【SS】最強姉妹は一般学生

  • 1二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 13:33:34

     歓談が飛び交う間をくぐり抜けたその先には、ふんっと鼻を鳴らす、紫のかかったポニーテールが特徴的なウマ娘が席に座っている。
    「おい」
    「ごめんごめん、ちょっと遅くなった」
     苦笑しつつ、彼女の机にひとつ、弁当箱を置く。再び鼻息を鳴らす彼女は、どこか「待っていたぞ」と喜んでいるような表情だ。
    「よし、食べるぞ。私は腹が減った」
    「りょーかい。食べよう」
     いただきます、と手を合わせて、弁当箱を互いに開く。
     その際、彼女──ナリタブライアンの表情にキラキラとしたエフェクトが現れそうだったから、恐らく、出来栄えはいいのだろう。

  • 2123/08/07(月) 13:34:29

    「午後も退屈そうだ。私は身体を動かしたいんだが」
    「まあまあ」
     ブライアンは肩を竦めて、ハンバーグの欠片を口に放り込む。
    「数学やら国語やら……耳から耳を通り過ぎていくばかりだ……」
     ふう、と溜め息を吐くブライアンからすれば、まあ楽しいものではないだろう。どっちかというと、身体を動かしたがるタイプだし。実際、体育系ならほとんどできている。
    「だがアンタの弁当には感謝してるぞ」
    「弁当にかい……」
    「これで栄養補給完了だ。またちょっと頑張れる」
    「もうちょっと頑張ってね」
     と。他愛もない会話を交わす日常は、いつだっていいものだ。なんだかんだブライアンと話すのは、嫌いどころかむしろ好きだ。
     空になった弁当箱に対して、互いにごちそうさまと手を合わせて。
    「んじゃ、そろそろ戻るよ」
    「放課後、一緒に帰るぞ」
    「おっす」
     ふたり分の弁当箱を回収して、ブライアンとの場をあとにする。これが僕にとっては日常だ。

  • 3123/08/07(月) 13:35:16

     すべての授業が終わってすぐ、僕は鞄を持ってブライアンの席に向かう。
    「ん」
     ブライアンのほうも雑に荷物を鞄に詰め込んだようで、こちらを待ってくれていた。
    「じゃ、行っちゃう?」
    「姉貴迎えに行く」
    「おっけ。とりあえず玄関前に行こか」

  • 4123/08/07(月) 13:35:58

     教室をあとにして、玄関前に赴くと、サンタクロースのように大き……そびえる白い髪のウマ娘が立っている。
    「ハヤヒデ、今終わった」
    「姉貴、来たぞ」
    「ああ、お疲れさま」
     大き……今にも触りたくなるほどもふもふしている白い髪のウマ娘──ビワハヤヒデは、先に授業が終わっていたみたいで、逆にこちらを待ちわびていたようだ。
    「さて、今日はなにを食べたいか?」
    「カレーだな」
    「カレー」
    「なにが君たちをそこまでカレー好きにしたんだ……」
     やや困惑気味に頭を抱えるが、「わかった」とビワハヤヒデは了承する。
    「答えたのなら、君も食べるだろう?」
    「食べれるなら食べたいよ」
    「了解した。今晩はカレーを作るとしよう」

  • 5123/08/07(月) 13:37:06

     日差しが完全に顔を隠して、周囲に暗闇が満ちる。
     若干冷気を帯びた風を浴びながら、アパートの隣室の前に立つ。
     コンコン、と扉を叩けば、ハヤヒデがドアを開けてこちらを招いてくる。
    「来たか。ブライアンもいる。夕食にしようか」

  • 6123/08/07(月) 13:37:45

    「しかし……私たちも大きくなったものだな」
     カレーを口に含んで、ハヤヒデは感慨深げな言葉を零す。
     それに対して「頭もね」と返そうとしたが、以前やったらこってり絞られたため、やめておく。
    「そうだね。えーと確か、2歳ぐらいからだっけ。僕らが一緒なの」
    「そのくらいだな。今なお一緒なのだから、よほど深い縁だったのかもな」
    「僕的には縁の神さまに感謝したいね。ぶーちゃんはどう?」
    「ぶーちゃんと呼ぶなぶーちゃんと。まあな、この道を選んでよかった、と私は思ってる」
    「はは、まあこの三人だからね」

  • 7123/08/07(月) 13:38:27

     食事を経て、最後の皿を拭き終えて。
     時計の短針が7時を示し、周辺もすっかり真っ暗闇。そろそろ自室に戻らねばならない。
    「ハヤヒデ、ブライアン。僕、そろそろ帰るよ」
     そう声をかけると。ブライアンは僕の服を引っ張って。
    「まあ待て、今日は泊まっていけ」
    「真顔でよく言えるね、思春期どこ?」
    「アンタに慣れすぎたのが悪い」
    「ごもっともすぎてなにも返せない」
    「姉貴、いいだろ?」
    「というわけだ、君は今日は泊まっていくといい」

  • 8123/08/07(月) 13:39:05

     こうして姉妹の部屋に泊まるのだが。そこまでならまだいい。
    「なあブライアン」
    「……なんだ?」
    「……僕って、抱き枕だっけ?」
    「そうだぞ」
     ブライアンから抱きしめられる形で寝るのは、いろんな意味であまりにもいけない気がする。
     ビワハヤヒデのでっか……そびえ立つような髪に抱きついて寝てほしいが、こうなると引き離すのも難しい。人間だからウマ娘には勝てない。
     もうこうなると、仕方ないと諦める他ない。

    「…………アンタのことは、離さないからな」
     ぎゅっと深く抱擁されて、ちょっと苦しかったのは内緒だ。

  • 9123/08/07(月) 13:40:17

    以上となります
    ナリタブライアン、ビワハヤヒデのエミュ練習がてら、「もしもビワハヤヒデとナリタブライアンがトレセン学園生ではなかった」的なSSを書かせていただきました

  • 10二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 14:52:37

    世界線が変わってもこの姉妹は変わらないという安心感がありますね
    カレーが食べたくなってきました…

  • 11二次元好きの匿名さん23/08/07(月) 17:38:15

    トレセンを目指さなくても何かしらの形で走ってそう

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