- 1千界樹の記録23/08/03(木) 12:53:32
- 2二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 12:56:05
乙
今日は運良く規制かかってなかったみたいっスね - 3二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 12:58:45
縦おつ、よく生き残れたなセイバーのマスター…
そんで獣か…、アタランテさん出番ですよ - 4二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 12:59:55
群れてる獣とかよくわからなすぎて怖え
一体何なんだ…… - 5二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 13:14:35
濁った水と獣の群れが上手く結びつかない…
- 6二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 13:17:09
- 7スレ主23/08/03(木) 13:21:35
- 8二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 13:43:27
立て乙
無理せず毎秒投稿してね - 9二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 13:48:40
単体ならヴァナルガンド、ヴァン河の怪物が濃厚だったんだ
群れる獣で濁った水………どこの神話だ? - 10二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 13:59:43
とりあえず10まで埋めとくか
- 11二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 13:59:52
四つ足の獣が複数ならパッとでてくるのはオオカミなんだが水に関連する伝承あったかな
- 12二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 14:11:40
濁り水って表現は前スレの130が初出なんだよね
これって単に正体不明の脅威の比喩表現なんじゃね? - 13二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 15:26:41
シグルド強すぎん・・・?
先読みして、後輩ちゃんに攻撃してアタランテに攻撃させないようにするとか・・・
コンスタンティノスとアタランテとタイマンして、傷を負ってもいなさそうだし
シグルド、お前・・・・・・ - 14二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 15:28:37
いいだろ?北欧神話の頂点の一人だぜ?
アルトリア、ジークフリートと同格の大英雄だ - 15二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 15:32:11
流石に盛りすぎでしょって思うけど本編の歩描写や蒼銀のブリュンヒルデ評からするとマジでぇ?ってなるのバグってると思う
- 16二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 15:37:37
ここまで器用に動けるのはシグルドならではだね
ジークフリートは耐久面が凄いし、アルトリアは言わずもがなエクスカリバーにやる最大火力があるけど、竜の叡智とルーン魔術による行動の選択肢はバカみたいに広い
- 17二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 21:26:47
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- 18千界樹の記録23/08/03(木) 21:37:39
最初に異変に気付いたのは、アーチャーだった。
3騎のサーヴァントの内、アーチャーが最も耳が良く、狩をして生きてきた彼女は深い森の中でも僅かな動物の小さな動きや音、匂いからも獲物を探り当てる。だからこそ戦いの中でも微かな違和感を逃さず感じ取ることができた
ーーー何か、来る
我々以外で残っているのはランサーだが、彼ならばもっと上手く気配を隠して、絶好の攻撃の機を伺うだろう。そして他のサーヴァントは此処に全て出揃っている。ならば、サーヴァントでは無い。だとしたら一体誰がーーー
セイバーへ矢を連射しながら距離を取りつつ跳び、残った2階部分、マスターの隣に着地して番えた矢はセイバーへ向けたまま、感覚を研ぎ澄ます。セイバーは深追いはして来ずに、ライダーと鍔迫り合いに以降した。そして、微かに聴き取れる音ーーーこの聴き慣れた息遣いは、人間では無くむしろ獣のそれに近い。しかも、徐々に近づいてきている。気配を殺してはいるが、これくらいならば狩人たる自分には分かる
「アーチャー?」
マスターが怪訝そうな声を出す。どうするべきか迷った一瞬、事態は一気に動いた
「HAAAAAAAAA!!」
迷った際、セイバー達に意識を向けたその一瞬で、気配は一気に此方へ接近し、此処へ乗り込んできた。風を切って飛び込んできた「それ」はーーー
「コイツはーーー」
瓦礫の山から侵入してきた影へ向けて矢を放つ。高速で走る影であろうとも、狩人の英霊たるアーチャーにとっては問題にならない。狙い誤たず矢は命中。跳躍していた影は急速に減速し、セイバーとライダーの前に着地する。
工場跡、溶け残った瓦礫を飛び越えて来たのは、光を反射しない程に黒く、大きな狼の様な容姿をしていた
「何だ、コイツはーーー」
その獣を見たライダーは驚愕の声を上げた。驚くのも無理はないだろう。狼に似たと言ったが、その大きさは普通の狼のそれでは無い。体長にしておよそ3mはあろうと言う巨体。体毛らしきものらは見受けられなく、真っ黒な影が獣の形をした様な印象を受ける
どう見ても通常の動物では無い。なら、何者かの使い魔か、偶々迷い出てきた魔獣の生き残りかーーー
唸り声を上げ、低く跳躍するかの様な姿勢を取るその獣は、我々を見ながらもサーヴァントの事を見てはいなかった - 19千界樹の記録23/08/03(木) 21:53:28
「マスターを狙っている……」
セイバーが呟く。獣は真っ直ぐセイバー主従を見据えているのだが、その視線はセイバーでは無く、そのマスターの方へ向いていた
「HAAAAAAーーー」
獣は胴に深々と矢が突き刺さっているにも関わらず、それには頓着せずどうやらマスター、つまり俺を見据えている様だった
「GHAAAAAAAAA!!」
そして、そのまま俺を喰い殺そうと飛び掛かってくるがーーー無言のままのセイバーに両断された
「GAーーAAAAAA……」
「まだ生きてやがるのかよ」
胴体から二つに寸断されたなも関わらず、未だに俺を喰い殺そうともがいている。どんな生命力だよコレ
「い、一体なんなの……」
「知るか、どつかの動物園から逃げ出したんだろ?」
アーチャーのマスターが不気味そうに呟いたのを軽口で応える。これ以上もがいている動物を眺める趣味もないので、水弾で頭部を撃ち抜く
流石に頭を吹き飛ばされて死なない生物はいないか、黒い狼擬きはパタリと動きを止めた。さらに驚くべきは、死んだら死んだで、あっという間に黒い泥の様な液体へ変化していったのだ。間違いなく、真っ当な生物ではない。それどころか魔術の類なのかも怪しく思えてきた。どちらにせよ普通ではない - 20千界樹の記録23/08/03(木) 21:53:54
「コレ、本当に生き物なの?」
「少なくとも、動いている時は魔獣の類には見えたわね」
アーチャーのマスターがアーチャーと共に1階へ降りてくる。先程まで動く事なく事態を静観していた銀狼もこれには驚いた様子で獣だった泥の様なものを見つめている。俺は座り込み、黒い泥を観察する
ーーー触るのは、マズイかな
「どうなの?センパイ」
「……見た感じは、魔力と泥が混ざった感じだな」
魔術で解析を掛け、その構造を調べていく。ーーー成程、少しは理解できた
「動いている間は、間違いなく生物だ。だが、構造は泥のそれに近い。どちらかと言うと、命を吹き込んだ泥人形の様な感じだな」
それ以上のことは解らない。だが、事態は想像よりもまずい方向へ動いている様だ
「考察は後回しにしろ、セイバーのマスター」
「肯定。どうやら囲まれている」
セイバーの声に立ち上がる。確かに、先程までは何も感じられなかったが、いつな間にか、先ほどと同じ魔獣擬き、しかも相当な数の魔獣に囲まれているらしい。……嘘だろ? - 21二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 21:55:29
泥ってまたあかんもんが
- 22二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 21:58:44
泥、獣……分かった、教授だな!!(迷推理)
- 23二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 22:03:19
泥かぁ……なんか嫌なものしか浮かばんな
- 24二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 22:06:13
聖杯作りでアカンモンが混ざったor土地の選定がアカンかった、か?
土地から魔力を汲み上げる最中に、土地に由来するナニカが混ざって、汚染したとかあり得そう - 25二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 22:15:16
アポ時空だから例の泥ではないのは確実なんだけど……やっぱ身構えちゃうよね……
- 26二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 22:29:27
……これバビロニアとかその辺でやってたらアミノギアスの残滓とかありえないか?
- 27千界樹の記録23/08/03(木) 23:02:24
魔獣達は既にセイバー達を囲む様に姿を見せていた。見えるだけで20匹はいる。実際は視界に入って無いだけて、もっといるのだろう。目に見える範囲でこれなら廃工場跡の敷地内にいるであろう総数は如何程なのか……。
「一応聞くけど、お前が俺に吠え面をかかせる為の秘密兵器……て事はないな?」
やりかた次第で降霊術でも同じ様なものは作れるがーーーと、尋ねたら、凄い勢いで睨みつけてきた。
「ハァ?これだけ用意するなんて時間も資源もありませんでしたけどー!」
どっちかと言ったら其処の魔力お化けの方が怪しいんじゃないですかー!?と銀狼を指差す。まあ確かに、魔力量で言えばコイツがぶっちぎりなんだが……
「ちょっと!?私、これでも主に仕える身なんですけどー!?こんな冒涜的なもの作ったりしませーん!」
どちらかといえばセイバーのマスターの方が怪しくないですかー!?と指をさされても、生憎だな
「蟒蛇とは全く違うコンセプトだよ。こんなもん用意してたらここ迄追い込まれてるかっての」
取り敢えず、ここに居る面子の仕業ではないことが分かった。ならお互い、やる事は一つだろう。全員が一度目を合わせる
「……じゃ、此処は一時休戦って事で」
「仕方ないか」
「それじゃ、協定成立ね?」
ライダーのマスターが戦鎚の柄頭で床を小突く。同時に高い音が聞こえてきて、一瞬で過ぎていった。恐らく今ので周囲の情報を取り込んだのだろう。涼しげな表情が曇ったのを見逃さなかったぞ
「ざっと周囲に200程……だけど徐々に増えていってる」
となると、やる事は限られるか……。此処はポジション分けでいこう。オフェンスとディフェンスで二手に分かれ、ディフェンスが只管耐えてる間にオフェンスが速攻で片を付ける
「セイバー、アーチャーで外周に居る魔獣を減らす。ライダーが一番魔獣の出入りが多い箇所を押さえ込んで、此処まできた奴らは俺たちで叩く。それでいいな?」
「わかった。アーチャー、お願い」
「ライダーも聞いてた通りよ、任せたわ」
アーチャーとライダーは頷いて、其々の持ち場へ跳ぶ。セイバーも此方の意図は察してくれて既に霊体化して移動を始めていた。取り敢えず、この場を生き延びる為なら共同戦線が始まった - 28二次元好きの匿名さん23/08/03(木) 23:30:42
犯人の容疑押し付け合いでフフッてなった
- 29千界樹の記録23/08/04(金) 08:29:32
そして、此方の頭数が減ったのを見るや否や襲い掛かってくる魔術の群れ。手始めに動くのは俺の役割かーーー
「『霙/水面』 『槍となれ/波打ち広がれ』
頭上から氷の礫が降り注がれ、同時に湖面に広がる波紋の様な輪が周囲広がっていく。二重詠唱で同時発動させたのは展開された氷の槍を周囲に降り注がせる魔術と波紋の様なに身を広げ周囲の敵を捕捉する魔術。
これにより補足した魔獣達へと氷槍が正確に降り注がせることが出来る。
威力は高く、襲ってくる魔獣の身体に容易く突き刺さって行く。
これで真っ先に迫ってきた魔獣達の半数は斃れるだろう。残り半数も、少なくとも身体を貫通する槍を受けて無事では済む筈もない。そうして、生き残り撃ち漏らした魔獣はーーー
「Hounds=Bolt!!」
アーチャーのマスターが撃ち放ったクロスボウが次々と礫で貫かれた生き残りの頭を撃ち抜く。クロスボウの矢が、頭を貫通し、さらにその運動量を減衰させる事なく他の魔術の頭を次々と貫いていった。あれはどうやら矢に猟犬の霊を憑依させて獲物を追尾させる魔術の様だ。おっかねえ
そして最初の攻撃で出遅れ、怯んだ魔獣どもはと言うとーーー
「アッハア!」
もっとおっかない餓狼に文字通りぐちゃぐちゃにされていく。あの戦鎚で殴られれば文字通りグチャグチャに潰されてしまう。
例え直撃を受けずとも振動が当たった場所から伝播し、結果として内側から水風船の様にパンクする始末
今回この廃工場の残骸に侵入した分は何とかなったかーーーだが、まだまだ次々と侵入は止まらない。外ではセイバー達が奮闘しているのが聞こえてくるから、これでもかなり数少ない漏れた魔獣が入り込んできているのだろう
それでも、キリがない。俺の氷槍は魔術は威力こそ大きいが燃費は悪く、後輩のクロスボウは単純に矢の数と連射性に限度がある。最初の一撃目以外は、此方にやってくる殆どの魔獣をあの銀狼が始末している始末だ。本当にあの女は怪物だろ。ロンドンでの一件は猫被ってたんじゃなかろうか - 30二次元好きの匿名さん23/08/04(金) 08:32:45
- 31二次元好きの匿名さん23/08/04(金) 10:10:19
共同戦線いいねぇ
- 32二次元好きの匿名さん23/08/04(金) 11:01:21
アポの対ヴラド戦線を彷彿とさせるな、こういうのいいよな
- 33二次元好きの匿名さん23/08/04(金) 18:09:22
というかロンドンで何があったんだろう……
- 34千界樹の記録23/08/04(金) 21:11:25
廃工場の外、外周部は正に魑魅魍魎と言った有り様であった。敷地の外から魔獣の群れが大挙して押し寄せている。それを迎え撃つ3騎のサーヴァント。セイバーが前面へ切り込み、アーチャーが援護する。ライダーはマスター達に近い場所、最も魔獣が入りやすい瓦礫の少ない箇所を守護する
全く違う体系の神話、歴史の英雄である為、連携力よりも個々人の力を発揮しやすい形を取った結果の陣形である
それのやり方が功を奏し、迫り来る魔獣達の凡そ7割近くがマスター達の元へ辿り着くことなく斃されていく。残りは脇道から1匹単位で回り込んでいる為、手が追いつかないが、何とかマスター達で耐えてもらう他はない
そして、最前線で剣を振るうセイバーは動き回りながら探し続けていた
(魔獣のくる方向、何処かに魔獣を生み出す源泉があるーーー!)
幾らサーヴァント同士で戦っていたとはいえ、其々が英雄の名に恥じない猛者である。これほどの数の魔獣が迫ってくることに、直前まで感知できないはずがないのだ。であれば、これほどまでの規模の襲撃を許す理由は他にある。たとえば、工場の近くに魔獣を生み出す元凶がいるーーーなど
「てぇぇぇいっ!」
魔剣を大きく振り抜く。それにより数匹の魔獣が両断され地面を舐め、次いで振り下ろした一撃が魔獣を縦に切り裂いた。更に周囲を高速で旋回する短剣が自身の手が届かない範囲の魔獣達を切り刻んでいく。こうする事で索敵と殲滅を同時に行いつつセイバーは未だ見つからない発生源を探して走り続けるーーー
セイバーが前線で魔獣を斃し続けて行く様を、アーチャーは矢を連続で放ちながら見守っていた。あの様子ではセイバーへの援護は不要だろう。此方は此方のやり方でセイバーでは対処し切れない箇所から迫る魔獣供を斃して行くまで。が、しかし……
「本当に何でもありか、彼奴は……」 - 35千界樹の記録23/08/04(金) 21:14:18
驚嘆と同時に呆れを覚える。セイバーの真名はシグルド。北欧に伝わる最大最強格なら大英雄。その力は今までの戦闘で皆様で理解しているつもりだが、流石に目を疑う器用さだ
キャスターの宝具による攻撃を防ぐ結界を張ったかと思えば、自動で宙を飛び回る短剣の迎撃を行い、挙句にはこうして自動殲滅装置としても扱っている。ルーン魔術については、聖杯から与えられた知識で概要こそ知っているものの、あれではまるでキャスターの様ではないか。呆れるのも無理はないだろうーーー!
「ーーーそこだ!」
限界まで引き絞った矢を放つ。自身が所有するこの弓は引き絞れば絞る程に威力が比例して上昇する。この様に限界を超えて絞り切ればAランク級の威力で発射することさえ可能だった。その一矢は射線上に並ぶ魔獣の群れを纏めて吹き飛ばして行く
しかし、殲滅し切れない以上マスターが気がかりだ。可能な限り早くこの獣供を斃さねばならぬ
アーチャーは次の矢を番えた
ライダーは自身他の2騎の攻撃をすり抜けてきた魔獣を斬り伏せる。あの2騎のサーヴァントの攻撃力は大したものだ。お陰で思ったよりはこちらまで届く魔獣の数は少ない。
しかし、マスター達の元へ最短距離を目指して来る魔獣だけではない。此方へは来ずに、瓦礫を伝って側面や後方へ回り込もうとするモノが多少なりともいる。自身のマスターならば心配はいらないものの、こうして数を頼みにゴリ押しが続けば危険であることには変わりはない
「間に合ってくれ、セイバー……!」
先ほどから高速であちこちへ跳び回っているセイバーは、この魔獣の発生源を探しているはず。マスター達の限界が来るまでに見つけてくれることを祈りながら、長剣わ握り直した - 36二次元好きの匿名さん23/08/04(金) 21:45:14
やっぱシグルドっておかしいわ……
- 37二次元好きの匿名さん23/08/04(金) 21:46:50
いいだろ?セイバーの中でも上澄み中の超上澄みだぜ?
- 38二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 06:36:23
とりあえずシグルドがいるから安心できる
シグルドがやられたら終わりそうだけど - 39二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 07:58:55
- 40千界樹の記録23/08/05(土) 08:27:25
「ねえ、いい加減キリがなさすぎ」
何発目かの矢を撃ち放った所で、アーチャーのマスターが呟いた。その意見には同意する。何しろ結構な数の魔獣を斃している。正確な数まで数えていたわけでは無いが、外で斃してる筈の数を計算に入れればとっくの昔に200体なんて越えているのは確かだ。いい加減に頭打ちになってもいいと思うが、一向に魔獣の襲撃が止まる気配は無い
「ああもう!本っ当に鬱陶しいわね!ちょっと、あれ無いの!?あれ!」
唸る戦鎚で魔術の頭を破裂させながら問い掛けてくる銀狼に、あれってどれだよ!と返すと
「アレよアレ!ロンドンで使ったあの水蒸気爆発!「森」吹っ飛ばした奴があったでしょう!?」
そう言われて思い出す。そう言えばあの時は確かに森が鬱陶しすぎて全部焼き払ってやる!と複数箇所で起こした水蒸気爆発を連鎖させて広範囲をドカンと吹き飛ばしたんだったか
だけど無茶を言うんじゃねえ!
「アレは瓶6個使っての組み上げた奴だ!もう瓶なんて一個も持ってねえよ!?」
そう、俺の手持ちだった礼装の小瓶ーーー霊筒はもう一つも残ってない。儀式どころか俺の使える魔術の多くがもう使えなくなっているのだ。今明かされる驚愕の真実に銀狼はハア!?と非難めいた声を上げてきた
「なんで一個も残ってないのよ!何に使ったの!?」
「五月蝿え!」
今日、俺はバーサーカー陣営を落とせればそれで良かったんだ。それをこっちが消耗しているだろう今がチャンス!って誰かさん達のせいで余計に使う羽目になった結果だ。俺はお前らと違って今夜だけで三連戦もしてるんだ。もう体力も魔力も素寒貧なんだよ。そう言うと銀狼が顔を赤くしながらこっちなら悪戯っぽい笑顔を向けてきた
「あら、今夜だけで私達と三連戦も出来るだなんて、絶倫ね♡」
「先輩、不潔」
意味深に艶っぽい声色で宣う銀狼に、吐き捨てる様に呟いた後輩。何で俺そこまで言われる?
やかまっしゃい、お前らこれが終わったら覚えてろよ!
などと言いながらも、本格的に限界が近い
セイバーの方も、いい加減発生源を突き止めていい頃合いなのだが…… - 41二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 09:10:19
知恵回る群れを統率する狼、でロボが浮かんだけど流石にないか
- 42二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 10:09:29
剣主×銀狼キテル……?
- 43二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 10:16:01
待って、水蒸気爆発?しかも『森』って強調してるってことは………まさか、アインナッシュと戦ったの!?
- 44二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 11:32:15
- 45千界樹の記録23/08/05(土) 13:33:24
「え、なに?アーチャー?」
アーチャーのマスターの動きが止まる。どうやらアーチャーからの念話だろうか
「上?上ってーーー」
「!ーーー飛べ!」
アーチャーのマスターが呟いた上という単語。瞬間、脳裏に浮かんだ状況なら嫌な予感を感じて反射的に上を見て、そして見えた。何か上から来ていると。咄嗟に叫ぶがーーー間に合わない
「えーーーキャアア!!」
想定外の奇襲、上から急降下さて襲ってきたのはーーー翼を生やした人間の様な怪物だった。アーチャーのマスターが回避し損ねて上から覆い被される形になってしまう。そのまま仰向けに倒されてその上に翼の怪物が伸し掛かる形だ。このままはかなりマズイ!
「KIAAAAAAAAA」
「だまれ」
咄嗟に水の弾丸を撃ち込んで黙らせる。至近距離から頭を吹っ飛ばしてやれば流石に動けまい。序でに泥に戻る前に蹴り飛ばしてやる。アーチャーのマスターは腕で顔を守っていた為、幸いまだ軽傷の部類に入る
「ほら」
手を差し出してやる。助けられた、と理解したアーチャーのマスターは悔しそうに顔を歪めながらも素直に手を取った。グイっと引き上げて立たせてやれば、助けられた事への羞恥か、顔を赤くしながら睨まれる。もう慣れたけど、穴が開きそうな勢いで睨むなよ
「……ありがとう」
「気にするな」
捲れた様に礼を言われ、軽く手を振ってかえしてやる。だが、ここへ来て新種のお出ましか
今度は上も警戒しないとな。と思い直ぐに移動をーー
「ーーーァぐ」
しようとした時、すぐ後ろで何かが倒れる音がした - 46二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 13:46:53
狼はミスリードか
となると益々わからんな………翼のある人型ってことは、怪物の母系か?
ていうか銀狼さん!? - 47千界樹の記録23/08/05(土) 13:59:13
「ーーーおい!」
倒れていたのは、やはりアーチャーのマスターだ
急いで近寄ると、顔を真っ赤にしながら、先ほどの怪物に噛まれたと思しき腕を抑えている。傷口から漏れる黒い靄の様なもの。この症状はーーー
「毒ーーー若しくは呪いか!?」
あの泥の怪物供、やはりと言うか何と言うか、その構造体自体が毒、若しくは呪いに準ずる物質で出来ているのだろう。直ぐにしゃがんで治療に取り掛かろうとした時、此方にも異変が訪れる。
「っ、ぐう!?これは……!」
ライダーのマスター、銀狼と戦う際に使用した増強用の霊薬の効果が切れ、その副作用が訪れたのだ。このタイミングの悪い……!
通常、魔術回路の才能を向上させるのは極めて難しいとされる。凄腕の調律師でさえ、現場でできる調律は2割も向上できたら引く手数多の職人だ。下手をすれば伝説と評される程の腕前だろう。
俺が使用した霊薬は俺の魔術回路に限定されるが3割の増強を見込める特殊なものでその効果は絶大だが切れると、その反動がこうして襲いかかってくる
「ーーーっっ。いや!」
だが俺はまだ良い。重要なのは目の前で苦しむコイツだ。コイツを蝕む何某かを解析して、治療しなければならない。霊薬の反動で魔術回路が軋む様な感覚を覚えるが、全無視して解析を奔らせる
そこへライダーのマスターが近づく魔獣を悉く轢殺しながら駆け寄ってきた
「どうしたの!?」
「こいつがさっきの羽持ちに噛まれた!毒が呪いか何かだろうーーー悪いが、周りの連中を近づけさせるな!」
サーヴァントは外の対応で此方には手が回らない。可能な限り魔獣の侵入を食い止めてくれている今の内なら何とかして脱出を試みなければーーー逸る気持ちを抑え、努めて冷静に治療を進めていく
「分かったわ。何とか保たせる!」
そう言って、銀狼は戦鎚を片手に再び魔獣が此方へ襲いかかるのを食い止めるべく立ちはだかってくれている
助かる、今のうちにーーー
解析を進めていくうちに、理解したが、どうやら、これは毒と呪いの合いの子のような性質を持っている様だ。性質は呪いだが、物質的には毒物ーーーどちらかと言うと、死者が蓄える瘴気に近い様だ - 48二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 14:02:42
後輩の方だったか………ていうかシグルドのマスター、贅肉つきまくりかよ
しかし、死者の瘴気に近い呪毒とは………死霊術、或いは冥界系? - 49二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 14:08:57
死者が蓄える瘴気、ねえ
ひょっとしてこれって全部死体から造られてたりしない……? - 50千界樹の記録23/08/05(土) 14:50:15
「だったら……!」
魔術刻印に刻まれた術式を呼び起こす。対処療法だが、一時的に瘴気を浄化し症状を抑える事はできる。俺と彼女との間に霊的な繋がりを設け、瘴気の大半をこちらで引き受ける
俺は元からそういった瘴気やら呪いには強い耐性があり、こいつよりはかなり耐えることができる
そうして。彼女の表情が和らいでいくのが確認できた。とりあえず、これで少しの間は大丈夫だろう。瘴気の浄化は解毒や解呪の様に一朝一夕というわけにはいかない霊筒が2本あれば根治も出来たが、今はこれが精一杯だろう
「え……何、で」
「気にするな。ってさっきも言ったぞ」
身体が徐々に瘴気に蝕まれていくが、刻まれた魔術刻印が同時にその進行やら抑えている。これならもう暫くは何とかなるだろうが、魔力を使い続けなければならないからあまり強力な魔術は行使できないか
「ほら、立てるか?」
また手を差し伸べると、今度はいつもの様にこっちを睨みながら、首を横に振るアーチャーのマスター
「バカに、しないで……!」
「その意気だ」
立ち上がる彼女を見て、こっちも褌を締め直す思いで深呼吸をする。向こうでは銀狼が暴れてくれている筈。何としても、この場を切り抜けなければならないーーー - 51千界樹の記録23/08/05(土) 14:53:08
シグルドは困惑していた。先ほどから発生している魔獣の種類が増えた事に、では無い。
発生源が見つからない事、でも無い
発生源が存在しない事に困惑していたのだ
(一体どう言う事だ?)
シグルドの困惑の中、魔獣達を次々と斬り捨てていく。だが、発生源が無いにも関わらず、何故か増え続ける魔獣。一体何が起きているのか……その答えは、彼の足元にあった
「ーーーっまさか……!?」
偶然、自らの足元から魔獣が湧き出てくるのを目撃した。これは、発生しているのでは無いーーー!
(迂闊だったーーーこのシグルドとあろうものが!!)
シグルドはたった今湧き出てきた魔獣を切り捨て、風のルーンを使い周囲一体の魔獣を上空に吹き飛ばす。そして目の当たりにした光景は、彼の疑念を確証へと変えた。ーーーやはり、そう言うことか!
シグルドは打ち上げた魔獣を1匹残らず斬り刻むと、一目散に廃工場へと駆け出す。これでは、いくら自分達が魔獣を倒し続けても全く意味がないのだ。この魔獣どもは何者かが、仕掛けた発生源より生まれてきているものだと思い込んでいた。これではいくら探しても見つからないわけだ
「どうしたセイバー!」
上から様子を見ていたアーチャーの問いかけに簡潔に答えた
「戻るぞ!これ以上は意味がない」
「ーーーなに?」
アーチャーの怪訝そうな声。しかし、狩人であるアーチャーは、その眼で確かにその絡繰を捉えることができた
「ーーー成程」
頷き、即座に矢を放ちながら後退するアーチャー。シグルドはそのままライダーの元へ駆けつける
「セイバーか!何かわかったか!?」
「肯定。このままでは我々が力尽きるのみ。戦闘の続行は無意味と判断した」
そう、魔獣は発生源から生まれているのでは無いーー
何処かから、転移させられている - 52二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 15:05:01
死体を使ったキメラ?キャスターのマスター辺りが犯人か?
- 53二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 15:15:19
もしかしてスキュラか
- 54二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 15:22:09
- 55二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 16:33:01
スキュラ、セイレーンって冥界関連の逸話あったっけ?
- 56二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 17:06:01
- 57二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 17:44:07
生産となると、死体の瘴気に似た呪毒の出処が気になるんだよ
それならまだ、死霊術使いとか冥界関係者とかの方がわかる - 58二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 17:47:01
- 59二次元好きの匿名さん23/08/05(土) 18:19:29
心に贅肉付きすぎでしょ
まあそんなだからユグドミレニア復興の動機がアレなんだろうけども - 60千界樹の記録23/08/05(土) 22:38:11
セイバー、アーチャー、ライダーの3騎がマスター達の元へ戻るなり、ルーンを使用して結界を張り巡らせた。キャスターの宝具を一時、防いで見せたあの結界だ。当分の間は保つだろう
セイバーは自身の得た情報を全員に共用する。発生源は存在しない事。魔獣は別の所で生み出されるか発生して、此処は転移してきている事。そして、そんな状況下での戦闘続行は此方の全滅を意味する事。全て聞き終えて、はてどうするか、と言うわけなのだが……
「成程な……」
「成程なって、どうすんの先輩」
状況が一変しない理由に合点がいく。更にこのままではもっと面倒な事になりそうなことにも気付いた
「取り敢えず、とっとと逃げるぞ。これ以上時間をかけてたら本気で詰みかねない」
「いやだからーーー」
「そうね」
アーチャーのマスターの講義を途中で切ってライダーのマスターが声を上げる。流石に理解が早い
「さっきまで出てこなかった飛行型が出てきた以上、これから種類がどんどん増えていくでしょうし、万が一大型魔獣なんかに大量に出てこられたら、いよいよ終わり。君達もパスで状態を共有している以上、どの道時間はかけられない」
「そう言う事になるな」
おおうアーチャー、俺を睨むな睨むな。こうでもしないと君のマスターが大変だったんだから。さて、気を取り直して、ここからどうするべきか、と言う所だが……
「セイバーの宝具で群れに穴を開ける。そこから一気に抜けるしかないだろうな」
「まって、それじゃ危険すぎるわ」
だが、そうでもしないとあの群れの中から脱出は出来ないぞ。確かに危険なのは承知の上だ。宝具で開けた穴が埋まる迄に駆け抜けなければならず、サーヴァントや銀狼は兎も角、怪我人の俺たちでは荷が重い事も理解している。だがこれ以外にあの数から逃げ切る方法はないだろう
「それにしたってーーー」
「待って」 - 61千界樹の記録23/08/05(土) 22:49:32
俺と銀狼が手段の是非を話していたら、急にアーチャーのマスターが口を開いた。何が思いつくものでもあったか?
「要は数を蹴散らせる手段があれば良いんでしょう?」
「そりゃああればな」
「セイバーの宝具は火力はあっても一点突破、ライダーの宝具は護りに特化している。これで数を蹴散らすなんてーーー」
できない、そう言おうとした銀狼を、今度は彼女が遮る様に口を開いた
「アーチャーの宝具は広範囲を攻撃する対軍宝具。これなら大丈夫でしょ?」
と、言いながら彼女はアーチャーの方を見た。アーチャーは、アッサリと自分の宝具を暴露された事に驚いた様子だが、直ぐに誇るようにして言った
「ああ。破壊力はセイバーの宝具に劣るが、攻撃範囲ならば自信はあるぞ」
「なら、決まりだな」
3人のマスター達は、互いに顔を見合わせて頷いた。手段はこうだ
まず脱出へ向けた最短距離をライダーのマスターが算出。その後アーチャーの宝具により露払い。然るのちに全員で脱出、セイバーに先頭を切らせライダーと銀狼の2人で俺たちをカバーしながらこの場から離脱していく
イレギュラーが発生した場合は、セイバーが対応する、と言う流れとなる
これならば、脱出出来る可能性は飛躍的に上がる。
広範囲を攻撃できるアーチャー様々だ
最悪、令呪を切ってセイバーに宝具を2連射はして貰わなければと思っていた所だったからな - 62二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 09:13:06
アタランテの宝具は確かにこの状況には刺さるね
てかセイバーのマスター身体張りすぎて心配になるわ - 63千界樹の記録23/08/06(日) 11:08:31
ここから脱出するための作戦が決まった所で、一番重要な、肝心要のアーチャーの宝具についてはーーー
「どうする?瘴気の大部分を俺が受け持っているとはいえ、割と立っているのも辛いだろう?瘴気の影響を抑える為に魔力を相当消費している筈だ」
いくらアーチャーが高ランクの単独行動スキルを保有しているとはいえ、宝具の使用にはマスターからの魔力供給が不可欠な筈ーーー
それを問うと、アーチャーのマスターは似合わない不適な笑みを見せてきた
「私は先輩と違って、まだ一画も使ってないの」
と、3画揃った令呪を見せつけてくる。わかったからその勝ち誇ったような顔をするな
「良いのか?」
令呪は言わずもがな膨大な魔力リソースだ。それこそサーヴァントに対する絶対命令権の行使、逆にサーヴァントと協力すれば奇跡に近しい事を行うのすら可能にする程のものだ。それを、聖杯戦争外の事で使用しても構わないのか?
「私は、仮を作りたくないだけ。これで助けてもらった分はチャラだから」
「……わかった」
彼女の意思は固い。なら止めるのも野暮か
「慕われてるわねー」
うるせえよ
「マスター」
「ああ、時間が無い。始めよう」
このクソッタレな状況を、全て覆してやる - 64千界樹の記録23/08/06(日) 11:40:42
幕間
ランサー陣営もまた、事の対応に追われていた
セイバー陣営と時を同じくして、彼らも拠点もまた魔獣達の襲撃を受けている
「……で、だ。この状況をどう思うね?ランサー」
「どうもこうも、尽きるまでやるしか無いんじゃいっすかねぇ……」
ランサーのマスター。時計塔では降霊科及び植物科の一級講師を務めるこの初老の男は、今までに2度亜種聖杯戦争に参加していた。今迄に参加した亜種聖杯戦争は碌な聖杯ではなく、召喚できるサーヴァントも精々が3騎か4騎が関の山。とても嘗ての大聖杯の様な戦争に参加する機会は2度と無いのだろう。そう思っていたがーーー
「せっかくの機会、またと無い模造の聖杯戦争ーーー参加する事自体が誉であろうと、勇んで来れば……」
蓋を開ければ、確かに7騎ものサーヴァントを召喚出来る真の聖杯戦争と言っても過言では無かった。
だが、よもやユグドミレニアの小童が参加して、あまつさえ召喚したセイバーが、あの大英雄であったとは誤算だった
咄嗟に周囲のマスター達を巻き込み、セイバーを集中砲火する布陣を敷いたものの、彼奴等はここまで生き残り、キャスター陣営を墜としている
更に言えばーーー
「よもや、イレギュラーとはな……」
自身の作った拠点にして魔術工房。悪霊を番犬代わりに放ち、食獣植物の罠を張り巡らせた屋敷に平然と現れたこの魔獣ともの対処は如何にしたものだろうかと、頭を悩ませている
時計塔の依頼でこの聖杯を回収する事も目的なのだがーーー
「まあ、以前行われたと言う聖杯大戦にも、多くのイレギュラーがあったと聞く……。ならばこの程度の事は織り込んでおくべきか」
この魔獣供はネクロマンサーの扱う術に似ている。恐らく相当な凄腕の魔術師の仕業だろう。何処がで生産され、此処へ送り込まれている。転送されてくる所から転送元を逆探知してやろうとしたが、何重にもプロテクトが掛けられており、その場所を特定できない。現れる側から獲物に飢える植物共に食い荒らされ養分にされていくか、ランサーに串刺しにされていく。兎も角ーーー
「あまり汚してくれるなよランサー。朝食が不味くなる」
「今更それ言いますかねぇ!?」 - 65二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 12:22:31
おじ様×おじ様は乙女回路ギュンギュンしちゃうからやめれ
- 66二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 12:48:30
食えないもの同士って感じでランサー陣営ええな
模倣の聖杯戦争、平安みたいに主従相性上手くいってるの多いな - 67二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 13:22:32
ランサーのマスターは植物科の一級講師か
大人の余裕を感じられるなあ
しかもあんたがセイバー包囲網を主導したのかよ! - 68二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 13:24:31
そこまで高位だと、現代の魔術師の仕業とは思えないな………やっぱ聖杯に問題か?
- 69二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 15:49:33
可能性は普通に高いね
何しろ複数の聖遺物やらを使った継ぎ接ぎの聖杯だし何らかのエラーが生じてても無理はないと思う - 70千界樹の記録23/08/06(日) 19:23:09
廃工場跡。結果の外では魔獣がひしめき合っていた。最初に現れた狼型に羽の生えたモノ。更に新しく獅子の様な魔獣や牛に似た魔獣が、新しく出現を始めていた。その数は既に300に達しようとしており、絶えず魔獣達の突撃を受け続けた結界も幾許と保たないだろう。たが、既に準備は整いつつある
「こっちの準備はできてる」
「こっちも大丈夫よ。いつでも行けるわ」
俺と銀狼は既に脱出の準備は完了している。セイバーも、ライダーも既に終えていて、後は結界の解除と同時に打って出るのみだ
アーチャーのマスター、彼女も覚悟を決めた様で、令呪の宿る右手をぎゅっ、と握っている
「……いくよ」
アーチャーのマスターの言葉にセイバーとライダー、銀狼は身構える。まずは、結界の解除と同時に襲いかかってくる最前列の魔獣を一気に蹴散らしていく
「3」
カウントを始める。全員に緊張が走り、身体に力が籠る。俺の身体もまた、魔術回路の駆動を上げていく
「2」
使える魔力は少ないがそれを補うための仕込みは済んだ。後はなる様になるだけだ
「ーーー1!」
最後のカウントと共に結界が消滅する。その瞬間を今か今かと待ち構えていた数多の魔獣が飛び掛かり襲い来る。予想通りの展開に、それを待ち構えているのは一騎当千の強者共
「ぬうん!」
「ハア!」
セイバーが魔剣を一閃。ライダーが剣の祝福を解き放つ。地上にいる数多の魔獣は斬り払われ、聖光に焼かれていく。2騎のサーヴァントの攻撃で真っ先に襲いかかってきた魔獣は全て滅ぼされ、その2人の間を縫う様に飛び出したのはライダーのマスター - 71千界樹の記録23/08/06(日) 19:29:51
「我に求めよ。されば諸々の国を嗣業として与え、地の果てまでも何時の物として与えんーーー」
聖言を唱える銀狼。彼女の語りに応えるように紅く輝きながら震え出す戦鎚。まるで滅びの時を謳うように振鳴音を奏でていく。そこへ再び迫ってくる第2陣。飛び出した銀狼が、地面はと戦鎚を振り下ろした
「ーーー汝、鉄の杖を用いて彼らを打ち倒さん!!」
叩きつけられた戦鎚から発せられるは破と衝動。魔力を上乗せした振動は空気中を通して魔獣に伝わる。それだけなら精々が微かな振動を感じる程度だが、莫大な魔力を空気の震えに乗せて伝播されれば話は変わる。その波を受けた魔獣は皆一様に床に叩きつけられたトマトの様に内側から爆ぜていく。それは空中から襲ってくる羽持ちも同じで全て硬く、柔らかい頭部が破裂して悉く墜落していく
「ーーーいまだ、やれ!」
近くにいた魔獣はこれで殲滅でき、一斉に飛び出すマスター達。そして、サイバーのマスターの合図を受け、アーダナーのマスターがその右腕を掲げた
「令呪を以て命じる。私たちの道を拓いて、アーチャー!!」
力強い声に呼応するかの様に、紅く輝く紋様。解放される膨大な魔力は彼女のパスを通って廃工場、焼け残ったコンクリートの柱の上に立っているアーチャーへ供給される。目を閉じ、その時を待っていたアーチャーは、己に届いた命令に強い義務感を覚えた。絶対に成し遂げなければならない。自身に課せられた責務に歓喜の笑みを漏らす
「ああ。任せろ、マスター」
弓に番えるは2本の矢。向ける先は魔獣犇く地上に非ず。その鏃は天へと向けられた。
「ーーーこの矢、この真名をアルテミス様とオリオン神に捧ぐ」
高まる魔力。限界を超えてなお引き絞られる矢はアーチャーの魔力を受け輝き出す。その宝具はオリュンポスの2神へ加護を訴える物
「我が願いを聞き届け、どうか我らに御身等の加護をもたらし給えーーー!」
故にその矢は神へ捧げられ、その対価に神の加護を賜る。彼女に与えられる加護は、偏に彼女の敵の滅びである。故に、その名をーーー
「『訴状の矢文』!!」
彼女の真名はアタランテ。ギリシャに名高き俊足の狩人にして、狩猟の女神アルテミスを信仰する英霊なり。放たれた矢は輝きを放ち天へとその姿を消した - 72千界樹の記録23/08/06(日) 21:51:13
矢が消えていった夜空から、満点の星空の様に無数の輝きが広がってゆく。それは届けられた彼女の祈りが形となった物。太陽神アポロン、そして月女神アルテミスから齎される加護は、彼女へ向けられる悪意を敵を許さない
間も無く輝きは流星の雨となり地上へと降り注ぐ
流星は豪雨の様に地上の魔獣達を貫く。この星達は全てが魔力で形造られた光の矢。それらは並み居る魔獣を悉く薙ぎ払い、一瞬、地上を平地に戻したのだった
二大神からの加護は加減が効かず、狙いも確かでは無いがこの様に無数に迫り来る敵を一掃するにはこの場にいる誰よりも優れた威力を発揮している
あれ程絶え間なく湧き続けていた魔獣もこの一瞬のみは、姿を消している。絶好の脱出の好機である。その場にいるマスターとサーヴァントの全員が一歳に駆け出した。アーチャーが創り出したこの猶予は絶対に逃してはならない
走り続ける5人。アーチャーの宝具の威力は凄まじく、湧き出る魔獣も一度一掃されて仕舞えば疎に出てくるのみで、その程度を片付けるのは苦では無い
このまま抜けられるーーー誰もが確信する。だが、アーチャーの視界には、既に異常がに映し出されていた
『マスター!前方には巨大な転移だ!』
「え!?」
アーチャーのマスターは、その警告を聞き取り、すぐに全員は情報共有を図る
「アーチャーから、前に何か来るってーーー」
言い終わる前に、それは現れた。
他とは変わらぬ黒い体表面。泥を押し固めた様な外見はそのままに、赤い魔力の筋を血脈の様に散らす禍々しい姿をした、巨大な影。
「まるでカリュドーンだな」
その全容をいち早く目撃したアーチャー。その姿、その威容はまるで巨大な猪、その大きさは5mを越えん大きさであった
それは彼女の逸話に出てくる最も有名な怪物、カリュドーンの猪を彷彿とさせる存在感である。アーチャー、アタランテは直ぐに矢を番える。今まで現れた魔獣の強さから見て、大きさはあれど嘗て対峙した時の魔猪の様な正真の怪物では無いだろうが、あの巨大をぶつけられれば、マスター達の身が保つまい
矢を引き絞る。少々遠いが、Aランク級の、一撃を浴びせれば、倒せずとも注意は確実に逸らせる。その隙を突いて逃げればこちらの勝利だ。そう思い、引き絞った矢を巨大猪の眉間へ放った - 73千界樹の記録23/08/06(日) 22:41:51
「ーーーアレは」
前方から突然現れたのは、巨大な黒い猪だった。大きさにして裕に5m以上はあろうか。他の魔獣と同じ黒く、違いは赤い魔力の脈が表面に存在しているというところ
「ちょっと、アレ何!聞いてないわよあんなの!?」
「知るか!お前行って潰してこい!」
「無茶言わないで!?質量が違いすぎて潰し切れないわよあんなの!」
まだ距離はあるものの、アレほどの巨体に突進でもされたら、サーヴァントであるセイバー、ライダー、ライダーのマスターは問題ないとしても、俺やアーチャーのマスターは命に関わるだろう。と言うか死ぬ
そこへアーチャーの狙撃だろう。一本の矢が魔猪の眉間へ突き刺さった。その一撃に怯んだのから大きく後ずさる
(ーーーまさか)
その光景を見てある確信を持って叫ぶ。自身のサーヴァントへ
「セイバー!!」
あれはまだ急拵えの張りぼてだ。アレが本来の状態ならば今の矢を受けたとしても、怯みはしようがあそこ迄大きく後退りはしないだろう。表面にのみ魔力と構造体の泥の様な物を集中させ、中身はそこまででは無いはず。
恐らく、俺達の抵抗が予想以上だったから、足止めを兼ねて緊急で拵えたのだろうが、そんな物は予め作っておくべきだったな!アレが見た目だけの張りぼてなら、セイバーの攻撃力でーーー - 74千界樹の記録23/08/06(日) 22:45:09
予め仕込んだ術式を起動させる。これは魔力を貯蔵する霊薬の水に通じるもので、自分の周囲の大気から少しずつマナを収集しほんの一時、魔力を貯める機能を持たせた瓦礫の破片を踏み砕く。それを全てセイバーへ還元させた
セイバーも瞬時に理解したらしく、自らの得物に素早くルーンを刻む。そして、巨大魔猪へ向かって跳躍した
セイバーが跳んだ先は魔猪の真上。魔猪は突進の為か力を溜めている様だが、既に遅きに失している。ルーンの刻まれた短剣が今か今かとその時を待っているのだ
拳を連打し、叩き込まれる短剣。刻まれたルーンは『加速』『風』『雷』この瞬間、セイバーは雷鳴轟く嵐の化身となるーーー
「ーーー瞬殺させてもらう!」
放たれた短剣は暴風と電撃を纏い魔猪の巨体を貫いて行く。同時に暴風が身体を抉り、電撃が血肉を焼く。余りにも鋭く、耐え難い激痛だろう。水魔猪はその場で悲鳴に近い鳴き声を上げながら崩れ落ちた。だが、セイバーの攻撃は未だ終わらず、最後に残った魔剣に拳を打ち込んだ
打ち出された魔剣はまさに暴威。短剣が纏った以上の嵐と雷光を以て魔猪の背から腹を抉り抜く様に貫いた
「GIHIAAAAAA!!!」
胴体に余りにも大きな風穴を開けた魔猪は、さらに魔剣を覆う竜巻が如き暴風により弾け飛ぶ様に四散、続く稲光が散らばった肉片を余さず焼き尽くす。砕け飛び散った魔猪のいた大地に着地をするセイバー。真名の露呈を気にする必要がなくなった大英雄の本領は何処迄も底が知れないと言うのか
余りにも豪快すぎる魔猪の解体ショーに誰もが言葉を失う
「さっさと行くぞ!あんな真似何度も出来ないからな!」
セイバーのマスターは、アーチャーのマスターを支えながら走り出す。今夜の襲撃事件に残された疑問。皆何かしら思うところがありつつも、今夜はどうにか切り抜けられたのだったーーー - 75二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 22:56:49
ブリュンヒルデさん、座で嬉死してない?大丈夫?旦那さん大活躍しっぱなしですわよ?
- 76二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 23:20:08
メインのシグルドはもちろんだけど、マスターもキチンと要所でしっかりサポートをこなして
アーチャーや他の登場キャラにもしっかり見せ場を持たせる
なかなか出来ないよコレは - 77二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 07:25:44
>> 莫大な魔力を空気の震えに乗せて伝播されれば話は変わる
銀狼ちゃん何気に範囲攻撃してるのえぐっ
- 78千界樹の記録23/08/07(月) 08:21:55
「ーーーん、……」
窓から差し込む朝日で目が覚めた。何処か普段よりも体が軽く、頭もすっきりしている
ただし、全く見覚えのない天井、知らないベッドで寝ているのはどう言うことだろうか……
「えっと、夜はーーー」
ーーー思い出した。ライダー陣営に誘われて、今度こそ先輩に吠え面をと、意気込んで向かってみれば、変な魔獣に襲われて、挙句に先輩に助けられて……
「〜〜っ!!」
事の仔細を思い出し、湧き上がってくる羞恥に枕を殴りつける。アホ面を晒す所を見に行ったはずなのに、結果として助けられてしまった。その事実が悔しくて、情け無くて何度も殴るが、なすがままに殴られる枕は心地いい反発を返すだけである。殴るのも疲れたので、はあ、とため息をつきながらベッドから降りる。と、自分の服が男物の寝衣に変わっていることに気がついた
「ーーーまさか」
先輩が……!?と思ったが、すぐに自分の服がベッドの隣の机に畳んであるのを見つけ、上に置き書きが残されねているのを発見する。それは綺麗な流れる様な文字でこう綴ってあった。
『汗だくだったから私が着替えさせてもらったよ。貴女の服は洗って置いておくわね。安心して、彼には何も見せてないから』
「……はあーっ」
あの人が……と、安心すると同時に、ため息が自然と漏れる……。そうだよね、いくら何でも先輩がそい言うことしないよね。ヘタレだし……。と、手紙を置こうとしたら、下の方に小さく追記がしてあるのを発見する
『ここで心理テストです。上の文を見て安心しただけでなく、溜息をついた人は心のどこかで彼に見られてないことにがっかりしています。キャー♡』
「…………っっ」
プルプルと手が震えている。爆発しそうになる感情を堪えるため、置き書きをその場でバラバラに引き裂いた。こんな心理テスト何の意味もないただの悪戯だろうがーーー最悪すぎる……!
ーーーあ、あの女ァ!!
余りにもひどすぎる追記の内容に心の中で怨嗟の叫びが轟いた。機会があったら呪ってやる!! - 79二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 10:21:23
後輩ちゃんカワユス
- 80二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 10:27:49
ホントにシスターか?………今更だったわ
ていうか、聖堂教会が監督役じゃなくて堂々とマスターぶっ込んでるんだよな、今回……… - 81二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 10:30:54
そういや監督役居なくないか?まさか黒幕って……
- 82二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 17:19:47
このレスは削除されています
- 83二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 20:07:46
監督役は幕間にちらっと出てる
主催者の魔術師が教会にパイプがあってそれで呼び込めたらしい - 84二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 20:44:14
銀狼ちゃん何やってるのw
- 85千界樹の記録23/08/07(月) 22:18:10
バーサーカーのマスター、ライダーのマスター、そして正体不明の魔獣共の襲撃から辛くも生き延び、あんな連戦二度と出来るかあ!となっているセイバーのマスターだ
今は拠点を訪れている血族の魔術師に先のバーサーカーからの依頼の品を渡している
「これが例の……」
「ああ。昨夜話した通りだ。頼んだ」
「わかりました」
魔術師は礼装の物より一回り大きな瓶を受け取ると、一度頭を下げこの場を後にする
あの瓶は内部の容量が弄ってあり、中には魔術で保存したあのらバーサーカーのマスターの遺体が保管されている。あの時、ライダー陣営の襲撃を受ける前に逸早く対応をしていた事が功を奏した。これで一つ、背負った荷物を下ろすことができた
さて、気持ちを切り替えて今後の対応を考えよう。まずは朝食でもーーー
「ねえ、レッドペッパーは無いのー?」
その前に、他人の拠点を我が物顔で物色しているならず者に対応をするべきか……
「唐辛子の類なら上の棚だ。と言うかな……」
「おー、あったあった。ありがとー♪」
ロンドンの一件と同じ様に人の拠点を好きにし過ぎだろ。借り物の一軒家、しかも一応は魔術師の工房になっているにも関わらず無防備にも程がある。今の所の許可は出しているとはいえ、警戒くらいしたらどうなんだ?
「人の工房なのに無防備すぎるだろ」
「魔術師の工房程度で、私を傷付けられるとでも?」
フフン、と得意げにしている銀狼。ま、俺の工房は一時的な物で最悪いつでも捨てられる様にはしているから、大した防備は備えていない。ブービートラップも今は切ってあるから心配は無いが……
「で、朝食は何作るのー?」
「普段は和食なんだが……此処に備蓄は無いからな」
今いる拠点では、ロンドンの寮とは違って持ち込める物資が限られていた為、特に寮食の類は現地の物を集めた為、米も味噌も無い。なので、ブレックファーストと洒落込もう
現地で購入したトースターで食パンを焼きつつ他の品物を用意する。それをずっとライダーのマスター、銀狼は楽しそうに見守っていた - 86千界樹の記録23/08/07(月) 23:12:27
朝食の用意が大体終わった頃、バタン!と、やや乱暴に扉を閉める音がした。どうやらアーチャーのマスターが起きた様だ
昨夜、この拠点に戻ってすぐに、拠点に用意してあった霊薬や霊草を使って彼女が受けた瘴気の治療を始めた。いくら俺が大半を受け持っていたとは言え、直接傷を受けた彼女は、と言うより俺の様な家系でも無い限り人間は瘴気への耐性を持っていない。それなりの時間が経過していた為、施術が上手くいくか少し不安だったが容態が安泰してくれてホッとした。が、そんな俺の安堵とは裏腹に部屋から出てきたお姫様は大分御立腹の様子だった。ま、怒るだけの元気があるのは良いことだが、何か気に入らないことでもあったか?
「おはようさん。何かーーー」
「おっはよー♪、置き書きは見てくれたー?」
ま、た、コイツは……火に油を注ぐような真似を……
「……っ!」
と、御立腹の姫は此方が声をかけた途端凄まじい剣幕で睨んできた。俺たちを……と言うより、隣で顔だけ出してるこいつをだが
「お前、何かしたのか?」
「んーーー?身に覚えがないなー?」
ああ、これは何かやってるな?コイツ……
何となくコイツがやらかした事は把握したが、この調子だと互いに話もできないので、宥める様に声を掛ける
「取り敢えず座れよ。瘴気は抜けたろうが、まだ少し痺れてるだろう?朝食でも食おうぜ?」
指でテーブルを指す。そこには人数分のトーストとバター、コーンスープ、ベーコンエッグ、シーザーサラダと、少し多めだが俺を含む全員夜にかなり消耗していたから、このくらいは食べないと精神的にも回復しきれないだろう
「……これ、先輩が作ったの?」
「まあ、な。洋食はあまり作らないがこれくらいはな」
俺の返答に、何処か釈然としない様子で席に着く後輩。着席するまでの10秒間、タップリと呪詛の籠った眼で銀狼を睨んでいたが、当の本人はどこ吹く風で聖書を開いている
朝っぱらから、なんか疲れたな……
「ーーーと、そうだ。コーヒーと紅茶、どっちにする?」
「……紅茶」
「あ、私ミルクティーで!シュガーも入れて♪」
……コーヒー党は俺だけか - 87二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 23:35:24
剣主コーヒー派か
でも2人は紅茶(?)派で哀愁が…… - 88二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 02:58:41
教会関係者らしく唐辛子がたっぷり入った料理が好きそうな銀狼さん
そこに山椒や麻辣を一掴み… - 89千界樹の記録23/08/08(火) 08:21:37
6人でテーブルを囲み、朝食を摂る。
俺の左にセイバー。右に銀狼。俺の向いにアーチャーのマスター。セイバーの向いにアーチャーが座り、ライダーが銀狼の向いに座る形となった
こうして複数人での食事は時計塔以来か。何処か懐かしさを感じる。これが聖杯戦争で敵対する立場でなかったら尚良かったんだがな
「……で、いつまでこうしてる訳?」
私達、敵同士なんだけどーーーとアーチャーのマスターがベーコンエッグを切り分けながら尋ねてくる
まあ、気持ちはわかる。ほんの数時間前迄はお互いに殺し合いをしていたのに、今はこんなに穏やかに、同じ席で食事を摂っているのは複雑だろう
「良いんじゃない?どうせ日のある内は戦闘は禁止。正午までは共同戦線でも問題はないわ」
ミルクティーを飲みながら答える銀狼。それに対して自身のマスターの隣に座っていたアーチャーが尋ねた
「どう言う事だ?」
「さっき教会から連絡が来たの。正午に各陣営全員を招集、だって」
「恐らく、昨夜の出来事について説明なりが入るのだろう」
アーチャーの問いに答える銀狼。そこにライダーが補足を付け加える。
「教会が?」
「お前が起きてくる前だったからな。どうもランサー陣営も俺たちと同じ様に襲撃されたらしい。まあ、あれはどう見ても植物系統ではなかったからな」
しかも明らかに転移魔術を使用して来ていた。キャスターが消滅した今、あんな真似ができる魔術師はそうはいない。ともすれば、この聖杯戦争とは全く関係のない外部からの攻撃の可能性すらあり得る
もう一つ付け加えれば、ランサー陣営の拠点は今しっちゃかめっちゃからしい。まあ外部からの攻撃に対して万全の体制を整えてもいきなり内側に出現する敵に対しての防備なんて普通考えられないよな
「と、言うわけで正午まではお互い共同戦線続行ってわけ。別に同盟に抵触はしてなから何も問題ないわ」
と、自分のサラダに追加レッドペッパーを振りかける銀狼。それを見ていた後輩が何かあいたげな顔をしている
「……ねえ、さっきから何でレッドペッパーふりかけてんの?」
「気にするな。コイツが辛党なだけだ」 - 90二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 09:10:02
- 91二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 09:47:56
き、きっと辛い修行の中でみんな味覚壊れていくんだよきっと……
- 92二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 10:47:12
辛さとは舌が感じる痛みそのまんまらしいので
痛みでしか己の生を実感できないとか、Mォ…とかかもしれない
なお麻婆神父は、ただ辛いだけじゃなくて泰山の麻婆のように旨味とコクがあるのしか認めないというめんどくささ
- 93二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 11:57:11
情報が小出しだけどこうして見てたらロンドンの一件とかも見て見たくなるな
推定アインナッシュの森で一体何をやらかしたんだろうか - 94二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 12:10:53
食事シーンあるの助かる
時間的にも腹減ってきた - 95二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 21:30:22
ほ
- 96千界樹の記録23/08/08(火) 21:39:37
全員の食事が終わり、食器を片付ける。洗うのは食器洗い機様々に任せて、各々正午まではこの拠点の一階部分は自由に使って貰おう。どうせここは居住スペースとして、食事関係以外は最低限のものしか置いてないしそれなりの広さもある
ただーーー
「お前はまだ暫く大人しくしてろよ?瘴気はもう抜け切ったろうが、後遺症でまだ暫く痺れが出るだろう」
少なくとも、正午に教会に行くまでは此処で大人しくしてるんだな、と伝える。アーチャーのマスターは、「わかった」とだけ言ってボウガンの手入れに入った
ライダーのマスター、銀狼は窓際に椅子を持って来て聖書を開いている。ライダーは側についている様で、アーチャーは天井に行ってしまった
セイバーは拠点の中庭で剣を振るっている
後は……
「俺は暫く2階で色々やってるけど、上がってはくるなよ?一応はこの工房の本丸だからな」
とだけ残して、2階への階段を登る。後輩と銀狼は軽く手を振っていた。了解と見ていいだろう。さて、今までで大分霊筒も消費したし、アイツの治療にも多少使ったので、補充しなくちゃならない。確かまだ素材はあった筈ーーー
「……で、後輩ちゃん?」
セイバーのマスターが2階へ上がった所で、銀狼は聖書をパタンと閉じ、体の向きをアーチャーのマスターに向ける。アーチャーのマスターはピク、とだけ反応したが、無視してボウガンの手入れに戻ってしまった
「おーい。もしかして今朝の置き書き怒ってるー?」
無視して矢の手入れに移る
「ちょっとちょっと、おねーさん謝るからさ?ね?同じセイバー打倒の同盟組んでる仲じゃん?」
ごめんね?と手を合わせて謝るライダーのマスターをちらっ、とだけ見て、はあ……と溜息を一つ。まあ流石に、先程の件について思うところは、多々ーーー多々あるものの、謝る相手を無視するのは気が引けてしまうので、要件だけでも聞こうと思って、ボウガンを置き、向き直る
「……何ですか?」
「ありがとう、後輩ちゃん可愛いー♡」
少しイラッとして来た
「用がないなら作業戻っていいですか?」
「ああ待って待って!もう、せっかちなんだからあ」
ボウガンの手入れに戻ろうとするのを両手で慌てて制するライダーのマスター。二度目のため息をつく
コホン、とライダーのマスターは先払いを一つしてーーー
「ぶっちゃけ後輩ちゃんは、彼のことどう思ってるのかな?」 - 97二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 21:42:25
うおおおおお
- 98二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 21:50:26
文才あれば既存鯖のみでもここまでオリジナルティ満載の聖杯戦争が出来るんだな。
- 99二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 22:09:43
うおっ
いきなりぶっ込んで来やがった! - 100千界樹の記録23/08/08(火) 22:59:37
「ーーーは?」
思いのよらない質問に、思わず間抜けな声が出てしまう。え?なに?誰が、誰を?は?
聞き間違い……?いや、この近距離でそんな事あるわけ、でも一体何を聞いて来てーーー
「あれ?じゃあもう一度聞こうかな?君はー、あの先輩君をーーー」
「い、いいです二度も同じ質問をしないでください!」
どうやら聞き間違いでは無かったらしい。聞き間違えであって欲しかったが
「……し、質問の意味が理解できかねますが……」
「そのままの、意、味♡ おねーさんね?そう言った相談事もやってるから分かるんだー♪」
何の相談!?と言いたくなったが、ここで焦れば確実に目の前の餓狼の思う壺だと思い、すぐに平静を保って、保ってーーー
「どう、思うも何も、あの人は降霊科、と言うより召喚科の先輩で、まあ?多少は?お世話になりましたけど……」
「うんうん。彼、優しいもんね?特に貴女みたいな子は放って置けないんじゃないかしらー?」
と、此方の目を獲物を見つけた獣の様にマジマジと見つめてくる。まるで、此方の感情や心を抉り出そうとしている様で、咄嗟に視線を背けた
「別に、あなたが考えてる様な事は有りません。私は彼を超えたいだけ。あの人に勝つ事で証明したいだけなんです。私の家を、私の才能を、私の魔術をーーー」
「それは、彼に振り向いて欲しいからーーーかな?」
「なーーーなに、をーーー」
いつまでいるのだーーーと言おうとして、そっと人差し指を口に当てられたいつの間にか、人一人分はあったはずの距離が僅かでも動けば触れる所にまで近づいている。そして、その瞳が自身の目を射抜くーー
「昨夜から貴女を見させてもらってね?貴女が彼に認められたい、認めさせてやるーーーって躍起になってるのはわかったの。だってセイバー陣営を討つなら、アーチャーが彼の懐に入り込んだ時に撃たせてたら終わったでしょ?」
そう。そうなのだーーー昨夜の戦いの折、セイバーが宝具を発動するタイミングでアーチャーが彼の喉元に矢を突き付けたあの瞬間、令呪でセイバーに自害させろ、等と脅す必要は無かった。そのまま何も言わずに矢を撃っていれば終わったのだ。それを敢えてしなかったのは、別に知り合いだからーーーという理由だけではない。無かったーーー - 101千界樹の記録23/08/09(水) 07:50:21
彼女は魔術師だ。知り合いが死ぬ程度、裏切り裏切られを繰り返す、権謀術数渦巻く魔術世界では常識。故にそんな事に斟酌はしない、してはならないのにーーー敢えて彼をら殺さずに勝利を喧伝したのには、偏に彼に自身を見てもらいたいが為ーーー
「ーーーッ!」
ハッと正気に帰る。そして目の前の女性に恐怖した。まるで人の心の澱みを抉り出すかの様なもの。例え悪魔祓いでもこうも人の奥底を掻き出すような真似は出来まい
「ーーーあら、どうしたの?」
此方を見るその瞳は、深く透き通る様に自身の顔を映し出す。碧の鏡に映る己の顔は、剥き出しの感情を曝け出された様にーーー酷く幼く見えた
「ぁーーー」
「これはね?主に仕える身としての、貴女への告解」
私を宥める様に、突き放す様に静かな声色で告げる彼女。そこには今まで見たようなふざけた雰囲気も、餓狼の様な獰猛さの欠片も無い。信徒とは、かくあるべしと言う程に彼女は神に仕えるものであった
「自分の想いときちんと向き合いなさい。自身を「こうあるべきだ」と律する前に、「自分はこうしたい」と言う本心と正面から対峙する事。その上で「どうあるべきか」を考える事」
「わたし、のーーー」
「人は後悔する生き物。でもね、自分の本心と向き合ってさる後悔は、向き合わずにする後悔よりも、きっと気持ちが軽くなるから、ね?」
と、人の心を切開し、秘めた感情を掻き出すだけ掻き出す様にして、銀狼は彼女からそっ、と離れる。
「折角の青春なんだから、やりたい事やり尽くしてからでも、魔術師は遅くは無いんじゃない?」
と、今までの様な悪戯っぽい笑顔を浮かべた。
「ーーーーーー」
心臓が早鐘を打つ。今まで無意識だった、意識しないうちに抑え込まれた感情を抉り出して目の前に突きつけられた様な気持ちになる
こう見えても聖職者ということか。と言うより……
「よくも人の感情弄んでくれましたね……!」
「あら?何のこと?私は迷える子羊を導くだけの優しい優しいお姉さんよ♪」
無意識下に仕舞い込んでいた感情やら何やらを容赦なく剥き出しにしてくれたこの女は、変わらない笑顔であった - 102二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 08:20:15
ヒェッ
鬼畜や、鬼畜がおる - 103二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 11:49:19
人の秘めた感情を引き摺り出す事でしか得られない栄養があったとは驚きだ
- 104二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 20:13:20
そう言えば気になったんだけどスレ主
マスター達の名前とか特に決めてないん? - 105二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 21:55:39
黒幕誰なんだろうね。
- 106二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 22:03:25
実は初期の描写に力が入っていない淡々とした作風が好きだった。
- 107二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 22:11:08
- 108千界樹の記録23/08/09(水) 22:16:20
弄ばれた……そう理解した瞬間、自分の顔がすごい熱を持ち始めるのを自覚した。今鏡を見たら自分の顔は耳まで見事に真っ赤に染まっている事だろう。その下手人は楽しそうに此方の反応を窺っている
こうなったら、逆襲してやる……!
「そ、そう言うあなたは、如何なんですか?」
「ん〜?私?」
ニコニコと笑顔のままで対応してくるが、その余裕、引き剥がしてくれる
「あなたの方こそ、先輩に随分と執心してるみたいじゃ無いですか?さっきも仲良さげでしたし、食事の時も随分態々隣に座ってましたし?」
と、確証は無かったけど思った所を突いてやる。一瞬、彼女が意外そうな表情を浮かべて固まったので、思いのほか当たりかな?よっしゃもっと攻めてやれーーーと思った瞬間
「……知りたい?」
いつもの明るい声色とも、告解の時の透き通る様な声とも違う、妖艶な色を乗せて発せられた声。その声を聞いた瞬間、背筋にゾワッと悪寒がした
「あーーーえっ、と……」
不味い。何か変なスイッチ踏んだーーーそう思い撤退、と思った時には既に遅し。再び至近距離に迫られてしまっていた
「教えてあげてもいいわよ?」
ツツー……と、伸ばされた指が自身の腿をなぞってゆく。その感触が擽ったいやら寒気がするやらで、今すぐ逃げ出したい衝動に駆られるが、逃がさないとばかりにズイ、と顔が触れそうな距離に近づく
ゆっくりと身体の輪郭を辿る指にゾクゾクした感覚を覚え、さらに指は腿を越えて下腹部の方へーーー
「彼と私が過ごした……あの、情熱的な夜の事……ぜーんぶ、詳らかに教えてあ、げ、る♡」
「い、いいですいやです知りたくありません!!」
腿をなぞる指が下腹部のーーーへ到達した段階で頭の中でもう危険が危ないとかそう言う頭の悪い表現をするレベルで警笛を鳴らし、無理やりに彼女を引き剥がす
あ、危なかった……もう色々と身の危険を感じるレベルで凄まじい悪寒と艶っぽい声色でおかしくなる所だった
「あら、ただロンドンで一緒に死徒退治をしただけよ?」
……多分、私はこの女には勝てない。そう思い知らされた瞬間であった - 109スレ主23/08/09(水) 22:17:36
- 110二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 22:18:30
今の作風もクオリティがあって面白いんだけどマスターの描写に力入れ過ぎてテンポ悪くなってる印象があるんだよな。
でもシスターの魔力でマイケルの宝具強化してグラム耐えきるの展開は自分じゃ思いつかなかった。 - 111二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 22:47:32
死徒………森………やっぱアインナッシュじゃんかよー!?
いやまあ、祖ではない分マシなんだけどさ - 112二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 22:51:05
今の描写も最初の頃もどちらも好き!
ここはスレ主が立てたスレだし好きなように書いていいと思うよ
こっちはあなたの書くfateが読みたくて来てるから気にせず突き進んでくれ - 113千界樹の記録23/08/09(水) 23:09:10
さて、これくらいで良いだろう。突貫だが数は揃えられた。後は自動で再生する分で賄うか
霊筒を用意できる分だけ用意して、これからの戦いに備えるセイバーのマスターだ
時間的にはそろそろ良い頃合いだろう。今から教会に向かえば10分前くらいには到着できる
実は昨夜から一睡もしていないからクソ眠いのだが、教会の用が済んでからでも良いだろう
霊薬の詰まった小瓶を懐に収めて階段を降りる。どうやらあの2人も大人しくしててくれた様だし、良かったよ
「おーい、そろそろ教会に行く、ぞ……」
2人に声をかける、が、なんだろう。一見普通にくつろいでる様に見えるが何だかピリピリしている。具体的にはアーチャーのマスターがライダーのマスターへ一方的に敵意を向けている……。あの女、またちょっかいでもかけたのか?
「ーーーあ、先輩!」
「ん、ちょうど良い頃合いじゃ無い?」
心なしか、アーチャーのマスターの声色が明るいが、ライダーのマスターが一度声を発すると、キッ、と睨みつけている。対するライダーのマスター、銀狼はどこ吹く風と受け流しているが……
「まあいい。兎に角、教会で聞くこと聞いて、それで共闘関係も終わりだ。行くぞ」
「ーーーは、はい」
アーチャーのマスター、後輩の方も急いで片付けをしてボウガンをバッグにしまっている。銀狼は聖書をどうやってるのか、修道服の中に仕舞い込んだ
外は少し雲が出ているが十分晴れた佳い空だ。俺を中心に両脇に2人がそれぞれ立って歩く。一見両手に花だが、毒花と知って羨ましがる奴は、どれだけ居るのだろうな
教会の前に着く。一応聖杯戦争のルールとしてサーヴァントは此処で待機する事になっている。セイバー、アーチャー、ライダーの3騎は霊体化したままここで待っていてもらう。それに既に1騎、ランサーが到着していたらしい。あの腰の重い老人が先に来ているとは、珍しいこともあるものだ
扉を開けて中に入る。中は殆ど人の姿は見えず、長椅子が立ち並ぶ教会の奥に立っているのは2人。そして長椅子の一角に座る初老の男。奴がこの聖杯戦争におけるランサーのマスターだ。
奥にいる1人は俺がこの聖杯戦争の聖杯を渡した、恰幅のいい魔術師。そして隣にもう1人は、背の高い神父ーーー
「よく来た、少年少女達。主の座す家へようこそ」
「相変わらずね、言峰神父様」
神父の挨拶に、隣いた銀狼が挨拶を返したーーー - 114二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 23:17:45
コトミネェ!?
いやでも言峰綺礼とは別人の可能性が高いか - 115二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 23:20:38
アポ時空だと愉悦に走らないから綺麗な綺礼かも知れない
- 116スレ主23/08/09(水) 23:39:52
- 117二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 23:45:49
頑張れ♡頑張れ♡
個人的には確かに今の形式でテンポは悪くなってそうだけど短期間でこの更新量はエグいと思うのであんまり気にならない
俺だったらこんなスピードでクオリティは維持できないので素直に脱帽です - 118千界樹の記録23/08/10(木) 07:35:58
「では、全ての陣営が揃った所で、改めて報告させてもらおう」
この聖杯戦争の主催者である魔術師、イザーク・ゴットハルトは全員を見渡して告げる
「昨夜の一件についてだが、全ての陣営に対して魔術による襲撃を受けたと報告を受けている」
その言葉を聞いて、マスター達の表情が変わる。誰もが同じタイミングで襲撃を受けるなど、明らかに人為的なものだろう。それについて、何かしら判ったことがあるのだろうか
「少なくとも、あれは私の差金では無い。スクロールでけいやくしたとおり、私はこの聖杯戦争において、どの陣営にも肩を入れず、何も妨害行為を行うことはできないのは皆承知の筈だ」
それはここに居る全員が承知している事実。この聖杯戦争を執り行う際に全員が同じスクロールに署名をして参加していた。それはルールを明文化し、遵守する為に必要なものであったから
だがーーーとイザークは言葉を続ける
「関係性は不明だが、ここ数日の間に行方不明者が続出している」
特に魔術師の被害が多いーーーと彼は言った。行方不明者、何者かに襲われたのか、はたまた別に要因があるのかは不明だが
「それについては俺も報告を受けている。神秘隠匿の為に派遣した血族の魔術師が消息を断っている、とな」
「時計塔から派遣された魔術師達も同様だ」
セイバーのマスターの発言に続き、ランサーのマスターも似た内容のことを語った。それを聞いたイザークも頷く
「恐らく、今回の襲撃に備えてのものか、魔術師達を先に襲っていたのだろう。目撃者を消すためか、はたまた魂喰いかはわからぬがな」
「監督役としても、この事態を静観するわけにはいかない。そこで、君達マスターに提案がある」
言峰神父はゆったりとした、それでいて何処か重くい口調で述べながらマスター達を順繰りに見渡していく
「セイバーのマスター。神水流凌我」
「アーチャーのマスター。マルグリット・ザックス」
「ランサーのマスター。モーティマー・O・ブライエン」
「ライダーのマスター。ルーナ」
全員を見渡し、一泊おいた後に、神父は両手を、まるで歓迎の合図をする様にして口を開いた
「君達でこの問題を解決してみないか?勿論、報酬は出すとも」 - 119千界樹の記録23/08/10(木) 08:38:30
「解決?」
モーティマーが口にした疑問はこの場にいる全員が共通して持ったものだろう。解決と言うからには、この問題に対してある程度の答えを持っている、ということになる
「解決って、どう言うこと?」
マルグリットが怪訝そうな表情を浮かべ、視線を言峰神父へと向けた。その言峰神父はフッ……と口元を歪める。聖職者のそう言う笑い方は胡散臭いことこの上無い
「先の件は、転移の魔術を用いて各陣営に、驚く程正確に襲撃をかけた。つまり全員の居場所を常に把握していなければならない」
「それはそうだな。拠点に襲撃をかけるならまだしも、連中は俺たちのいた廃工場に仕掛けて来やがった」
バーサーカーのマスターの拠点ではあったが幾らなんでも襲撃の規模が大き過ぎていた。ランサー陣営に向けられた襲撃の規模とは比べ物にならないほどの
「そして、アレほどの大規模かつ連続した転移魔術を行うならば、転移元と転移先はそれ程離れてはいないと言うのが、私とイザーク氏の共通の見解だ」
「二箇所への同時転移なぞ、どんなに優れた魔術師でも遠方から成立させるのは困難を極める。よって、転移元はこの地の何処かだと判断しているのだよ」
言峰神父の言葉に続けてイザークが口を開く。確かに筋は通っている。なるほど、言いたいことは何となく理解できた
「よって、何処かに居るであろう発生元を突き止め、それが何者であるかに関わらず、これを排除、ないし停止させてもらう。と言うのが我々からの提案だ。そして、その報酬としてーーー」
イザークは一度言葉を切って言峰神父へ視線を向けた。神父は頷くと一歩前へ出る
「私が今回の聖杯戦争を監督する上で預かっている委託令呪。見事解決して見せたものにその一画を進呈しよう」
瞬間、マスター達の間にざわめきが発生する。令呪はマスターの持つサーヴァントへの絶対命令権であると同時に、強力な切り札にもなり得るものだ。聖杯戦争におけるその価値は計り知れない。既に1画分を使用しているセイバー、アーチャー、ランサー陣営にとっては喉から手が出るほど欲しい代物だろう - 120二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 12:18:50
令呪配布イベントキタ
- 121二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 18:23:30
おお、名前入った
良いと思うよ - 122千界樹の記録23/08/10(木) 20:25:19
「単独で事に当たるもよし。他者と協力して対応してもいいだろう。その際、単独で解決した場合はその者に1画、他者と協力した者にはその全員に一画ずつ進呈させてもらう」
成程、フェアな条件だ。この問題解決の難易度は不明ながら、どの様に解決してもリターンとリスクは付きまとう。単独で解決する場合、令呪の獲得権をを独占できるが、解決にあたる難易度はその分高くなる
逆に誰かと故能力する場合は、難易度はその分下がるが、報酬獲得が全員に渡ると言うリスクを背負うことになる。リスクの天秤が釣り合っているかは不明である以上どうするかは慎重に決めなくてはならない
「ああ、それと追加の情報だ」
言峰からの話が終わり、代わりにイザークが口を開く。
「既に脱落したアサシンとキャスターのマスターだが、先日より連絡がつかなくなっている。この件に巻き込まれた可能性もあるだろう。君達も十分気をつけてくれたまえ」
その言葉に凌我が僅かに反応した。キャスター陣営を斃したのは彼だ。何かしら思うところはあるのだろう
「此方が解決の糸口を見つけられない場合は?」
イザークの話が終わると同時に凌我から質問が飛ぶ。確かに、問題の根深さが不明であり、解決手間切る問題かどうかも判っていない。原因やら解決の手段が見つからない場合は如何するのか、その問いに対してイザークは苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべた
「そうなっては、最悪この聖杯戦争の中止も判断に入れなければならないだろう。神秘の隠匿、聖杯と繋がっている霊脈にも悪影響を与えかねないからな」
不本意な結末であるが……と彼は言う。それはその通りだろう。そうなっては此方もせっかく聖杯を断片からかき集め、復元した意味がなくなってしまう。そうならない為にも、この問題には全力で解決に当たる他は無い
「こちらからの話は以上だ。諸君らの健闘を祈る」
言峰神父の言葉を最後に、この場は締められた。 - 123二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 23:11:46
続きが気になるねぇ
- 124千界樹の記録23/08/10(木) 23:35:27
神父と主催者は教会の奥へ向かい、この場に残された4人のマスター。最初に言葉を発したのはランサーのマスター、モーティマーだった
「では、私は失礼させてもらう」
「あらおじ様?おじさまは参加されないおつもりで?」
長椅子から立ち上がるモーティマーに対して、挑発的に言葉を返すルーナ。対する初老の男は柔和な笑顔を浮かべたまま肩を揺らした
「私ももう若く無いのでね。若い者達に任せようかとな。なあに、報酬の令呪は3人で分けると良い」
ルーナの挑発めいた発言を一顧だにせず、ステッキを手に去るモーティマー。その狸爺振りは相変わらずだ。その姿を見送った3人はそれぞれ顔を真合わせた
「て事は、もう暫くは共同戦線は続けるって事になるのか?」
「そうなるんじゃ無い?あの老人も同盟の事は何も言わなかったし」
凌我の言葉に同意するマルグリット。まあ、十中八九、あの狸は此方を出し抜いて独り勝ちする気だろう。恐らく何体もの使い魔を飛ばして情報収取に入っているのだろう
「じゃ、もう暫くはよろしくね?凌我君♪」
透き通る様な声を発し、楽しそうにステップしながら凌我の側へ寄るルーナ。が、凌我には見えない様にチラチラとマルグリットに視線を送っており、明らかに彼女を挑発している
「……じゃあ先輩!早速調査に行きましょう!」
一瞬だけルーナの方へ刺す様な視線を向け、小走りでマルグリットも凌我へと駆け寄る。そさて、凌我の腕を掴んで、引っ張り出す
ーーーあれ、これって俺仮眠取る暇ない?
「さあ行きましょう!早いとこ片付けて聖杯戦争を再開しましょう!」
「ああ分かった分かった。引っ張るな俺まだ一睡もしてねえんだよ!」
引っ張られながら教会の外へ向かう凌我、何か焦った様子で彼を引っ張って行くマルグリット。2人の様子を見ながらルーナはクスクスと笑っていた
「フフッ……青春ねえ……」 - 125二次元好きの匿名さん23/08/11(金) 08:47:50
マルグリットのキャラいいな、そして凌我は爆ぜろ
- 126千界樹の記録23/08/11(金) 13:21:06
教会の外へ出た3人。時間的には正午を周っている。さて、どこへ向かおうか……
向かう先を思案しているが、さっきから人の腕を万力みたいな強さで締め上げている後輩がさっきから動かずに周囲を見渡している。まさかコイツーーー
「お前まさか……」
「……なに」
俺に視線を一切合わせようとしない。やっぱりこいつ
「特に調査する場所とか考えてないだろ」
「……」
とうとう返事すらしなくなった!!
まあ、俺の方で当てが幾つかあるし、手は多いほど良いし、良いか
「ほら、行くぞ」
腕を掴む力が弱まったところでヒョイ、と離してもらう。さて、取り敢えず向かうべきは彼処だろう
「ーーーって、どこに行くの!?」
一拍遅れてマルグリットが付いてくる。そして逆側にはいつの間にかルーナが付いてきていた
「お前に宛てがないなら俺の方の宛からってだけだ」
「あら、凌我君には何処か怪しい所の目星があるのかしら?」
「確定と迄はいかないが怪しいところの目星はつけてある」
ルーナが俺の腕に絡んでくる。それに対抗するようにマルグリットも俺の腕を掴んで来た。一体何に対抗しているのかは知らないが
こうして近いのは色々と困るし、堪ったものでは無い
取り敢えず、向かう先は廃工場の反対の方向。教会、住宅街を過ぎ、俺の拠点があったホテル街を抜けた先にある街外れにある
3人でその場所に向かうのだが……周囲の視線が少し痛い。特に男連中からの怨み辛みの篭った目が刺さる刺さる。まあ側から見たら女性2人両脇に侍ている様に見えるだろう
「きゃっ、凌我君てば人気者ー!」
「先輩この人置いて行った方がいいよ」
俺の両隣で、ワイワイと言い合いをしているこの女性達の正体を知っていれば、俺が如何にまな板の上の鯉に近いかを分かってくれるだろうかーーー
近いし、押し付けてくるな - 127二次元好きの匿名さん23/08/11(金) 16:58:32
なんだ
俺たちは何を見せられているんだ(いいぞもっと見せろ) - 128二次元好きの匿名さん23/08/11(金) 17:09:44
鈍感、と言いたいが親父の死亡経緯考えると、周囲の目とかキツかっただろうしなぁ
ユグドミレニア入りしてた辺り、零落しつつあった家の出っぽいのも含め、好意の類にゃ鈍感でも仕方なしか
それはそれとして、ここまで贅肉たっぷりに育ったのはすげぇと思うけど - 129千界樹の記録23/08/11(金) 22:18:29
ホテル街を抜けると、一気に人通りが減って行く。そして目的地に着く頃には俺たちの周囲には誰も居なくなっていた
「ここだ」
ホテル街から離れた、古い建造物が並ぶエリア。その中でも一際大きな建物。かつてはこの地の総合病院として栄え、今は廃され地元では有名な心霊スポットとなっている
キャスター陣営の拠点であったーーー
「で……この拠点が怪しいと?」
病院の門を通り敷地内に入る。老朽化し、所々割れた石床の間から雑草が生えている。
更に以前の戦いの跡か、瓦礫があちこちに散らばっていた。マルグリットが床に散らばっている瓦礫の破片を蹴りながら疑問を投げ掛ける。訝しげな視線の先にいる神水流凌我はセイバーと共に何やら魔術で探知を行っていた
「ああ。キャスターのマスターは死霊術師だ。消息が途絶えたと言うのなら、他の被害者達と違って、主犯格であると言う選択肢も浮上する」
キャスターが消えた以上、脱落者は聖杯戦争に関わらないはずではあるがーーーと言っているが、今回の聖杯戦争におけるルールはシンプルで、抜け穴も多そうだった
1.この聖杯戦争において、神秘の隠匿は徹底する事
2.この聖杯戦争において、主催者であるイザーク・ゴットハルトはいかなる理由があろうとも特定の陣営に肩入れすることも、当戦争の運営におけるいかなる妨害、遅延行為を禁ずる
3.参加者は、聖杯戦争の最後の勝者となるまで、聖杯への如何なる干渉をも禁ずる
4.この戦争においてサーヴァントを失った敗退者は、戦争中に他の陣営への如何なる干渉を禁ずる。その対価に教会にて身の安全を保証するものとする
確かに、抜け穴は多いが前提として参加者は聖杯には触れないし、脱落者は他の陣営に関われない。脱落者も参加者である以上は聖杯に干渉することは出来ない。だから基本的には大丈夫の筈なのだが……念の為にな
「うーん。魔術師の拠点があったにしては拍子抜けするくらい静かねー」
ルーナは背に戦鎚を担いで辺りを見渡している。その傍にはライダーが姿を見せている。アーチャーはマルグリットから少し離れて全体を見渡せる位置に居た
「どうだ?セイバー」
「専門ではない故、断定は出来かねるが反応は無し。魔力反応も同じくだ」 - 130二次元好きの匿名さん23/08/11(金) 22:28:43
ま、そんな簡単じゃないわな
死体が利用されてる、って可能性もなくはないが、少なくとも工房は無関係と - 131千界樹の記録23/08/11(金) 22:33:59
「おーい、そっちはどうだ?」
振り返り、マルグリットとルーナに声を掛ける。2人の反応も芳しくは無かった
「どうも何も、少し霊が彷徨いてるくらい」
「しかも悪霊未満のねー。心霊写真くらいにはなるんじゃない?」
死霊魔術に引き寄せられた類ではないか……心霊スポットと言う評判が信仰を生み、霊が彷徨い安くなっているだけだろう
「なら此処の調査は終わりだ。中に入るぞ」
そう言って中へと踏み込むセイバー陣営。それを追いかけるマルグリットを見送って懐から十字架を取り出すルーナ
「マスター。君は追いかけなくていいのか?」
「追いかけるも何も、凌我君ったら人避けの結界張るの忘れてるし……」
十字架を置き、聖言を唱える。すると十字架を中心に金色の輪が病院を囲うように広がる
「これで良しっ。出来る女は男の気の回らない所をサポートするもんなのよ♡」
「ハハハ。君が言っても説得力はあまり無いな」
「うるさーい」
暫し遅れて、ライダー陣営も病院に突入して行った
病院の中は外よりも静まり返っていた。セイバー陣営はエントランスホールの中で、再び探査を始めている。アーチャー陣営は受付やスタッフルームの中に中かしらの手掛かりが無いか物色していた
そこへ少し遅れて入ってきたライダー陣営。彼女達もセイバー陣営の隣を通って奥へと進んでいく
「どんな調子?」
「以前来た時よりも静か過ぎて逆に驚いてるよ。ここまで綺麗さっぱり無しの礫だとは思わなかった」
「そ?じゃあ私達は先行して奥、と言うより2階3階回ってみるわね」
「頼む。何かあっらこれを使って連絡くれ」
と凌我はルーナに丸い小石を渡す。その石にはルーン文字が細かく刻まれていた
「これって?」
「通話用のルーンだ。これなら電波妨害や魔術妨害を潜り抜けて通信できる」
セイバー印の優れ物だ。と、彼に視線を向けた。ルーンってそこまで便利なの?とルーナは疑問に思ったが、以前見た事のある人形師の、あの何でもありっ振りを思い出すと、妙に納得してしまった
「そう?じゃあ遠慮なく使わせてもらうわね」
石を受け取って、手を振りながら奥へと進む。さて、鬼が出るか蛇が出るかーーー例えこの事件の黒幕がキャスターのマスターであるにしろそうで無いにしろ、関係ない
「私達第八秘跡会に牙向く魔術師は、みーんなミンチにしてあ、げ、る♡」