【SS】やはり貴女だったんですね、サンデーサイレンス

  • 1二次元好きの匿名さん21/12/16(木) 16:58:35

     美浦寮の一室。ウマ娘以外は立入禁止の寮の中で、駿川たづなは静かに待っていた。帽子を被り直し、その眼は暗く淀んでいる。

     ぎぃ、と軋む音を立てて扉が開く。そこに入ってきたのは漆黒の長い髪に金色の瞳。マンハッタンカフェ──ではなかった。

    「やはり、貴女だったんですね。サンデーサイレンス」
    「たづなちゃーん。俺様のこと好き過ぎて待ってたんか? いやー、モテるウマ娘は辛いねえ」

     マンハッタンカフェならけしてしないであろう粗野な笑みを浮かべる黒いウマ娘──サンデーサイレンスはドアを閉めた。これで、この場の話が他に漏れることはない。

    「でも理事長秘書が無断で寮に入ってるのは不味いんじゃないの? ヒシアマちゃんにも連絡してないでしょ」
    「ええ、彼女に知らせるべき話でもありませんから」

     旧知の仲を匂わせながら、安穏とした雰囲気ではない。人を射殺すような視線にサンデーサイレンスは肩をすくめる。

    「で、何の用さ」
    「何故、ここに居るのですか。貴女は、死んだ筈でしょう」

     死んだ、その言葉を聞いてサンデーサイレンスはさらににやけた笑みを強くする。

    「死んだ? だったら今話してる俺様はなんなんだ?」
    「それが分からないから、こうやって待ち構えていたんです」

     マンハッタンカフェが入学してから囁かれるようになった、美浦寮に現れるもう一人のカフェ。

    「あなたのことを覚えているのは、古株のトレーナーさんを除けば私とマルゼンさんくらいです」
    「あれー、もうそんなに経ったのか。この歳になると分かんなくて困っちまうなあ」

     懐かしむようにサンデーサイレンスは目を伏せる。

    「いやー、俺様もね。死んでまでうろうろするつもりは無かったよ」

  • 2二次元好きの匿名さん21/12/16(木) 16:59:43

    「俺様やりたいことはだいたいやり切ったし。死んじゃったらそれまでで良いと思ったんだよ。でもなんかこうやって幽霊になっちゃったわけ」

     オーバーな身振り手振りでサンデーサイレンスは語る。

    「そんで、俺様のそっくりさんがそこに居た」
    「……マンハッタンカフェさんですね」
    「すっごいよな。見た目は完全に俺様なのに、中身が違うとあんなに雰囲気変わるんだもんな」

     後ろ姿なら、見分けがつかないかもしれない。だが、その表情を見たら、彼女達を見間違える人は居ないだろう。それ程までに、別人だ。

    「んで、そのそっくりさんは色々取り憑かれて呪われてると来たもんだ」
    「貴女に?」
    「たづなちゃんさっきから当たりガンガンに強くない? 一緒に走った仲じゃんか」

     俺様じゃないよ、と否定する。

    「もーっと根本的なもんさ。俺様にはそれを説明することはできないけど。むしろ俺様はカフェちゃんを助けてやってた方なんだぜ?」
    「そうですか。それはありがとうございます」
    「あ、そこは普通に信じるんだ」
    「貴女は信用ならない冗談ばかり言いますが、嘘はつかない方ですから」
    「やっぱたづなちゃん俺様のこと好きっしょ」
    「いえまったく」
    「つれないなあ」

     やれやれと首を振った。

  • 3二次元好きの匿名さん21/12/16(木) 17:00:48

    サンデーが走ってた年ってオグリと近かったよな

  • 4二次元好きの匿名さん21/12/16(木) 17:01:18

    「それで、カフェさんに憑いてトレセン学園に戻ってきたことまでは分かりましたが。何故こんな七不思議みたいな真似を?」
    「え、面白いから」

     たづなが拳を握り始めたのを見て、サンデーサイレンスは慌てて言葉を足す。

    「ちょちょちょい! 暴力反対、ってか幽霊殴ろうとしないで!?」
    「ドアを開けられるなら殴られることもできますよね?」
    「そうかもしんないけどストップストップ!」

     マジだ、目が笑っていない。たづなの暴力を前にサンデーサイレンスは降参とばかりに両手を上げた。

    「ってもなあ。カフェちゃんもぴったりのトレーナー見つけて呪いに負けないくらい育って。俺様の庇護もあんまり必要なくなった。それなのに俺様まだ成仏できないんだもの。暇くらい持て余すさ」

     何故消滅できないのか。その理由はサンデーサイレンス自身にも分かっていないようだった。殴ったところでどうにもならないとたづなも拳を下ろす。ふう、と安堵の息が漏れた。

    「で、用事はほんとにそれだけ?」
    「ええ、貴女が悪さをしているようならお清めしてもらうつもりでしたが」
    「俺様ほんとに信用ないのね。よよよ」
    「トレセン学園に居た頃、あなたがどれだけ悪戯していたか分かってます?」

     下手な口笛で誤魔化すサンデーサイレンス。

    「それじゃあ、私も帰りますから。悪ふざけも程々にしてくださいね」
    「あ、そうだ。帰る前に一つだけ聞いていい?」

     なんでしょう、とたづなの足が止まる。

    「マルゼン、なんでまだ走ってんの?」
    「……私にもわかりません」
    Fin

  • 5二次元好きの匿名さん21/12/16(木) 17:05:03

    ???「禁則事項です」

  • 6二次元好きの匿名さん21/12/16(木) 17:08:19

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  • 7二次元好きの匿名さん21/12/16(木) 17:15:37

    >>4

    さんをつけろよデコスケ野郎

    激マブは干支が一回りも上なんだぞ

  • 8二次元好きの匿名さん21/12/16(木) 17:27:27

    >>7

    なんでまだ走ってるんですか?(戦慄)

  • 9二次元好きの匿名さん21/12/16(木) 17:34:58

    マルおね妖怪の類じゃん

  • 10二次元好きの匿名さん21/12/16(木) 18:57:28

    10age

オススメ

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