【SS】サトノダイヤモンドと夕立

  • 1二次元好きの匿名さん23/07/29(土) 18:51:18

     7月中旬過ぎた頃から、日に日に日差しが厳しく、暑くなってきました。
      最近では、学園の木からセミの鳴き声も耳にすることもあって、本格的に夏が始まった感じがします。
     
     ふふっ、あと少しすれば入る夏休みにワクワクしてます。
     
     キタちゃんと一緒にいくお祭りも楽しみですし、ターボさんら先輩方と遊びにいく約束もあります。
     それに、今年の夏は色々やりたいことがあるので……!

     そんな楽しい会話をトレーナーさんと一緒にしながら、夏合宿の備品を買いに行ったのに……。

    「はぁはぁ……、ダイヤ大丈夫か?」
     
    「はい、トレーナーさん、少し濡れましたが、大丈夫です」
     
     まさか、帰り道に急な夕立が降ってくるなんて、予想できません。
      幸いにも歩いていた河川敷の近くに橋がありました。その下に雨宿りができたので、濡れたのは最小限ですみました。
     でも、私は雨が苦手ですので、上がってた気分が一気に雫みたいに落ちていく。

  • 2二次元好きの匿名さん23/07/29(土) 18:51:57

    「夕立だからすぐに止むとは思うけど……とりあえず、濡れた所をタオルで拭こうか」

    「はい、そうですね……」

     トレーナーさんから渡されたタオルで髪の毛やら拭いていく。
     空を見上げると、先ほどまで青空だったのに、今ではどんよりとした灰色になっていました。

     これはしばらく止まないかもしれないなと思うと、気分が憂鬱になります。
     私より先に拭き上げたトレーナーさんから気配りから

     「ダイヤの後髪、まだちょっと濡れてるぞ?ほら、こっち向いて……」

    「あっ……、ありがとうございます」

     優しい声と共に後ろ髪を優しく丁寧に拭いてくれたのです。その感触が心地よかったので、

     「トレーナーさん、耳も頭も拭いてもらってもいいですか」

     少しでも憂鬱な気分を晴らすために、つい、私は甘えた声でお願いしてしまいました。

    「あー……、うん。いいよ」

     私の言葉に驚いたのか、トレーナーさんの返事は戸惑い気味でした。
     それでも嫌な顔をせず、私の頭や耳を優しく撫でるように拭いてくれました。
     それが気持ちよくって、嬉しくなり、憂鬱な気分は少し軽くなった気がします。

  • 3二次元好きの匿名さん23/07/29(土) 18:53:29

    「よし、これで乾いたかな?」

    「はい、もう大丈夫ですよ、トレーナーさん」

     そう言って、トレーナーさんはタオルを拭くのを止めました。
     空を見ると、まだ黒い雲が空一面に広がり、まだ雨が止まない感じでした。
     ですので、私は先ほど感じた心地よい気持ちさを感じたく、つい無茶な提案をトレーナーさんにしてしまう。

     「トレーナーさん、手が濡れて冷たくなってませんか。ですので、手を繋いで温まりましょう」

     雨を言い訳に手を繋ぎたいだけですけど、いいですよね。こんな機会なかなかないですから。

    「ダイヤ……さすがにそれは……」

    「ダメ……ですか……?」

    「っ……、分かったよ」

     私が上目遣いで悲しそうな顔をすると、トレーナーさんは観念したかのように手を握ってくれました。
     夏の炎天下の下で手を握っても、汗や暑さでトレーナーさんの手の感触に心地よさを十分感じることはないでしょう。
     
     だけど、今は……。

  • 4二次元好きの匿名さん23/07/29(土) 18:54:26

    トレーナーさんも私も最初は手が冷えてましたが、徐々にじんわりと温もりが伝わってくるように、とてもあったかい。
     まるで、雨の中なのに、太陽に包まれているような感覚。
     雨は苦手ですけど、こういうときは好きになれそうです。

    「ふふっ、トレーナーさんの手はごつごつして、大きいです」

    「まぁ、一応男だからな……」

    「この手で頭を撫でられるの好きです」

    「うん……」

    「……こうしてトレーナーさんの手で握られると、雨の中でも安心しますし、落ち着きます」

    「……そうか」

     きっと、雨が降っている間はずっとこのままなんだろうと思うと嬉しくなります。
     ですが、夕立なのか、向こうに見える空はもう紅く晴れてきてます。

    (晴れるのは嬉しいけど、もう少しだけ……、雨が降り続けばいいのに……)

  • 5二次元好きの匿名さん23/07/29(土) 18:54:56

    そんな私の思いは、あっけなく終わりを迎えてしまいました。

    「おっ、夕立が止んだようだな」

    「そうですね」

    「ダイヤ、そろそろ寮に戻るか」

    「はい……」

     名残り惜しむ形で私は手を離そうとした時、トレーナーさんからぎゅっと強く握りしめられた。

    「ト、トレーナーさん……!」

     驚いて、思わず大きな声を出してしまう。

    「ダイヤ……、夕立は止んだけど、もう少しこのまま手を繋いでで帰ろうか」

    「...!はい、お願いします、トレーナーさん」

     私はあの晴れ間に負けない明るい笑顔で彼に向け、仲良く手を繋いで帰るのでした。

  • 6二次元好きの匿名さん23/07/29(土) 18:59:49
  • 7二次元好きの匿名さん23/07/29(土) 19:17:05

    お疲れ様でした。
    止まないでほしいと願うダイヤちゃんがとても可愛かったです。

  • 8二次元好きの匿名さん23/07/29(土) 21:17:50

    可愛い ひたすら可愛い

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