- 1二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:26:29
「つ……遂にこの日が来たんだ……」
トレーニングもない休日の朝。
寮の部屋であるものを手にしながらら震える体を止めることが出来なかった。
真っ白に輝くそれは、あたしでは未だに届かない頂点の輝きに思える。小さい頃から憧れたあのヒトのようなそれを見つめ続ける。
「こ、これをあたしが着る……」
これはあたしの憧れのヒトであるトウカイテイオーさんの勝負服……のレプリカだ。
お助け活動帰りに偶々見つけたこの服。少し高かったけど、お小遣いで何とか買えた。
「赤の勝負服もカッコいいんだけどね……」
もちろん、不死鳥の如く煌めくあの服もあたしは大好きだ。だけど、あたしが憧れたテイオーさんはこっちの印象が強い。
でも、赤の勝負服も良いよね……。何で買わなかったんだろう……。そっか……お小遣いが……。こ、今度お小遣い貯まったら絶対買おう……うん……。
まぁ今はそれは置いておこう!これを着るのが大切だもの!
本当は買ってすぐにでも着たかったけど、流石に誰かに見られるのは恥ずかしい……。
そう思って、ダイヤちゃんがいないタイミングを伺い、今日が来たということだ。
「よ~し!張り切っていこう!」
よし!気合い入れたし着てみようかな!
ゆっくりと袖を通して、しっかりと着れるように服を伸ばしていく。後はスカートを履いて……手袋を着けたら……。よし!キタサンブラック『トップオブジョイフル』完成!……何て言ってみたりして。
サイズはあたしに合わせたものを買ったから、小さいなんてことはなく、しっかりとあたしにフィットしている。
ちょっと体を捻ったり、伸びをしてみたり、ピョンピョン飛んでみても、破れたりや引っかかる感じはない。
うん……いい感じだ!……だけど。 - 2二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:26:53
「あたしがポニーテールならもっと良かったよね……」
髪を触りながらそう呟いた。
あの頃は小さくポニーテールにしてたよな……。今だけは少しあの頃みたいにしていればって思ってしまう。けど、髪短いから今ポニーテールに出来ないし……。はぁ……。
気にしても仕方ない……。とりあえず鏡まで移動してどんな感じか確認しないと……。
トボトボと歩いて、鏡の前まで移動した。
鏡の前にやって来て、顎に手を当てているいつもと違うあたしを見てみる。
うん。やっぱりカッコいいよねこの服。だけど。
「この服を着ているあたしはどうなのかな?」
鏡を見つめながら客観的に考える
テイオーさんの勝負服は王子様って感じのスマートな服だ。このため、キリッとした時のテイオーさんとのシナジーがかなり高く、その視線にやられるヒトも数多く……いるはずである。あたしはそのひとりだ。
だから……こう……あたしが着ても……その……。
イメージと違うのではないかと思ってしまう。王子様な感じではないしあたし。
やっぱりテイオーさんが着てこそなのかな……?くぅ……分かってはいるけど壁は高いなぁ……!
鏡の前に映るあたしを見ながら、手袋に包まれた手をギュッ……と握りしめた。
「だけどそれは承知の上だから!」
そうだ。あたしはトウカイテイオーさんではない。それは初めから分かっているではないか。だからこそ憧れたし目指すべき目標なのだ。
そしてこれは、あくまであたしのテイオーさんへ憧れが別の形になった感じだ!推し活?みたいなもの!……のハズ!
似合う?似合わない?それは二の次だ。大切なのはそれに対する情熱だ!……多分!
握りしめた手をさらに強くして、気合を入れ直した。 - 3二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:27:11
「とはいえ……このまま何をしようかな……?」
顎に手を当てながらこれからのことを考える。
正直この服を着た時点でかなり満足している。でも、せっかく着たならテイオーさんみたいなことしてみたい。
練習していたテイオーステップしてみるとか?でも完成度はテイオーさんに遠く及ばないし……。あの軽やかさはテイオーさんの柔軟性があるからこそだ。やるにしても、しっかりと柔軟体操をしてからにしたい。
それならテイオーさんみたいなことを言ってみるとか……?これならすぐにでも出来るよね。
テイオーさんみたいなこと……テイオーさんみたいなことか……。頭の中にテイオーさん思い浮かべてみる。
自身に溢れていて……。可愛さの中にキリッとしたカッコよさがあって……。それら全てが入っているテイオーさんの代名詞……。
うん。これだよね。演るべきことは決まった。
頭に浮かんだテイオーさんを自分の中に落とし込んで、
「ボクは無敵のテイオー様だ!」
鏡に向かってビシッと三本指を立てながら口上を述べる。
……うん!何となくしっくりくる感じだ。全身が震えるくらいじ~んときてる……。
この感触をしっかりと噛みしめるためにゆっくりと目を閉じる。
すると、がチャリと扉が開く音がした。
……え?何でこの部屋の扉が開くの?
音が聞こえた方に視線を向ける。 - 4二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:27:31
「………………」
そこにいたのは、口を開けたままこちらを見ているダイヤちゃんの姿だった。
あたしの方も何も言えず、鏡の前でポーズを取ったままダイヤちゃんを見つめるしかなかった。
「………………」
時が止まったかのような時間。
先に動き出したのはダイヤちゃんだった。
ゆっくりとダイヤちゃんは自分の机まで移動して、そこに置かれているものを何事もなかったかのように手に取った。
そしてそのまま扉の前まで移動してもう一度あたしの方を見つめる。
あたしは何も出来ずに、視線をダイヤちゃんに移すしか出来ない。
そのまま出ていくのかと思ったら、スマホを手に取りあたしに向ける。
パシャ。パシャ。パシャ。
何枚か写真を撮った後で、ゆっくりと扉を閉めて出ていった。
口を開けたままの表情は変わらないままだった。
暫くの間、その姿勢のまま扉を見つめ続けた。
気づけば膝から崩れ落ち、ゆっくりと横になっていた。そして、体を丸めて手で顔を覆った。
「見られた……写真も撮られた…」
あああ……あああ……!あああ!!
ゴロゴロと床を転がりながら、恥ずかしさを身を震わせる。いや、転がり過ぎたら服の汚れとか酷くなるから止めないと……。転がるのは止めて、身だけを震わせた。寒くないのに体の震えだけは止まりそうもない。
どうすればいいの?どんな顔してダイヤちゃんに会えばいいの?というかダイヤちゃんはどんな顔するの?
震えながら帰ってきたときのことを考える。
きっとダイヤちゃんは、凄く困った顔をしながら、それでも笑顔でこちらを優しく見てくれて……。
『まぁ……そういう事もあるよ……キタちゃん……』
勝手な想像だけどその優しさが今は痛い……。いっそコラ!って言ってくれたほうがいい気がする……。想像だけども……。 - 5二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:27:47
というか何で帰ってきてるのダイヤちゃん?あっ、何か持ってたから忘れ物取りに来たのか……。それなら……仕方ないか……うん……。
「でも、切り替えられないよ……」
いつまで経ってもダイヤちゃんの顔が頭から離れることがない。後悔したってもう遅いけど、どうにもならないのが現実だ。
だけど、これだけはハッキリしている。
もうこの部屋でだけは絶対にこの服は着ない。それだけは強く誓って震えるしかなかった。 - 6123/07/17(月) 19:28:49
テイオーの服を着るキタちゃんみたいなと思って書きました。
- 7二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:29:18
サイズ合わなくて破けそう
- 8二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:36:23
ダイヤちゃん……
- 9二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:41:59
- 10二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:42:53
可哀想なキタちゃん…でもキタちゃんが悪いんだよ
- 11123/07/17(月) 19:44:05
- 12二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:46:12
- 13二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:47:47
- 14二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:48:33
ライブの後のキタテイ助かる
- 15二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:49:06
- 16123/07/17(月) 19:50:26
- 17二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 19:52:01
- 18二次元好きの匿名さん23/07/17(月) 20:01:41
身長的にキタちゃんがテイオーの着る方がアレな気がする