- 1二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 01:28:23
「デジタル君、ずいぶんと楽しそうじゃないか」
日課になったトレーナーさんとの電話を終えて布団に入ると、突然タキオンさんからそんなことを言われました。
「え、そうですかぁ?まぁ、推し語りというのは素晴らしいものですからねぇ……」
「いや、そうではなくてだね。
……まるで恋する乙女のような顔だったよ、さっきのデジタル君は」
「……ぇ?恋する乙女?……あたしがですか?」
「他に誰がいるというんだい?」
恋……?恋って、あの……
「ひょえっ!?恋っ!?そ、そんな、あたしがトレーナーさんを好きだなんて!
トレーナーさんはあくまでともにウマ娘ちゃんを推す同志、恋だなんてそんな……」
「デジタル君。
私は、君が「デジタル君のトレーナー」に恋をしているとは一言も言っていないよ?」
「え?あっ……」
そういえば、そうです。
タキオンさんはただ「恋する乙女のようだ」と……
「ん?おい、デジタル君?おーい、でーじーたーるーくーん?
ダメだ、完全にフリーズしている……」 - 2二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 01:29:02
「ん?おい、デジタル君?おーい、でーじーたーるーくーん?
ダメだ、完全にフリーズしている……」
タキオンさんが何か言っているようですが、あたしの耳には全く入ってきません。
もしかして、あたしはほんとに……
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」
「わあっ!?どうしたんだいデジタル君!」
「いえ、気にしないでください!
たとえあたしがトレーナーさんを好きでも、あたしよりいい人絶対いますし!
ええ、あたしなんかよりも、ずっと……」
感情を振り払おうと出した声はどんどん勢いを失って、しまいには消えてしまいました。
自分の胸に手を当てると……どきどき、どきどき……うるさいくらいに振動が伝わってきます。
絶対あたしよりいい人がいる、とは言ったものの。
トレーナーさんの隣に別の女の人がいるところを想像すると……なんだか、すごくモヤモヤして……
「で、デジタル君!?大丈夫かい!?」
「ぇ……?あれ、あたしなんで……」 - 3二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 01:29:50
ぽた、ぽたっ。
小さな音は、あたしの布団に水滴が落ちた音。
あたし……泣いてる……?
「あぁ、泣かないでくれデジタル君、私は何も君を傷つけようとしたわけじゃ……
それとも何処か痛むのかい?待っていてくれ、今保健室まで連れて行くよ!」
違う、違うんですタキオンさん。
タキオンさんは悪く無いしどこも痛くなんてないんです。
……あぁ。
なんということでしょう。
あたしは……アグネスデジタルは……
トレーナーさんに、恋をしてしまったのかもしれません。 - 4二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 01:31:32
タキオンに恋を自覚させられるデジたん概念、いいですよね
この後はご想像にお任せします - 5二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 01:32:35
えっ?!
続きは……ないのか???
すごくすごい期待してたのに - 6二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 01:38:25
- 7二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 01:41:20
- 8二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 01:48:49
乙女デジたんは健康にいい
- 9二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 02:13:41
翌朝
タキオンさんを起こさないよう、小さめに設定した目覚ましの音で目が覚めました。
タキオンさんは……やっぱりまだ起きてはいないようです。
昨日は心配をかけてしまい、すみませんでした。
心の中で謝ってから、朝の身支度を始めました。
>>>
顔を洗って歯をみがいて、制服に着替えて、髪も結んで、耳飾りも忘れずにつけて。
最後に、いつもつけている大きなリボンを結べば……いつも通りのデジたん完成!
……なのですが。
いつもと変わらない服装なのに、どこかに乱れがないかとつい気になってしまいます。
いつものようにトレーナー室に行っていつものようにトレーナーさんと会うだけなのに、どうしてあたしはこんなにも……
やっぱり、これは恋なのでしょうか。
考えても答えが出るわけじゃなくて。
結局結論を出せないまま、あたしはトレーナー室に向かいました。
- 10二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 02:29:49
こんこん。
あたしがドアをノックすると、静かな廊下に軽い音が響きます。
少しして、中から入っていいぞと声がしました。
がちゃりと開けたドアをくぐって、トレーナー室の中に入ります。
そこにいたのは、いつもと変わらない様子で今日のメニューを見ているトレーナーさん。
彼の姿を見た瞬間……昨日のタキオンさんの言葉が蘇ってきました。
『まるで恋する乙女のような顔だったよ、さっきのデジタル君は』
「〜っ!」
心臓がどきどき、ばくばく、あたしの胸の中で暴れて止まりません。
ぎゅっと胸を押さえるあたしを見て、心配そうに近づいてくるトレーナーさん。
あっ、だめ、そんなに近づいたら───
「大丈夫か?」
「───〜〜〜!!!」
さっきから微かに感じていたトレーナーさんの匂いが……もろに……っ!
いつもだったら安心する匂いなのに、今はなんだか変な気分になってしまって……
「は、はひ……大丈夫れふ……」
呂律の回らない言葉でそう言うのが精一杯。
あぁ、どうしましょう。
あたし、おかしくなっちゃいました……。 - 11二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 02:39:15
とりあえずここまでにしておきます
- 12二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 06:33:03
デジたんいいよね…
- 13二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 07:49:48
続きありがとう……
朝から健康になった
身嗜み気にするのかわいいね - 14二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 12:50:19
あの後色々調べたり、人に聞いたりしたのですが……
やっぱり、あたしのこの気持ちは恋で間違いないみたい。
でも……それがわかっても、あたしにはどうすることもできません。
それなのに、想いはどんどん大きくなって。
トレーナーさんは今までと同じように接してくれてるのに、それが急にもどかしくなって。
どうせならもっと、あなたの近くに……いえ、それは贅沢というものですよデジたん。
「そう、あたしなんかがトレーナーさんに釣り合うはずがありません。
大人しく身を引くべきなのはわかってます。
……でも。
やっぱり、諦められませんよぉ……」
「ふーむ……どうしたものかねぇ……」
タキオンさんはいつも相談に乗ってくれます。
すみません、こんなあたしに付き合わせて。
「私に恋愛はわからないが……
デジタル君は十分に魅力的だと思うんだがねぇ」
「ふぇ?……あたしが?
そんなことないですよ、あたしはどこにでもいる普通のウマ娘なんですから」
「まずは自信をつけるところから始めようか、デジタル君……」
- 15二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 12:59:52
毎度小出しで申し訳ない
- 16二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 15:00:05
ええんやで
続けてくれてありがとう - 17二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 15:07:59
はよ続きはよ
- 18二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 22:09:07
よきよき…
- 19二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 01:08:48
それから、タキオンさんに手伝っていただきつつ色々と準備をしまして。
ようやくデ……お出かけの約束を取り付け、勇んで出発したはいいものの。
「結局こうなっちゃいますかぁ……」
夕方の道を歩くあたしとトレーナーさんの手には、今日の戦利品がたっぷり。
そうです、そっちの方には全く成果なし。
……どうやらあたしは、思ったより今の関係が変わるのを恐れているみたいです。
- 20二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 01:21:27
ふと。
トレーナーさんの左手が空いていることに気がつきました。
そして、あたしの右手も。
そっと手を伸ばして……すぐに引っ込めてしまいます。
……怖い。
いきなり手を握ったりなんかしたら、それこそ今までの関係が壊れてしまうかもしれません。
でもそれなら、あたしも未練を振り切れるかも。
トレーナーさんのことは好きですけど……あたしで釣り合うのか、正直自信がありません。
だから彼の幸せのために、あたしはフられるべきなのです。
誰にでもなく、心の中でめちゃくちゃな言い訳をして。
……ぎゅっ、と。
彼の手を握りました。
「……デジタル?」
「と、トレーナーさんの左手が空いていたもので!
寂しいんじゃないかと思いましてね、たはは……ぇ?」
トレーナーさんの手が動いた感触。
見ると、トレーナーさんがあたしと指を絡めて……まさかこれって、恋人繋ぎ───
「───トレーナーさん?」
「デジタル……いや、なんでもない」
触れ合った指から、微かにトレーナーさんの鼓動が伝わってきました。
少し、速いような……?
あたしだけじゃなくて、トレーナーさんもどきどきしてるのかもしれません。
この時間が永遠に続けばいいのに。
叶うはずのない願いを抱きながら、夕焼けの中を二人で歩いていきました。 - 21二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 01:24:58
今はここまで!
デジたんはかわいい、古事記にもそう書いてある - 22二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 01:27:12
トレーナーがロマンスグレーのイケオジなのか若干ヤンキー風味のある兄ちゃんなのかで話が変わってくる
- 23二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 07:58:32
楽しみだねぇ
- 24二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 19:24:44
もうしばらくお待ちください……
- 25二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 02:34:30
その日の夜。
あたしは今日のお出かけの成果をタキオンさんに話していました。
「なるほど、結局時間のほぼ全てを「推し活」に使ってしまい、全く進展のないまま帰ってきたと……
デジタル君、君は───どうしたんだい、ぼーっとして」
「んぇ……?ぁ、いえ……なんでも……」
手、まだトレーナーさんの感触が残ってる。
あったかくて、大きくて……まるで包み込んでくれるみたいな、優しい手……
「ふむ。
もしかして、彼と手でも繋いだのかい?」
「……はい」
「素晴らしい、多少なりとも成果があったようで何よりだよ!
それで、彼はどんな反応だったんだい?」
「えっと、その……指を、からめて……恋人繋ぎ、されちゃいまして……」
「どんな様子だったんだい?」
「ぇと……ちょっと、いえ、だいぶ……恥ずかしそうでした」
- 26二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 02:35:02
あたしがそう言うと、タキオンさんは一瞬驚いたような顔をしてから、すぐに愉快そうな表情になって。
「そうか……なぁんだ、意外にゴールは近いかもしれないね。
デジタル君にその勇気が有れば、だが……デジタル君」
「ひゃいっ!」
「……今の関係を全て壊す覚悟はあるかい?」
今の関係を、全て壊す。
そう言い放ったタキオンさんは、心底楽しそうな笑みを浮かべていました。 - 27二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 02:35:34
とりあえずここまで
- 28二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 08:05:38
諸事情によりしばらく書けないので早めに保守しておきます……
- 29二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 18:29:19
タキオンが相談に乗ってるのほんと好き
保守協力するよ〜 - 30二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 21:28:18
- 31二次元好きの匿名さん23/08/08(火) 21:30:20
- 32二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 02:11:37
たぶん次で最後です
ただ私の気分次第では伸びるかもしれません - 33二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 07:39:06
がんばれ保守
- 34二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 19:05:54
支援支援
- 35二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 19:09:07
ほしゅ
- 36二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 23:17:02
週末、日の沈む頃。
あたしは慣れない浴衣を着て、道の隅でトレーナーさんを待っていました。
今日は近くの神社でお祭りがあるそうで……最後には、大きな花火が上がるんだとか。
トレーナーさんをそこに誘って、最後の花火の時に……想いをぶつける。
タキオンさん曰く、
『その祭りの間に結ばれたカップルは幸せに過ごせると言う迷し、いや言い伝えがあるそうでね。
祭りで盛り上がった雰囲気の中なら、成功率も多少は上がるだろう。
まぁ、元々100%に近いとは思うがね。
……なんだい、私にだって恋愛にムードが大事なことくらいわかるさ。
さて、あとはデジタル君の自由だ……私も君の恋は応援している、結果を楽しみにしているよ』
だそうです。
いつもあたしの相談を真剣に聞いて、考えてくれて……タキオンさん、ありがとうございました。
相談するのもこれで最後にしたい……のですが。
うぅ……いつもだったら道行くウマ娘ちゃんの尊みに倒れている頃ですが、今はトレーナーさんのことしか考えられません……
来て、くれるでしょうか……?
- 37二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 23:27:03
「ぁっ、いた……おーい、デジタル!」
「トレーナーさん!」
良かった、来てくれました。
疑っていたわけじゃないですけど、やっぱり本当に来てくれたんだと思えて嬉しいです。
「こんばんは、かな。待った?」
「いえっ、今来たところデスっ!」
緊張して上手く話せません……いえ、頑張るのですあたし!
「え、ぇと……じゃあ、行きましょうか?」
「そうするか」
はぐれないように、二人でしっかり手を繋いで。
赤い顔を隠しながら、人混みの中へと歩き出しました。 - 38二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 00:34:14
かわちい
かわちいですねぇ! - 39二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 00:46:58
それから、トレーナーさんと色々なことをしました。
屋台の焼きそばやたこ焼きを一緒に食べたり、射的にヨーヨー釣り、金魚すくいなどなど……
もちろん、今まで行ったどんなお祭りよりも楽しかったのは言うまでもありません。
しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。
気づけばお祭りは終了間近。
そろそろ花火が始まってしまいます。
「あー、えっとですねトレーナーさん。
その……花火がよく見える場所があるらしいので、ぇと……」
「わかった、教えてくれるか?」
「は、はいっ!」
トレーナーさんと共に……いざ、決戦の地へ。 - 40二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 01:42:07
そうして着いたのは、少し高くなった丘の上。
神社から少し離れているせいか、あたしとトレーナーさんの他に人はいません。
道中、浴衣の感想を聞いてみたらベタ褒めされてしまったせいで顔が熱いです。
時間を見ると……花火が始まるまで、あと少しだけ余裕があります。
深呼吸を一つして……準備は整いました。
あたしの想い、届くでしょうか……。
「トレーナーさん、あなたの推しは……誰ですか?」
「アグネスデジタル」
「じゃ、じゃあ、そのっ……
あたしを……トレーナーさんの、人生の推しにしてくれませんか?」
「……どういうこと?」
「あたしは、トレーナーさんのことがっ……す、すっ……」
好きですと、ただそう言えばいいだけなのに。
そのたった一言が、上手く口に出せません。
でも、せっかくここまで来たんですから。
言わないままじゃ、終われません……!
「すき、なんです。
だめだってわかってるのに、あたしじゃ釣り合わないってわかってるのに……
あたしはっ……あなたが、すきなんですよぉ……」 - 41二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 02:23:52
下を向いて、ぽろぽろと涙を溢しながらの告白。
それでも、あたしの想いを伝えることはできたはずです。
あぁ、涙のせいでトレーナーさんの顔がよく見えません。
「……デジタル」
「はい」
「君はまだ学生で、俺はそのトレーナーだ。
それはわかるよな?」
「もちろんですとも……でも、あたしはっ……」
「じゃあ……君が卒業しても、気持ちが変わっていなかったら。
その時にまた言ってくれ。
俺もトレーナーとしてじゃなくて、一人の男としての答えを返すよ」
「……はい」
どうやら、フラれたわけではないようです。
よかった……。
「今は、これで我慢してくれ」
「うぇ、ひゃわっ!?」 - 42二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 02:24:03
いつのまにか、花火が始まっていたようです。
空に大輪の花が咲く瞬間、ぎゅっと抱き寄せられて……
おでこに、キスされちゃいました。
「この先は、デジタルが卒業した後で……ね」
「ひゃ、ひゃい……」
そのあとは特に何を話すでもなく、二人で花火を見て……
どちらからともなく手を繋いで、トレセン学園に帰りました。 - 43二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 02:49:05
とりあえずこれで終わりです
最後ちょっと物足りない感じがするのでもしかすると付け足すかもしれません - 44二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 04:48:52
まだ終わりじゃないぞい!もうちっとだけ続くんじゃ 的な?
- 45二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 05:21:17
なんて尊い文章なんだ…
ごめん俺デジタル推しになっちゃう - 46二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 16:14:20
- 47二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 21:07:21
少女漫画チックな恋愛❤️
甘酸っぱい感じが素晴らしい - 48二次元好きの匿名さん23/08/10(木) 22:38:31
とてもよかった……
待っててよかった…… - 49二次元好きの匿名さん23/08/11(金) 09:36:51
あげ
- 50二次元好きの匿名さん23/08/11(金) 21:35:29
心がデジデジしてきた