こんな時間に直接来るなんて

「……散々誘っても『大人の男が女の子の一人暮らしのところになんて行けないよ』って言ったのは、誰かしら」
「……おれです……ごめんなさい……」
「いつでも遊びに来てって言ったのは」
「…………」
「……私よ。少しでも星が綺麗に見えるように、高層階の部屋をせっかく無理して借りてるんだから、いつでも来てって言ったのは、私」
「……うん」
「……意外ね。あなたが私の言葉を覚えてないなんて……」
「……」
「……って。酷いうぬぼれね。今のは言葉のアヤベよ……忘れて」
「……忘れない。高層階を頑張って選んだことも、俺が家賃半分出すって言ったのに断ったことも、忘れてない」
「……そう、なの？」
「覚えてるって言ったら……君の気持ちに甘えたことになるから。今日は、あくまで……俺が、終電を逃して、迷惑をかけてるってことに、しなにゃ……」
「……もう。昔の私より変な意地の張り方をするのね……」
「はは……そうかな？」
「いいから、とにかく入って。お水でいいの？牛乳？……酔ってるときは何がいいの？」
「え、あっ、ちょっ、と……」
「あなたが意地を張る。私が世話を焼く。あなたが甘える。私が受け止める。……今夜は、あの頃の逆でいい。……でしょう？」