お姉ちゃんは――――増した

1二次元好きの匿名さん21/12/18(土) 19:39:34

「ニンニクヤサイアブラマシマシ！」
メガ盛の食券を店員さんに手渡すと同時に、お姉ちゃんはコールした。
ラーメン三ハロン。オグリキャップやスペシャルウィーク等、名だたるウマ娘たち御用達の隠れもない名店だ。ファインのトレーナーこと女騎士ちゃんにこの前教えてもらったのだ。

初めて来たお店で、しかも増しに増した。お姉ちゃんは、ちょっと不安だった。でも、最悪食べきれなくても次元の狭間にしまっとけば大丈夫かなと思っていた。

いよいよ、お待ちかねのラーメンが来た。1.5フィートは積みあがっているであろうもやしと、その上にドバドバかかっている背脂、嗅覚受容器を刺激するニンニクの香り。おいしそう！　興奮して思わず触手が飛び出ちゃいそうだった。

お姉ちゃんは誠実だから、これまで捕食してきた対象を決して忘れない。今回の食事は、逃げたり騒いだり命乞い（※お姉ちゃんが生きたまま捕食する知的生命は、ウマ娘や人間を傷つける存在だけです）をしたりしないが、それ故に純粋に自分自身との戦いになりそうだ。

ラーメンは――おいしかった。温かいもやし、ほのかに甘い背脂、ガツンとくるスープ、ニンニクの刺激、ワシワシと食べ応えのある麺！　食べきれるか不安だったのは全くの杞憂だった。あっさり完食完飲。だが……

お姉ちゃんは――思い出した。明日は、カレンチャンとお出かけする日だ！

カレンチャンとデートに行く予定の情報は、お姉ちゃんの第６結脳には入っていたが、主脳球に移管していなかったのだ。カレンチャンのことなら全て把握しているという慢心が招いた失敗だ。
お姉ちゃんは、周章狼狽した。帰宅してガシガシと歯を磨き、ブレスケアを飲み、内臓を取り出して丸洗いした。
これで一安心。お姉ちゃんは幸せな眠りに就いた。

翌日、待ち合わせには早く着き過ぎた。愛バを待つ時間はじりじりと長く感じる。
あっ、カレンチャン！　カワイイ。尊死しそうになるのをこらえながら、挨拶をした。

だが、お姉ちゃんはウマ娘の嗅覚をあなどっていた。

「お姉ちゃん、ちょっとカワイくないにおいがするよ」
「ﾐ°ｯ!」お姉ちゃんは、申し訳無さと羞恥で果てた。
「でも、カレンのためにいつも頑張ってくれてるんだもんね。たまには栄養がある物を食べたいよね♪」
カレンチャンが理解してくれたおかげで無事に生き返れた。二郎系ラーメンは控えようと思ったけど。