- 1二次元好きの匿名さん21/12/18(土) 20:27:45
- 2二次元好きの匿名さん21/12/18(土) 20:27:54
「お久しぶりです、グッバイヘイロー先輩」
彼女は私の姿を見た途端、迷惑そうに顔をしかめた。
「……何度も言っていますが先輩呼びはやめていただけますかピルサドスキー殿下。あなたとは出走したレースすら被っていないのに」
「国内外を飛び回るウマ娘としては先達でしょう?」
ため息をつく彼女からシャンパンを手渡される。
受け取ったグラスを彼女のグラスと合わせると、チンと軽やかなガラスの音が響く。
「それで殿下はどうしてこの夜会に?ご多忙なはずでは?」
「主催の方とは懇意にさせていただいておりましてね。それに多くの高名なデザイナーが集まると聞きまして」
もちろんあなたも含めてね、と微笑むと彼女は緋色の目を細めた。
「あら、勝負服でも新調なさるおつもりかしら」
「気高く美しいあなたにデザインしていただけるのならぜひ」
彼女が返答しようと口を開いた瞬間、彼女の携帯が震えた。
「……!す、少し失礼するわ」
そう言うといそいそと彼女は会場を離れる。
少し興味を惹かれた私は彼女の後をついていった。 - 3二次元好きの匿名さん21/12/18(土) 20:28:17
人気のない廊下の一角で彼女は目をつぶって祈るように携帯を捧げ持っていた。
なんとも奇妙な光景を私は廊下の角から見守る。
しばらくすると彼女は意を決したように目を開き、携帯を凝視する。
そして。
「……よっし!」
目を輝かせてガッツポーズをした。
よほど嬉しかったのかその場でくるくると踊るように回転していた。
ひとしきり喜んだあと、彼女はほっとしたようにつぶやいた。
「よかったあ……いきなり短距離に挑戦するだなんて聞いたときはどうなるかと思ったけど、さすがは私の娘ね」
そう口にした後、彼女はハッとして首を横に振る。
ぎゅっと眉根を寄せた厳しい表情だ。
「いえ、心を鬼にしなくてはダメよ私。ここでびしっと言わないとあの子は戻れなくなってしまう」
また彼女の表情が変わる。
「……あの子は、優しすぎるもの」
彼女の声はどこかさみしそうだった。
私は自分の携帯を取り出していくつかの語句で検索をかけた。
検索結果を見て苦笑を浮かべる。
「……子離れというのは思ったよりずっと難しいらしい」 - 4二次元好きの匿名さん21/12/18(土) 20:28:29
「ごめんなさい、中座してしまって」
会場に戻ってきた彼女が頭を下げる。
「お気になさらず。ところで先ほどの勝負服の話ですが……遠慮させていただきます」
「あら、別のデザイナーにでも口説かれたかしら?」
私は肩をすくめながら答えた。
「あなたのほうに先約があるようでしたので」
「先約……?」
首をかしげる彼女に微笑みかける。
「高松宮記念、おめでとうございます」
途端に彼女の頬が赤くなる。
口をぱくぱくさせているが、言葉が出てこないようだ。
微笑んだままシャンパンのお代わりを手渡す。
彼女は一息に飲み干すと頬を赤らめたまま、しばらく黙りこくってしまった。 - 5二次元好きの匿名さん21/12/18(土) 20:30:01
キングのお母さんに会えそうな人でぱっと思いついたのがピルサドお姉さまだったので……
いいキャラですよね、両方とも
お目汚し失礼しました
こういうものも書いています
書いたSSスレをまとめたもの|あにまん掲示板月ごとでまとめるより思い立ったら都度整理してまとめたほうが見やすい(主に自分が)と思ったので以下のスレにまとめてある分も入っておりますのでご留意くださいhttps://bbs.animanch.com…bbs.animanch.com - 6二次元好きの匿名さん21/12/18(土) 20:30:26
ぁ゛っ゛こ゛れ゛す゛き゛
- 7二次元好きの匿名さん21/12/18(土) 20:30:55
んー、素晴らしい!
- 8二次元好きの匿名さん21/12/18(土) 20:33:04
- 9二次元好きの匿名さん21/12/18(土) 20:34:21
デザイナー繋がりで話も作りやすそうで芝