オーベムについて怪文書が降りてきたので

1二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 22:49:43

滅相もない私にはご都合催眠ポケなど無理でございます｜あにまん掲示板このように我が一族は催眠術を習得できず…https://wiki.xn--rckteqa2e.com/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%A0bbs.animanch.com

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こちらのスレのスレタイ画が頭を抱えているように見え、そして記憶操作のトピックだった事で頭に浮かんだ

「一目惚れしたトレーナーの記憶を弄って幼い頃からのパートナーであったかの様に作り変えるんだけどそうやって形成された人格はもはや貴方ではなくて自分がしでかした罪の重さに気づき、かつての相棒に向けていた笑顔を自らに向けられてぐちゃぐちゃになるオーベム概念」です…

>>32

21(17)23/08/06(日) 22:52:03

─ワタシはあの、あの瞬間に気づくべきだったのだ。貴方がワタシの縄張りで一夜を越そうとしたあの日、真の相棒たる彼らと微笑みを交わしていた満月のあの刹那に。

……
「ベムちゃん〜…ベムちゃん?」
……

枝を寄せて作った焚き火を、貴方は六匹の寄せ集めと囲っていた。
いずれも此処じゃ見ない顔ぶれによく鍛えられた身体、貴方がニンゲン世界でいう「トレーナー」である事は簡単に分かった。…ワタシを捕えようという連中は大概がこの性質を持っている。覗いた記憶によれば、「宇宙人とも呼ばれる伝説のポケモン」目当ての様だが他人の空似だ。

だから貴方のことも最初は遠巻きに眺めていたのだ。不意打ちで襲われたらたまったモノじゃあないと…

……
「ベムちゃん〜？…何か考え事しとるんかな…？」
……

31(17)23/08/06(日) 22:53:19

ところが、貴方はこれまでの異邦人と振る舞いが違った。あれ等は大抵視線をぐるぐる回し、忙しなく辺りを睨み尽くす。しかし貴方は、従えた獣たちとばかり目を合わせ、まるで一つの群れ、いや、それ以上に親密な結びつきを以て、「宇宙人」などまるで興味のない様子であった。

…想定外の行動パターンは混乱をもたらす。ワタシは不審を膨らませながらも冷静に、極めて冷静に貴方達へ距離を詰めた。

思えば、そのまま離れてしまうべきだったのかもしれない。

……
「おーい…聞こえとる〜…？アンタの好きなスペシャル焼き飯やで〜？」
……

41(17)23/08/06(日) 22:54:07

焚き火でオレンジに染まったその顔を見て、ワタシはその場から動けなくなった。

光を湛えた切れ長の双眸、線は細いがどこか幼さの残る顔立ち。華奢な手足は今にも折れてしまいそうだ。貴方はこれまで見たニンゲンで、いや生き物で何よりも儚かった。

そして、そんな割れ物の様な身体にそぐわない出力で精一杯、獣たちの為に食材を拵え、加工を施している。時折彼らと目を合わせては何か意思疎通をして、笑っている。

…まるで花の様に、笑っていたのだ。

51(17)23/08/06(日) 22:55:04

『「う〜ん…聞こえてへんのかなぁ…」』

気がつけば貴方は、ワタシの前で目の高さが合う様にしていた。…迂闊だった、結局はコイツもワタシが目当てだった訳か！無理に憤りすぐさま臨戦態勢に入る。…入りたかったのだが。

『あっ気づいた！…その目ぇは多分ウチのスペシャル焼き飯に釣られたな〜？よぉし、ペルくん！コイツの分も一緒に作るで！』

…いつの間にか彼らの輪の中にいた。

61(17)23/08/06(日) 22:56:39

トレーナーたる貴方は、手持ちである彼らと同じ様にワタシに食事を──スペシャルヤキメシと呼ぶそれを──振舞った。油と卵と、独特な香りが蒸気と共にむせかえる。初めて食べた味は、あまりに普段の食物と違って拒否反応を起こしかけたが、皿一杯に盛り付けたその得意げな顔を見て…そんな態度は出せなかった。

……
「この調子やと冷めてまうなぁ…もっかい火かけるかぁ…」
……

71(17)23/08/06(日) 22:57:27

貴方と六匹はそのままワタシを焚き火の輪の中に加えた。快活な貴方に従う彼らも、それに引き合う様に明るく、気のいい者達だった。

燃え盛る火を横目に、彼らと貴方はワタシにたくさんの思い出話を聴かせてきた。

見たこともない絶景、不思議な味の果実、流れ星と共に飛び立っていった不思議な生き物…そして、出会いと成長の記録。

81(17)23/08/06(日) 22:58:28

此処ではない遠い場所で、一人と一匹から冒険を始めたこと。

強いトレーナーになる為に戦いを繰り返し、その結果喧嘩別れしそうになったこと。

決壊寸前の関係性の中で洪水に見舞われ、どことも分からぬ森を協力して生き延びたこと。

サバイバルの中どうにか作った、カバンに残った携帯食を火にかけただけの焼き飯が思い出の味になったこと。

…冒険の最中に助けた身寄りのなかった鳥に死んでしまった親友から託された竜の幼体、食事に釣られて仲間になった食いしん坊、単なる事故で捕まったおっちょこちょいとそいつを追いかけてきた友達想い…

皆、どれも大切な思い出なのだろう。穏やかで、賑やかで、暖かな語り口で紡がれる冒険譚は聴いていてとても心地の良い物だった。

……
「…ベムちゃんはいっつも考え始めたら聞かんなぁ…先食べとくよ〜？」
……

…だから感じてしまったのだ、貴方達と冒険がしたい。ワタシもそこに加えて欲しいと。

91(17)23/08/06(日) 22:59:27

ワタシは手持ちの皆へのコミュニケーションを通して、仲間に加えて欲しい旨を伝えた。彼等は少し考えて、それから口々に主人たる貴方を色々説得していた様だった。

暫くは静かに聴いていた貴方は、そこからかなり長く考えて…寂しげに笑った。

『…ごめんな、うちで世話できるのはこの子らで手一杯なんや…冒険したいなら信頼できる人がおるからそこで世話になり！大丈夫、ちゃんと気のいい兄ちゃんやで、見たところアンタみたいなタイプとも相性良さそうやし…』

10二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 22:59:29

ベムちゃん…

111(17)23/08/06(日) 23:00:07

…違う、違う、違う！違う！違う！！

ワタシは貴方だから行きたいのだ、貴方達だから行きたいのだ！貴方と共にまだ見ぬ景色を見たい、貴方と食事を共にしたい、気のいい仲間達と一緒に駄弁るだけのこの時間をもっと過ごしていたい…貴方のその笑顔をもっと向けて欲しい…

『わっちょっと…！』

ワタシは衝動のやり場が分からぬままに逃げ出してしまったのだ。ぐちゃぐちゃな心が、初めて渦巻いた心理が、燻らない様に。何かを全力で燃やし尽くす様にワタシは遠くへと逃げたのだ。

…そこで終わっていたら、そこで終わっていたらまだ、まだよかったのに。

121(17)23/08/06(日) 23:01:08

夜がいよいよ更けた頃、何故か私はまた、あの焚き火の近くに立っていた。彼らの足跡を辿ったのか、逃げた道を戻ったのかのかはもう覚えていない。とにかく吸い寄せられたかの様に気づいたらそこにいたのだ。彼等は呑気にも火を消して寝袋にくるまっていた。
瞳を閉じて眠る貴方は、表情が薄まった分より繊細な石晶の様で。…一層、ワタシが傍で守ってあげなきゃいけない様な気にさせられた。しかしそれは不可能であって、そして貴方には冒険を共に、思い出を共にした仲間がいるのだから…

思い出を…

ワタシの頭にそれが浮かんでからは早かった。手持ちがボールに──トレーナーという人種が使うアレ──に戻っていることを確認するや否や慎重に、貴方を壊さない様に両方のこめかみに…指を当てた。

131(17)23/08/06(日) 23:02:16

先端を光らせ、記憶の深く、深くへと侵入していく。
貴方が、彼等が話してくれた思い出が逆回しで鮮やかに流れていく…そして。

見知らぬ景色の中を幼い貴方と一匹が駆けていく姿が見えた。

表情はさっきの貴方と何ら変わらない、満開の笑顔だ。隣では少し不貞腐れた顔のパートナー…多分焚き火で隣にいた彼だ。
間違いなくそれは貴方達の冒険の始まり、素晴らしい思い出達の始まりの一点。

その風景に…ワタシを、ワタシを挟んだ。

141(17)23/08/06(日) 23:02:57

その途端。

全部、全部壊れてしまった。

151(17)23/08/06(日) 23:03:58

貴方と最初の相棒たる彼の喧嘩は消えた！

喧嘩別れして災害に巻き込まれ一人と一匹の思い出はボロボロと崩れた！

思い出の焼き飯は腐り落ちていく！

行きずりで助けた鳥なんていない！

友人から貰い受けた物なんて何も無い！

思い出の味なんて無いのだから釣られた生き物は存在しない！

偶然によって生じた事故も、それについて来た二人なんて知りもしない！

ワタシが、ワタシが冒険の始まりにいた、たったそれだけで生じた矛盾によって記憶はとめどなく粉々になっていく。貴方が何者でも無くなっていく。ダメだ、ダメだ、何故ワタシはこんなことを、貴方に触れたら壊れてしまうのはきっと分かっていたはずなのに！

…記憶の深層から己を引き戻す。貴方から表情は消えていた。もう、取り返しはつかない。

161(17)23/08/06(日) 23:04:21

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

171(17)23/08/06(日) 23:04:56

ワタシは、ワタシは初めから貴方の記憶を書き直そうとした。しかし、唯一残った、ワタシが歪めた思い出だけはどうやっても直りはしなかった。まるで、最後に残った大切な思い出を離さないように。だから、ワタシはそれに沿うように貴方の記憶を書き換えた。…仕方なかったのだ。ここに、幼い頃からワタシとパートナーである貴方が出来上がった。

歪になってしまった貴方を、また壊してはいけないとワタシは考えた。だから、不確定な因子を消去しようと

…ワタシは6つのモンスターボールに手をかけた。

181(17)23/08/06(日) 23:05:31

……………「あっベムちゃん気づいた！もう良かったぁ〜！流石に今回は考え事長かったからなぁ〜….ほい、ウチのスペシャル焼き飯や！あっため直したからアツアツやで〜！」

今日も貴方はワタシに、あの日と変わらないような笑顔を向ける。最初からこの冒険は一人と一匹だったかのように。不釣り合いに大きな鍋と、やたら数の多い食器で振る舞われた食事を、ワタシは最大限の笑顔を装って口に含んだ。

貴方がこれからも幸せであるためにワタシは、あの日望んでしまった願いを演じ続ける。

せめて、もはや見た目が同じだけのその笑顔を崩さないように。

191(17)23/08/06(日) 23:06:34

以上です、駄文失礼いたしました…スレ建てについて快諾頂いた上記スレ主様に最大限の感謝を

20二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 23:09:10

救いは！！救いは無いんですか！！！

21二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 23:15:52

ベムちゃんと手持ちちゃん達に救いを…！

22二次元好きの匿名さん23/08/06(日) 23:42:01

イッキ読みしてしまった
なんちゅうもんを読ませてくれたんや…
なんちゅうもんを……

23二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 00:02:29

>>33

24二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 00:16:55

超ポケダンのオーベム想い出した

25二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 00:25:24

これ元の手持ちからの逆襲まで書くよね？じゃなきゃただオーベムの害悪度マシマシSSになるけど

>>26

26二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 00:54:13

>>25

手持ちにも記憶操作してるっぽいからおそらく害獣ENDですねコレは…

271(17)23/08/07(月) 01:13:29

夜分遅くに再度現れますことお許し下さい…
まずはこのような長い駄文を見ていただきありがとうございます、単なる気持ちの悪い幻覚でありますが読み物としての意義を果たせましたらそれ以上の喜びはございません。
さて、終わった文章に出張ってしまうのはあまり良くないのですが、一部補足が必要な箇所がありましたためこちらにて補足いたします。

281(17)23/08/07(月) 01:14:49

ベムちゃんがモンスターボールに手を掛ける部分ですが、此処では特にトレーナーの手持ちたる彼等の命に別状はございません。
ベムちゃん以外の登場人物は主観的には幸せなままです。
そして、最も今報いを望んでいるのはきっとベムちゃん本人でしょう
全てうまく行き、これから先も皆幸せである中、一匹ずっと罪の意識に苦しむ事はきっととても辛いと思います。こんな話にしちゃってごめんねベムちゃん…

291(17)23/08/07(月) 01:15:15

私からの補足は以上になります、この文章は完全な蛇足でございますから無視していただいても構いません。
重ね重ね、読んでいただきありがとうございました。

301(17)23/08/07(月) 01:15:50

(そして、間違えて読んでしまった皆様に
暗い話でごめんなさい…オーベムは個人的に非常に好きなポケモンなので読んで嫌いにはなりませんように…あくまで悪い幻覚です、ちゃんと仲間に迎えてもらったベムちゃんがその夜見た悪夢と解釈いただいても全然OKですのでご容赦を…)

>>31

31二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 01:38:58

>>30

言い訳されてもオーベムの生態を露悪的に使った事実は消えないぞ

>>37

32二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 10:32:54

俺は満足だ…素晴らしい

元スレ>>1と今スレ>>1に惜しみない拍手を送る…