【SS】SOS団の卒業式

  • 1二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 14:49:57

    春、といえば桜舞い散る卒業シーズンである。
    昨年には我らがアイドル大天使朝比奈さんが卒業し、悲しみを乗り越えていよいよ俺たちSOS団全団員が卒業することとなったのであった。

    ハルヒがSOS団が名残惜しすぎて卒業式当日を迎えることができるかは不安ではあったが杞憂だったようで、練習を繰り返し感動もクソもなくなってしまった卒業式を無事に終え、無事卒業と相成ったわけである。
    なんだかんだ腐れ縁だった谷口や国木田との駄弁りや記念撮影を終えて俺が向かっていたのは、SOS団の部室だった。

  • 2二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 14:50:31

    部室に入ると既に全員勢揃いしていたようで、団長様から「遅い!罰金!!」とのお叱りを受けた。
    やれやれ、こいつは最後まで変わらんな。

    朝比奈さんがいなくなったため、自分でお茶を汲み空いているパイプ椅子に座るといつものニヤケ面が「どうですか?一局」といつものように誘ってきたので乗ってやることにした。

    ハルヒはネットサーフィン、長門は本を読み、最後の団活はいつも通りに時が過ぎていく。

    そして下校時間が近づいてきたところ、長門が読んでいた本をパタン、と閉じてSOS団最後の団活は終わりを告げた。

    「今から!SOS団の卒業式を行います!!」

    各々帰る準備をしていた時にハルヒがそう言い放った。

  • 3二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 14:51:52

    「副団長、古泉一樹」

    「はい。」

    「あなたはSOS団の活動に置いて、企画立案などを積極的に行い、優秀な成績を納めましたことをここに表します。」

    ハルヒの奴はいつ準備したのかわからん卒業証書を古泉に渡し、そう告げた。
    それじゃあ卒業というより優等賞的な感じじゃないか?とは思ったが、半泣きのハルヒと古泉に免じて黙っておいてやろう。
    あいつのニヤケ面が崩れるのは貴重だしな。

    「んふ、ありがとうございます。団長殿。」

    「僕は、このSOS団に入ってとても充実した日々を送らせていただきました。それはひとえに涼宮さん、あなたがSOS団を作って僕を誘ってくれたからです。本当にありがとうございました。」

    「SOS団への入団、という決断は僕の人生に置いて、最良の決断だったでしょう。」

    「っ…ありがとうね!古泉くん!あなたがいなかったらこれ程までに充実した団活を行うことができなかったかもしんない!死ぬまでSOS団の名誉副団長として胸張って生きていきなさい!!」

    「ありがたきお言葉です。団長殿。」

  • 4二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 14:53:07

    「次!有希来なさい!」

    「…」

    「あなたはみくるちゃんと共にSOS団のマスコットとして一翼を担ってくれたわ!大学行っても友達ができるか不安だけど…あなたの愛らしさなら心配するだけ無駄ね!今までありがとう!」

    「…ありがとう」

    お堅い言葉遣いは飽きたのか知らんがやけにフランクな卒業証書授与式だな。
    長門には感謝してもしきれない。こいつがいなけりゃ俺は一年のうちに朝倉涼子に刺されて死んでいたかもしれないし、みくるビームで灰になっていたかもしれない。
    この三年間で随分感情豊かになったもんだ。長門検定一級の俺が言うんだから間違いない。

  • 5二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 14:55:00

    「次!早く来なさいキョン!!」

    「へいへい」

    「SOS団雑用その1…まあアンタには何も言うことないわね。」

    「なんだそりゃ。もっと雑用その1なりの感謝の言葉ってもんはないのか。」

    「アンタはどうせ大学も一緒だし、これからもコキ使ってあげるわ!死ぬまで団長に仕えられるんだから雑用冥利に尽きるでしょ!!」

    「へへーっ、ありがたく存じます団長様よ。」

  • 6二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 14:56:48

    ああ、この顔だ。周りを引っ張り回し、メチャクチャにしても最後にこの笑顔を見ると、やれやれと許してしまう。
    今更取り繕っても仕方ないだろう。俺は

    俺はどうしようもなく、涼宮ハルヒに恋していたのだ。

    「これにて!SOS団卒業式を終わります!!」

    と高らかに宣言し、今日を持ってSOS団は解散となった。

    家に帰り卒業だからって豪華になるわけでもない飯を食い風呂に入り、布団に包まれながら俺はハルヒのことを考えていた。

    最後の最後までハルヒのことを考えてしまうなんて、よっぽど好きなんだろうな。

    俺はそのまま、深い眠りに入っていった。

  • 7二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 14:58:58

    ───
    ──





    卒業したからと言って、何か生活が変わるわけじゃなく、いつも通り妹に起こされて、いつも通りに朝食を食べ、いつもと違う新品の制服に身を包み、新しい学校へと向かう。

    登校初日にも関わらず、早くもこの学校を選んだことを後悔し始めていた。

    「なんだってこんな坂の上に建てるんだ…創設者の気持ちが知りたいもんだな…」

    問1.創設者の気持ちを答えよ。
    おそらく正答率は0%だろう。きっとそうだ。

    振り分けられた教室に入り、おそらく行うであろう自己紹介をどうしようかと考える。
    まあ無難なものでいいだろう。普通の奴には普通なりの人生ってもんがあるのだ。

  • 8二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 15:01:44

    そして入学式をなんてことなく終え教室に戻ると、それ見たことか。自己紹介コーナーの始まりである。

    クラスの端っこから順番に自己紹介をしていき、ついに俺の番…と言っても無難・オブ・ザ・無難な自己紹介を終えホッとしていると──

    「東中出身、涼宮ハルヒ」

    「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたらあたしのところまで来なさい。以上。」

    ……これ、笑うとこ?

    思った以上にインパクトのある初日ではあったが、それからの日々は何事もなく過ぎていった。

    後ろの席の涼宮が曜日ごとに髪型を変えていたので尋ねてみた。なんか怒られた。なんだってんだ。
    噂によると全ての部活動にも体験入部しているらしい。なんか面白い部活はなかったのか聞いてみると、ないと言われた。
    毎日つまんない顔して面白いことを探してるんだったら自分で部も作ればいいんじゃないか?これは鬼才の閃きだな。俺ってばエンターテイナー

  • 9二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 15:06:07

    いつだったかの昼休み、中学から仲の良かった国木田と、席が近かった谷口と昼飯を食っていたのだが涼宮と中学が一緒だったという谷口から聞いた話によるとそりゃあもう中学の頃から破天荒一直線だったらしい。まあ人間そういう時期あるよな…俺だけでも優しく接してやろう。という気持ちでたまに喋りかけていたのだが…
    ──


    今の俺の状況はその涼宮に拉致されているわけである。どうしてこうなった。

    まあ噂は真実らしいので気をつけながら接してはいたのだが、なんだかんだ席が前後ということもあり、火事現場の野次馬精神でちょくちょく涼宮という天災に首を突っ込んでしまったのである。

    涼宮は今まで見たことないような笑顔で「そうよ!面白い部活がなければ自分で作ればいいんだわ!」とかなんとか言って、言い出しっぺである俺も付き合わされることになったのであった。

    そんなん言ったっけなあ…言ったか。何言ってんだ過去の俺は。俺ってばミスターデンジャー

    「部室も既に確保してるの。ここよ。」

    部室って…俺が連れて行かれた先は文芸部だった。

  • 10二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 15:11:07

    涼宮が乱暴に文芸部の部室へと侵入すると、おそらく文芸部員と思われる人が「ひうっ」と小さく驚く声が聞こえた。

    彼女は俺たちが入ってきたことを認識すると、さっきまでカタカタ打っていたであろうパソコンの電源を落とした。

    「ここ、使うから。」

    「使うつったって、彼女は文芸部員だろ?」

    「いいのよ!許可は貰ったわ!今文芸部って彼女しかいないらしいの!だから彼女の許可さえあれば私たちはここを拠点に活動できるってわけ。」

    「本当にいいのか?えーっと…」

    「長門…」

    「長門…有希…」

    長門さんは人見知りなのだろう。赤くなった顔を伏せて小さな声で自己紹介をしてくれた。

  • 11二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 15:15:13

    「えっと…話は聞いている…涼宮さんがどういう活動をしても構わないけど…表向きには文芸部として所属してもらうことになる…」

    「まあ隠れてこそこそするのは趣味じゃないけどね、表の顔は文芸部、果たしてその実態は!?ってのもカッコいいじゃない!」

    「あー…すまん、長門さん。これからも迷惑をかけちまうかもしれん。」

    「いい。」

    「あなたなら、いい。」

    「……実は、私とあなたは初対面じゃない。」

    「えっ?」

    「中学の頃、図書館で図書カードが作れず困っていた私に手を差し伸べてくれた…」

    そういうこともあったような、なかったような…

    「あなたにまた会うことが出来て嬉しい…とても…」

    「涼宮さんだけじゃなく、あなたも活動するんだよね…?」

    「良かったら…」

    そう言って渡された入部届に、俺は……

  • 12二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 15:19:07

    何故?何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ、なぜ?

    18397回目、涼宮ハルヒに好意を抱く。

    何故あなたは涼宮ハルヒを選ぶの?
    何故あなたは私を選ばないの?

    あなたは私に色々なことを教えてくれた。
    あなたは私を頼ってくれた。
    あなたは私を救ってくれた。

    それなのに何故?

    眼鏡を修復してみた。朝倉涼子を事前に処理した。髪型を変えてみた。“あの世界”を作らなかった。同じクラスになった。隣の席になった。
    何度も試した。全てを試した。
    だけどあなたは私を選ばなかった。
    何度も繰り返しすぎて異時間同位体の朝比奈みくるはこちらの時間線に干渉できなくなった。
    どうでもいい。

    あなたが私を選ぶまで、私は何度でも繰り返すだけ。

    …18398回目

    この世界の私は“あの世界の私”
    少なくとも彼にはそう印象付けることができた。
    ただ、実際には“あの世界の私”を演じている私。
    今のあなたには“あの時”とは違い記憶がない。
    つまりこの状況は“あの世界の私”と“あの世界のあなた”
    涼宮ハルヒというノイズはいるが、今回に限っては些細な問題。
    あの時の続きを始める。“私とあなたが結ばれるはずだった世界”の続きを。

  • 13二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 15:20:41

    終わり。長門は俺の嫁

  • 14二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 15:23:30

    ホラーだった

  • 15二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 15:24:00

    キョンの一人称の文体ってこんなんだったっけ?

  • 16二次元好きの匿名さん23/08/12(土) 21:37:02

    おつです
    掲示板のハルヒss懐かしいな

オススメ

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