【CP&女体&超閲覧注意】グエル♀がラウダと part6

  • 1二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 11:19:36

    幼い頃から二人っきりのお屋敷で、触り合いっこと称して遊んでるうちに性的なことに無知なまま本能に従って一線を超えてしまい、グエキャンの真っ最中に妊娠が分かる世界線

    さすがに今ではいけないことだと理解しつつも、ストレスがたまったらどちらともなく誘ってしまい行為に耽ってしまっていた

    勿論、セーフティに努めていたしグエルにとっても青天の霹靂


    グエル♀もラウダも、本人に自覚はないものの相手に恋愛感情を抱いていたが、相手への恋心をようやく自覚したとこ


    前スレ

    【CP&女体&超閲覧注意】グエル♀がラウダと part5|あにまん掲示板幼い頃から二人っきりのお屋敷で、触り合いっこと称して遊んでるうちに性的なことに無知なまま本能に従って一線を超えてしまい、グエキャンの真っ最中に妊娠が分かる世界線さすがに今ではいけないことだと理解しつつ…bbs.animanch.com
  • 2二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 11:22:30

    グエキャン中、グエル♀が医務室へいったことから妊娠が発覚、ヴィムがそのことを知ることに
    シャディクに匿ってもらうも、シャディクを巻き込みたくなかったグエル♀は自ら飛び出し、ヴィムの元へ
    ジェターク社の一室で監禁状態であったところ、ラウダと話すことでラウダが好きだとようやく自覚
    学園に戻ったラウダにシャディクのことを警告すべく部屋から飛び出したところ、体調を崩し、病院へ
    その際、スレッタとミオリネがグエル♀の妊娠を知ることになった
    ヴィムにシャディクとの婚約の話をされ、ラウダが跡継ぎに決まったことを知る
    婚約が正式に決まればジェターク家に帰って来るなと告げられ、突き放されたと感じている

    お腹の子の父親であるラウダはそのことにまだ気づいておらず、いなくなったグエル♀を探し回った後、ジェターク社にてようやくグエル♀を発見
    妊娠していることを知り、自分の子ではないかと思っていたが、他ならぬグエル♀によって否定される
    「愛した男との子供」というグエル♀の嘘を信じており、「姉には心から愛している相手がいる」と信じ込んでいる
    グエル♀への思いは家族愛だと信じこんでいたが、スレッタとの対話を経て姉への恋心を自覚
    姉に拒まれたと思い込むが、姉を助けたい一心で腹の子供の父親を探すことを決意
    この婚約の話をどうにかぶち壊したいと考えており、その為にグエル♀の相手を探すべく学園に戻ってきている
    まさか自分が跡継ぎになっているなんて知らない

    ヴィムは、グエル♀の腹の中の子供を、匿っていたシャディクとの子供だと思い込んでいる為、シャディクにグエル♀との結婚を迫っている
    グエル♀をシャディクに嫁がせ、グラスレー社にも力を及ぼしたい模様

    シャディクはグエル♀が監禁されている部屋を訪問
    グエル♀の相手はラウダではないかと疑っていたが、カマをかけた結果グエルの反応からラウダだと確信した
    別フロントでの用事を済ませて学園に帰ったところ、ラウダを追ってきたグエル♀を偶然保護
    ラウダに腹の子の父親が自分じゃないことを告げた
    ミオリネに「あんたはこんな無責任なことをしない」と信頼されている為、小さな棘が胸に刺さっている状態

    グエル♀はお腹の子供とラウダを守る為なら、どんな手段も厭わないと決意は固い様子

  • 3二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 11:26:57

    立て乙!
    ここからでもグエル♀とラウダが幸せになれるようにダイス神に祈るよ

  • 4二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 11:32:13

    いつも楽しみにしてきます

  • 5二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 11:34:48

    新スレとまとめありがとうございます
    しんどいけど乗り越えてほしい…幸せになって…

  • 6二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 11:36:21

    おつです

  • 7二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 11:37:19

    一緒に幸せになーれ!

  • 8二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 11:53:15

    (かなり最後の方だったので一応再掲)

    軽い暴力描写があるためワンクッション

    グエル♀とヴィムぱんっ、と乾いた音が静かな病室に鳴り響いた。

    それと同時に衝撃がくる。一拍遅れて左の頬がじんじんと痛み始めた。思わず手をそこにやるとじんわりと熱を持っている。

    痛い。確かに痛いが、グエルは少しだけほっとした。

    数日前、自分の妊娠が分かった時のそれよりもずっと軽い。…手加減を、してくれている。

    頬に手をあて、手加減をしてくれた礼を言うべきか悩みながら、父の顔を見上げる。ラウダと同じ琥珀色の、冷たくて、煮えたぎる怒りを秘めた目がグエルを見下ろしている。

    重い溜息をつきながら、グエル、と聞き分けのない幼い子供を諭すような声音で言われ、体がびくっとはねた。ベッドの上ではあったが、慌てて頭を下げる。

    「その腹の子に、どれだけの価値があると思っているんだ」

    「…っ、申し訳、ありません……」

    「その子を危険に晒したんだぞ。事の重大さ、お前には分かっているのか」

    「分かって…います…申し訳ありません…」

    じわじわと絶望が体の奥から染み出してきて、心の黒い影ができる。体が小刻みに揺れて、うまく動かない。情けなくて嫌になる。縋るように毛布を掴むが、体の震えは止まってくれない。

    一瞬、ほんの少しだけ、グエルの体を気遣ってくれてい…
    telegra.ph
  • 9二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 12:07:54

    立て乙です!

  • 10二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 12:25:01

    たておつです!
    ハッピーエンドを迎えてほしいのでダイス神にも何とかお慈悲をいただきたいところ

  • 11二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 12:34:28

    誰よりも家族大好きグエルが、よりにもよってヴィムから強制的に家族から引き離されるなんて…。
    直接の暴力とメンタルへの加虐がひでぇよ泣

  • 12二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 18:43:52

    立て乙です!
    ダイス神によって厳しい展開が続くけどなんとかハピエン目指して頑張って欲しい…

  • 13二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 21:35:07

    体が回復次第、グエル♀が「逃げる」という選択を考える可能性

    dice1d100=12 (12)


    1~40で、こんな事態を招いた自分が全て悪い。どうにかする。逃げるのは許されない、として、「逃げる」を考えない。グエル♀の行動ダイスで、「逃げる」の選択肢は追加されない。

    41~70で、自分が悪いことは十分に理解しつつも、父に見放されたことと失望されたこと、家族でいられないことがプレッシャーになって、無意識のうちにぼんやりと窓の外を眺めてしまう。ラウダの行動によって、グエル♀の行動ダイスで「逃げる」の選択肢が追加される。

    71~100で、51~75とほぼ同じ、ただしラウダの行動によらず問答無用で、グエル♀の行動ダイスで「逃げる」の選択肢が追加される。

  • 14二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 21:39:21

    相変わらずの高潔傲慢罪姉さんがよ……
    幸せになれよ……

  • 15二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 21:40:13

    これは高潔傲慢罪……いっそのこと逃げてほしい

  • 16二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 21:41:35

    逃がしてやれると言うシャディクの手も取らず、ここにきても逃げることを拒む姉さん…これは高潔で高慢ですわ…

  • 17二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 21:54:19

    ラウダのダイスもなんでその選択肢に行くの!?って意味である意味一貫してるし、姉さんについても一貫してるねここのダイス神

  • 18二次元好きの匿名さん23/08/13(日) 22:13:57

    >>13

    これって安心して良いんだろうか…

    もしかして15話のときみたいに精神崩壊一歩手前までいってる状態だったりしない…?

  • 19二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 00:37:37

    ラウダが自身が跡継ぎ(予定)になっているのを知るのは

    dice1d6=5 (5) 日後


    グエル♀の婚約が正式に取り交わされる日を、ラウダは

    dice1d2=2 (2)

    1.ヴィムから教えてもらえる(dice1d7=5 (5) 日後)

    2.連れて行かれる姉を前に暴れてしまった前科がある為、ヴィムから教えてもらえない

  • 20二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 00:39:17

    なんで一貫してラウダにはひどい目が出るんです…?ダイス神…?

  • 21二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 00:39:24

    どうしてそういう積んでる選択肢引くんですか

  • 22二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 00:39:32

    ここのダイス神は逆境をくぐり抜けるラウダとグエルが好きなようだ…
    くぐり抜けてくれ…

  • 23二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 00:40:51

    逆境に負けずにみんな頑張って……!😭

  • 24二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 00:41:01

    せっかく1週間あったのに…つ、詰んでる……

  • 25二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 00:46:56

    ラウダは居もしない姉さんの相手を探してる場合ではない…

  • 26二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 00:51:34

    >>25

    悪魔の証明ってやつだねえ

    しかもそこに拘ってると猶予がなくなってしまう

  • 27二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 00:53:48

    一度は自分が父親だと確信したんだから数日探してダメならやっぱり僕が父親だ!!ってなってもよくないですかあ?!?!?!

  • 28二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 00:58:20

    姉さんが自分の知らないところで親密に付き合える相手も時間もそうそうないって一番よくわかってるはずだしなあ…
    姉さんが頑ななのもまあ原因なんだが…

  • 29二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 02:22:08

    ダイス神は障害を与えて乗り越えるのが好きなのかバッドエンドが好きなのか分からなくなってきた

  • 30二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 06:07:49

    スレ主VSダイス神でもあるのよ
    私はスレ主を応援しています!!!

  • 31二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 12:55:59

    (少し長くなったのとダイスがないのでまとめました)


    ラウダの話学園に戻り、まずラウダがしたことは、ひたすらグエルの行動を思い出すことだった。

    幸い姉に関しての記憶力には自信がある。何なら自分の行動よりもずっと覚えている。

    凄い形相でジェターク寮の廊下を歩くラウダに誰も近づいてこない。視界の端で、カミルが何か言いたげだった学生の肩を掴んで首を振り、「今はやめとけ…」的なジェスチャーをしているのが見えた気がした。

    それを良いことに、自室に籠り生徒手帳を持ち出す。ここ数ヶ月の予定を洗い出し、自身と姉の行動を思い出す。…けど、どれだけ思い出しても、姉と離れていた時間が短い。すごく短い。

    姉が寮を追い出された後だとしても、明らかに計算が合わない。姉の妊娠について具体的なことは教えられていないが、それでも有り得ないこと位ラウダにも分かる。

    昼間は学園でほとんど一緒。休日だってほぼ一緒に過ごしている。たまに別行動の時があっても、ラウダが聞く前に今日の予定を教えてくれることが多い。

    授業が終わり、決闘委員会があればグエルはそっちへ。決闘の申し込みがあれば決闘へ。決闘の時はオペレーターとして必ず同席していたので、ここでの行動もほぼ一緒。

    決闘が終わった姉に駆け寄り、「お疲れ様」とか一言…
    telegra.ph
  • 32二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 13:02:51

    ラウダ~、早く思い至ってくれ~!
    それで正解なんだよ、君以外に姉さんと一緒にいられた人間なんていないんだよお!

  • 33二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 13:06:43

    すべての背景が自分を指しているのに気づかないんだよ~!

  • 34二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 13:07:28

    もどかしすぎてシュバルゼッテで突撃したくなってきた

  • 35二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 13:17:14

    When you have eliminated the impossible, whatever remains, however improbable, must be the truth.

    ラウダお前やお前

  • 36二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 13:22:18

    ラウダくん頑張ってーーー!

  • 37二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 13:35:12

    おおラウダよ…もどかしすぎて地団駄踏みたくなってくるな

  • 38二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 13:53:03

    ラウダ気付け!気付けーーー!!!!!

  • 39二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 14:07:55

    >>35

    突然のコナンドイルで草

    でもまさにその通り

  • 40二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 21:13:12

    ほしゅ

  • 41二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 21:27:03

    ラウダ!!お前やで!!!ってつい叫びたくなるな
    それはそうと寝起き姉さんの髪を整えるのが大好きなラウダは可愛い

  • 42二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 21:30:44

    お前じゃお前!!って後ろからどついてスッと消えたい

  • 43二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 22:17:59

    このレスは削除されています

  • 44二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 22:19:33

    昨夜は色々考えすぎて頭の中がぐちゃぐちゃに散らかっていた。朝目が覚めてそう思う。

    一度寝たおかげで頭は幾らかすっきりしている。

    昨日の「姉さんはいつ相手と会っていたのか」問題だが、よく考えれば別行動している休日だって、グエルが嘘の報告をラウダにしていればその時間に会うことは十分可能だ。

    (姉さんが僕に嘘を言っていたとは…あまり考えたくないけど…)

    しかしそれ位しか会っていた時間はない。どう考えたってない。

    あの真面目な姉が、決闘委員会を欠席してまで逢瀬していたとは考えにくい。と、なるともう休日しかない。

    休日に会っていたと仮定して、でも結局のところ何も進まなかった。

    いつもひっついているラウダから見て、姉が思いを寄せているような人間はいなかったように思う。…スレッタ・マーキュリーを特別視していることは知っているが、彼女は女性で姉が孕む筈もない。

    姉に近寄り、不埒な目線を送る輩はラウダはこっそりと、時に派手に忠告をしていたので、そう言う輩は早々に姉の前から去っている。

    姉とよく話す生徒(男)を思い浮かべた時、真っ先に思い付くのがカミル。次にシャディク。後はジェターク寮生達に、決闘委員会のロウジくらいのものだ……だめだ。やっぱり分からなくなってきた。考えれば考えるほど沼にはまっていく気がする。

    姉と同じ女性であるフェルシーやペトラに聞くことも考えたが、下手に聞いて何か勘づかれてもまずい。

    というかそもそもどう聞けば良いんだろうか。姉さん、誰が好きかとか言ってた?と所謂姉が恋バナをしていたかどうかを聞けば良いんだろうか…そんなことをラウダが二人に聞いた瞬間、怪しまれる自信しかない。

    それにフェルシーはグエルが体調を崩して療養中であることを「パパ」から聞いたと言っていた。確率は大分低くゼロには近いが、ラウダが恋バナを振ることによってそこから妊娠と結びつけられても困る…とにかく、今は少しの危険だっておかしたくない。

    少しクリアになったと思っていた頭がまたぐるぐる回り始める。

    分からない。本当に分からない。でも確かに居るはずなのだ。姉が愛した人間が、この学園の何処かに。姉から見たら、「可愛い」「優しい」で、姉が必死になって庇おうとしている人間で、絶対にラウダが殴ってやると心に決めている人間が、何処かに………


    ラウダが一人でひたすら悩み続けた日数

    dice1d4=4 (4) 日

  • 45二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 22:20:31

    なぜそこで最大値をひいてしまうのか

  • 46二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 22:31:36

    もはや芸術的ですらある

  • 47二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 22:42:23

    ここまでダイスが試練を与えてくるのって…

  • 48二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 22:47:31

    ラウダへの親愛度

    50以上なら弱っているラウダに話し掛ける

    カミル dice1d100=82 (82)

    フェルシー&ペトラ dice1d100=76 (76)

    ロウジ&セセリア dice1d100=35 (35)


    ラウダからの親愛度

    50以上なら少しでも情報が欲しいラウダが話し掛ける

    (ラウダへの親愛度も50以上の場合、ラウダに話し掛ける方を優先)

    カミル dice1d100=35 (35)

    フェルシー&ペトラ dice1d100=9 (9)

    ロウジ&セセリア dice1d100=73 (73)

  • 49二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 22:54:15

    やはり第三者視点…!第三者視点は大事…!

  • 50二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 22:58:27

    向うから話しかけてくるのとこっちから話しかけるのとキレイに分かれたな

  • 51二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 23:01:35

    フェルペトへの親愛度なんでそんな低いんや…
    ジェタ組のみんな話しかけてくれてありがとう

  • 52二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 23:04:46

    疑心暗鬼になって身内だからこそ信じられなくなってるとか??
    もしくは知られちゃならない情報を持ってるから普段気安い身内を特に警戒してる的な

  • 53二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 23:07:44

    とりあえず話しかけられる側と話しかける側で一通り情報収集はできそうでよかった

  • 54二次元好きの匿名さん23/08/14(月) 23:10:00

    早く幸せになって欲しい気持ちもあるけど、このもどかしさも癖になってきた
    それはそれとして早く気づきなさいラウダ!

  • 55二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 00:29:49

    ……考えすぎて答えが出ないまま数日間が経ってしまった。
    煮詰まりすぎて、最早沼にはまっている状態と言って良い。考えても考えても答えは出ない。
    …本当は、姉の元に行きたかったが、今の力になれないラウダが行ってもきっと意味はない。それどころか大きな負担になる。
    触られるのでさえ怯えている状態だったのだ。今のラウダなんて行かない方が良いに決まっている。
    それなら、相手の男を一秒でも早く見つけて父の元に突き出す方を優先させるべきだ。
    父からは、「しばらくの間グエルは入院させる」という連絡以降特に何もないので、動きはないと思って良い筈だ………たぶん。
    考えすぎて、頭が疲弊しきっている。自分の睡眠なんかよりも、姉の行動やら自分の行動やら少しでも怪しい人間のピックアップなどをする方がずっと大事で、ここ数日まともに眠れていない。
    加えてラウダは学生。一瞬授業をサボることも考えたが、脳内の姉が悲しそうな顔をしてラウダを見てくるのでそれもやめた。
    姉の相手を探しつつ、学業もこなす。勿論寮長の仕事もするし、決闘委員会の役割も果たす。身も心のへとへとだった。
    シャディクは不気味なほど普段通りで、決闘委員会の時もあんなことがあったとは思えぬ態度で接してくる。ラウダが睨み付けてもいつも通りの穏やかな笑みを浮かべ「どうしたんだ?」と言ってくるので、本当に心の内が読めない。
    深くて長い溜息を吐く。
    もうなんか、色々と限界だった。少しでも気分を変えたら違うものが見えてくるかと、寮の前にあるベンチに座ってみたが、特に良い考えは閃かない。
    今日は自身の決闘もなければ、他の決闘もない為決闘委員会もない。久々に自由な放課後であったが、考えても考えてもやっぱり答えは出ない。煮詰まってきて前にも後ろにも進めず、真っ暗闇にいるような状況だった。
    (早く、姉さんを助けたいのに………)
    目を伏せれば、地面と自分の足が目に入る。自分の無力さが嫌になる。こんなだから、姉さんだって僕を頼ってくれなかったんだ…何も出来ない、僕なんて…と思考が下に下に落ちていくのが分かるのが止められない。
    ふと地面に自分以外の影が落ちる。顔を上げると、そこにはカミルがいた。
    「ラウダ、お前大丈夫か?最近やつれているように見えるが…」
    「え、ああ………大丈夫だ」
    「何かあったのか?グエルも療養中だと聞いているし…何かあるなら話位聞いてやれるぞ」

  • 56二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 00:31:40

    そう言いながら隣に腰掛けてくれたので、下がりきっていた心が少しだけ浮上した。柔らかな、頼りがいがある笑みを浮かべてこちらを見てくるカミルにじんと胸の奥が温かくなってくる。
    ……しかし言葉に甘えるわけにもいかない。妊娠のことが外に漏れたら、傷つくのは他の誰でもない、姉自身だ。そう思うと親友であるカミルにだって本当のことを言うわけにはいかない。
    カミルには心の底から感謝しつつ、ラウダは曖昧な笑みを浮かべた。
    「大丈夫だよ、ありがとう。慣れない仕事が最近増えたから、少し疲れただけ。暫くしたら元に戻る」
    「……本当か?」
    「本当だよ」
    突き刺さるカミルの瞳から逃げるように少しだけ目線を逸らす。
    これ以上言っても無駄だと察したのか、それとも素直にラウダの言葉を受け取ってくれたのかは分からないが、そうか、と一言だけ告げてカミルは黙った。せっかく心配してくれた友人に嘘を吐いたことでちくりと心が痛む。
    少しだけ寂しげに笑った後、そういえば、とラウダに話し掛けた。
    「グエルの見舞いにはいっているのか?お前なら行けるんじゃないのか?」
    「いや。今はゆっくり休んで欲しくて、いってない」
    そう言うと、カミルは驚いたような顔をしてラウダを見てくる。
    正気か?といった表情で、ラウダの頭から爪先までまじまじと見てくるので、ちょっと…いやかなり居心地が悪い。
    平時の自分なら通い詰めている自信があるので、カミルの気持ちは正直すごくよく分かるのだが、姉を思えば行けないのだ。
    「まぁ、お前が行けばグエルだって少しは元気になるんじゃないか」
    「………ならないよ」
    自重じみた笑いが零れる。
    脳裏に過ぎるのは、手を伸ばした瞬間体を震わせた姉の姿だ。元気になるどころか、怯えさせることしか出来ない。
    「そうか?グエルからしてみればお前は可愛いらしいからな。お前が顔を見せればグエルだって嬉しいだろう」
    グエルが「ラウダは可愛い」なんて言い出した時には、本気か?信じられない……と思ったけど…というやや失礼な一言を付け加えられて、ラウダは思わず笑ってしまった。
    可愛い弟だと何度かベッドで言われたことはあったが、まさかカミルにまで言っていたとは。
    ちょっとしたからかいや戯れかと思っていたが、もしかして姉は本気なんだろうか…平均よりも遙かに体格の良い僕に「可愛い」と…?
    (姉さんの感性って分からないな……)

  • 57二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 00:33:30

    少しだけ笑ったラウダに安心したのか、カミルはラウダの肩を優しく叩き「何かあったらいつでも言ってくれ。力になる」と言った後、ベンチから立ち上がり寮へと戻っていった。
    その後ろ姿を見送り、本当に良い奴だと心の底から感謝した。ありがとう、とその後ろ姿に一言告げる。
    自分の言動一つでグエルのことを怪しまれるかもしれないと、ピリピリしていた自覚はある。近い人間ほど何か勘づかれそうで、避けていた。…のをしっかりとカミルにはバレていたわけだ。
    息を吐き、全身の力を抜く。力無くベンチに凭れて深呼吸をする。ガチガチに固まっていた思考がちょっとだけほどけた。
    もう限界だ、でもどうにかしないと、と出口が見えない状態で彷徨っていた頭が少しだけ楽になった。今なら何か違う視点から物事を考えられる気がする。
    (それにしても…可愛い、かぁ…)
    さっきのカミルの言葉を思い出して、またちょっとだけ笑みが零れた。姉がそんな冗談を言うとも思えないし、本気で思っているらしい。
    ふふ、と微笑みながら、姉がカミルに向かって「ラウダは可愛い」なんて言っている姿を想像してみる。「可愛い」なんて………
    「………んっ?」
    姉の声を想像して、ふと何かがひっかかった。右手が左の髪に伸び、ぎゅーっと引っ張る。最近グエルから聞かなかっただろうか…可愛い、って言葉…
    「ん、んん………?」
    もや、とした何かが胸の広がる。実体がない、確信にはほど遠い、いや、そもそも何の確信かも分からない何かが、ラウダの胸の中で育っていく。
    首を傾げる。なんだ、これ。何だ………そのもやに少しだけ手を突っ込もうとした瞬間、声を掛けられた。
    「ラウダ先輩!」
    そっちを向くと、フェルシーとペトラが居た。声をかけたのはフェルシーらしく、カミル先輩が今なら大丈夫だって言ってて!と言葉を付け足す。
    「…私達に出来ることあったら何でもしますから!」
    そんなことを真剣な顔で言われて驚いてしまった。フェルシーの隣でペトラが首をこくこく縦に振っている。どうやら、自分は思っていたよりも寮生に心配されていたらしい。

  • 58二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 00:45:05

    カミル先輩さすがやでえ

  • 59二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 00:53:34

    ああん気づいて

  • 60二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 01:12:00

    この調子でみんなの話を聞いて気づいてくれるといいのだが…

  • 61二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 01:16:03

    お、気がつきそう良いぞ~

  • 62二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 01:46:10

    見返したらグエルちゃんがカミルパイセンに「ラウダは可愛い」って言って信じられないような顔された、って描写あったわ
    すごいなここに繋がったんだ

  • 63二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 09:59:56

    二人の幸せを祈りつつ保守

  • 64二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 18:15:58

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  • 65二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 18:33:58

    このレスは削除されています

  • 66二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 18:35:08

    よそのスレの話をここに持ち込むのもここの話をよそに持ち出すのもやめようよ

  • 67二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 18:43:35

    自分最近固定のスレしかのぞかないんだけど、他のスレに持ち込まれることなんてあんの…?
    紹介じゃなくて?

  • 68二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 19:14:18

    このレスは削除されています

  • 69二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 19:16:48

    このレスは削除されています

  • 70二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 19:18:47

    >>68

    さりげなくこのスレdisってない?

    他のスレでどう書かれたのかは具体的なことは知らんけどさ…

  • 71二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 19:20:46

    このレスは削除されています

  • 72二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 19:21:36

    このレスは削除されています

  • 73二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 19:41:37

    もうね、このスレのダイスの容赦のなさはハッピーエンドへのスパイスなのよ
    絶望が深ければ深いほどグエルとラウダの愛が輝くのよ

  • 74二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 19:57:00

    壁は高いほど愛は燃え上がるのサ!!ウオオオオ
    私はグエルとラウダとスレ主のスポンサーです応援してます!!(ゴランノスポンサーノテイキョウデオオクリシマス)

  • 75二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 21:42:08

    それから隣に座った二人に「グエル先輩のお見舞いに行きたいです!」と強請られたが、まさか本人は妊娠しており絶対安静の為入院しているとは言えず、曖昧に濁して断った。
    「あっ!じゃ、じゃあラウダ先輩に見舞いの品を託したら、グエル先輩に渡してもらえますか?」
    「渡せそうなら、渡しておくよ」
    ……いつになるかは分からないけど、と心の中でそっと付け足しておく。
    ラウダの複雑な心境など勿論知りようがない二人は、やった!と顔を見合わせて喜び、あれがいいか、とかこれがいいか、とか楽しそうに話している。
    本当だったら、ここにはいつも姉がいた。姉が前に立って、その後ろにくっついて歩いていた。姉さんは二人のことを気に入ってたし、こうして二人が楽しそうに笑っているのを、嬉しそうに眺めていたことを思い出す。
    (……会いたいな…)
    自分が会っちゃいけないと、ずっと固くそう思っていた。……が、カミルと話してから狭まっていた視界がちょっと開けた気がする。
    自分が姉を傷つける存在には変わりない。なにせ目の前で……あんなに露骨に…怯えられた…ので……。ラウダの心の傷がちょっと疼き、くっと顔を顰める。
    ………姉さんが寝ている時に少し、ほんの少し顔を見ちゃいけないかな……
    姉は優しいから、ラウダが行きたいと言えばはっきりと拒まないだろう。でも、姉を傷つけるのは、絶対に自分が嫌なのだ。
    でも会いたい気持ちが押さえきれない。少しだけでもいい、話せなくても良いから、少しだけ、顔が見たい。
    いや、でもスタッフにどう言おう…姉さん、寝てます?とか聞いたら変態か……と悶々としているところに、「ラウダ先輩?」と隣に座っていたフェルシーに体を揺すられた。どうやら呼ばれていたらしい。
    反応をしなかったラウダに「やっぱ体調悪いんですか?」と二人の顔が曇り、慌てて安心させるように笑みを作った。
    グエル先輩はいつも元気で、体調を崩している所を見たことがない、弱っている姿は想像出来ない、といった話題だったらしい。それを聞いて、ラウダは少しだけ複雑だった。
    姉の体調管理は抜群で、常にベストな状態であるよう心がけている。……けど人間、どう頑張っても体調を崩すことはあるもので。
    グエルは体調を崩さない人間ではなく、それを他人に悟らせないのが異常に上手い人間であることをラウダは知っている。

  • 76二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 21:43:26

    (姉さんは取り繕うことが異常に上手いから…)
    ラウダが気付けば良い方で、ラウダさえ知らない時もたくさんあるのだろう。
    今回のことも、ロウジとセセリアに話を聞けば体調がおかしかったと言っていた。予兆はあった。あった筈なのに、ラウダがそれに気づけなかった。
    退寮を命じられて、傍にいられなかったこともある。いや、そもそも傍を離れたことがいけなかった。今ならそう思う。
    「グエル先輩って、どんな子供だったんですか?やっぱ子供のときから強かったッスか!?」
    話は幼少時代まで遡っていたらしく、二人に姉との思い出話を強請られる。
    一瞬初めて会った時の話をしようかとも思ったが、あれはラウダにとって誰にも触れられたくない大事な大事な宝物なので、その選択肢はすぐに消えた。
    当たり障りのないエピソードを選ぼうと、二人で地球の森を再現したフロントに行って迷子になって捜索されたことや、その際の虫取り競争でグエルがぶっちぎりでラウダに勝ったことなどを話すと、二人とも満足そうに笑っていた。
    さっすがグエル先輩!と顔を輝かせる二人を見て表情を緩ませる。最近遠ざかっていた日常を思い出し、がちがちだった心がほんの少し楽になった。
    こうして人と話すのも大事だな、と思った。思えばこの数日、必要最低限以外の会話をしていなかった。
    カミルと二人に感謝しつつ、「ラウダ先輩無理しちゃだめッスよー!」「何でもしますからね!」と手を振って去っていくフェルシーとペトラに小さく手を振る。小さく息を吐いた。
    …それにしても懐かしい話をした。
    フロントで迷子になった話には続きがあり、あの日グエルとラウダは父と約束を破って森の奥への入り込み、迷子になったのだ。
    再現された森は大人も楽しめるよう、広大だった。虫取り網とカゴを持ち、連絡手段を全て置いて元気よく飛び出していった子供が迷うのは必然だった。
    赤いロープが巻いてる所までだと父と約束したにも関わらず、もっと深い場所の方が珍しい虫がいるかも、とラウダが奥に入ってしまったのだ。

  • 77二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 21:45:13

    珍しい虫の方が、姉さんも喜ぶかな、と姉を思っての行動だったのだが、すぐにラウダを探しに来たグエルに見つかり、二人揃って迷子になった。ごめん、姉さん、と謝るラウダの体を抱き締めて頭を撫で、大丈夫だ、何があっても俺が守ってやる、と言ってくれたのをよく覚えている。
    ジェターク社の社員まで投入されて派手な捜索活動の結果、夜になる前に無事発見され、父に強く抱き締められた。そしてその後、部屋に来るよう命じられた……のだが、結局グエルが全て悪いことになり、ラウダが怒られることはなかった。
    ラウダを父を訪ねる前に「俺が嫌がるラウダの手を引っ張って、森の奥に行きました。俺が全て悪いんです。父さん、申し訳ありませんでした」とグエルが父に言って、ラウダの分まで怒られたことを後で知った。
    知った瞬間、父さんに本当のことを言わなくちゃ、と慌てるラウダにグエルが一言、「俺が嘘つきになっちゃうだろ!ラウダ、黙っててくれ。な?」とお願いされ……結局ラウダは父に真実を告げることが今でも出来ていない………そんな話を思い出した。

    (姉さんはいつだって僕を守ってくれてたな…)

    姉に庇われ、守られていた記憶ばかりが脳裏を過ぎる。最近色んなことを考えすぎて、こんな風に過去を思うのは久しぶりだ。
    そうだ、姉さんはいつも僕を守ってくれた…庇って、傷ついて…姉さんはそういう人だ…ぎゅっと拳を握る。だから僕が姉さんを守らないと。
    それと同時に、今も誰かを守って一人で抱え込んでいる姿が重なり、胸が痛んだ。
    姉さんに会いたいなどと甘いことを考えていたが、やはりそんな場合じゃない。一刻でも早く姉さんを助けるべく、情報を少しでも集める必要がある。
    ここ数日考えて、やはり寮の人間じゃない……気がする。と、なるとラウダが離れていた時間を知る人物……決闘委員会のメンバーに当たるべきじゃないだろうか。
    シャディクは論外。エランも…最近休んでいる。………ここはセセリアとロウジに当たるべきじゃないだろうか。
    寮に居る可能性もあるが、二人はよく決闘委員会のラウンジにいる。まずはそこに向かおうとベンチから立ち上がり、ラウダはラウンジへと向かった。

  • 78二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 22:06:44

    おおん…おねえちゃん…

  • 79二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 22:15:56

    ・姉は自分を可愛いと思ってる(らしい)
    ・自分を庇ってくれる存在であることを改めて認識
    この弟、着実に真実に近づいてるな…?

  • 80二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 22:39:24

    このレスは削除されています

  • 81二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 23:33:22

    「決闘委員会でのグエル先輩の様子~?なんでまたそんなこと聞くんですかぁ?」

    「グエル先輩はお休み中と聞きましたが」

    ラウンジにはセセリアとロウジが居た。探し回る必要が無くてほっとすると同時に、単刀直入に聞いてみた。決闘委員会での姉の様子はどうだったか、と。

    しかし今後悔している。少々ストレートに聞きすぎたかもしれない。

    勘の良いセセリアはまじまじとラウダの顔を見つめ、ロウジもじっくりとこちらを見ているが、ラウダの様子を見て何かを察したのか、それ以上何も聞いてこなかった。

    「どうって言われてもねぇ…普通でしたよ。特に何も。」

    「変わった所はないように思いました。いつもラウンジにいましたし」

    「……そうか」

    そうなると、やはり休日だろうか…でも、グエルがラウダに嘘を吐いていたとはあまり思えない……いや、思いたくないのかもしれない。

    シャディクの件があって、もう姉の言葉を疑わないでいようと決めた。だからラウダに教えてくれていた休日の予定も…姉の言葉通りだと信じたい。

    そうなるとますます分からなくなる。一体何処で。誰と。いつ。

    学園の外の人間かと思ったが、それなら尚更会うのは難しい。ますます謎が深まっていく。

    ちらりとセセリアとロウジの顔を見る。セセリアはソファに深く腰掛けて足を組み、ロウジはその横でちょこんと座っている。

    (聞くか…?聞いてみるか…?)

    ごくりと喉をならす。二人とも成績優秀なこの学園の生徒だ。何か聞いても、特殊な事情があると察してくれるかもしれない。大人しく無口なロウジは安心だとして、セセリアは結構……いや、かなり不安だ、が……

    しかし決闘委員会では待機時間も長く、そうなるとメンバー同士での会話も多い。ということを、実際に自分がメンバーになって初めて知った。

    だからこそ、ラウダはシャディクとの仲を疑った。他の委員会メンバーが居ない日など、二人きりの時間もあるはずだし。

    ラウダは迷った。すごく迷った。迷って迷って、黙っていたら、胡乱げなセセリアの視線が突き刺さる。

    今は少しでも情報がほしい。一人で悩まず会話する大切さもさっき教わった。ので、ここは……

    dice1d3=2 (2)


    1.「…姉さんに恋人はいたか?」と思い切って聞いてみる

    2.「姉さんと、誰が好きかとか…そういう話をしたことはあるか?」と切り出してみる

    3.いや、やっぱり聞かない。寮に戻ろう。

  • 82二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 23:35:37

    よし!これで情報を得られて進めそうだ!!

  • 83二次元好きの匿名さん23/08/15(火) 23:36:35

    3じゃないだけマシだよほんと

  • 84二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 00:07:12

    このレスは削除されています

  • 85二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 00:14:19

    ラウダ…情報はほぼ揃ってるはずだぞ…
    最初に否定された答えに戻るのは難しいかもしれないがそれしかないんだ

  • 86二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 01:12:23

    ラウダが着々と真相に近づいていってる…頑張れ…頑張れ…

  • 87二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 03:21:12

    迷って、悩んで、また迷って…結局ラウダは聞くことにした。
    「ね、姉さんと…誰が好きかとか……そういう話をしたことはあるか?」
    「………」
    二人がじっとラウダを見つめる。真意を探るようにセセリアとロウジの視線が注がれる。普段こんな話をしない為、どういう顔をすればいいか分からない。思わず顔を顰めた。
    暫く無言。その後に、ぶふっと思わずと言った感じでセセリアが噴きだし、口元に手をあて、にやにやとした笑みを浮かべられた。
    「ラウダ先輩私達と恋バナですかぁ?」
    「意外です」
    「ちが、違う……!いや、違わ…ない…?」
    何だか胸がざわざわする。う、と表情を歪めたら、何が楽しいのかセセリアが心から楽しそうにけらけらと笑っている。
    一しきり笑った後、目に浮かんだ涙を拭いながら「したことないですねぇ」とセセリアが答えた。その横でロウジもこくりと首を縦に振っているのが見えて、心底落胆する。
    「一応聞いときますけど、あの水星ちゃんのことじゃないんですよね?」
    「……違う。」
    「じゃあ尚更分かりませんね」
    肩を竦め、首を横に振れられる。もし何か情報が得られたら、と思ったが無駄だったようだ。
    慣れない話題を振って、何だかどっと疲れた。しかし姉さんの為だと思えば、これ位なんともない。
    このラウンジにこれ以上用は無い為、二人に軽く礼を言い、さっさと帰ろうと背を向けたら「無理じゃないですかぁ?」と背中にセセリアの言葉が投げられた。
    「ついこの間までホルダーやって婚約者がいたし…それにあんなにラウダ先輩が張り付いてたなら、恋なんてしてる暇ありませんって」
    水星ちゃんくらいですよ。それ通り抜けたの。そう言われて思わず振り向けば、先程とは違って少々真面目な顔をしたセセリアがいる。
    「ラウダ先輩が分からないなら、私達もーっと分かりませんよ」
    日中は確かにずっと一緒に過ごしていた自覚はある。朝姉の部屋に行き、一緒に登校。授業を受けて、ご飯も一緒に食べる。夜も大体一緒。
    だからこそ休日か、決闘委員会の時間くらいしか無いだろうと思っていた。
    先程ロウジが「ラウンジにいつもいた」と言っていたので、真面目な姉はやはり決闘委員会を欠席するようなことはしていなかったことが分かる。

  • 88二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 03:22:50

    と、なるとラウンジに向かう時間か、帰ってくるまでの時間だと思っていた…が、学年も寮も違えば科も違うセセリアにまで「張り付いている」と言われるのは意外だった。セセリアと会う時間なんて、それこそ決闘委員会しか無いはずだが。
    「…そんなに僕は張り付いてるか?」
    「張り付いてますよ。ラウンジ近くまでお迎えに来るし」
    「ラウダさん、見送りにも来てますよね」
    している。確かに両方ともしている…常に、というわけでもないが特に用事が無い限り、見送りと出迎え、どちらもしていた。けど近くまでだ。ラウンジ前まではさすがにしていない。
    常に傍にいたわけではないので、決闘委員会の時間はラウダにとって空白だと思っていた…のだが、こうして第三者に指摘される位には傍にいたんだろうか。
    一緒にいすぎて感覚が麻痺していた自覚はある。セセリアは固まった様子のラウダを見て、「ラウダ先輩と分かれた後、大体メンバーと合流しますしねぇ。いつも見かけるんですよ、ラウダ先輩と一緒にいるとこ」と追い打ちをかけた。
    愛した相手というのだから、恐らく複数回会っている…筈だ。それに「そういう」行為をしないと、子供だって孕むはずがない。
    ぐるぐると忙しなく脳内が動く。…もしかして、姉の自由な時間はラウダが思っているよりも遙かになかったんだろうか…?
    (え、じゃあ姉さんはいつ相手と会ってたんだ…?やっぱり休日?でも…)
    いよいよ分からなくなってきた。口元に手を当てて必死になって考えるが、答えは出ない。
    考えれば考えるほど、姉に恋人と会っている時間はない。セセリアの言葉を借りるなら、常にラウダが張り付いているのだから。
    ラウダの頭の中が疑問符でいっぱいになる。姉には愛した男がいる。妊娠している以上「そういう」行為だってしている。でも姉に恋人に会う時間もない……でも姉には愛した男がいるのだ…………
    ………だめだ、混乱してきた。わけが分からなくなって頭がぐちゃぐちゃになり、思考が絡まってきた。
    目を開けたまま固まるラウダを見つめ、ロウジがラウダの目の前でハロを動かす。しかし反応がない。わけが分からず、二人は顔を見合わせ首を傾げることしか出来なかった。

  • 89二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 04:01:24

    もうすぐだよ!!!

  • 90二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 06:34:02

    セセリア、グッジョブ!

  • 91二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 09:38:26

    さすセセ

  • 92二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 15:53:07

    判断材料は十分なはずなんだけど思考ループに陥ってんなあ…
    話聞いてくれる誰かに相談して客観的な判断が聞ければな…
    事情知ってるスレッタミオリネとか…

  • 93二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 22:22:58

    保守

  • 94二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 23:00:35

    情報は揃って来たから真相はもうすくだ…ラウダ頑張れ

  • 95二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 23:09:14

    寮の自室に帰ってきたラウダは、椅子に腰掛けてぼんやりしていた。
    あの後頭から湯気が出るような勢いで頭の中が茹だり、考えすぎて思考がぐちゃぐちゃになりながらラウンジから出た気がする…気がするって言うのは、ちょっと記憶が曖昧だからだ。あの二人に何て声をかけて出て行ったか正直覚えてない。
    その後宛てもなくふらふらと外を彷徨っていると、知らない内に例の温室まで来ていたらしく、ミオリネを見かけた。
    珍しくスレッタは近くにおらず、ふと目が合ってしまった。いつもならこのままスルーしていくのだが、何せその時のラウダは正常ではなく、加えて僅かでも情報が欲しかった。
    更に付け加えるなら、ミオリネはグエルの妊娠のことを知っており話しやすかったのもある……今思えば、グエルの子の父親が誰かはっきりしてない、と言うのを恐らく知られてしまったのは少々まずかったかもしれない。それも今となっては遅いことだが。
    単刀直入に「姉さんの恋人のことは知っているか」と聞いてみれば、え?と顔を顰められた。
    「知るわけ無いじゃない。そんな話、グエルとしたことないわよ」
    と言われ、期待をしていたわけじゃないががっかりするだけだった。
    あまり覚えていないが、たぶん、そうか、とか言ったと思う。そのままふらふら通り過ぎようとすると、ミオリネに「グエルのやつ、パパの言いなりかと思ってたら、なかなかやるじゃない」と褒めているのか貶しているのかよく分からない言葉を掛けられ、思わず足が止まる。左の髪を弄いながら、ミオリネを見た。
    「グエルの相手、ちゃんと恋人なのね。安心したわ」
    そう言って、少し微笑みながらラウダに話し掛ける。ミオリネ自身、自分の境遇に思うところがあるのか、あのグエルがねぇ…と感心したように笑っている。
    「あのクソ親父達に一泡噴かせたいのなら、いつでも言って。手を貸すわ」
    グエルの恋人、早く分かると良いわね、と付け足し、ミオリネは去っていった。
    その後ろ姿をただぼんやりと眺めることしか出来なくて、結局ミオリネからは何の情報も得られなかったことしか分からなかった。
    そのままどうにかして部屋に戻り、今に至るのだが…やっぱり何度考えても答えが出ない。
    思考がループしすぎて、心なしか視界もぐるぐる回ってきた。額に手を当て、ふぅ、と溜息を吐く。これじゃ分かるものも分からない。一度整理しようと、頭の中を切り替える。

  • 96二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 23:11:04

    (以前振ったラウダからのミオリネへの親愛度ダイスが50以上、ミオリネからは50以下だった為今回ラウダからミオリネに話し掛けています)

  • 97二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 23:26:29

    なるほどお!
    でも、"一泡噴かす"方向で助けてくれるとしたら、ミオリネは確かに心強い人物かも。
    頑張れ、ラウダ!
    (ラウダがジェタークの後継者だとお披露目するの、この時点であと3日かな?時間がない!)

  • 98二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 23:31:57

    やっぱこう、ラウダが人に頼るには冷静さ(?)を引っぺがすのが一番なんやなって

  • 99二次元好きの匿名さん23/08/16(水) 23:38:35

    >>97

    ラウダが一人で悶々と考えてる日数が4日間で後継者だと知らされるのが5日後ってダイスだったからもうまもなく知らされるのでは?

    3日後なのは正式な婚約じゃないかな

  • 100二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 00:02:03

    >>99

    あ、そうだった。婚約が3日後!そのあとが後継者決定だ。

    学生たちの味方もそこそこいそうだし、ラウダ急げ!

  • 101二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 00:11:38

    自分の中で一度否定された説をもう一度検証するのって難しいよねぇ
    頑張れラウダ!全部の可能性を破壊したあとには真実が残るはずだ!

  • 102二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 00:12:05

    でも婚約の日程は教えてもらえないんだよな…
    ラウダ四の五の言っとらんで考え整理してちゃんと姉さんに会いに行け

  • 103二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 00:17:15

    まぁ最初にラウダじゃないってはっきり姉さんから言われてると自分とは想像がなかなか出来ないよね…
    ラウダとスレッタの会話は恋愛感情も気づかせてくれたし良い方向に進むと良いなぁ

  • 104二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 00:26:07

    せっかく人と会話して気分が解れたのだから、今の気持ちのまま煮詰まるのは勿体ない気がする。
    人と話して、狭まっていた視界と頑なだった思考が少しだけ広まり、綻んだのだ。ひとまず落ち着け、と自分に言い聞かせた。
    カミルから、姉が自分のことを……世間から見たら決して「可愛い」などと形容されようがない……体格が良い男を「可愛い」と思っていると聞かされて、ちょっと面白かった。姉さんの感性って分からない、と姉の新しい一面を見た気がして、気分がほぐれた。
    わざわざカミルに言うって事は本気でそう感じているってことだろう。そりゃカミルも困惑するに決まっている。
    姉がカミルに言った場面とカミルの反応を想像して、ふふ、と少し表情が綻んだ。
    そこまで考えて…ふとフェルシーとペトラが来る前に感じていた「何か」を思い出す。
    あの時、確かにラウダの中で何か引っかかるものがあったのだ。
    僅かな引っかかりであった為、あの後二人と話して、すっかりと忘れていたが…そう言えば、と思い出した。
    (そうだ、確か、姉さんが可愛いって言ってたのって………)
    あの時、カミルに告げたというラウダの想像する姉の「可愛い」といった声と、記憶の中の姉の「可愛い」の声が重なった。
    最近、姉からこの言葉を聞いたのはいつだったか……目を伏せ、視線がふらふらと彷徨う。
    右手で左の髪をいらいながら、思い出されるのは仄かの頬を染めた姉の姿だ。照れたような…でも幸せに満ちた美しくもあり可愛らしくもある、ラウダが初めて見るような顔。
    ふっくらとした形の良い姉の唇がゆっくりと動く。
    『か、可愛い…?』
    そうだ。確かにそう言っていた。
    その時は何で「疑問系なんだ?」とラウダは不思議に思った。
    可愛い。この言葉自体、最近ずっとラウダの頭の中にあったものだ。ラウダが「相手って、どんな人?」と聞いた時のグエルの答え。ここ数日、ラウダを苦しめていたもの。可愛いって何だろう、可愛いってどんな奴のことを言うんだ、後輩か…?とか色々と考えていた。
    ラウダの心臓が跳ねる。琥珀色の瞳が僅かに見開かれる。

    ……姉さんは、僕を可愛いって思ってて……それは姉さんが愛した相手と同じで……?

    バクバクと心臓が激しく脈を打ち、ぐわんぐわんと視界と頭の中が揺れる。

  • 105二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 00:33:22

    待て、待て、待て……と何かに触れそうになる思考を必死に留める。何かに気付きそうで……でも気付くのが怖くて、目を背けている。
    鼓動がうるさい。胸を押さえ、えっと、とラウダは考える。姉さんは言っていた。子の父親は、心から愛した男だと。
    そして、姉さんはその相手を庇っている。庇っているから、父の前で名前を出さない。父は相手をシャディクだと思いこんでいるけど、シャディクが相手じゃなくて。姉は必死になってそれを否定している。
    (姉さんは優しいから、相手を庇って、守っていて……)
    あんなに傷ついても、父からどんな仕打ちを受けようが黙っている。
    それをラウダは許せない。あんなに姉から愛されて、守られている相手が許せない……姉はあんなに傷ついているのに。
    左の髪をぎゅっと引っ張る。
    一回ラウダが姉の信頼を裏切ってしまった。
    だからこそ、姉の言葉を信じようと思ってここまで来た。……一瞬休日の予定など嘘を言われてるかも知れない、と思ったこともあったが、それでもやっぱり信じようと決めて。だからこそ、姉が恋人と会う時間がなくて混乱して……
    だからすっかり頭から抜け落ちていた。あの瞬間、グエルが嘘を吐いた可能性。
    あの時のラウダは混乱しきっていたし、姉の言葉や態度に嘘があるとは思っていなかった。
    ラウダを見つめる冷たい瞳。「この子の父親は、俺が心から愛した男」だと。お前じゃないよ、とはっきり言われたように感じていた。事実、グエルだってそういうつもりだったのだろう。
    基本的にグエルは嘘を吐かない。
    素直になれなくて、第三者から見れば分かり易い嘘を吐く時はごくごく稀にあるが……それは例外中の例外だ。
    嘘を好まず、常に真っ向勝負を姉は好む。それはグエルをずっと見てきたラウダが一番よく知っている。

    (でも、もし、あの時……姉さんが嘘を吐いていたとしたら……)

  • 106二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 00:39:21

    だって考えれば考えるほど、おかしい。
    ここ数日、ラウダは頭がおかしくなりそうな程、グエルの予定を見返していた。自分の行動も。離れた時も全然なくて、グエルに恋人がいて、相手と会っていたなんてとてもじゃないが思えない。不可能だと、ラウダ自身考えていたことだ。
    でも、他ならぬグエルが「愛した男」がいると言っていたから。だからずっと思考が同じ所をぐるぐるしていたのだ。

    (姉さんが、嘘を吐く時は、誰かを守るとき…)

    ラウダの脳裏に過ぎるのは、幼い日のグエルの姿だ。フェルシーとペトラに話した思い出話。二人に話すことで、久しぶりに記憶の宝箱から取り出した。

    (あの日、姉さんは僕が父さんに怒られないように、父さんに嘘を吐いた…全部自分が悪いんだって…僕を庇って、全部背負って…)

    じわ、と何かが胸の奥から溢れてくる。視界が揺れて、左の髪をいらっている手が微かに震えた。
    幼い姉の姿が、「愛した男がいる」とラウダに告げた、あの時の姿と重なる気がした。
    あの時のグエルは笑いかけていた。ラウダに安心しろとでも言うように、あんな場だっていうのに、優しく、包み込むような笑みを見せてくれていたのを思い出す。
    ラウダを前にしたグエルが嘘を吐いたとして、どうしてあの時だったのか。姉は、誰を守る為にラウダに嘘を吐いたのか。
    あの時ラウダが思っていたこと。口に出そうとしていた言葉。「父親は……」の続き。
    震える手で唇を押さえる。そうだ、あの時、思っていたじゃないか。
    それが分かったからこそ、姉はあの時嘘を吐いたんじゃないだろうか。誰かを庇って、誰かを守る為に。
    ヴィムから、腹の子の本当の父親を守る為に。
    姉があんなに傷ついて、それでも必死になって守っていた相手、腹の子の父親…

    「……僕、か…?」

    くしゃりと表情を歪める。視界がゆらゆらと揺れる。
    分からない。今思っていることは、全部全部間違いかもしれない。暴走したラウダの思いこみの可能性だって高い。
    でも、やっぱりおかしい。グエルにラウダが知らないところで恋人がいたとは、到底思えないのだ。
    それに自分には絶対の自信があった筈だ。そういう相手がいたなら、きっと姉は自分に教えてくれるだろうという自信である

  • 107二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 00:46:49

    それと同時に思い浮かぶのは以前の自分のどうしようもない愚かな行い。寝ている姉に避妊具も着けずに押し入ったあの日のことだ。もしあの日の行為が原因で、姉がラウダとの子を孕んでいたのだとしたら……

    そう考えると、全部辻褄が合う気がする。

    姉の言葉を思い出す。言ってたじゃないか。相手は、いっつも一緒にいてくれる人間だと。

    その時はてっきりシャディクのことかと思って憤っていたが、セセリアの言う通りなら、いつもラウダはグエルの傍に張り付いていて。ラウダ以上にいっつも一緒にいる人間なんているわけがない。

    好きだ、と言った言葉も、もし弟として、ということなら……姉から家族として愛されている自覚があるラウダには心当たりがある。

    零れた涙と潤む瞳を拭い、ぐっと唇を噛み締める。

    盛大な勘違いかもしれない。もしかしたら、グエルからしたらとても恥ずかしい思い違いを勝手にラウダがしているだけかもしれない。

    本当はどうにか時間を見つけて相手と会っていて、グエルはその相手を恋愛的な意味で愛していて。必死になって庇っている……今のところ物的証拠があるわけでもなく、ラウダの思いこみの可能性だって高い。

    (……でも、)

    あの時、腹の子は自分の子供だと思ったこと、やはり間違いだと思いたくない。

    散々遠回りして考えて、悩んで、ぐるぐる同じ所を回って。ラウダが行き着いた先は、





    ※ダイスの結果、ラウダが対話に至ってヒントを得られたのでヒントを得られた数だけ確信を得る選択肢が増えます。

    今回ダイスを振った3人全員と対話できたので、元々あった1つに対し、3つ選択肢が増えて計4つ、腹の子の父親は自分だと確信を得る選択肢があります

    dice1d5=1 (1)

    1~4.「姉さんの腹にいる子供の父親は…僕だ…」と確信する。

    5.腹の子の父親は…僕じゃないだろうか………いや、やっぱり確信するのはまだ早い……慎重に考えないと……

  • 108二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 00:49:00

    よーし!よしそれでいいんだラウダ!お前は正しい!!

  • 109二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 00:50:36

    ああ、でうすよ!神はここにいらっしゃった!

  • 110二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 00:51:42

    ここまで長かった

  • 111二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 01:00:22

    ようやくたどり着いた!

  • 112二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 01:09:13

    はーやっと真相に辿り着けて良かった!!ダイスもやっと味方してくれた!!
    でも婚約の期日が近いからラウダ急げ…

  • 113二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 07:33:10

    皆との会話で気付きを得て正解に辿り着く展開好きだな

  • 114二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 13:24:10

    ようやく……ようやく………!!!

  • 115二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 14:53:56

    最初から答えには辿り着いていたのに否定されて
    もう一度戻ってくるまで長かったな…

  • 116二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 20:07:57

    グエルは否定するしラウダだけじゃ分からなかったけど周りの仲間の視点から真相に気づく展開良いよね…

  • 117二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 20:10:16

    友情!努力!勝利!

  • 118二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 20:23:57

    当人らは普通に話してるだけなのに勝手にラウダが気付いてくのいいなーって思った
    スレッタはまんま素の話だったしラウダ気づかって何か言ったのカミル位じゃない?
    それも元気付ける(?)話したら勝手にラウダにクリーンヒットしただけだけど

  • 119二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 20:28:37

    どうしよう、ガチで泣いてる

  • 120二次元好きの匿名さん23/08/18(金) 03:08:02

    保守

  • 121二次元好きの匿名さん23/08/18(金) 07:57:56

  • 122二次元好きの匿名さん23/08/18(金) 13:00:47

    保守

  • 123二次元好きの匿名さん23/08/18(金) 20:41:32

    保守

  • 124二次元好きの匿名さん23/08/18(金) 23:52:55

    保守

  • 125二次元好きの匿名さん23/08/19(土) 01:27:28

    姉さんの腹にいる子供の父親は…僕、だ……!

    そうラウダが強く思った瞬間、暗闇の中で出口ない迷路を彷徨っていた感覚がすっと消えた。
    絡まっていた思考が解けて、全ての疑問が綺麗に消えていくのが分かる。口に手を当て、姉さん、と姉を呼ぶ。そうだ。やっぱりおかしい。あんなにラウダと一緒にいた姉に恋人なんて居るはずがない。
    ラウダがグエルの腹の子の父親なら、全部辻褄が合う。そしてグエルがそんな嘘をラウダに、父に吐いた理由も。
    かっと熱いものが全身を駆け巡り、思わず立ち上がった。椅子が後ろで倒れる。
    (どうしよう)
    姉がたくさん傷ついた。いっぱいいっぱい傷を負った。
    何も知らないラウダが駆けつけたあの日、グエルは父に強くぶたれて、頬を痛々しいほど真っ赤に腫らしていた。ぐったりして、虚な目が、濁った青の瞳がラウダの頭から離れない。
    姉が、泣いていた。滅多に泣かない姉が、ラウダの前だと絶対に涙を見せない姉が、泣いて目を腫らして、あんな姿を晒して。
    苦しかったに違いない。グエルがどれだけ父を慕っているの知っている。父のことだ、子を孕んだ姉をひどく責めたに違いない。慕っている父にぶたれて、責められて。どれだけ苦しかっただろうか。悲しかっただろうか。……考えただけで、心が痛い。
    (どうしよう)
    身に覚えのない妊娠を知って、姉がどれだけ怖い思いをしただろうか。
    ラウダはちゃんと避妊には気を付けていた。それを勿論グエルも知っている。と、なると当然心当たりはなかったはずだ。
    それなのに体調は悪くて、どうしてもしんどくて。自分じゃどうしようもできなかったから、いつもはラウダがどれだけ言っても絶対に行こうとしなかった医務室に行って……そこで自身が孕んでいることを知ったんだろう。だから医務室から、連絡があった。
    今思えば医務室にあった病院のパンフレットも姉に向けたものだったに違いない。
    絶対にグエルは混乱したはずだ。知らない、分からない。妊娠なんて、そんな筈はない、と困惑したに違いない。
    姉が突如いなくなったのも、妊娠を知って錯乱状態に陥ったか、はたまた父にばれることを恐れてか……。そして何らかの事情で妊娠を知ることになったシャディクに連れられてシャディクの部屋に行った。
    匿ってもらっただけだとグエルは言っていた。きっとその言葉に嘘はない。二人の関係はたったそれだけのものなのだろう。

  • 126二次元好きの匿名さん23/08/19(土) 01:30:52

    なのに姉の言葉を信じなかった。シャディクが相手だと思いこみ、勝手に暴走した。
    姉はああいっていたが…自分の言葉を信じず、父の言うことを信じたラウダに失望したに違いない。
    視界が歪み、足下が崩れ落ちる感覚がした。
    どうしよう、と心の中でもう一度呟いた。
    姉がテントから姿を消した原因も。父に痛々しいほどぶたれた理由も。部屋にひとりぼっちで監禁されることになったわけも、今も一人で病室に縛り付けられているのも、

    「全部、僕の、せい……」

    零れた声は情けなく震えていた。足も、手も、ぶるぶるとみっともなく震えている。
    姉は嘘を吐いた。全部、ラウダを守る為に。腹の子の父親であるラウダを、父から、世間から、守る為に。
    許せないと思っていた。優しい姉を利用しようとする、シャディクも、父も。この状況を作り出した、姉の相手というのも。憎くて憎くて、でも姉に愛されている相手がどうしようもなく羨ましかった。
    (僕は馬鹿だ……)
    姉はそう言う人間だということを知ってた筈だった。相手を守る為なら、嘘を吐き、全て自分一人で背負うことを選ぶ人間だと。そして弟であるラウダは、ずっと姉にとっては「守るべき人間」だった。
    傍で見てきて、そういう姉の危うさも同時に愛しく思っていた。だから、僕が支えないと、守らないと、とそう思っていたはず、だったのに。
    ぎちりと頬に爪を立てる。どれだけ辛かっただろう。一人で全部抱え込んで。誰にも助けを求めることもできなくて、なのに周囲は勝手に自分と腹の子を利用しようとする。
    姉が受けた責め苦も、暴力も、本来なら全部ラウダが受けるべきものだ。
    姉は被害者だ。身勝手な弟に無理矢理孕まされた可哀想な被害者。
    あの夜のことを心の底から悔いているが、もう遅い。姉はラウダとの子を孕んでいる。
    姉にとって、ラウダはただの弟。その弟の間に子を身ごもって、精神がひどく追い詰められているに違いない。
    姉は優しいから、子供を恨むことも出来なかったはずだ。それでもグエルは必死になってラウダを守ろうとしている。あんな目にあってまで。

    (姉さん……!)

    無意識のうちにラウダの足は自室の床を蹴っていた。滲む視界で扉を睨む。震える足を叱咤し、ジェターク寮の廊下を走る。
    謝らないといけない。謝って済む問題じゃないのは分かっているけど、全部背負い込んで、一人で病室にいる姉に会いたくてたまらなかった。

  • 127二次元好きの匿名さん23/08/19(土) 01:33:47

    誰もいなくなったラウダの部屋にコール音が鳴り響く。
    机に置き去りにされた生徒手帳には父の名が表示されている…が、衝動的に飛び出したラウダはそれを知る術がない。

  • 128二次元好きの匿名さん23/08/19(土) 07:09:08

    今まで散々🎲に転がされたぶん、この…カタルシスがたまらない…!スレ主の文才に投資したいよ…

  • 129二次元好きの匿名さん23/08/19(土) 07:13:28

    あああああ、何に対してか分かんないけど、とにかくいろんなことが、間に合ってくれええええ!!!!!

  • 130二次元好きの匿名さん23/08/19(土) 09:58:27

    ジェタークの突破力を見せて~!

  • 131二次元好きの匿名さん23/08/19(土) 10:05:44

    >>127

    これ後継者決定の知らせだろうけど聞かなかったことがどう出るか読めないな…

  • 132二次元好きの匿名さん23/08/19(土) 17:22:28

    ほしゅ

  • 133二次元好きの匿名さん23/08/19(土) 22:56:04

    保守

  • 134二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 00:55:41

    ほしゅ

  • 135二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 01:13:50

    背中を押されるように学園を飛び出し、フロントを移動して姉がいる病院に着いたのは、面会時間を少しばかり過ぎた時間だった。
    頭が真っ白になって居ても立っても居られず、制服姿のまま駆けだしたのは良いものの、面会時間という存在を忘れていたラウダは病院の前に立ちつくす。どうしようかと一瞬迷ったが、ここは正面突破に出た。
    そもそも姉がいる病室は訳あり患者用に、通常の病室とは少し離れたフロアにある個室だ。いけるか……だめか……と怖々受付で面会希望の旨を話したら、あっさりとOKが出て、心の底からほっとした。
    ラウダがジェタークの人間だからか、それとも息を切らして汗だらけになっているラウダを見てよっぽどのことだと思われたのか、それともその両方か…とにかく姉に会えるのは嬉しい。ここまで来て追い返されるのが一番怖い。
    しかし話を聞いていたであろう奥にいるスタッフ達が、ラウダの顔を見てコソコソと何かを話しているのが少々気に掛かる。
    面会時間を過ぎての訪問に何かを言われている可能性は高いが、今は気にしている余裕はない。
    手短に受付を済ませたところで、話していたスタッフが一人、ラウダの方に近寄ってくる。
    いかにも言いにくそうな顔をして、ちらちらとラウダの方をうかがうように見てくるので、思わず顔を顰めてしまった。…何だろう、すごく、嫌な予感がした。

  • 136二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 01:20:18

    どうかここまで来てUターンするイベントは…!

  • 137二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 01:23:33

    「姉さん」
    ラウダが両手に荷物を抱えながらどうにかして病室の扉を開けると、ベッドに座り呆然とした表情のグエルと目が合う。
    その顔を見て、ラウダは僅かに目を見開き、唇を少しだけわななかせた。
    グエルは、何でお前が?といった表情をしている。何度かぱち、ぱち、と目を開けたりしめたりをして、ラウダがいる現実を明らかに疑っている表情をしているのだが、ラウダはそれに気づかないフリをして、姉がいるベッドに近づいた。その際、立ち上がろうとするグエルを制するのも忘れない。そのままでいいよ、と言えば姉の動きはぴたりと止まり、信じられない表情をしながら、ラウダを見てくる。
    「体調は大丈夫?困ったこととかない?」
    「あ、ああ……問題ない。元気だ」
    毛布を掴む姉の手が震えている。その手を見た後、ラウダを安心させたいのか一生懸命笑おうとしている姉の顔を見て、すっと目を細める。
    触れたい衝動をどうにかこらえて、ラウダはどうにか笑みをはりつけた。
    手に持っていた荷物をサイドテーブルに置き、本心を隠しながら穏やかにラウダは笑う。
    袋からごそごそといくつか取り出して、それを一緒に買ってきたナイフと共にグエルに見せた。

    「姉さん、りんご好きだったよね」
    「ラウダ、お前……」
    「あ、一緒に桃も買ってきたんだ。桃の方が良い?」
    「ラウダ、」
    「オレンジもあるよ。こっちの方がすっきりして良いかな……」
    「ラウダ!」

    グエルが大きな声を出すものだから、袋の中から買ってきた果物達を取りだしていた手を止めて姉に目を向ける。どうしたの、大きな声を出して、と言うとくしゃりとグエルの顔が歪んだ。
    「どうしたって……俺の方が聞きたい。どうしたんだ、急に…俺のことは気にしなくて良いってあれほど……」
    「…姉さん、りんごでいい?僕上手く剥ける自信ないけど……」
    にこ、と目を細めて笑いながらグエルに買ってきたばかりの真っ赤なりんごを見せる。話が通じない様子のラウダに狼狽しているようだが、今は姉の話を聞く気にはなれなかった。ましてや、自分のことを放っておけなんて言う内容、聞ける筈がない。
    まだ何かを言いたそうにしているグエルを置いて、りんごを洗った後、慣れない手つきでそれを剥き始める。

  • 138二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 01:32:17

    キャンプ飯やら、割と料理をするグエルと違ってラウダに料理の経験はあまりない。りんごを剥くのなんて、幼いグエルが体調を崩した時ぶり位だ。
    あの時は熱を出して寝込む姉が、譫言のように「りんごがたべたい……」と珍しくおねだりをしてきたものだから、当時のラウダは張り切ってりんごを剥いた……が、勿論うまく出来る筈もなく。
    皮を厚く切ったせいで、りんごはすっかりとこじんまりとしたものになってしまった。気まずそうに不格好なりんごを持っていくと、グエルは目を輝かせそれを口に含み、心から嬉しそうに笑ってくれた。
    らうだ、おいしい!ありがとな!と頭を撫でてくれた…ラウダの宝物のような記憶の一つだ。
    その記憶が真っ先に思い出されたこともあって、ラウダは最初に店でりんごを手に取った。そのあと、みずみずしい果物をいくつか。
    しゃりしゃりと、当時に比べてまだマシなナイフ裁きで皮を剥いていく。何か言いたそうなグエルの視線と、「ラウダ…」と震える声で名を呼ばれるのを無視しながら、どうにか剥き終わり、食べやすいように6つに切って皿に盛った。
    戸惑いの表情を浮かべるグエルにラウダは微笑み、はい、姉さん、とフォークと一緒にテーブルの上にそれを出す。姉の顔が僅かに顰められ、ラウダの顔を見る。
    「ラウダ、話を……」
    「それ食べてくれたら聞くよ」
    にこにこと笑うラウダに何を言ってもだめだと思ったのか、震えるグエルの手がフォークを掴む。それがりんごに刺さり、口に運ばれた。一口と言うには小さすぎる欠片がグエルの口の中に転がる。
    ラウダは目を細めて姉の顔をじっと見る。噛む必要が無いほどの小さなりんごの欠片が飲みこまれるのをじっと待つ。
    グエルの視線が、宙を彷徨った。ころころと口の中でりんごを転がし、いつまで経っても飲み込む気配がない。縋るようにぎゅっと毛布を掴んでいるのが見えた。
    (やっぱり………)
    はりつけていた笑みを剥がして、姉を見下ろす。
    グエルの唇が震えて、苦しそうに顔が顰められる。小刻みに揺れる手が口元にあてられるのを見て、もう我慢が出来なくなって、その手首を優しく掴む。掴まれた腕がびくっと怯えるように震えた。
    あの時食べてくれたりんごなら、と思った。けどそれすらもだめらしい。

  • 139二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 01:35:58

    泣きたくなる気持ちを堪えて、姉さん、と呼んだ。嫌がるように、首が横に振られる。食べるから、大丈夫だから、と言っているように見えて、いよいよ胸が痛くなった。
    「もういいよ、出して。ごめん。無理して食べなくて良いから」
    真っ青な顔が泣きそうな顔して歪められて、ラウダの言葉を拒むようにまた首が横に振られる。
    ……でも、どう頑張って飲みこむことは出来なかったらしい。ラウダがティッシュを差し出すと、散々迷った後でそれを口に宛て、飲み込めなかったほんの小さな欠片を出したようだった。
    ごめん、とか細い小さな声で謝られる。謝られる理由が分からなかった。ずっと謝るのは、ラウダの方だ。
    グエルの見えないところで、ぎゅっと拳を握る。姉さん、と呼びかけると、顔を伏せたグエルの体が可哀想な程はねた。
    「聞いたよ。ご飯、ひとくちも食べてないって……食べれないの……?」
    グエルの右手が、自身を守るように左の腕を掴む。病室に来てすぐに見た時も驚いた。たった数日離れていただけなのに、姉の腕が、手首が、すっかりと細くなってしまった気がする。
    受付前でスタッフに呼ばれた時、正直事の真偽を疑った。一日だけならともかく、ここ数日ひとくちも食べていないらしい。手をつけられていないトレーを下げるたびに、申し訳なさそうに謝られると。
    小鉢を進めても首を横に振り、あまりにもスタッフが言うからか、苺を無理やり口に入れてくれたこともあるらしいが、すぐに出してしまったと聞いた。
    確かに妊娠中、ご飯が食べられなくなったり、特定のものしか食べられなくなることはあるが、あれは異常だと泣きそうな顔で言われた。妊娠の症状ではなく、恐らく精神的なものであると。点滴である程度栄養の補給はできますが、あのままだと腹の子供にも、母体にも悪い。何かお好きな食べ物ご存じですか、と聞かれたのだ。
    そのくせ、ラウダが体調のことを聞いても元気だ、などというから……手荒な手段に出てしまった。それに、強引な手だったとしても、少しだけでも食べてくれればと思ったこともある。

  • 140二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 01:39:37

    少し小さくなってしまったように見える、丸まった背中を眺める。そこに流れている髪もぼさぼさで手入れされた跡がなく、グエルの顔はずっと血の気が無く青白い。病室に入ってきたラウダを見つめる目は覇気が無く、美しく澄んだ瞳に光はなく濁っていた。目の下にははっきりとクマが出来ており、眠れていないのがありありと伝わってくる。
    たった数日前。ラウダがここに訪れた時はここまでひどくなかった。あれから何があったのか、聞きたいのに聞くことが出来ない。
    やつれきったグエルの姿に、ラウダの心が悲鳴をあげる。こんなグエルを、見たことがない。
    「姉さん、何か…何か食べないと……」
    「食べる気が……しなくて……」
    か細い声でそう言われて、ラウダの心がじくじくと痛む。
    「…ほら、お腹の子にも悪いし……」
    ラウダが「お腹の子」という言葉を出すと、ぴくりと体が揺れる。顔があげられ、ラウダの方に向けられた顔は、今にも泣きそうな顔だった。お前もそれを言うのか、という顔。
    「そうだな、お腹の子に…悪い…よな…」
    あやすように、グエルの震える手が腹を撫でる。ごめんな、と小さく囁き、伏せられた青の瞳が僅かに潤んでいる気がして心が乱された。
    ラウダの手が伸び、グエルの丸まった背中に触れる。なだめるように、何度か背を撫でると、強張っていた体から少しだけ力が抜けるのが分かる。
    そうして暫くの間背を撫でた後、ゆっくりとラウダは口を開きながら身を屈める。
    「姉さん、嫌なら僕を殴って」
    「え?」



    ほんの少しだけ熱が宿る顔をわずかに歪め、グエルがラウダの顔を見ようとした瞬間、それよりも早く何か大きなものぎゅっと力強く抱きしめられていた。
    何か、といってもこの場にはグエルとラウダしかいない。それなら、勿論冷え切ったグエルの体を大事なものを抱え込むように抱きしめているのはラウダしかいない。
    え、と思わず間抜けな声が零れる。温かいラウダの体温が伝わってきて、なんだかほっとする。さっき背中を撫でられていた時も心地よかった。離れなくては、ラウダは嫌じゃないかと少し不安になったが、ラウダが触れてくれて、本当に嬉しかった。
    …そしてこの状況。何が何だかわからない。
    さっきまで、せっかくラウダが剥いてくれたりんごが食べられなかった罪悪感でどうにかなりそうだったのに、なんでこうなっているんだろうか…?

  • 141二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 01:45:44

    ラウダの体はあったかい。冷たいグエルの体に熱を与えるように、ぴったりと寸分の隙間もなくグエルの体を抱え込んでくれている。

    少し震えているように感じるラウダの手が、ぎこちなく自身の手入れをする気も起きなくて、そのままになっている乱れた頭を撫でる。たったそれだけのことなのに、心の奥にじんわりとあったかいものが溢れた。思えば、こんな風にラウダに頭を撫でられたのは初めてかもしれない。

    「どうした?」

    小さく微笑みながら、ラウダに声をかける。抱きしめるというより、縋られている感じもする。小さな子供みたいなラウダの姿に、なんだかくすぐったい気持ちになって、戸惑いよりも、こうして抱きしめてくれる喜びのほうが勝ってしまう。

    もう、こんな風に抱きしめてくれることもないかと思っていた。こんな自分なんて、ラウダに触れない方がいいと思っていたのに、こうして体温を感じるところりとその心地よさにやられてしまう。

    (ラウダの体…あったかいな……)

    うっとりと目を細めてその心地よさを享受する。するりと首を撫でられ、くすぐったくて身をよじれば、逃がすもんかとでもいうようにさらに抱きしめる力が増した。


    「姉さん、」

    「ん?」


    この背中に手を回していいものか、自分から触れても大丈夫だろうかと少しだけ考えながら、ラウダの言葉を待った。

    何かを躊躇うように、少しだけ間があった。その間も、ラウダの力は弱まることなく力強くグエルの体を抱きしめる。

    グエルの震える手が宙をさまよう。ラウダの背中に触れそうになった瞬間、もう一度姉さん、とラウダに呼ばれた。


    「お腹の子供の父親は、僕、だよね?」




    グエル♀の高潔傲慢度

    dice1d100=87 (87)


    ラウダの突破力

    dice1d100=23 (23)


    ※どんなダイスの目が出ても、今後ラウダが子供の父親は自分だと確信したことは揺るぎません

  • 142二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 01:47:01

    安定のダイス
    それはそれとして姉さんおいたわしや……

  • 143二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 01:47:23

    ラウダ頑張って!!!

  • 144二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 01:47:56

    姉さんの高潔傲慢度が高すぎる…

  • 145二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 01:49:45

    ラウダに力を!!

  • 146二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 05:55:19

    うう…突破力?が足りない分は、周囲の力でなんとか…。寮のみんなもだし、シャディクはグエルに、ミオリネはラウダに手を貸すって言ってたし…。頑張ってラウダ!

  • 147二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 12:37:59

    ほしゅ

  • 148二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 19:04:33

    周りを巻き込め!行けラウダ!

  • 149二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 19:12:15

    周り巻き込むにしてもそういや連絡手段置いて行っちゃってたんだった……どうしよ

  • 150二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 19:40:52

    グエルはラウダを完全に守護するべき存在として扱ってて悪いのは自分って思ってるから高潔傲慢罪が発動しちゃうんだよな…
    ラウダもグエルを恋愛として好きで姉さんを守りたいってことが伝われば突破出来るような気もするんだけどな…

  • 151二次元好きの匿名さん23/08/20(日) 22:33:29

    ほしゅ

  • 152二次元好きの匿名さん23/08/21(月) 01:55:56

    保守

  • 153二次元好きの匿名さん23/08/21(月) 07:42:40

    保守

  • 154二次元好きの匿名さん23/08/21(月) 17:53:47

    ほしゅ

  • 155二次元好きの匿名さん23/08/21(月) 20:10:40

    保守

  • 156二次元好きの匿名さん23/08/21(月) 23:55:42

    保守

  • 157二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 00:59:58

    ひっと喉の奥から声が漏れ出た。ラウダの背中に触れようとしていた手がベッドの上に落ちる。
    心臓が早く脈打ち、額に汗が滲む。震える体をどうにか動かし、ラウダの肩に手を置く。ぐ、と力を込めて押すと少しだけ体が離れた。

    「な、にを…馬鹿なことを………」

    心臓の音がうるさい。平静を装わないといけないのに、あまりにも突然投げかけられた言葉に、グエルは動揺せずにはいられなかった。
    ラウダの顔は見られない。視線をベッドに落とし、うろうろと視線が宙を舞う。
    何がだめだったのか、何がラウダにそう思わせたのか…動揺でうまく動かない頭をどうにか動かして必死に考える…が答えが分からない。
    シーツをぎゅっと握り、グエルはラウダに笑いかけようとした。けど、顔が上手く動かない。ひくりと頬が震えただけに終わってしまった。
    どうしよう、とぐらぐらと揺れる意識の中で考える。どうしよう。このままだと、全部、ぜんぶ終わってしまう。
    顔を伏せたことで長い髪がカーテンのようにグエルの顔を覆う。今、ラウダが何をしているのか、どんな表情を浮かべているのか、グエルには分からない。
    怖い。ラウダが何を考えているのか、何も分からない。
    (俺が、ラウダを守らないと……)
    それだけを思って、ここ数日ずっと耐えてきた。それだけが、グエルの心の支えだった。
    ラウダはずっと大切な弟で、好きな人。家族としても愛しているし、それ以外の、一人の人間としても思慕の情も募らせている。
    血が半分繋がった、実の弟に恋をしているなんて、誰にも言えない、勿論本人にも。身勝手なグエルの愛だ。
    初めて会った時から、ラウダはグエルにとって守るべき存在だった。
    目を伏せ、暗い顔をしてヴィムの横で身を強張らせラウダを見て、この弟をずっと守ろうと心に決めた。抱き締め頭を撫で、お前と会えて嬉しい、生まれてきてくれてありがとう、とそんな意味をこめた心からの言葉をラウダに贈ったことを覚えている。
    (これは、俺が背負うべき問題で…俺に誘われたラウダは何も悪くない…)
    シーツを握る手に力がこもる。
    あんなに、関係ないと言ったのに。俺のことは気にしなく良いと、何度も言った。お前はお前の学生生活を楽しんで欲しいと、そう伝えた筈なのに。
    (それがお前の幸せなんだよ、ラウダ……)

  • 158二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 01:01:44

    グエルには分からない。なぜ、ラウダがこうして関わってくるのか。ジェターク家の後継者になると聞いた。あの時何かをグエルに謝ってきたラウダは、当然そのことを知っているはずだ。
    馬鹿な姉を持った、と関わりを絶てばいい。ジェターク家の跡取りでも何でもない、あとたった数日で、家族の縁だって怪しいものになる自分に、何で、こんなに構うんだ…。
    愚かな姉のことなんて忘れて、どこか綺麗な場所で生きて欲しい。それがグエルの望みでありラウダの幸せなのに、なぜ。
    一度唇を噛んだあと、ゆっくりと口を開いて呼吸をした。少しだけ頭の中がクリアになる。今何をすべきか分かっている筈だ、と自分に言い聞かせる。
    のろのろと顔をあげて、ラウダを見る。ラウダの父そっくりな琥珀色の目に迷いはなく、真っ直ぐにグエルを見ていた。
    ぐらりぐらりと心が揺れる。怖い。ラウダが、怖い。どうして、わざわざ首を突っ込む真似をする。全然分からない。
    「そんなわけないだろ。お前が父親なわけがない」
    「本当に?」
    「当たり前だ」
    不安だったがずっとはっきりとした声が出た。震えてもない。小さくもない。ちゃんと出来ている、と心の中で少しだけ安堵した。
    「さてはシャディクだな?あいつの言うことは信じなくていい…ジェターク社を引っかき回そうとしているだけだ」
    困った奴だ、シャディクの言うことは信じるな、と精一杯笑ってみせる。
    なのに、ラウダの表情は少しも変わらない。そっか、分かった、と頷いてほしいのに、引き下がる様子がない。
    絶望がひしひしと近づいてきている。俺は、お前のことを守りたいのに、なぜ分かってくれない。この件から少しでも、ラウダを離したい。離れたところで幸せになって欲しい。
    真っ直ぐなラウダの瞳が怖くて、思わず目を反らした。シーツを掴む手が震えている。ラウダに抱き締められたことで、少しだけ与えられた体温も今ではすっかりと冷え切ってしまった。
    血の気を失った顔で、違う、と声を零す。ちがう、ちがう、お前じゃない、お前なわけがない、と首を横に振り、何度そう言ってもラウダから何の反応ない。
    幼い頃のラウダが頭を過ぎる。お前を守る。守ってやる。だから安心してくれ、と心の中で必死になって告げた。

  • 159二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 01:03:51

    「だって、お前はちゃんと避妊してたじゃないか。俺がどれだけ言っても、ちゃんとゴムしてた」
    「…うん。姉さんの体が心配だったから。間違いがあっちゃいけないと思って」
    「そうだろ?あんなにちゃんとしてたのに、お前が父親の筈がない。別の奴だ」
    「……心から愛した男?姉さんの、好きな人?」
    そう聞かれて、頭に思い浮かぶのはラウダの姿だ。グエルが好きな人。心から愛している男。
    顔を反らしたままの状態で、目を僅かに見開き、痛いほどシーツを握った。愛しているから守りたいのにどうしてこうも上手くいかないのだろうか。
    重い手をそっと腹に添える。愛した男との子供。ラウダとの子供だ。グエル以外の人間から、祝福してもらえない命。
    グエルにとっては、何事にも代えられない、自分の命よりも大事な存在。
    「そう、だ……俺が、愛した男との子供だ」
    「……そう」
    ラウダの声が低く、重たくて、びくりと思わず体が跳ねた。
    何を言われるのか怖くて、反射的にラウダの体を押して距離を取る為に、ベッドから立ち上がる。…が、足が震えてうまく立てず、その場に崩れ落ちた。
    姉さん、と焦ったラウダの声が聞こえる。ラウダの腕が伸びてきて、体を小さくする。
    ラウダがしゃがみ込んだと思った瞬間、身を小さくして震えるグエルを力強く抱き締めた。後頭部に手を添えられ、大切な物を自身の体でくるむようにされている。じわりと瞳の奥が熱くなった。
    「姉さんがそう言うのなら、僕の子供じゃないのかもしれない」
    行き場のない手が、病室の床にぎちりと爪をたてる。そうだ、それでいい…ほっとして顔を綻ばせたが、でも、とラウダの言葉が続く。
    「姉さんがなんと言おうと、その子供は僕の子供ってことにする。父さんにだってそう言うから」
    「なっ!?」
    あまりの言葉に動揺し、ラウダの肩を叩く…が、今度はびくりともしなかった。それどころか、更に力をこめて身を寄せられる。

  • 160二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 01:06:31

    頭が混乱して、ラウダの腕やら肩やらを弱々しく叩くがびくともしてくれない。心が、精神が、グエルの全てが揺れている。お前を守れないんだったら、俺はどうすればいい……肩に額をあてて、どうして、と言葉を零した。

    「お前の、子供じゃない!どうして…分かってくれないんだ……」

    「じゃあ鑑定でもする?妊娠中でも母体の血液から出来るらしいよ。勿論男性のサンプルも必要だけど…。学生を片っ端からあたるとして、最初は姉さんの一番身近にいる存在として僕のを提供することになるよ」

    「か、鑑定……」

    そんなのは困る。言葉で誤魔化しても、流石に遺伝子は誤魔化せない。

    表情を曇らせて動かなくなったグエルの頭をラウダの手が滑る。その手があまりにも優しくって、なぜだか視界が歪んだ。まるで愛されているみたいな、慈しみに満ちた手つきだ。

    「結婚の話を破談にする為には、相手を見つけないと。父さんだって納得してくれないよ」

    「そ、れは…」

    「それとも…シャディクと結婚したい?」

    慌てて首を横に振ると、ふ、と小さな息がラウダから溢れた。

    「姉さんに好きな人がいて……子供の父親はその人だったとしても……」

    床に爪をたてていた手が掬われて、指を絡められる。労るように優しく握られた。

    「連絡がつかない姉さんを探しにこないような…そんな人よりも、」

    胸に心臓の音が響く。激しく、脈打つ鼓動。強く抱き寄せられて、胸と胸とがぴったりと合わさっているので、これがどっちのものか分からない。

    包み込まれている体温があまりにもあったかくて、知らないうちに血の気が引いたグエルの頬にほんの僅かに赤みが差している。

    ラウダの言葉が続かない。何かを迷っているようにも思える。その間も、縋るように一生懸命片手で抱き締められていて、困惑する。

    肩を抱き寄せられ、グエルの額に熱を持ったラウダの頬が擦り寄せられる。姉さん、と熱っぽい、じっとりとした声で呼ばれて、どきっとした。

    「ラウダ……?」



    dice1d2=1 (1)

    1.「……僕を選んで」とグエルに伝える。

    2.何かを言いかけたが、途中でやめたらしい。ぎゅーっとひたすら抱き締められた。

  • 161二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 01:10:04

    ラウダー!!!!!
    覚悟決めたな!!!

  • 162二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 01:12:26

    やったー!!!!!!!ダイス神ー!!

  • 163二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 01:13:57

    言えたじゃねぇか…

  • 164二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 01:28:58

    やった!!やったー!!ついにラウダが想いを伝えれた…!!!長い道のりだったから感無量だよ…

  • 165二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 01:40:39

    踏み出した!!!!

  • 166二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 01:48:25

    やったーー!!!!!!
    今夜は宴!!!

  • 167二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 07:51:34

    正直めちゃくちゃ嬉しい

  • 168二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 08:50:07

    やったなあラウダ……!!!

  • 169二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 14:31:57

    そしてグエルに素直に受け入れてほしい保守

  • 170二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 14:52:55

    ずーっとずーっと回り道してやっと言えたんだもんなあ…
    グエルにも一人で抱え込まずに本音を言ってほしいよ…
    まだ妙な誤解が解けてないが

  • 171二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 15:27:32

    今日をラウダおめでとう記念日にします!
    やったぜ!お祝いしちゃう㊗️

  • 172二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 16:31:01

    進めた記念日だ!

  • 173二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 17:32:18

    めちゃくちゃ大興奮してる
    このままハッピーエンドへゴー!!!!!

  • 174二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 18:48:13

    グエル、素直になれ!

  • 175二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 19:52:52

    大切なところはしっかり選べて偉い!!!!

  • 176二次元好きの匿名さん23/08/22(火) 23:26:35

    保守

  • 177二次元好きの匿名さん23/08/23(水) 04:25:44

    ほっしゅ

  • 178二次元好きの匿名さん23/08/23(水) 12:16:04

    保守

  • 179二次元好きの匿名さん23/08/23(水) 18:51:07

    保守

  • 180二次元好きの匿名さん23/08/23(水) 21:59:05

    「……僕を選んで」

    小さな声だが、はっきりとそのラウダの言葉はグエルの耳に届いた。
    痛いほどぎゅーっと力一杯抱き締められる。自分を包み込むラウダの体がすごく熱い。不思議と、指一本動かせなくて、グエルは人形のようにラウダに抱き締められたまま何も出来ないでいる。
    ぼくを、えらんで。
    頭の中でさっきのラウダの声が聞こえる。ラウダに、この子供の父親は愛した男だと伝えた。そしてラウダは、そんな男よりも僕を選んで、と言っている。
    (それって、つまり……)
    頭の中がぐるぐるする。さっきから驚いてばっかりだし、ずっと混乱しているような気がする。
    体が熱い。ラウダの体から熱が伝わってきているのか、自分の体が熱を持っているのか分からない。
    じわじわと頭の中にラウダの言葉が溶けていく。思わずラウダの顔を見たら、ラウダの顔は真っ赤だった。何かをこらえるように口を真一文字に結んで、じっとグエルの顔を見ている。
    グエルが愛してやまない琥珀色の瞳には、目を見開いてぽかんとした顔をした自分がいる。その姿はとてもまぬけなのだが、そんな自分の姿を映したラウダの瞳は何処までも美しく、今その琥珀色には熱がこもっている。
    その瞳にあてられるように、頬が火照った。唇が震えて、え、と小さな声が漏れ出る。

    「なっ!?お前っ!?」

    思わず体を突き放しそうになったが、それよりも先にまた抱き締められて肩口に顔を押し付けられた。

    「ごめん、僕だってこのタイミングで言う気なかったよ!でも姉さんが全然認めてくれないから!」
    「な、お前…!俺たち、血が繋がった姉弟なんだぞ!」
    「は、半分しか繋がってない!」
    「半分も、繋がってるんだ!」

    身動きは取れない…が、こんな茹で蛸みたいに真っ赤になっているであろう顔をラウダに見られないのは助かったかもしれない。
    ラウダになぜか腹の子供の父親は自分だと言い出された上に、す、す、好きだと…言われた…たぶん……いくら色恋沙汰に鈍いとよく言われるグエルにだって分かる。ラウダの言う「僕を選んで」の意味くらい。
    グエルとラウダは母が違うと言っても姉弟で。こんなことは許されて良いはずがない。
    しかもこんなタイミングで言うんだから、最悪、ラウダの目から見たら孕ました男に逃げられた可哀想な姉に映っているのかもしれない。

  • 181二次元好きの匿名さん23/08/23(水) 22:02:06

    同情。哀れみ。そんな感情がラウダの中にあって、それが元からあった家族愛と混じり合って、こんな、勘違いを……
    心臓がうるさい。顔が熱い。グエルの中で色んな感情がごった返してえらいことになっている。
    俺たちは姉弟なんだ。こんなこと、いけないに決まっている。自分には心の決めた男がいて、ラウダにどう言われようが腹の子の父はお前じゃない、その男だ、というべきだ。そうすれば、ラウダを守れる。
    ごくりと咥内にたまった唾を飲み込む。
    自分は姉で。ラウダは弟。姉は弟を守らなくちゃいけない。ただでさえ、出来た弟であるラウダに比べて、姉らしいことを何一つとして出来ていない不出来な姉なんだ。こんな時位弟を守ってやらなくてどうする……
    そう思うのに、混乱の為に少し引っ込んだ何かがまた込み上げてきた。じわりと視界が滲む。
    正常な思考がどろどろに溶けていく。姉としての弟への愛。世間の目。父からの失望。だめなのに、だめだと分かっているのに、心臓が激しく脈打つ。
    どうしよう、どうすればいいんだ……熱が籠った頭で考えるが良い方法が思い付かない。
    さっきから何度もラウダの声が響いている。僕を選んで。そんな言葉、言われるとは思っていなかった。
    ほわ、ほわ、と心に温かいものが降り注ぐ。言葉が零れそうで、ぎゅっと唇を結んだ。
    受け入れるべきではないのに、ラウダからの言葉がずっと頭に響いてグエルの心に温かいものが溢れてくる。
    こんな気持ち、殺すべきだと思っていた。間違った感情を抱いてしまったと。傍に居て欲しいだなんて、恥ずかしい言葉を口に出して、でもラウダがその言葉を無視して部屋から出て行ってしまった時、こんな感情に気付かない方が楽だったかもしれないとさえ思った。
    たぶん、自分の感情も、ラウダの言葉も、きっと正しくない。姉弟間で持つべき感情ではない。
    (でも、俺も…ラウダのことが、)
    様々な感情が嵐のようにグエルの中で吹き荒れる。さっきからラウダの胸の中で、少しだけ口を開けて、閉じて、を繰り返している。
    ぎゅーと顔をラウダの体の押し付けられて、手も痛みを覚えるほど強く握られている。熱い、けど嫌な熱さじゃない。思考も心もどろどろに溶かされて、頭も頬もぼぅ、としてきた。
    「姉さんは、僕に触れられるの…いや、じゃない?」
    「嫌、じゃない…当たり前だろ…」

  • 182二次元好きの匿名さん23/08/23(水) 22:04:03

    今更何を言っているんだ、というか触りたくないのはお前の方だろう、と言いたいが、ラウダの口から安堵の息が零れてるのが聞こえてきて口を閉じる。
    前からラウダに抱き締められるのが好きだった。この腕の中が、この世界で一番幸せな場所だと思っていた。
    (温かい…幸せだ……)
    今正に道を踏み外そうとしている。こんな場面で思って良いはずがないのに、多幸感に包まれる。知らない内に涙が一筋頬を滑り落ちていった。

    「僕のこと嫌だとか…姉さんにこんなことを言うなんて気持ち悪いって思うなら、離れて」

    ラウダの手が背中を優しく叩いた後、グエルの体を抱き締めていた手が離れていく。それと同時に、縋るように握られていた手も離れていった。
    あっ、と小さく声を零す。熱が離れていくのが寂しくてたまらない。また床に落ちた情けない自分の手をじっと見つめる。
    姉として、馬鹿なことを考えるなと弟を叱るべきなのにグエルの体は動かなかった。
    今ならまだ引き返せる。そう思うのに、この体はラウダから離れることを拒んだ。
    震える唇を噛む。嗚咽を噛み殺し、頬を濡れる感触を無視した。
    揺れる手を動かし、目の前にあるラウダの体に手を伸ばす。指がラウダの背中に触れ、体を寄りかからせたら、ラウダは後ろに傾ぐことなくグエルを抱き留めた。
    ラウダのぎこちない手がグエルの背に回される。首にラウダの髪がかかってちょっとだけこそばかった。
    「僕、単純だから勘違いしちゃうよ…?良いの?」
    こくりと頷く。本当は言葉に出してくれたラウダのように、何かを言いたかったのに言葉が出ない。口を開けば嗚咽が零れそうで必死になって堪えた。
    「僕と、同じ気持ちだって思っても良い?」
    もう一度首を縦に揺らす。ラウダの声が優しくって、穏やかで、じんわりと弱った心に染みいった。
    ラウダの顔を見られないし、顔を見せることもできない。たぶん、ひどい顔をしていると思う。
    ぐす、とはなをならすと、慌てたように更に力を込めて抱き締められた。
    「嬉しい。夢みたいだ」
    ラウダの熱い指が首をなぞる。思わず嗚咽とは違う声が漏れそうになって、背中が小さく跳ねた。
    「姉さん、」
    頭を撫でられる。子をあやすような優しい手。殺しきれなかった息を零しながら、グエルもまた力一杯ラウダに抱き付いた。

  • 183二次元好きの匿名さん23/08/23(水) 22:43:34

    dice1d2=2 (2)

    1.ぎゅーぎゅー抱き付いてくる姉さん可愛い…ちょっと位…良いよね…(いちゃつく)(欲望の勝利)

    2.姉さんすごく可愛い……どきどきする……で、でも姉さんは絶対安静の身だから…が、我慢しよう…(さっさと病室から出る)(理性の勝利)

  • 184二次元好きの匿名さん23/08/23(水) 22:45:16

    ラウダー!!理性が勝つのはいいけど病室にはもうちょっといろ!!!

  • 185二次元好きの匿名さん23/08/23(水) 22:47:11

    気持ちが通じ合えたのは大変おめでたくてエンダアアアアアァって感じなんだけど
    婚約の話とか後継者の話の誤解とか何も解決してないからもうちょっとお話してもろて…

  • 186二次元好きの匿名さん23/08/23(水) 23:16:54

    くそお、理性が勝つなんて…!
    でもだったら、ヴィムにガチで姉さんはぼくのものだ!をやってくれえ!(味方もいっぱい作って!)

  • 187二次元好きの匿名さん23/08/23(水) 23:19:57

    おい!そこで引くな!
    抱けー!抱けー!(抱きしめろの意)

  • 188二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:03:56

    やっと気持ちが通じ合ったラウグエのイチャつきが見たかった…ダイス神がそう甘い展開にはしないよと告げている…

  • 189二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:06:17

    二人の気持ちが通じ合ったのは良いんだけど期日が迫ってる婚約のことはラウダ知らないのに病室から出てしまうのはマズイのでは…

  • 190二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:26:32

    ダイス神!!!二人のいちゃつきが見てぇよ!!?

  • 191二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:27:52

    互いに縋るようにぎゅーぎゅーと寸分の隙間無くぴったりと体を重ねて暫く抱き合った。
    体の頭の中も心もふわふわしている。すごい。油断をすれば顔が緩みそうだ。ぎりぎりのところでラウダは耐えていた。
    同じ気持ちだと姉は言ってくれた。言ってくれた、というか頷いてくれた。
    姉の優しい嘘かとも一瞬疑ってしまったが、こんなタイミングで嘘を吐く筈がない。というか、ラウダの子供であるとさえ認めてない姉なのだ。間違いなく嘘ではないだろう。
    まさか受け入れてもらえるとは思っていなかった。
    間違っても、今、このタイミングで告白しようなんて思っていなかった。弾みというやつである。
    ラウダは確信していた。姉の腹に宿る子供は自分の子供であると。ラウダが聞けばもしかしたら認めてくれるかもと思ったのに、グエルは絶望に満ちた顔をしながらも必死に「お前じゃない」と譲らない。こんな事態になってまで、ラウダを守ろうとしていて心が痛んだ。
    百歩…いや、百万歩くらい譲って他に男がいると仮定しよう。仮定だ。あくまで仮定の話だ。
    でも、連絡がつかない、消息を絶った姉を探しに来ないような男、やっぱり姉に相応しくない…とそこまで考えて、かつて自分が姉を孕ませた男に対する様々な感情を思い出した。
    未成年相手に避妊もせずに…無責任な男だ……有り得ない……姉の相手になど相応しいわけがない…殴ってやる……過去の自分の怒りに満ちた言葉がブーメランのようにラウダに勢いよく、そして深く刺さった。思わず、う、と呻きながらも、グエルを抱き締める手を緩めない。
    これから挽回しよう。そうしよう。姉から後で殴ってもらうことにする。シャディクとの婚約の話は止まったままだ。きっとまだ遅くはないはずだ。
    (姉さんは僕を選んでくれた……!)
    胸の中にある体温を感じながら、ぶわっとラウダの心に多幸感が溢れてくる。
    嬉しい、嬉しい…こんな嬉しいことがあるのだろうか、と思う位には喜びに満ちている。顔は真っ赤で、勢いしかなかった告白だった。かっこよく決めたかったけど、たぶん必死な表情をしていたと思う。もっと言うべき言葉だってあった筈だ。言葉も足りなかったように思うけど、姉に伝わって良かったと今心底ほっとしている。
    (姉さん…)
    時折殺し損ねたらしい嗚咽を漏らしながら、姉が抱き付いてきている。熱い。色んな意味で体も熱いし、頬も火照っている。

  • 192二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:30:14

    きっと顔を見られ無くないだろうから、姉の顔は見ないことにした。本当は、すごく見たいけど……ここはぐっと堪える。
    (キス…していいかな…)
    選んでくれた嬉しさから、ちょっと自分がどうかしているという自覚はあるのだが……如何せん、幸せに溢れた自分は大分ふわふわしている。
    つつ、と背中を優しく撫であげながら、ラウダは考える。
    勘違いでなければ、こ、恋人同士という関係になったはずだ。たった今。ラウダとグエルは。
    今まで行為の最中に愛撫の一環として唇を重ねることはあった。グエルは口づけが好きだったし、自分からねだってくることも多々あった。
    特に深いキスが好きで、ねだる時に唇を重ねながら遠慮がちにぺろぺろと閉じた唇を舐めてくる所が可愛くて可愛くて好きだった…むず、と心の中の欲望が膨れあがるのが分かる。
    でもあくまで行為の中だけの話だ。
    普段の時は、キスなんて勿論しない…だってただの姉弟で特別な関係ではなかったのだから。
    抱き締めるのだって気持ちいい。姉の体温を感じて、縋ってくる様にどきどきする…すごく可愛く思えるし、正直泣きたいほど嬉しい。
    ごくり。咥内にたまった唾を飲み込む。姉の柔らかな唇の感触が思い出されて、少し落ち着いた筈の心臓がまたバクバク激しく脈うつ。ふにゅ、と押し付けると形を変える柔らかなグエルの唇。…だめだ、一度思い浮かべると、頭から離れなくなってきた。
    しかし、キスだけで今の歓喜に満ちた自分は止まれるのだろうか、とちょっと不安になってきた。
    もっといっぱい、たくさん触れて、姉を感じたいと思ってしまうのではないだろうか…勿論、行為なんて絶対にしないが。いっぱい触りたくなってしまう気がする。
    ラウダ・ニールという人間は自分が思っていたよりも、遙かに欲深い人間だったらしい。
    さっきまでグエルと同じ気持ちだったことを喜び、幸せに溢れて姉を抱き締めることしか出来なかったのに、数十分経てばこれである。自己嫌悪が重くのし掛かった。
    (姉さんは、安静の身なんだ…我慢だ、我慢………)
    寸分の隙間無くぴったりと胸と胸とを押し付けているグエルにばれないように、少しずつ息を吸い込む。
    消え去れ、煩悩。勝利せよ、理性。すぅ、はぁ、と静かに、そして深く呼吸を繰り返す。
    うん。頭に酸素が行き渡り、良い感じに頭が冴えてきた。

  • 193二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:32:17

    さっきまでの姉の様子を思い出す。まともな食事もとれなくて、ちゃんと寝ている様子もなかった。可哀想なほどやつれている姿を見た筈だ…何かあったに違いない。
    頭の中に思い浮かぶのは父とシャディクの姿だ。どちらか、あるいは両方か…。接触して何かを言われた、された、と考えるのが自然だろう。そう考えると、次は違う意味で理性を手放しそうになる。
    (姉さんは僕が守る…)
    グエルはあんな姿になってまでラウダを守ってくれた。今度は、ラウダの番だ。
    (何があっても、僕は姉さんを…)
    目を閉じて考える。グエルはジェターク家も父もこよなく愛している。出来ればこの二つからグエルを離したくない。
    穏便に事を進めたいが…あの父が相手となるとそれも難しい。
    どう話を持ち込めばいいのか正直今も分からないし、シャディクとの子供ではなく…とりわけ姉弟であるラウダとグエルの子供なんてバレたら腹の子供がどうなるかなんて想像するだけでも恐ろしい。
    シャディクのことも気になる。シャディクがなぜ腹の父親を知っていたのかは不明だが、ここも問いつめる必要がある。
    シャディクと父…両方を相手取らないといけない上に、ジェタークの名も守りたい。やることと敵が多すぎて、頭が痛い。くらくらしてくる。
    (…でも、やらなくちゃ…)
    姉さんを守れるのは僕だけなんだ、と自分に言い聞かせる。幸い、手続きに手間取っているのか婚約の話が進んでいるとは聞いていない。何かあったら弟であるラウダに父が何か言ってくるはずだ。手を打つなら今のうちだ。婚約が正式に両家で取り交わされてしまうと、少々めんどくさいことになる。
    …いつまでもこうしていたい。が、姉を休ませる必要があるし、自分もやるべきことは大量にある。
    目を開き、息ができないほど強く抱き締めた後、肩を掴んでグエルの体を優しく離す。特に抵抗もなく、グエルの体はそのまま離れていった。顔を見れば、頬には幾筋の涙の跡が見られ、瞳は少しだけ潤んでいるように見える。
    頬に手をあてる。目尻を親指の腹で撫で、柔く微笑んで見せた。

    「姉さん、今日はゆっくり休んで」
    「……ああ。そうする」

    グエルも目を細めてラウダに笑いかける。ふわふわと愛しい気持ちが溢れてきて、もう一度抱き締めそうになったのを堪えた。
    グエルの腕を掴み、一緒に立ち上がる。さっきよりも顔色はずっと良くなっているように見えて、ほっとした。

  • 194二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:34:45

    「りんご…あ、桃も、オレンジも、食べられそうだったら食べて。無理にとは……言わないけど」
    「ああ。ありがとな。買ってきてくれて」
    「ううん。僕にはこんなことしか出来ないけど…」
    表情を曇らせるラウダに、そんなことない、と言いながら、ぎゅっと手を一度握り、そして離れていく。見つめ合っていたグエルの瞳が伏せられた。
    「お前なら、大丈夫だ。ラウダなら…やれるよ」
    そう言われたのだが、一体何を言われているのか一瞬分からなかった。
    けど、ここで言う位だからグエルに関係することだろうか…さっき、父とシャディクをどうにかしないと、と思っていたのが漏れていたのだろうか。
    自分を信じてくれている言葉は素直に嬉しい。うん、と言えば寂しそうに微笑まれた。
    「姉さん、僕、明日も明後日も明々後日も、絶対にお見舞いに来るから。何か欲しいものがあったら言って」
    少しでも姉を元気づけたくて、これからの不安を隠し、努めて明るい声を出せば、伏せられた姉の目がラウダに向けられる。
    青の澄んだ瞳が、ほんの僅かに見開かれて、ラウダ…と小さく名を呼ばれた。ん?と首を傾げてグエルを見ると、少し驚いたような顔をしている。そして、ああ、と何かに納得したのかさっきと同じ笑みを浮かべられた。
    「明後日と…明日はだめなんだ。検査があるらしくて」
    「えっ、そうなんだ…分かった。ここには来ないよ」
    毎日通うと決めていたので、少々…いやかなり寂しい。2日間も姉の顔を見られないなんて嫌だ。
    でもまぁ2日我慢すればまたいっぱいグエルの顔を見られると思えば耐えられる。だって、自分と姉は恋人同士なのだから。
    しかしこのタイミングで検査。しかも2日がかりとはえらく大きな検査らしい。あっ、とある可能性が頭を過ぎった。
    「もしかして検査が終わったら退院だったりする?」
    そう聞くと曖昧な笑みで返される。分からない、とだけ言われて、肩を掴まれた。そのままくるりと体を反転させられて、ぐいぐいと背中を押される。
    「早く帰らないと。寮長がこんなことじゃ示しがつかないだろ」
    「で、でも…」
    「でもじゃない。さっさと帰れ」
    そんなことを言いながらグエルは足で器用に扉を開け、ラウダを扉の外まで押し出した。
    名残惜しいが、ここでごねてもしょうがない。これからやることを頭の中で整理しつつ、一歩踏みだそうとした瞬間、ラウダ!と名を呼ばれて、肩を掴まれる。

  • 195二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:35:59

    そのまま後ろを振り向けば、姉の両手がこちらに伸びてきてラウダの両頬を包み込んで…柔らかくって温かいものがふにゅりと唇に押し付けられた。
    グエルの顔が視界いっぱいに映っている。閉じられた睫毛が赤い頬にかかっていて、それを見ることしかできない。
    突然のことに体は硬直し、目を閉じることさえできなかった。
    小さなリップ音と共にグエルの顔が離れていく。その顔は熟れたトマトみたいに真っ赤で、大変愛らしい。あまりのことにラウダは小さく口を開けて、え?と声をあげた。
    目がグエルの唇から離れない。あれ。もしかして、さっきまであの唇が自分の唇にくっついていたのか。唇と唇がくっつく行為。よく知っている。さっきそれがしたくて、でもぐっとこらえたのだから。
    「ね、姉さん…!」
    「ラウダ!」
    手を伸ばし掛けたが、それよりも先にグエルの声がラウダの耳に届いた。と同時に病室の扉を押さえていた姉の足が離れるのが見える。スライド式の扉がゆっくりと動き出し、すぅ、と大きくグエルが息を吸っているのが見える。

    「好きだ!愛している!」

    そう笑いながらラウダに告げるのが見えて…扉ががしゃんと締まった。
    「姉さん!!」
    グエルの顔が見たい。自分も好きだと、愛していると言いたい。
    思わず扉に縋り付いて、取っ手を掴むが中からグエルが押さえているらしい。びくともしない。
    暫く力と力のやり取りをしていたが、結局ラウダの方が折れることにした。今の姉に無理をさせるわけにもいかない。
    それに、2日経てばまた姉とは会える。その時は覚悟してもらいたいものだ。嫌と言うほど、抱き締めて耳元で愛を囁いてやる。そう心に決めた。
    (早く会いたいな…)
    思わず唇に触れながら、浮ついた気持ちで病院の廊下を歩く。
    ついさっき分かれたばかりだというのに、もう姉の顔が見たい。
    やらなくてはいけないことは多く、敵も多い。上手くいく保証もないが、今この時だけは幸せに浸るのを許して欲しい。
    小さく微笑みながらラウダは帰路につく。病院の外に出た後一度だけ振り返り、そして前を向いてまた歩き出した。

  • 196二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:38:19

    おい!!おいだめじゃねえかおい!!2日経っちゃったら駄目なんだよ!!!

  • 197二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:40:31

    あー切ない………
    想いは通じ合ったけど婚約のことは隠してラウダを巻き込まないっていう選択肢を取っちゃったかグエル…

  • 198二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:41:15

    いやーー!!!幸せだけど幸せの裏にあるものを知ってるからこそ辛い!!!!

  • 199二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:43:12

    切ないし辛いけどスレ主の文章や心理描写がとにかく大好き……ハピエンまで頑張って……

  • 200二次元好きの匿名さん23/08/24(木) 00:43:28

    (次スレたてます。その際に直前にあげた話もまとめて再掲します)

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