てるセラ。
「言い訳なんていらないわ! 私のいないところでシロウをいじめるなんて許さないんだから!
……シロウ、行くよ」
士郎の手を握るイリヤ。
「行くってどこに?」
問いかける士郎にイリヤは、
「デートよ。聖杯戦争は終わったんだから、今日くらいはたっぷり遊びましょう、お兄ちゃん」
微笑んだ。
士郎はイリヤの小さな手を握り返して、一緒に歩き出した。
この笑顔が守れたのなら、自分の選択は間違いなんかじゃないんだ、と胸の内で呟きながら。 - 17冬木の一般魔術使い21/12/11(土) 21:09:21
おしまい
イリヤとの甘々デートシナリオとか興味はあるけど、また機会があれば、で - 18二次元好きの匿名さん21/12/12(日) 00:02:22
- 19二次元好きの匿名さん21/12/12(日) 00:53:42
- 20二次元好きの匿名さん21/12/12(日) 02:57:12
たしかタイコロだと紳士だったなバーサーカー...
- 21二次元好きの匿名さん21/12/12(日) 03:23:05
アチャクレスだと英雄度がマシマシになるから色んな意味で主人公以外だと出せなくなるという
- 22冬木の一般魔術使い21/12/12(日) 09:32:21
(しまった。聖杯戦争終了の翌日でストック12もあるわけなかった。アレは回復するみたいだけど、決戦無傷で終わらせられるとか考えにくいし。残り5とかならワンチャンでオーバーキル使って削り切れたかもしれないし)