- 1二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 01:27:21
- 2二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 01:33:21
聞けば、あなたは両親を残酷な人々に殺され、生きてることを否定された哀れな存在。そんな過去をもつことすら、忘れてしまうほどあなたはうまく私で人をだましました。
演劇の才能は有れど、絵の才能はない。そう最初は思っていました。だけど、私はずっとあなたが地面に何回も何回も、絵を描く作業を見てきました。そして私を使い、どれほど美しく命を吹き込めるか。 素人にできるはずがないのに、あなたは手にたこができるまで筆で絵をかいていきました。
月日がたち、あなたは私を完璧につかいこなしていました。どんな絵も、命を吹き込み、本物と見まごうほど瓜二つ。 - 3二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 01:38:27
私を使いこなせるため、一生懸命努力してきてるあなたに感動するほかありません。あなたとなら、崇高の芸術を作れるかもしれない。そう思っていました。
あの姑息な汚らわしい蛇を主人と思うあなたは正直どうかと思います。かれからは、芸術や美しさのかけらも感じない。だけどそういう奴が私とあなたを結び付けたと思うと、なんだか皮肉ですね。でも感謝せずにはいられません。
蛇の命令で、国で一番有名な侍の部下になったあなた。そこで、私はあなたにますます感動してしまいました。あなたの演劇の才能で、大勢が馬鹿みたいに騙されているのですから!本物のあなたはそこにいるはずなんてないのに! なんて滑稽で美しいんでしょう! - 4二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 01:43:33
誰もがあなたの役を人格だと扱い、舞台の上で芸術的に動いていく。あなたの才能で、退屈な日常が長くも面白い、舞台を見ているように感じられます。
ですが、一つだけ我慢ならないことがありました。みながあなたの絵を下手だといい、笑う事。芸術をわからない凡人共の言葉が、ひどく耳障りでたまらなかった。 私を使いこなせるあなたの絵が下手?あんなに努力したあなたの絵が下手? ありえません。 聞くたびに、私は怒りと優越感に浸りました。だって、あなたの才能を知っているのは私だけなのだから。 - 5二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 01:48:14
あなたの主人であった侍が処刑され、国がほろんでいく。正直ざまあと感じましたね。あなたからすべてを奪っておいてなんにもお咎めがないなんて、ありえませんから。
そしてあの不思議な能力で時を超えても、私はずっとあなたのそばにいました。そこでは、あなたを仲間だというあのバカ共に勝っていますからね。だって、最初からずっといたのは私だけなのだから。
海賊と手を組み、敵だと認識されている怪物をきる作戦を漏らすときも、仲間の表情をかぶっている時も、いまかいまかと待ち望んでいました。あなたの芸術を、才能を、やっと披露できる。千秋楽が近づくとともに、期待は高ぶるばかり。 - 6二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 01:53:20
把握
つづけてどうぞ - 7二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 01:53:31
華やかな舞台は嵐の中の小舟。背景は天神の怒りを買った嵐。自然の力を借りた美しい舞台装置が、より一層あなたの才能を光り輝かせてくれる。
ああ!あのバカ共の表情を見ると、長年の怒りが解放されるようです!これまであなたの才能を見る機会すら与えられなかったバカ共の滑稽さといったら!困惑と怒りの表情こそ、この舞台にふさわしい!
声が与えられるならバカ共にいってやりたいくらいです! 今更何を驚いているの、あなたたちは彼の才能を見る勝ちすらないと判断されただけ。騙されたほうが負けよ、アナタたちは彼の手のひらで転がされたただの大根役者だって。 - 8二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 02:00:37
長年のあなたの下手だと称される絵になることは、正直苦痛でした。あなたならもっといいのが描けるのに。そう思うばかりの日々でした。少しづつ命を縮めていくような感覚ですが、それすらあなたとおそろいなのかもしれないと思うと、不思議と辛くはありませんでした。 いつか来る華やかな種明かしの日々だけを夢見て、苦痛に耐えていた時がこの瞬間ですべて報われていく。
あいつらのシンボルである鶴に乗りながら、侍たちや海賊たちを足止めするためのあなたの攻撃には、手があれば大空に鳴り響くくらいの拍手をしたいくらいです。本物と見間違えるほどの雲から降る炭の矢で月のもと集まったやつらを次々と打ち抜いていく。
ああそういえばあのバカ共の一人が随分と見当違いなことを言い放っていましたね。「楽しいか?」と。彼のことをなんにもしらないのに、知ったふりをしているなんて随分と滑稽なこと。 - 9二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 02:07:20
その後も次々と私をつかい、美しい絵に命を吹き込んでいくあなた。千秋楽だからってはりきりすぎだと思いましたが、私もおもいっきり付き合ってあげなくては。でないとあなたと共に歩んだ道の意味がありませんからね。
あの鎧のやつがあなたと戦っている時のセリフには、思わずあきれてしまいました。あなたが彼の何を知っているの?と激しく問い詰めたいくらいです。私ですら理解できない彼の苦しみを、つらさを、アナタごときがなぜ彼の全部知っているような態度で彼を責めているのか。まったく、見当違いとはこのことですね。 恨むなら、彼を殺してしまった連中を恨めばいいのに。
あなたが斬られた時、私は泣き叫びたかった。だけど、ここで動揺してしまってはいけません。千秋楽は終わっていないのですから。私だって、命を燃やさなくてはあなたの役にたてない。 - 10二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 02:13:28
あなたがかつての主人だったものを作り出したとき、私は震えを確かに感じました。これこそ、これこそ求めていた崇高いの芸術。どこまでも舞台を極めようとするあなたこそ、これが作れる。今なら死んでもいいと感じました。
あのバカ共が騙されていく姿は滑稽ではなく、美しいと初めて感じましたよ。あなたの才能で、死んだ人さえ生き返らせることができる。これが芸術でなければ、なんというのでしょう。
あの大男を殺した後の一言。ひっそりながら、重くのしかかってくるのです。あなたとの道が、舞台が終わってしまう事を。
今更なにを感じているの?己に問いただそうにも答えはでないし、出すつもりもない。 全力であなたに命をふきこまなきゃ、観客が楽しみ、感動することもできないのだから。 - 11二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 02:18:32
そして、あなたはあの主人だったものの息子を追い詰めました。あの鎧のやつの言葉と一番親しかったバカのさえぎりさえなければ、簡単に騙されたのに。
激高するあの鎧のやつが向かってくるも、私はほくそえみました。私が命を吹き込んだ刃が、あんたに負けるわけないでしょ?
そして迫ってくる一番親しかったバカの刃。 迎え撃たなくては!でないと、でないと、あなたが死んでしまう!主役が倒れては、舞台を続けられるわけが...
「もういい」
それは確かに聞こえました。吹き飛ぶ血しぶきと、重力に身を任せたあなたの体。あなたの意識がうすれる中、あのバカは....錦えもんは涙をながしており、あなたも....泣いていた。 - 12二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 02:22:45
胸が引き裂かれる思いでした。あなたに死んでほしくない。もっとあなたと一緒にいたい。美しい絵をかき続けて、命を吹き込みたい。だけどわかっていたのです。あなたが本当に求めているものを、そしてそろそろ与えられるべきだという事を。
やはりすべてを汚してしまったのはあの蛇でした。美しい舞台の終わり方を、あの汚らしい手で汚すなんて!あなたが作り出したあの火の化け物は、どこか初めてあったあなたに似ていましたね。ですが決定的に違うことがあります。あなたはあんな化け物じゃなかった。胸を張って言えることです。足をつかんで止めようとしても無力。自分の小ささを思い知らされました。悔しい。悔しくてたまらない。 だけど、あの化け物も最後にはいいことをしたようですね。蛇を己の手で燃やしたなんて。あの蛇に関してはいい気味です。 - 13二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 02:29:59
目が覚めると、真っ暗な空間にいました。隣にいるのは、初めて会った時の姿のあなた。姿が変わろうとも、見間違えることなんてありえません。そして地平線の先に見えたのです。 真っ黒な姿でありながらも、こちらを見て手を振っていく男女の夫婦が。
最後の仕事だと瞬時に理解しました。ちっぽけな存在であれど、せめてあなたの幸せになれることをしてあげたい。あなたと出会ってから、言わずともそれが私の本当の願いだったのです。
私はあなたの前に立つと、手を一振りしました。すると、目線の前には地平線の先とここを結ぶ、花道の出来上がりです。天井からは紙吹雪がふり、拍手喝さいの音楽。 あなたには当然ふさわしい。
すると、あなたはゆっくりながらもしっかりと一歩づつ歩んでいき、視界の限界で確かに見えたのです。
今まで見たことのない少年のような姿で、あの男女の夫婦に抱き着く景色を。
ああ、意識が遠のいてきました。これであなたともお別れでしょう。さみしくともこれが舞台演者と偽りの観客の関係。例外はないのですから。
「さようなら、幸せになってください」
次に出会えた時には本当の舞台演者と観客になることを願っています。それで思いっきり拍手を送るのです。与えられたらうれしいと心から思っている本当の手で。 - 14二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 02:30:39
これで終わりです、深夜の思いつきで書いてみました。
- 15二次元好きの匿名さん23/07/31(月) 02:43:25
おつかれさま!視点がいいね
あいつ被害者の面もあったのに原作で何もフォローするキャラいなかったからモヤるところもあったんだ
ちょっと晴れたよ