トレーナーがジョーダンに度肝抜かれるだけの話

1二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 20:41:01

「いやー夏合宿か、こんな暑い中によくやるよ本当に」
「海があるから気分的には涼しいかもしれないな」
「担当の水着姿に見惚れんなよ？」
「バカ言うな、誰が担当に見惚れるんだ？」
同僚の茶化しを本気にしてしまったが、それを気にも留めず受け流してくる。
「ははっ、冗談だ流石に！まったく、お前らしいよ」
冗談ではない。教師ではないが指導者と教え子の関係である以上、邪な視線を送るなど言語道断というものだ。そもそもジョーダンの水着姿などトレーニングで何度も見ているから何も思わない。
だから夏合宿だって何も───
　
　
　

2二次元好きの匿名さん23/08/09(水) 20:43:52

「……ぁ」
「どうよこの水着？シチーとかにも手伝ってもらったから大分自信あんだけど！」
「え、あ…」
「アンタこういうの興味あるか分かんないけど、この日のために結構キメてきたつもりでさ、どうよ、キマってるっしょ？」
良い意味で絶句したのは、何時ぶりだろうか。
『所詮着飾っても子供』
こんな認識は甘かったなんてものではなかった。そもそも指定水着としっかりした水着じゃ話が違う上に、よくよく考えればジョーダンはギャルだ、可愛さのための努力を日々怠らず、ファッションやお洒落を全力で楽しみ極めんとしている女子。
そんな子が気合入れて水着などをチョイスするということは、天女や女神の降臨を意味するにふさわしかった。
己の認識の甘さを思い知る。
「あ、いや…可愛、いや…き綺麗だ」
「アッハッハ！アンタめちゃくちゃテンパってるじゃん！」
いや、ジョーダンを低く見てたつもりではなかったけれど、あまりにも想定外過ぎた。
ジョーダンからすれば女慣れしてない奴のウブな反応に見えたんだろうけど、ジョーダンだからこんな反応をしてしまった訳で、誰にでもこうなるわけじゃない。
「…君だから、ちょっと、ね？」
「……ソウデスカ。」
なんだかお互い恥ずかしくなってしまって、会話が続かない。
とりあえず何か話題を探そうと、必死に頭を働かせる。誰だ邪な視線とかないとか何とも思わないとか言っていた奴は。
そんなことをやっているうちに、ジョーダンがこの沈黙を破った。
「えーっと、その、確かにアンタが見とれるつもりで考えてきたけどさ、流石に見とれすぎっしょ、アタシのこと好きすぎじゃね？」
「……そうなのかもしれない」
「っ…アンタさぁ。…まぁ良いや！アンタに私のこと、目に焼き付けてやれたんだし！じゃ！！」
ジョーダンはそう言って踵を返し、砂浜へと走り出した。後ろ姿だけでも分かるくらい耳まで真っ赤にして。
「…元から焼き付いてるさ」
美人揃いと言われるウマ娘だが、俺の目にはジョーダンが走りも、綺麗さもずっと輝いて見える。変な意味など全くなく、ただただそう思う。
多分これからも、その先もずっと、そう見えるのは変わらないんだろう、未来予知者ではないがこれだけは確信できる。
そんな子との夏合宿が、今から始まる。