- 1二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:50:50
私は目の前の“フラワー”に話しかける。
「ど、どうしましょうスカイさん……」
彼女は見るからに動揺していた……まあ、私もかなり混乱してるんだけども。
目の前のフラワーは私とそっくりの姿をしていた。
そして、私もフラワーの姿になってしまっていた。
お互いに自身の顔を見つめ合いながらどうしたものかと頭を悩ませる。
自分の困り顔ってこんな感じなのか、と変に感心してしまう。
「と、とにかく周りの人たちに迷惑をかけないようにしないと……」
「ん~……フラワーはともかく私の評判は別に落ちようがないと思うけど」
「そんなことありません!」
フラワーが私の顔でずいと迫ってきた。
まるで自分に怒られているみたいでかなり心臓に悪い。
とりあえず、今日は二人ともちょうどオフだから自室でおとなしくしていようと話していると。
「スカイさん」
キングが話しかけてきた。
「やっほー……じゃなくて、おはようございますキング、さん」
しどろもどろになりながらキングにあいさつを返す。
「あら、フラワーさんおはよう……なんでスカイさんじゃなくてフラワーさんが真っ先にあいさつを……?」
「そそそ、そんなことより!わた、スカイさんになにかご用ですか?」
私の姿のフラワーは目を白黒させている。
ここは私がなんとかしないと!
「なにって……今日はスペさんたちと遊びに行く約束でしょう?」
「……あっ」
こうして私たち、特にフラワーのドタバタの一日が始まったのだった。 - 2二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:51:23
「あら、セイちゃんが時間ぴったりに来るだなんてだなんて珍しいですね」
「このキングが迎えに行ったんだもの、当然よ!」
「……そう言って前は木の下で一緒に寝てたデース」
「まあまあ!今日は楽しもうね、セイちゃん!」
……冷や汗が止まりません。
本当のことを言ってしまいましょうか?
いや、スカイさんの身体で言ったところで冗談だと思われるのがせいぜいでしょう。
スカイさんのご迷惑にならないようになりきらないと……!
そう固く決意していると。
「スカイさん?早く行くわよ?」
……置いて行かれそうになっていました。
「今日はどうするんデス?」
「う~ん、特に決めてないわよね?」
よかった、スカイさん発案のものがあったらどうにもなりませんでした。
するとグラスさんが指を立てて提案をします。
「じゃあ百貨店に寄ってもいいですか?お香を見たいので」
「そこならほかの用事もすませられるかもね!」
こうして百貨店へ向かうことになったのですが……。 - 3二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:51:54
歩いている私を見てエルさんが首をかしげます。
「……セイちゃんなんか妙に姿勢よくないデスか?」
「えっ!?そ、そんなことないよ?」
「たしかに身体の前で手を組んでてお行儀いい感じだよね」
あわてて手を頭の後ろで組みます。
スカイさんの歩き方ってこんな感じだったですよね……?
「いやー、なんとなくね!?たまには歩き方を変えてみようかなって!」
「どんな気分ですかそれ……」
なんとかごまかせた、のでしょうか?
安心していると服の裾を引っ張られました。
袖をつかんでいる腕を目で辿ると、心配そうなまなざしのキングさんがいました。
「……体調悪かったなら言いなさいよ?」
スカイさんの身体な分キングさんの顔が普段よりずっと近くて。
キレイな緋色の瞳だなあなんて、呑気なことを思ってしまいました。 - 4二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:52:24
- 5二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:52:37
支援
- 6二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:52:40
お香を扱うお店に入るとほんのりといい香りが漂ってきました。
グラスさんが上機嫌で店内を巡り、そのあとを私たち四人がついていきます。
ふとあるものが目に入りました。
ほかの四人から離れて、棚に陳列されているお香の一つを手にします。
小さくて白い、可憐な花のパッケージ。
「あら、セイちゃんもお香に興味が?」
後ろから声をかけられ、しっぽが逆立ってしまいます。
振り向くとグラスさんが首をかしげて立っていて、どこかいぶかしげな眼差しでこちらを見つめています。
「う、うん!ちょっと試してみようかなーって」
誤魔化すようにサンプルのお香の欠片を電子香炉の上に置きます。
「セイちゃん、あなたお香をかいだら寝てしま───」
甘く爽やかな香りが鼻をくすぐります。
すう、とグラスさんの声が遠くなって視界がうすぼんやりと……。
「スカイさんっ!」
気がつくと私はキングさんの腕の中にいました。
「あれ……私、いったい……」
お香の甘い香りの上にキングさんの匂いが重なっています。
心臓もどきどきとせわしなく動いていました。
「やっぱり体調がよくないんじゃないかしら、スカイさん。私が寮まで送っていくわ」
「わ、私も送っていくよ!」
心配そうな顔をしているスぺさんをグラスさんが手で制します。
「……いえ、キングさんに任せましょう。あまり大人数でついていくのも迷惑でしょうし」
エルさんが一瞬目を細めて、それからにこりと微笑みます。
「そうデスね、ここはキングに任せまショウ。お見舞いにたっぷりのチリソースを持っていきマスね!」
「あまり刺激の強いものはダメですよ、エル」
「果物とかたくさん持っていくからね!」
私はスカイさんになり切れなかった情けなさと、スカイさんが素晴らしい人たちに囲まれている嬉しさでいっぱいになってしまいました。
三人のあたたかい声を背中に、キングさんと一緒に寮への帰路を歩きました。 - 7二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:53:13
「……自分の身体じゃないと大変そうね、フラワーさん」
「そうですね……って、ええっ!?」
さらりと自分の名前を呼ばれて驚いているとキングさんが肩をすくめます。
「一応同期だし、フラワーさんとも一緒に練習してるから。思いかえせば二人で深刻そうに話し合ってたわね」
「その……ごめんなさい、言い出さないでご迷惑をかけてしまって」
「いいのよ、口にするまで正直半信半疑だったもの」
キングさんがやさしく手を握ってくれました。
とくん。
私の、いや“スカイさんの”胸が高鳴ります。
「私でよかったらいくらでも頼りなさい。友人を助けるのも一流のキングの責務よ」
「ありがとうございます、キングさん」
横に目をやると、建物のガラス窓に”スカイさん”とキングさんの姿が映っていました。
連れ添って歩く二人はとてもお似合いに見えて。
また“スカイさんの”胸がとくん、と高鳴りました。 - 8二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:53:28
次の日、私はスカイさんがよく昼寝をしている木の下でぼうっとしていました。
昨日の自分より一回り小さな手を木漏れ日にかざします。
結局、一晩経つと私もスカイさんも元の身体に戻っていました。
まるで夢の中の出来事のようでしたが、キングさんの匂いや手の感触は鮮明に覚えています。
でもあの時のようにどきどきはしませんでした。
どうしてだろうと考えていると、後ろからぎゅっと抱きしめられました。
「やっほー、フラワー。昨日は大変だったねえ」
スカイさんの声。
彼女の声と体温できゅんと胸がときめいて、そして。
とくん。
───それはまるで、昨日キングさんと手をつないだ時とそっくりな音で。
私はスカイさんから見えないように震えそうになる唇をかみしめることしかできませんでした。 - 9二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:55:12
キングを曇らせる代わりにフラワーを曇らせるんじゃない(反省)
そしてそれを他人様のアイデアで書くんじゃない(猛反省)
お目汚し失礼しました
こういうのも書いてます
書いたSSスレをまとめたもの|あにまん掲示板月ごとでまとめるより思い立ったら都度整理してまとめたほうが見やすい(主に自分が)と思ったので以下のスレにまとめてある分も入っておりますのでご留意くださいhttps://bbs.animanch.com…bbs.animanch.com - 10二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:57:15フラウンスで精神入れ替わり物が見たい|あにまん掲示板なんかの拍子に二人の精神が入れ替わって数日間ばれないように生活する話が見たい。フラワーになったセイちゃんが戻った時にフラワーに迷惑かけないようにと必死にフラワーエミュしてるのが見たい。最終的にぼろ出し…bbs.animanch.com
こちらのスレからアイデアをいただきました
まだまだ募集中ですので皆さまもぜひご参加ください(宣伝)
- 11二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 23:08:55
素晴らしい…
- 12二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 23:19:44
あぁこれグラスはセイちゃんのアシストのつもりでキングに1人で送らせたのかな