- 1二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 21:54:22
「チャンピオンズミーティング……ダイエット?」
「……これからトレーニング後に英語の勉強も入れようか」
「なっ、なんでですかあ!?」
ヒシミラクルは驚愕の表情をこちらに向ける。
彼女が眺めているトレーナー室のカレンダーには様々なスケジュールが書き込んであった。
その中には彼女が直接関わらない予定も含まれていて、彼女の目にしたのもその一つ。
そこには『チャンピオンズミーティング DIRT』と書かれていた。
俺は椅子に腰かけながら小さくため息をついた。
「ダートだよ、ダート」
「えっ? …………あっ、あはは、嫌だなー、冗談ですよー」
ぽかんと口を開いた後、ヒシミラクルは引きつった笑顔を見せながら目を泳がせる。
……やっぱり、英語の勉強は取り入れてあげた方が良いのだろうか。
彼女の将来を案じつつ、手元にあったチャンピオンズミーティングの資料を見やる。
「最高峰のウマ娘同士が鎬を削るレースみたいだよ」
「はえー、わたしみたいなふつーのウマ娘には縁がないレースですねえ」
「……まあ今回に関しては条件が合わないからな。観戦はするけど」
「あは、まるで条件が合えば出るつもりだったみたいな口振りで」
「…………次回の条件が楽しみだな」
「マッ、マジかあ、まあ、頑張りますけど、はい」
困ったように眉をハの字型に歪めるヒシミラクル。
自信がない、と瞳は語っているが、諦めの色は感じない。
やれるだけはやってみせるという強い、いや強くはないけれど、しっかりとした意志は感じる。
うん、今の彼女ならばこれで十分だろう。
きっと奇跡を起こしてくれると確信しながら、俺は少し前の言葉を思い出していた。
ちらりと、彼女の腹部に注目しながら。 - 2二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 21:54:37
「ダイエット、ねえ」
「…………何か言いたいことでもあるんですか?」
ヒシミラクルは両手でお腹を隠しながら、じろりとこちらを睨みつける。
いかん、さすがにあからさまに見過ぎた。
慌てて目を逸らすものの、時すでに遅し。
「ふっふっふっ、でも心配はむよーですよ!」
「えっ」
「確かに夏バテのためという免罪符に惑わされそうになりましたけど! ちゃんと我慢したんですから!」
「……おっ、おう」
脳裏に浮かぶは、夏バテ防止のための言いつつ、暴飲暴食をするヒシミラクルの姿。
まあ、食欲が落ちすぎるよりは良いのかもしれないのだが。
ともあれ、我慢したということ自体は事実なのだろう。
なんとなく釈然としない思いを抱きながら、俺は彼女に対して労いの言葉を告げる。
「そっ、そっか、頑張ったんだな」
「…………なんか、ホメ言葉に気持ちがこもって無くないですか?」
「いや、そんなことは」
「さては信用してませんねっ! わたしがこっそり期間限定の超ド級デラックスパフェを食べたと思ってますよねっ!?」
「知らないメニューが出てきた」
「まったく! さてはシロートですね…………ちゃんとその後しっかり運動をしましたもん」
食ってんじゃねえか、という言葉は口から出せなかった。
何故ならば、つかつかと足音を立てながら、ヒシミラクルが俺の眼前に近づいて来たからだ。
怒りと焦りが複雑に絡まったような目、そして微妙に困惑しているような表情。
それはまるで感情に任せて接近したは良いものの、何をして良いのかがわからなくなっているようだった。
彼女はしばらく視線を左右へ彷徨わせて、突然妙案を思いついたように、耳をピンと立たせる。 - 3二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 21:54:54
「じゃっ、じゃあ! 実際に確かめてみれば良いじゃないですかあ!」
そう言って、ヒシミラクルは服の裾を掴むと、勢い良く捲り上げた。
ふわりと、甘い香りが目の前に広がる。
「…………は?」
「どーですか! ダイエットの必要なんてないですよね!?」
一瞬、何をされているのか理解出来なかった。
というか、ヒシミラクル自身も、自分が何をしているのか理解してなさそうだった。
彼女は目をぐるぐると回しながら、どの綺麗なお腹を空気に晒している。
椅子に座っている俺と、立っている彼女。必然的に、俺の目の前には彼女のお腹があるわけで。
ここに至ってようやく現実を文字通り直視した俺は、手で顔を覆い、視界を塞ごうとする。
しかし、その手はがっしりと掴まれて、阻止されてしまった。
「さあ、トレーナーさん! ちゃんと見てくださいよ!」
「ちょっ、ヒシミラクル、君はこの状況をわかっているのか!?」
「トレーナーさんが、見ようともしてないのは、わかってますー!」
いつの間にかヒシミラクルの服の裾は顎で抑えられていて、空いた両手で俺の両手を拘束していた。
普段はズブいのに、こんな時だけ無駄に対応が早い……!
目を逸らしても良いのだが、その場合は顔が抑えられるだけで展開が変わりそうもない。
苦渋の決断ではあるが、俺は諦めて彼女の腹部に視線を向けることにした。
────とにかく柔らかそうだな、まずはそう思った。
お腹にはたるみはなく、かといって痩せすぎということもなく、丁度良い感じに引き締まっていた。
くびれのラインは緩やかな曲線を描いており、ふっくらとしたふくよかさも、同時に感じる。
そのシミ一つない肌は血色が良く、健康的な色合いをしていて、水を弾きそうなほどのハリがあった。
そして中央には小さく、綺麗なおへそが自己主張しており、俺はその部分に思わず見惚れてしまう。 - 4二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 21:55:10
「……トレーナーさん?」
頭上から落ちて来るヒシミラクルの声に、俺は我に返る。
慌てて、彼女のおへそ、もといお腹から目を逸して、口を開いた。
「わっ、わかった! 大丈夫! ダイエットの必要はないから!」
「…………どーして目を逸らすんですか?」
「いや、それは、その」
「まだ信用してないな、シロートめ……じゃあ、お腹に触ってみてくださいよ!」
「はあ!? やめっ、やめろ、やめなさい、やめてください!」
「い~~や~~で~~す~~!」
ヒシミラクルは掴んでいる俺の両手を、自らの腹部に近づけていった。
声を荒げて制止するものの、それはむしろ火に油を注ぐ効果しかなく、彼女の力は強まっていく。
こうなってしまえば、ウマ娘との力の差は歴然。
抵抗虚しく、俺の手は彼女の晒されたお腹へと徐々に近づいていき、やがて指先が接触する。
ぷにっ、と少し弾力のある感触が電流のように神経を駆け巡る。
やがて俺の両手は更に力づくで寄せられて、手のひらごと彼女のお腹に接触してしまう。
すべすべで、なめらかな肌には熱がこもっていて、とても熱い。
しっとりとした触感と、ふわふわもちもちとした触感に、手のひらが包まれていく。
なんか高級食パンに対する感想みたいになってしまったが、とにかく極上の触り心地である。
このまま手を這わせたい、指先を押し込みたい。
そんな邪な衝動が思考を支配し、直後、理性が舞い戻ってきた。
熱に浮かされていた思考は水をかけられたように冷え込んでいく。
どうして俺は、担当ウマ娘の、素肌を晒したお腹に、触れているのだろうか。
さあっと血の気が引いて、俺は顔を上げて、俺の手を抑え込む彼女の目を見つめた。 - 5二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 21:55:29
「ヒッ、ヒシミラクル! これはダメだって!」
声を上げるものの、未だに錯乱状態にあるヒシミラクルには届きそうにない。
手を少しでもお腹から離そうとするが、自身のお腹に押し付けようとする彼女の力にビクともしない。
ならば横方向に軸をズラせば、なんとかなるのではないか。
────後から考えれば、俺もこの時点では錯乱状態にあったのかもしれない。
両手を外側に逃がすように動かせば良いものを、何故か両手を左方向に動かしてしまう。
左手は思惑通り彼女のお腹から離れたものの、右手はむしろお腹の中央に寄ってしまった。
つぷっと、親指の先が、彼女のおへそに入り込む。
「ひゃんっ」
ぴくんと親指から震えが伝わり、甲高くて、どこか甘い声が、トレーナー室に響く。
誰の声だろうという間抜けな疑問が浮かぶが、この場に二人しかいない以上、答えは明瞭。
ヒシミラクルの両手は、いつの間にか俺の手を離し、自身の口元を隠すように抑えていた。
遅れて、ぱさりという音が聞こえて、彼女の服の裾が俺の手を覆うように落ちていく。
俺は急いでお腹から手を離して、少しばかり距離を取るが、何もかもが遅すぎた。
一瞬の静寂。
彼女はみるみるうちに顔を真っ赤に染め上げて、ぷるぷると身体を震わせた。
目はいっぱいに見開かれて、信じられないものを見るような視線をこちらに向けている。
やがて、口元を押さえていた両手を、お腹を隠すように下ろして、大きく口を開いた。
「なにさわってるんですか!?」
「いやいやいやいや!?」
反射的に抗議の声を上げる。
その後、ヒシミラクルの状態を落ち着かせるのに、数分の時を要した。 - 6二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 21:55:47
「……ごめんなさい、クーちゃんは悪い子です」
「……いや、俺もちょっと無神経だったと思う、ごめん」
二人揃って謝罪の言葉を告げながら、頭を下げる。
少し間抜けな光景な気もするが、はっきりと行動と言葉で示すことは大事なのだ。
しかし、トレーナー室には何ともいえない、居心地の悪い空気が引き続き流れていた。
お互い恥ずかしくて、相手の目を見ることが出来ず、会話も上手いこと切り出せない。
仕方ない、お詫びと称して、何か美味しい物でも食べに行くか。
そう思った刹那、疑問が浮かぶ。
ダイエットの話からこうなったのに、お詫びで何か食べさせるのはどうなのか、と。
無神経にも感じるし、またあのお腹にカロリーを貯め込ませてしまうのもアレかもしれない。
……お腹、お腹かあ。
自分の手を見つめると、先ほどの感触が脳裏に蘇る。
漂う甘い香りと直に伝わる身体の熱。
ぷにっとした、柔らかくてハリのある感触。
すべすべでしっとりとした、瑞々しい肌。
ふわふわで、もちもちな、何度も味わいたくなるような触り心地。
おへそに指を入れてしまった時の可愛らしい反応。
生々しく残る様々な記憶は、良くない衝動を刺激しそうになる。
俺は大きく息を吐き出してから、新鮮な空気を取り込んで、今一度冷静さを取り戻そうとした。
「わたしのお腹、好きなんですか?」
突然、耳元に囁かれる小さな声に、俺は身体をビクリと震わせてしまう。
気づかない内に、ヒシミラクルは俺のすぐ横に立って、じっとこちらを見つめていた。
どこか意外そうな表情で、興味深そうな目で。
全てを見透かされてしまった気がして、俺は動揺しつつも言葉を返す。 - 7二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 21:56:03
「そっ、そんなことはないよ?」
「……トレーナーさん目が泳ぎまくってますよ?」
「うっ」
「あは、そうなんだー♪ そうなんだー♪」
ヒシミラクルは満開の笑顔を咲かせると、歌うように言葉を奏でた。
そんな機嫌良さそうな彼女とは対照的に、俺はがっくりと肩を落としてしまう。
担当ウマ娘のお腹に触って悦に入っていた、などと本人に知られてしまった。
言い訳や事情はあるにせよ、事実は事実である。
これは終わったかもしれない────そう絶望していると、彼女がずいっと顔を寄せる。
「あっ、それで、ちょっとだけお願いがあるんですけどー」
「……はい、何なりと申してくださいませ」
「おおう、そうきたか……えへへ、ならお言葉に甘えて」
そう言ってヒシミラクルは、楽しそうに尻尾を揺らめかせた。
「ほら、わたし、油断するとすぐにに欲望に負けちゃうじゃないですか」
「……それ自分で言うか?」
「だから、定期的に体型が変わってないか調べてもらう必要があると思うんです」
俺の言葉を無視して、ヒシミラクルは自身の言葉を紡ぎ続ける。
そして、彼女は再度、自分のお腹を両手で抑えた。
今度は恥ずかしそうに隠すのではなく、むしろ自慢げに見せつけるように。
「それで、あの、たまにですけど、私のお腹を────確かめてくれませんか?」
そう頬を朱色に染めるヒシミラクルの目には、妖しい熱がこもっていた。 - 8二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 21:56:50
お わ り
冒頭の読み間違えを自分でやらかしたので作った話です - 9二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 21:57:41
エッチなことしたんですね?
- 10二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 22:03:13
うおおおおおおおお!!!!!!
ウッ - 11二次元好きの匿名さん23/08/17(木) 22:03:42
ッフゥ〜〜〜〜〜……
感謝しかないな……ここまで来ると『崇拝』の領域だ……
ここに『神殿』を建てよう…… - 12123/08/17(木) 22:54:37
- 13二次元好きの匿名さん23/08/18(金) 05:20:01
こういうのからしか採れない栄養助かる
- 14二次元好きの匿名さん23/08/18(金) 06:47:15
朝から無限にニヤニヤしてしまった
- 15123/08/18(金) 07:21:13
- 16二次元好きの匿名さん23/08/18(金) 07:36:06
トレーナーをイジるひしみー可愛ぇな
- 17123/08/18(金) 07:54:32
たまに調子こいてるミラ子が見たくなりますよね
- 18二次元好きの匿名さん23/08/18(金) 07:55:41
チャンミ用ミラ子作りに励んでたから助かる
- 19二次元好きの匿名さん23/08/18(金) 08:02:57
ミラ子かわいいぜ……
セイちゃんは紙装甲で反動技を使って乙るけど、ミラ子は自爆技を使いながら食いしばりでゴリ押して来る感じがするね - 20123/08/18(金) 19:45:19