【SS?】風のドト三郎

  • 1二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:53:57

    元ネタ:風の又三郎/宮沢賢治

    どっどど どどうど どどうど ドトウ
    青いターフも吹きとばせ
    煙たいダートも吹きとばせ
    どっどど どどうど どどうど ドトウ

     府中のあたりにトレセン学園がありました。
     寮はたった二つでしたが生徒は2000人あまりありました。
     運動場も様々なコースを再現したレース場くらいでありまして、
     すぐうしろは東京レース場でしたし、運動場のすみには嘆きを詰め込む木の穴もあったのです。
     さわやかな九月一日の朝でした。青ぞらで風がどうと鳴り、日光は運動場いっぱいでした。

     制服を着た中等部の子がふたり、正門から玄関へ走って来て、まだほかにだれも来ていないのを見て、
     「ほう、ボクが一着だ。一着だね!」「はぁ・・・落ち着きなさいよ」と揃って教室にはいって来たのでしたが、
     ちょっと教室の中を見ますと、二人ふたりともまるでびっくりして棒立ちになり、
     オペラオーが呆然としており、アヤベさんも何が起こったのかわかっていませんでした

  • 2二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:55:49

     というわけは、そのしんとした朝の教室のなかにどこから来たのか、
     まるで顔も知らないおかしな鹿毛の生徒がひとり、いちばん前の机を破壊していたのです。
     そしてその机といったらまったくこのオペラオーの机だったのです。

     アヤベさんももう半分混乱していましたが、それでもむりやり目をりんと張って、
     そっちのほうをにらめていましたら、ちょうどそのとき、廊下から、
    「ぐらすは でかけつでーす。」と高く叫ぶ声がして、それからまるで大きなコンドルのように、
     エルコンドルパサーがかばんをかかえてわらって教室へかけて来ました。
     と思ったらすぐそのあとからスぺシャルウィークだのグラスワンダーだのどやどややってきました。

    「どうしマシタ? 何突っ立てるデース?」 エルがアヤベさんの肩をつかまえて言いました。
     するとアヤベさんが教室の前の方を指さしました。
     みんながあたりを見ると、教室の中にあの鹿毛の子がすまして、机を破壊しているのが目につきました。
     みんなはしんとなってしまいました。
     だんだんみんなも集まって来ましたが、だれもなんとも言えませんでした。

  • 3二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:56:43

     鹿毛の生徒は焦った様子でこちらに気づかず、ぐぐっと机を破壊しています。
     するとトレセン学園のトレーナーが来ました。
     トレーナーはゆっくり大またにやってきて、みんなを見て、
    「どうした。」とききました。
     みんなははじめてがやがや声をたててその教室の中の鹿毛の子を指さしました。
     トレーナーはしばらくそっちを見ていましたが、やがてカバンをしっかりかかえて、皆を呼んでさっさと運動場のコースへ行きました。

     みんなもすっかり元気になってついて行きました。
    「だれだ、時間になっても教室にいるのは。」トレーナーは廊下から教室の中へ顔をつき出して言いました。
    「天気のいい時、教室にいても、トレーニングはできないわよ。」トレーナーの後ろからアヤベさんが言いました。
    「ボクの机のことは・・・?」オペラオーが言いました。

    「早くコースに行こう」トレーナーが言いました。
     けれどもそのこどもはきょろきょろ教室の中やみんなのほうを見るばかりで、
     やっぱりちゃんとひざに机の足をおいて机を破壊していました。
     もうオペラオーの机は、その形からが実におかしいのでした。

  • 4二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:57:29

     その子は、だぶだぶの宝塚記念優勝レイを肩にかけ、青と白の勝負服を着ていたのです。
     それに顔といったらまるで栗のような口、ことに目はジト目で綺麗な紫色なのでした。
     いっこう言葉が通じないようなのでトレーナーも全く困ってしまいました。

    「あの子は外国から来たウマ娘だな。」
    「トレセン学園に転校して来たのかな。」みんなはがやがやがやがや言いました。
     ところがジュニア級のオペラオーがいきなり、
    「ああ!きっとトゥインクルシリーズを走るのだ!」と叫びましたので、
    「そうなのかな?」とアヤベさんは思いましたが、トレーナーはだまって首をまげました。
     変なこどもはやはりオペラオーの机を破壊するだけ、きちんと腰掛けています。
     そのときデジタルが教室に入ってきて、「はわわ~~!美少女ウマ娘ちゃん!」と言うので、
     みんなはやっとわらってすこしうごいたようでした。
     するとデジたんがすぐ叫びました。
    「ああ! メイショウドトウさんはこちらのクラスなんですね!」

  • 5二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:58:12

     メイショウドトウという名前なのかとみんなもおもったとき、にわかにうしろのほうでエルが、
    「グラス、許してくだサーイ!」と叫びました。
     みんなそっちへ振り向きますと、エルがグラスに後ろ襟を掴まれて、まるでおこってエルに切腹を申しつけていたのです。
     するとスぺちゃんが
    「もう、グラスちゃん、エルちゃんに何されたの?」と言って仲裁に入りました。
     エルまるで顔じゅう涙だらけにしてスぺちゃんにしがみ付きました。
     
     そこでトレーナーが間へはいってグラスを押えてしまいました。
    「教室で喧嘩するんだったら、メイクデビューは走らせられないぞ。」とトレーナーが言いながらまた教室のほうを見ましたら、
     トレーナーはにわかにまるでぽかんとしてしまいました。

  • 6二次元好きの匿名さん21/12/17(金) 22:58:49

     たったいままで教室にいたあの「鹿毛」の子が「影」もかたちもないのです。(エアグルーヴのやる気が下がった)




       どっどど どどうど どどうど ドトウ

       青いターフも吹きとばせ

       煙たいダートも吹きとばせ

       どっどど どどうど どどうど ドトウ

       どっどど どどうど メイショウ ドトウ


    宮沢賢治 風の又三郎www.aozora.gr.jp

    おわり

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています