(SS注意)ネオユニヴァースは観測されたい

  • 1二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:35:10

    「こんにちはユニヴァース……何で勝負服着てるの?」
    「ネオユニヴァースは今勝負服の“UNIN”、しばらくは軌道から外れて『おやすみなさい』をするから」
    「なるほど、キミが走りそうなG1レースはしばらくないからね」

     7月の頭、蝉の鳴き声が生徒達の声よりも姦しく鳴り響く時節。
     鍵の開いたトレーナー室のドアにノックをして開けてみれば、担当ウマ娘のネオユニヴァースが勝負服に身を包んで鏡の前でくるくると自転していた。
     先日、宝塚記念が終わったばかり、芝の中距離長距離を主戦場とする彼女が目標とするG1レースは10月の天皇賞まではない。
     それまでの間は一旦保管しておくことになるため、その前の点検といったところだろう。
     彼女は見づらそうに背後に視線を向けようとし、やがて困ったような表情でこちらを見た。

    「むぅ、“BACK”の“損傷評価”が困難。トレーナーの方で“検証”をできるかな?」
    「えっと、勝負服の背中の方を見てほしい、ってことだよね」
    「アファーマティブ、『よろしく』だよ」

     そう言って、ユニヴァースは背中をこちらに向けながら停止する。
     宇宙飛行士をイメージしたアウターの余った袖が、ゆらゆらと微かに揺れ動く。
     パッと見た感じでは問題なさそうに思えたが、裾の方にある僅かなほつれが目に入った。

    「あっ、裾のところちょっと破けてるな」
    「トレーナー、具体的な“銀河座標”を“送信”ほしい」
    「尻尾を通す凹みのちょい左手側……そう、その辺り」
    「……“確認”したよ、これは“疲労損傷”かな、頑張ってくれていっぱいありがとうだね」
    「そうだね、キミと一緒に走って、キミを守って支えてくれたんだから」
    「“UNDY”、トレーナーと『おんなじ』かな、ふふっ」

     そう言いながら、ユニヴァースは微笑みながら愛おしそうに破れた部分を撫でる。
     少し照れ臭くなってしまったのを誤魔化すように、俺は咳払いをしてから彼女に提案をした。

  • 2二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:35:26

    「……こほん、業者へ修理に出そうか?」
    「“ART”、この程度ならネオユニヴァースが“修復”をするよ」
    「いやあ、そこまでキミがやらなくても」
    「アウターを“パージ”しないとだね、んしょ……」
    「えっ」

     ユニヴァースが発した言葉の意味を、俺は一瞬理解できなかった。
     気づいた時には、まるでを帽子を取るような気軽さで、彼女は勝負服のアウターを脱いでいた。
     彼女の勝負服の────インナー。
     担当トレーナーとして、その勝負服の構造に関してはある程度理解している。
     だが曲がりなりにも女性の衣服である勝負服の管理には、あまり積極的に携わっていなかった。
     故に彼女の勝負服のインナーをこうして近くで見るのは、初めての出来事であった。
     第一印象は、美しいであった。
     カットタイプの水着のようなそのインナーは、彼女の無駄のない整った身体のラインを示していた。
     黒い布地に覆われた胸元は、谷間を露出させることにより彼女の端正なバストを強調させ、見るものを引きつける。
     また排熱性の向上のためなのか、シミ一つない腹部と可愛らしい臍までもが晒されており、太陽のように眩しかった。
     引き締まった腰から、女性らしい丸みを感じさせる臀部を経て、すらりと伸びた白い両脚。
     アウターの構造を合わせるためなのか、脚の付け根の部分はかなり鋭い角度で切れ込まれている。
     先程まで少し動いていたせいなのか若干食い込んでおり、鼠径部が────。

  • 3二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:35:41

    「トレーナーから“太陽放射”のスペクトル……?」

     首を傾げているユニヴァースの言葉に、俺は我に返った。
     そして一気に血の気が引く、俺は一体何をじっくりと見ているのだろうか。
     冷静になった脳は、自身の精神を自己嫌悪という形で責め立てていく。
     俺は彼女から視線を逸らし、そして弾かれるように走りだした。

    「すっ、すまないっ! 外出てるから!」

     ドタバタと激しく物音を立てながら、トレーナー室から飛び出す。
     突然の激しい運動に荒れる呼吸と暴れる心臓。
     あれほど騒がしく感じていた蝉の声すらも、今の俺の耳には入ってこない。
     それ故に────俺はトレーナー室からの音も、拾い上げることができなかった。
     
    「…………ふふっ」

     小さく、愉しげに、誇らしげに、込み上げるように漏れ出した彼女の笑い声を。

  • 4二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:35:54

     あの日から、ネオユニヴァースは少しずつおかしくなりはじめた。

  • 5二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:36:17

    「ユニヴァース、タイムも良い感じだよ。一旦休憩にしようか」
    「アファーマティブ、トレーナーも“HYDT”が必要だね」

     ユニヴァースは基本的な体温がかなり低くく、運動後でも体温変化の少ない体質だ。
     故に夏場の熱い日のトレーニングでもあまり汗はかかず、今も涼し気な表情をしていた。
     無論、だからといって水分補給や熱中症対策を疎かにして良いわけじゃないのだが、それはともかく。
     彼女は水分補給をしながら、何故か、俺の目の前に立つ。

    「ネオユニヴァースは“冷却”を開始するよ……『ちらちら』」

     ユニヴァースは体操服の襟元を摘まみ大きく前後させ、空気を取り込み始めた。
     ……誰もやるようなアクションではあるのだが、彼女がやるのは意外な気がする。
     何か期待を込めた眼差しでこちらを見るが、何を求めているのかが全くわからない。

    「えっと、プールトレーニングの方が良かった、とか?」
    「…………ネガティブ、“ミッション・フェイリァ”だね」

     そう言って、ユニヴァースは落胆したように肩を落とした。
     むぅ、最近は十分に意思疎通が出来てきたと思ったが、まだまだのようである。
     改めて彼女とのコミュニケーションに励まなければ、と俺は思いを新たにした。

     しかし、そんな思いとは裏腹に、彼女の理解不能な行動は続くのであった。

  • 6二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:36:42

     ある日トレーニングでは、ユニヴァースは体操服の裾を引っ張ってお腹を晒すように風を取り込んでいた。
     そして、たまたまゼンノロブロイが通りすがり、慌ててその行動を制止した。
     顔を真っ赤にして注意をするゼンノロブロイとしゅんとした表情で受け止めるユニヴァースの構図がちょっと面白かった。
     やがて解放された彼女は、少し落ち込みながらも、俺に問いかけた。

    「……トレーナーは、何か“感知”をしたかな?」
    「まあ、大体ゼンノロブロイと一緒の感想かな、君は魅力的な女の子なんだから気を付けないと」
    「……! スフィーラ……スフィーラだけど“ブレークアップ”、根本的な見直しが必要だね」

     そしてまた別の日、その日は休養日だったのだが、ユニヴァースはトレーナー室に現れた。
     俺の前に立ち、スカートの裾を軽く持ち上げて何かを伝えるように目配せをする。
     休養日にトレーナー室に来ること自体は珍しくないが、この行動は初めてであった。
     ……もしかして暑いのかな。

    「エアコンの温度もう少し下げた方が良いのかな?」
    「…………ビックバン、ネオユニヴァースは“アルタイの断崖”に直面したよ」

     俺の言葉に、ユニヴァースはあっさりとスカートから手を離した。
     そしてそのまま両手を上げて、人差し指同士を突き合わせると、彼女は思考の海に沈み込む。
     どうやらまた意思疎通に失敗してしまったようだ、なかなかどうして難しい。
     こういう時は、まずヒアリングだろうか。

  • 7二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:37:01

    「どうすればあの時の“パルサー”を、水着も“DENY”だった……“MIP”」
    「えっと、何か探し物でもしてるのか?」
    「……ネオユニヴァースはあの日受けた“太陽光線”を“探査”している」
    「あの日っていうと」
    「432000秒前、トレーナーに“損傷評価”をしてもらった日」
    「あっ、ああ、あの時ね」

     五日前、ユニヴァースの勝負服の様子を確認した日。
     俺はインナー姿に目を奪われてしまったことを思い出して、思わず動揺してしまう。
     すると彼女は────耳と尻尾をピンと立たせて、目を見開いた。

    「……“MABTE”、見つけたかもしれない」
    「えっ」
    「トレーナー、ネオユニヴァースは“大気圏脱出”をするよ、後で“再突入”するから」
    「おっ、おう」

     ユニヴァースはどこか期待に満ちた表情を浮かべると、足早に部屋から出た。
     取り残されたトレーナー室で、俺は一人首を傾げてしまう。
     ……まあ、そこまで深刻ではなさそうだし、彼女のことだから大丈夫だろう。
     俺は意識を仕事モードに切り替えて、事務作業の処理に集中するのであった。

  • 8二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:37:18

     窓からは茜色の光が差し込み、外の喧騒が少し静かになってきた。
     時計を見ればユニヴァースが退室してから約二時間ほど経過している。
     背伸びを一つ、仕事にも目途がついたし今日のところは帰ろうかな、そう思った直後。
     コンコンと控えめな音でドアが叩かれた。
     はいどうぞ、と声をかけるとゆっくりとドアが開き、そこには見慣れたウマ娘の姿。

    「あっ、おかえり……ってなんで勝負服着てるの?」

     戻ってきたユニヴァースは、何故か勝負服に身を包んでいた。
     どこか緊張した面持ちで、少しもじもじと身じろぎながら、こちらに近づいて来る。
     普段は冷静で動じない彼女には、珍しい様子だった。

    「『ただいま』だよ、トレーナーにもう一度“損傷評価”をしてもらおうと思って」
    「……それは前回したから、大丈夫だと思うけど」
    「アウターは“調査”してもらったけど“ANOI”、こっちはまだだから」
    「こっちって…………ちょっ!?」

     ユニヴァースは、俺の目の前で勢いよく勝負服のアウターを脱いだ。
     そしてこちらをじっと見つめながら、まるで見せつけるように軽く両腕を開く。
     美しい金色の長髪が夕焼けに照らされて、その姿は宗教画を思わせるような美しさ。
     神に作られたと言われても納得してしまうそうなほどの、バランスの取れた身体つき。
     ハリのある胸の膨らみから、見惚れるほどのくびれ、肉体美の具現化たる尻から脚。
     そこに至る曲線はまさ神秘の旅路であり、これを視認することは聖地巡礼と言っても過言ではなかった。
     急いでいたのか宝玉のような汗が浮かんでいて、その艶のある肌を旅している。
     俺は生まれて初めて汗になりたいと、心の底から思ってしまった。
     今回はあまり大きく動いていないのか鼠径部を確認することは出来な────。

  • 9二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:37:42

     ふと、我に返った。
     ……どうにもユニヴァースのインナーを見ると、思考が暴走する。
     俺は慌てて顔を背けようとして────その瞬間、両頬が冷たい感触に包まれた。

    「ハップル……“EVEU”、ネオユニヴァースはついに見つけたよ」

     ユニヴァース両手で俺の頬を押さえて、顔の動きを固定した。
     そのため俺は彼女から目を逸らすことが出来ず、正面からその顔と身体を見つめることとなる。
     ほんのりと朱色に染まった頬、それは夕日のせいかのかどうか区別がつかない。
     じっとこちらを見つめる、熱のこもった視線は普段の彼女からは想像の出来ないものだった。

    「……ネオ?」
    「えへへ、この格好がトレーナーの“WEDN”、弱点なんだね?」
    「俺の、弱点?」
    「トレーナーからのシグナルを感じた、太陽みたいに高温の『熱視線』」
    「んな!?」

     それは衝撃の告白だった。
     俺は自分の想像より以上に、ユニヴァースのインナー姿に見入っていたようだ。
     指導者として、担当トレーナーとしてはあってはならないことである。
     これは彼女にどんな対応をされても仕方がない。
     まずは謝罪の言葉を、と考えた時、ふと脳裏に疑問が過ぎった。
     ここ最近の、彼女の変わった行動は俺の視線が原因なのだろう。
     だったら何故────肌を晒すような行動を起こしたのだろうか。

  • 10二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:37:59

    「……ごめん、君に不愉快な思いをさせた」
    「“NVEM”、むしろ“COMF”だったよ、ずっと『ドキドキ』をしていたんだ」

     ユニヴァースの口から飛び出したのは、思わぬ言葉だった。
     気が付けば、彼女の顔は先ほどよりもより近くにある。
     感極まったように潤んだ瞳、少しだけ乱れている呼吸、普段より強く感じる甘い匂い。
     尻尾はゆらゆらと妖しく舞い、口元は愉しそうに吊り上がり、頬は夕日とは異質に紅く見えた。
     心が警鐘を鳴らすが、視線がどうしても彼女の顔とインナーから外すことが出来ない。

    「トレーナーの視線から『愛してる』を感じたから、ふふっ、スフィーラだね」
    「ネオ、ちょっと落ち着いて、一旦離れよう」
    「だからもっとトレーナーの“AMRT”を“集積”したい」

     ネオの顔がさらに近づく。
     その目はまるで夜に輝く一番星のように輝いていて、とても綺麗だった。
     彼女は、最後の仕上げだと言わんばかり、ゆっくりと囁く。

    「『私』は『あなた』に────もっと“観測”されたい」

  • 11二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:38:29
  • 12123/07/24(月) 07:39:19

    (……あれ全然隠してないなこれ)

  • 13二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:41:24

    かわいかった

  • 14二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:43:36

    良かった……
    必死にトレーナーにアピールするユニちゃん可愛いね

  • 15二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 07:53:09

    えっちじゃないですか?これえっちじゃないですか??
    脱いだ瞬間に高速思考になるトレーナーがむっつりで可愛かった

  • 16二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 08:38:54

    スフィーラ、とってもスフィーラ

    一つのお話として完成度高い上に、ネオユニ語録を違和感なく使ってるの完璧だなぁ、凄いです

  • 17123/07/24(月) 12:20:18

    感想ありがとうございます

    >>13

    ユニちゃんの可愛さは無限大ですよね

    >>14

    ちらちら見るユニちゃんが書きたかったんです

    >>15

    インナーを見た瞬間掛かり始めるところは書いてて楽しかったです

    >>16

    ユニちゃんの台詞については結構時間を使ってるのでそう言ってもらえると嬉しいです

  • 18二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 13:41:12

    このレスは削除されています

  • 19二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 13:42:40

    >>17

    さーせん、18は凄く阿呆な見落としをしたうえでの頓珍漢な質問だったので、自主的に消しました

    もしみられてたらスルーしてください、はじゅい……

  • 20二次元好きの匿名さん23/07/24(月) 14:20:28

    くそっ!オレがネオユニ語録が殆どわからんばっかりに…
    あ、すっごいえっちでした

  • 21123/07/24(月) 15:56:46

    >>19

    お気になさらずにー

    >>20

    アプリみたく雰囲気で伝わるようになれば良いんですがなかなか難しいです

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