【何でも許せる人向け】とっても平和なアドステラ 2【SS】

  • 1◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 18:29:10

    前スレのあらすじだよ。


    ここはとっても平和なアドステラ!争いのない世界で子どもたちは何一つ憂うことなく心のままに歌い、笑い、遊び、恋をする。

    ――これは希望と喜びに満ちた子どもたちの愛の物語。


    ※男女CP乱立注意

    【CP注意】ここはとってもとっても平和なアドステラ【SS】|あにまん掲示板アドステラの子どもたちみんなが幸せであれ……!と願って書いた男女CP乱立SSを晒す。ダメSS書きなので先に謝っとく!ごめんね!ちなみに時系列君は複雑骨折してる。許せ!bbs.animanch.com





    ――なんてのは夢物語さ。




    現実のアドステラは人類存続の危機。なにせ子どもたちはみーんな一夜にして醒めない眠りの呪いにかけられちゃった!

    新しく生まれてくる赤ちゃんだって、その呪いからは逃げられない。このままじゃ100年足らずで人類は滅びちゃう……!




    ――これは絶望と苦難に満ちた大人たちの愛の物語。

    もう一度、子どもたちに「おはよう」を伝えるための、戦いの記録だよ。

  • 2◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 18:30:11

    あ、時系列君は複雑骨折のまま迷子になっちゃった。あっちこっち話飛んだりするけど許してね。

    なんならしばらく世界情勢ばっかりでデリングの名前くらいしか出てこないけど許してね。



    それじゃ、SS投下するよ~

  • 3二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 18:35:34

    再開ありがとう!
    楽しみにしてます

  • 4◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 18:48:00

    大人たちの戦い(1)

    子どもたちの眠りの呪い、人類未曽有の危機を乗り越えるため、平和という名の衰退に陥った宇宙と地球で、統一政府が発足しました。
    デリング・レンブランを筆頭に、地球と宇宙の多くの政治家や有識者たちは何日も何日も膝と頭と時には拳を付き合わせて議論しました。子どもたちが目覚めた後に必要なものは何か、現代社会の存続に必要不可欠なものは何か。この先を見据えた時に優先すべきもの、禁止すべきものは何か。

    ……統一政府が真っ先に公布した法律は、その一年後以降の出産の禁止でした。
    眠りの呪いがわずか一昼夜で宇宙にも地球にも蔓延したことを考えれば、その子どもたちの目覚めも一昼夜で起きると考えられます。このまま新生児が増え続ければ、目覚めた子どもたちにとって大きな負担になってしまうでしょう。今妊娠している子どもは仕方ないにしても、それ以降の妊娠は法で規制され、人工中絶が推奨されました。
    とはいえ、規制を逃れて隠れて出産しようとする者は以降も相次ぐのですが。

  • 5◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 18:52:38

    大人たちの戦い(2)

    眠り続ける子どもたちを観察した結果、細胞活動速度が通常の約100万分の1となっていることがわかりました。彼らの体内時間で一晩でに目覚めると仮定しても、彼らの目覚めは遥か未来――1000年近く後、大人たちの寿命が尽きたその後で目覚める公算が極めて高いことがわかりました。

    政府は第一に、冷凍睡眠技術の向上を優先することにしました。より安全に、かつ長期間の冷凍睡眠を実現すれば、多くの人材を子どもたちに残してあげられるかもしれないのです。なにより、親たちがまた子どもたちに会えるかもしれないのです。なるべく早く――最低でも10年以内に実用レベルに乗せることを目標としました。
    新生児たちの親が長期睡眠と覚醒を繰り返し、子どもたちと再会した後で、健康を維持したまま新生児を成人まで育て上げられるように。1000年間の「眠り」で経過する親たちの体内時間が10年以内で収まるように。
    つまり、子どもたちと再会するまでに今から親が年を取るのが20歳以内で済むように。

  • 6◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 19:13:14

    大人たちの戦い(3)

    それ以外の医療関係者も勿論子どもたちに必要でした。子どもたちが目覚めました、でも病気になって死にました、では目も当てられません。かといって医療関係者を眠らせすぎれば現代社会が崩壊してしまいます。若年層に医療技術者・知識者を増やし、かつ人の手を必要としない、機械による自動診療技術の普及と向上が急務とされました。

    ――統一政府は、人類の「法令寿命」をまずは120歳と定めました。
    「法令寿命」以上の年齢になるとあらゆる社会保障が受けられなくなり、サービスは後回しにされます。望むなら安楽死のための薬品も配られます。
    現代でも120歳まで生きているのはほとんどがアーシアンの富裕層です。スペーシアンでそこまで生きている人間はごくわずか、それも生命維持装置の中でただ「死んでいないだけ」の状態です。反発はほとんどありませんでした。
    ――統一政府は、毎年人類の「法令寿命」を一年づつ削っていき、50年後、今起きている一番若い20歳が70歳になる時を、現代社会の寿命と定めました。
    もっとも、30年後には冷凍睡眠装置が余り始める公算ですので、この法制度に不満があるのならば「眠り」に就けばよいのです。

    この「法令寿命」には一部の例外があります。一番必要とされる医療関係者です。彼らは働き続ける限り「法令寿命」の規制対象外でした。他にも高度な技術を必要とする専門職に例外が適用されました。

  • 7◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 19:20:22

    大人たちの戦い(4)

    企業たちは自信をいつ解散するのかを決めました。この先、人口がどんどん減っていき、経済活動が縮小していくのは明らかです。そもそも社員や経営者にも「眠り」に就こうとする親や、政府に「眠り」を推奨された技術者、様々でした。
    一部の企業――製薬、食品、その他諸々の現代にも未来にも必要不可欠な企業は解散後に統一政府に買い取られることになりました。

  • 8◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 19:32:50

    大人たちの戦い(5)

    統一政府はある程度「眠り」に就く技術者たちを選別した後、一般人にも公募しました。
    最優先されたのは若く健康で眠れる子どもを持つ親――特に犯罪歴がなく、何らかの有用な技術や知識を身に付けている者が優先されました。
    統一政府はこの基準を公開しました。「眠り」に選ばれなかった者にも、何が足りず、何をすれば基準を満たせるのかを明らかにしました。統一政府とて彼らを不適格にしたいわけではありません。適格者は多ければ多いほど良いのです。
    不健康な者には健康リスクを下げるためのワークアウトや食事・治療のプログラム、犯罪歴のある者には更生プログラム、無学な者には学習プログラム。様々なプログラムが準備されました。
    全部未来の子どもたちが困らないように――そして子どもたちの眠る「箱舟」の維持のためにも必要なことでした。

  • 9◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 19:39:17

    大人たちの戦い(6)

    そして富裕層向けの抜け道も資金集めに用意されました。冷凍睡眠にかかる費用10人分を一口として、寄付をすればするほど「眠り」の適格者評価が上がっていくのです。
    「眠り」に就く者の資産は評価され、その値に応じて覚醒後に様々な優待権が得られました。また、箱舟に直接寄付した物に対しては所有権および優先使用権が割り振られました。

    そうそう、当然ですが眠れる子どもたちの親の中には「眠り」に就かずに死ぬ者もいました。彼らの遺産のうち、生前に手続きされたもの、或いは遺言で指定された物は子どもに所有権・優先使用権が割り振られました。

  • 10◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 19:54:16

    希望の光

    ――さて、話は少し変わります。
    子どもたちが眠りに就いて約1年後のことです。彼らを見守る医師たちから2つの報告がありました。
    1つ、子どもたちの脳波が、細胞の活動速度に比べると非常に活発なこと。
    1つ、複数の子どもたちの脳波パターンが非常に似通っていること。
    そしてそこから導かれたのは「同じ夢を見ているのではいるのではないか?」という仮説でした。
    与太話と思うものも多かったのですが、眠れる子どもたちを目覚めさせるヒントになれば、と藁にも縋る思いで研究が進められました。
    そして、一つの装置が完成しました。子どもたちの見る夢を映像化する装置です。
    映像を見た親たちは息を吞みました。そこで子どもたちがみんな笑っていました。生き生きと駆け回り、見知った、或いは見知らぬ子どもたちと遊んでいるのです。
    親たちは久方ぶりの子どもたちの元気な姿に泣き崩れ――そして微笑みました。子どもたちは少なくとも苦しんではいないのです。
    (――自分たちに笑いかけてはくれないけれど。)
    親たちの、そして親以外の大人たちも大いに心を慰められました。
    泡沫の、けれど幸せな光景は瞬く間に広がり、世界中に子どもたちの夢が公開されました。
    大人たちは知り合いの、或いはランダムで選んだ全く知らない子どもたちの夢を見るのが最大の娯楽になりました。

  • 11◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 20:05:07

    大人たちの戦い(8)

    子どもたちが「眠りの呪い」にかけられて8年後、待ちに待った冷凍睡眠装置が稼働し始めました。
    覚醒率は99.9%――重い障害を負ったり、永遠の眠りに就く者は1000人に1人以下に抑えられるように設定されています。
    「眠り」に就いた彼らは定期的に覚醒し、健康に問題ないか診断を受け、十分な時間をおいて再び「眠り」に就きます。起きている間、彼らは何らかの技術や知識を新たに学び、かつ実践業務に就くことが求められました。箱舟と、彼らと同じく「眠り」に就く者たちのメンテナンス業務です。
    彼らはやがて箱舟の「守り人」と呼ばれるようになりました。

    ――そして、子どもたちが「眠りの呪い」に就いて50年後。
    世界は長い長い眠りに就きました。

  • 12◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 20:08:08

    以上、クーラー直撃してさっむいからいったん休憩!!!

    なんか質問とか見たい子どもたちとかあったら好きに言ってね。書く書かないは気分次第。
    なお時系列君は迷子のままなのでソシャゲで言う幕間やパソストみたいなやつだと思ってね。

  • 13二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 20:09:18

    前スレ読んでました!!!!続き助かる

  • 14二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 20:11:06

    5号とノレアとソフィの絡みとか見たい

  • 15◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 20:16:56

    (・_・) なんかべたべたするなと思ったらカバンの中でヤクルトが零れてた顔

  • 16◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 21:03:31

    とある男親の話(1)

    「俺は眠ることにするぞデリング」
    「……そうか」
    ヴィムの言葉をデリングは特に驚きもなく受け入れました。良くも悪くも情の激しい男です。その選択は想定の範囲内でした。
    「ジェターク社はどうする?可能ならAI技術者を貰いたいのだが」
    「遠縁のやつに譲ろうかと思っていたが……資産の処分に俺の持ち株を売りに出す。後はまあ好きににしろ。ただしウチでも眠る奴は多いから目当てが外れても知らんぞ」
    ふむ、とデリングは頭の算盤を働かせました。
    「――眠る件に関して文句は言うなよ。100口分の寄付をしたし、設備メンテナンスのプログラムも受講予定だ」
    デリングは端末にヴィムの冷凍睡眠適格者判定結果を表示させました。
    「……ついでに応急医療プログラムも受講しろ。そうすれば評価はAAAだ」
    「フン」
    ヴィムはデリングの言葉に鼻を鳴らしつつも自分の端末に受講予定を追加します。
    「あとそうだな…‥ウエストを少し絞れ」
    「喧しいわ!」
    ヴィムはクワッと吠えました。
    「そういうお前は眠らんのか」
    ヴィムの言葉にデリングは眉一つ動かしませんでした。
    「人類全体の生存率を上げるのが私の仕事だ」
    「ハ、ご立派なことだな。せいぜい俺の息子たちのために働いてくれ」
    そう言ってヴィムは席を立ちます。その背中に、デリングの口からポロリと言葉が漏れました。
    「――ミオリネを頼む」
    ヴィムは心底嫌そうな顔でデリングを振り返りました。
    「お前の娘など知ったことか」
    ギュウウとこれ以上なく眉間にしわを寄せて
    「だが……いくら出来がいいからといってうちの息子たちばかり働かされるのも癪だからな。まあせいぜい扱き使わせてもらうとも」
    そう言って、ヴィムは応接室を後にしました。これがデリングとヴィムの最後の別れになりました。

    ――ヴィムのCEO辞任の報が伝えられたのはその1週間後でした。

  • 17◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 21:14:55

    とある女親の話(1)


    プロスペラはその知らせをオフィスで受け取りました。

    「――そう、あの方、眠るのね」

    彼女は生きる目的を見失っていました。愛するエリーはすぐそばにいます。でも彼女を自由にしてやることはもうできません。スレッタがいない今、プロスペラの計画は破綻してしまったのです。

    愛する娘たち二人を失って彼女は途方に暮れていました。……スレッタの目覚めを待つ時間は、プロスペラにはもうありませんでした。

    けれどこのままただ死を待つのも何か違う気がして――だから、話が聞きたかったのです。

    「――ヴィム・ジェタークにアポイトメントを取って頂戴」


  • 18◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 21:30:58

    とある女親の話(2)


    「何の用かなレディ・プロスペラ」

    「お手間は取らせませんわ、ミスタ・ジェターク」

    明らかに嫌そうな顔のヴィムにプロスペラは笑顔を浮かべ――そして少し躊躇いながら尋ねました。

    「……眠られるそうですね。どうしてそう決めたのかお伺いしても?」

    「何を言ってるんだ」

    本当に、心底理解できない、とでもいうような顔をして、ヴィムは当然のように言い切りました。

    「あいつらはまだまだ子どもなんだぞ。親の俺が守ってやらんでどうする」

    プロスペラは仮面の下でキョトンと目を瞬かせました。

    「まぁ……!」

    フ、と自然にプロスペラの唇が笑みの形を取ります。

    「フフ、フ、ああそうですね。あの子もまだ子どもですものね」


    「――ありがとうございます、ミスタ・ジェターク。……私も、もう少し頑張ってみますわ」


  • 19◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 21:38:20

    その日、プロスペラはエアリアルのコクピットで眠りました。

    夢に見るのは小さなエリー、愛しい夫、懐かしいヴァナディース。――そして、すくすくと育っていったスレッタの姿。

    温かい涙を零しながらプロスペラは目を覚ましました。

    「ねえエリー」

    応えのないMSの体へプロスペラは問いかけます。

    「――スレッタのために、待っててくれる?」

    沈黙がコクピットを支配します。どこか心地よい静寂が。

    「愛してるわ。二人とも」

    ――だから、プロスペラは頑張ることにしたのでした。


  • 20◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 21:39:54

    今夜はここまで!
    話の中でわからんとことかあったら聞いて
    明日朝起きたら答えるから

  • 21◆xMNDkv7Lvwzu23/07/16(日) 21:40:34

    (画像貼り間違えてる……)

  • 22二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 22:00:03

    乙です!
    こういうの好き……!めっちゃSF……!

  • 23二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 22:08:19

    ――あ、そうだ。僕一つだけ、訊きたいことがあるんだ。


    目覚めない子どもたちを見てるしかできない大人たち。

    すべてが終わった遠い遠い未来に目覚める子どもたち。


    ――置き去りにされたのはどっちだと思う?

    君の答え、教えてほしいな。


  • 24二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 22:12:33

    ヴィムーー!プロスペラァーーー!

  • 25二次元好きの匿名さん23/07/16(日) 23:48:43

    ……もしかしなくてもこれグエルくんのドキドキ初恋の軌跡全アドステラに公開されてる……?

  • 26◆xMNDkv7Lvwzu23/07/17(月) 07:08:58

    >>25

    大人気コンテンツだよ!

  • 27二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 07:32:17

    グエルカワイソス(´・ω・`)

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています