- 1二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:09:11
この男のどこがいいんだ?どんなところに好かれる要素がある?
そういった下心はないとはいえ、それにしたって年頃の少女の腿を公衆の面前で平気で触るしデリカシーの欠片もない発言も平気でする
チームの面倒を見ているようで最初はダンス一つ踊らせることもできなかった適当ぶり。自由な気風を重んじると言えば聞こえはいいが要は放任と変わらない勝手さ。時折行う滅茶苦茶なトレーニングだって正しく実になっているかどうかも怪しい
そのくせトレーナーとして自分を高く評価する自惚れっぷり。本業一つでさえこんな有様なのにどれだけ図々しいんだ
普段からも貧乏くじを引いてはチームからは顰蹙され、社会人のわりに常に金欠で同僚にたかってばかり。仮に見た目が良くても中身がこれじゃあ台無しも台無しだ
スピカにいる子たちがどれだけすごいと思ってるんだ
多くの人たちから愛され、応援され、憧れを抱いているか。正直こんなトレーナーなんて相応しくないと言われたらその通りとしか言いようがない
あいつらは優しいからきっとそんな言葉が本当のことでもきっと励ましたり慰めたりするだろう。どんなに能力が見合ってなくても気にするなって笑いかける
それすら申し訳ないと思うべきなんだ
担当の、しかもかなり年齢の離れた年下の少女たちからそんな情けをかけられるなんて、トレーナーとして以前にひとりの大人としてあまりにも情けない
だいたいトレーナーとしてあいつらにどれだけのことをしてやれた?
確かにトレーニングメニューを考えたり、出走までの段取りなんかは業務上は行ってる。日々の練習から溢れた洗濯や備品を片づけたり、エネルギー補給のための軽食を作ったり。あいつらが走りに専念できるようできるかぎり努めていた - 2二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:09:35
けど、それだけじゃないか?
いざそんな普段の業務の範疇から外れた出来事があった時、俺はなにをしていた?
あいつらが怪我で走ることを諦めるしかなかった時
どうしようもない壁にぶつかって自分を見失いことがあった時
まだ未成熟な精神では到底受け止めきれない現実を前に、あいつらはどれだけつらい思いをしてきたことか。
考えることはできても俺には一生その気持ちを完璧に理解してやれることはない
走っているのはあいつらなんだ
誰かに勝ちたいと願う気持ちも、もっと速く走りたいと望む気持ちも、あいつらにしかないあいつらだけの世界だ
どれだけ打ちのめされた
どれだけ悔しさに泣いた
どれだけ負けを知ってきた
俺には届かない世界であいつらは懸命に走って走って走って
その分を挫けて、その度にあいつらは――――また走り出していた
絶望の淵を彷徨いながら懸命に立ち上がってどんな逆境だろうと乗り越えた
そこにはあいつらにしか分かり合えないあいつらの気持ちのぶつかり合いがあり、互いに認め合ってるからこその覚悟があった
あいつらはあいつら自身の力でまた走り出す道を選ぶことができる強さがあるんだ
そんなあいつらに比べたなら、あいつらにとっての俺なんて本当に微々たる存在でしかない
別にそれは自分を卑下しているからじゃなく、主役を引き立てる脇役としてあいつらを輝かせる立場ならむしろそれはトレーナーとしての本懐だろう
俺自身があいつらの中でどれだけ僅かな存在だったとしてもそれで不貞腐れることなんてしない。むしろこんなダメな男をトレーナーとして置いてくれるだけでありがたいとすら思う - 3二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:09:51
結局俺は、最後には泣いてばかりだった
みっともないエゴイストの塊でしかなく、ただ自分の夢を望むばかり、どうしようもなくなれば情けなく涙を流していた
その涙はあいつらが流した涙なんかとは比べるのもおこがましいほど軽いものだ
なのに俺は泣いてばかりいた。こんな俺があいつらにどれだけのことをしてやれたって言うんだ。俺が泣いてあいつらの何が救われる?あいつらの何が報われる?
好かれる要素なんてどこにもないさ
もちろんあいつらはそんな軽薄な奴らじゃない。例えこんな俺でもそれなりにトレーナーとして立ててくれる。仲間として一緒にいさせてくれる
いろんな人たちから愛されてる凄い奴らからそんなふうに扱ってもらってるんだぜ?こんな嬉しいことはないだろう
あいつらだってまだまだ子供だ。どうしたって落ち込むことだってあった。走ることだって嫌になったこともある
それでもあいつらはまた走ることを選んだ。他でもない、このチームスピカとして。
なら、俺はあいつらのためにあいつらの背中を押してやりたい
どれだけのことをしてやれているかはわからない。もしかしたら他のトレーナーの指導を受けていれば今よりももっと強くなっていたかもしれない。あいつらは1人1人が立派な信念を持っているからこそ、きっと他の場所だってやっていける。それだけの強さがあいつらにはあるんだ
だけどあいつらはスピカのウマ娘として走ってくれた。ほかのどこでもないスピカとして。 - 4二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:10:07
俺が好かれることなんてないのは百も承知だ。だけどこれだけははっきりと言える。
俺はこの世界で誰よりもチームスピカのあいつらが大好きだ。
世界中のファンにだって負けないぐらいあいつらを応援してる。いいや、世界で1番のファンは俺だって宣言したっていい。
あいつらのおかげで俺はまた夢を追いかけることができた。他の誰でもないあいつらの走りだからこそ忘れていた大事なものを取り戻すことができたんだ
だから好かれてなくてもいい。情けないと思われてもいい。頼りないと思われたって構わない
それでも伝えたい。本当の気持ちを。
チームスピカとして走り続けてくれて、ありがとう―――― - 5二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:11:42
「と、こんな感じか? ふぅー……確かにこれは気持ちがすっきりするな。おハナさんに相談して正解だった」
先程まで溜まっていた気持ちをそのまま綴った1枚の紙。それを見下ろしながらトレーナーはペンを置く。
「最近いろいろとストレスたまってたから思ってた以上に筆が進んだな。けど、こうして思ってることを紙に書きだすだけで意外と気持ちが晴れるもんだ」
ここ数日、精神的に参っていた際に同僚に話したところ、まさかこんな解決方法があるとは思わなかった。
「さてと……まぁたまにはこういうのもいいかもな。さすがに内容はあいつらには見せられないけど」
長い時間座りながら書いていたこともあって固くなった体をほぐしながら立ち上がる。
手紙の内容に苦笑を漏らしながら、さっさと捨ててしまおうかと考えていたら、
pipipipipipi
「おっと電話か。えーっと……うわぁ、この前のゴールドシップが迷惑かけたイベントのスタッフの番号じゃねえか」
思い出したくもないが電話は無視できない。とりあえず声の調子を整えできるかぎり腰を低くする。
「もしもし! これはどうもどうも! 先日はありがとうございました! いえ、うちのゴールドシップが本当にご迷惑おかけして……」
目の前にいないはずの相手にへこへこと頭を下げながら調子良さそうに笑い、完璧に媚びへつらう三下ムーブを熟す。すると直後に部室のドアが開き、ぞろぞろとチームのメンバーたちが入ってきた。 - 6二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:12:32
「おいーっす、トレーナーいるかー?」
「スズカさん見てください! こっちのニンジンは色がスズカさん色です!」
「そ、そうかしら……? どれも一緒のようだけど…」
「だからアタシの方が早く着いたわよ!」
「いいや俺の方が一歩先に部室に着いてた!」
「テイオー、2人は何を言い争ってるんですの……?」
「どっちが先に部室にゴールできるか競争してたんだって。まぁボクのほうが先に着いてたけどね!」
「あなたも参加してたんですのね……」
一気に騒がしくなる部室内。電話先の相手の声色も若干変わり、トレーナーの体温は(気持ち的に)3度ぐらい下がった。
「ちょっ、しーっ。お前ら今電話中だ……!静かにしろ……!」
「なんだよ。ここはスピカの部室なんだから、アタシらがなにしようと勝手だろー」
「たく……っ。ああっすいません! なんでもありません! ちょっとうるさい連中が来たんで場所変えますから少しお待ちを!」
「うるさいって。言われてんぞ、スカーレット」
「なんでアタシなのよ! どっちかっていたら普段からうるさいのアンタでしょ!」
「あの…トレーナーさん、今日のトレーニングは……」
「悪いスズカ! ちょっと待っててくれ、すぐに戻る! あとそこの2人もくだらないことで喧嘩するな!」
「あ」
喧騒に包まれる前に慌てて部室を後にする。
あいつらにとってはこれから大事なトレーニング時間だ。トレーナーとして今日もメニューを配らないといけないんだが、今はそれどころではない。
先日のイベントで盛大にやらかしたうちのウマ娘のためにこれからチームスピカのトレーナーとしてやらなければいけない仕事がある。
頭を下げる準備は万全。相手の神経を宥める猫建て声も完璧。あとはとにかく謝るべし。
はたしてこれが俺のトレーナーとしてあいつらにしてやりたいことなのかはさておき、今日もスピカトレーナーとしての仕事の始まりだ - 7二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:12:49
『なによアイツ。慌てて飛び出しちゃって』
『誰との電話だったのかしら?』
『この前のあなたのやらかしたイベントスタッフからじゃありませんの?』
『ゴールドシップは過去を振り返らないウマ娘だから記憶にございません』
『アウトローすぎるぜ……』
『あはは……。あれ、テイオーさん? どうかしたんですか? 机をじっと見つめて』
『うん。なんか紙がある』
『紙? 確かに何か書かれてますね……』
『仕事用の資料とかじゃねえの?』
『違うっぽい。ええっと何々……この男のどこかいいんだ? どんなところに好かれる―――――』 - 8二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:14:30
期待
- 9二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:15:33
ええぞええぞ
- 10二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:15:33
一発かと思ったら久々の長SS…
続けたまえ - 11二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:23:22
そういう男だからゴルシは1人残ったんだよなぁ
- 12二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:32:22
あれ、これでおわり!?
- 13二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:32:24
期待期待
- 14二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:34:15
- 15二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:35:39
そりゃないぜスペちゃんよぉ!こっちはスピカから誉めちぎられらてがんじがらめにされる自称ダメな男がみたいんだ
- 16二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 01:40:19
なんて良い導入なんだ……
え、終わり……?マジかぁ…… - 17二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 03:13:36
- 18二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 06:40:14
逃げるな!展開から逃げるな!
- 19二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 06:49:28
- 20二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 07:18:50
生殺しかよ!
- 21二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 11:52:38
なんてことを...こんなのハーグ陸戦条約違反ですよ...
- 22二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 12:05:46
遺書みたいになってて芝
- 23二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 12:13:25
- 24二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 12:21:24
コース料理のメインを飛ばされた気分だ
- 25二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 12:58:13
続きはないのですか〜
- 26二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 16:39:17
最終コーナーを曲がって最後の直線に入った瞬間に映像が途切れた気分ですわ!
- 27二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 17:16:33
散々注文させといて
お通しだけで終わりってのはないだろうが
書け!書くんだ! - 28二次元好きの匿名さん21/12/20(月) 22:40:53
なんてことを…
- 29二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 02:30:17
落とさせはしないぞ!!
- 30二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 03:10:35
「ゼツボーノミゾヲ…」
「絶望の"フチ"、ですわね」
「ワカッテルヨ!チョットイイマチガエタダケデスー!」
「はいはい…それにしても…」
「トレーナー、ちょっと卑屈すぎません?私達のトレーナーなんだからもっと自信持ってもらわないとって思うんですけど?」
「でもさ、オレちょっとウルっときちゃいましたよ」
「ですよね!私もこんなにトレーナーさんに想ってもらえてるって思うと…何だか嬉しくて」
「アイツ、アタシらのこと好き過ぎじゃね?」
「フフフ…、そうですわね。それにしてもこの文章、トレーナーさんは何に使うつもりなんでしょう?」
「なんか遺書っぽいヨネー」
ガチャン!ドタン!
タッタッタッタッタッタッ…
「えっ!?今、スズカさん!?出ていっちゃいました!?」 - 31二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 06:12:09
続き来てた嬉ちい
- 32二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 06:13:45
かかってますね…
- 33二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 06:24:13
君には才能がある。物書きの才能が
- 34二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 09:04:17
- 35二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 09:10:42
- 36二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 10:03:27
私が許可しよう
- 37二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 10:25:01
「ハワ、ハワワワワワワ…!」
「ひっ、ゴールドシップ急になんですの!?」
「アイツ…普段からアタシ達が無茶苦茶な事ばっかしてるから思い詰めちまって…!」
「無茶苦茶してるのは主に貴方でしょうに。…スカーレットさん?顔色が悪いですわよ?」
「わ、私、昨日あいつに『女心も分からない非モテ男』って言っちゃった…」
「わ、私も!」
「スペシャルウィークさん?」
「トレーナーさんの言い付け破ってお夜食食べ過ぎて実は今太り気味なんです…!」
「…見たら判るぐらいですわね」
「オレも…」
「ウオッカさんまで…」
「この間、勝った時のキメポーズの練習に遅くまで付き合わせちまった…!」
「わざわざ理由を探さなくて良いんですのよ?」
「バカだなぁキミタチ」
「ボクたちのトレーナーがそんなことでヘコ垂れる訳ないじゃないか」
「何度も怪我して、引退までしようとしてたボクを今の今まで支えてきてくれたトレーナーだよ?そんな事で諦めるヒトじゃないでしょ?マックイーン、君だって分かってるでしょ?」
「テイオー…、フフフ…仰る通りですわ。よかった、貴女が冷静でいてk…テイオー、何処に行かれますの?」
「ボクたちのやることはトレーニングでしょ?ちょっと軽く走ってくるよ」
「そう、ですわね?」
ガチャ、バタン
『トレエエェェェェェェナアアアァァァァァァァ!!ドコイッチャッタノオオオォォォォォォォオォォ!!?ウワァァァァッァアァアアア!!』
「…」 - 38二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 13:02:19
先頭の景色は譲らない
- 39二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 13:07:01
こういうのほんと好き
続きをください… - 40二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 13:14:08
スピカが重バ場になってるのはあんまり好きじゃ無いがこういうのは好物だ
- 41二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 13:15:50
ゴルシが初めに読んで大慌てするけどそれは演技でスピカメンバーが大慌てする中分かってたよってする展開とか好き
お前の魅力は昔から知ってるって言う正妻面する感じ - 42二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 13:33:00
「わ、私もトレーニング行ってきます…!」
「お、オレも…!」
「わ、私はスズカさん探してきます!」
「え、ちょっと皆さんっ」
ドタドタドタ、バタン
「…で?皆をけしかけたのは、そうやって呼吸できないぐらい笑うためですの?ゴールドシップ?」
「はぁ…!はぁ…!死ぬかと思ったぜ…やっぱサイコーだぜこのチーム!」
「悪趣味ですわよ」
「マックちゃんは行かねーの?トレーナー探しによ」
「大方貴女がやらかしたイベントの事後処理で、たづなさんの所に行ってるだけですわ。それにこれは遺書には見えませんもの」
「ほーう、随分ご機嫌だけど、じゃぁマックちゃんにはこれは何に見えるんだ?」
「ご機嫌なのは貴女もでしょう?フフフ…そうですわね、私には…」
「不器用で自信も無いけど、とても情熱的な私たちスピカ全員に向けた、"恋文"ですかしらね」 - 43二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 13:54:37
- 44二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 14:00:04
相棒ゴルシもいいけど落ち着いてるマックちゃんが意外だ
- 45二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 14:01:39
- 46二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 14:19:02
- 47二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 14:27:06
あーなるほど
- 48二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 18:11:07
いいものを読ませてもらった
- 49二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 18:12:33
- 50二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 18:26:16
自己評価低い沖トレは解釈一致
- 51二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 18:28:56
面白くなってきました
- 52二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 20:26:37
ゼッタイハボクダ!
- 53二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 20:29:55
沖トレは建前は自信家だけど内面はかなり卑屈なところあるで
スズカ復活の時も「俺は何もしてやれなかった」って言ってるけどアレ本人の前で言ったら怒られるで - 54二次元好きの匿名さん21/12/21(火) 23:51:25
- 55二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 00:05:10
- 56二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 00:05:53
- 57二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 00:06:00
スぺちゃんはさぁ…
- 58二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 06:31:06
書いてくださいおなしゃす!
- 59二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 07:05:36
- 60二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 10:01:35
書けーッ書けーッ!
- 61二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 12:17:44
お前が始めた物語だろ?
- 62二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 17:13:52
建て逃げは許しまへんで
- 63二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 20:05:06
- 64二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 20:06:58
これリギルにも伝わるパターンじゃん
- 65二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 20:24:29
やばいやばいこれはやばい
- 66二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 20:25:25
南坂さんが死ぬみたいになってるじゃん…
- 67二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 20:28:31
トレェェーーーナアアァーーーーー!!
「お、きたきた。こらターボ、遅刻だぞ~」
「ネイチャ!ネイチャ!トレーナーは!?どこ!?」
「おおぅ、何そんなに慌てて?トレーナーなら今ルームにいるけど…」
「トレーナー!!死んじゃヤだーーー!!」
ガチャガチャドタドタ
「…死?はぁ!?」
「トレーナー!!死んじゃヤダーー!」
「おはようございますターボさん、勝手に殺さないでくださいね?」
「…トレーナー…元気?」
「この通り元気モリモリですよ」
「モリモリかー!よかったー!なんだー勘違いだったのかー!」
「ちょいちょいターボさんや、どんな勘違いしたらトレーナーが死んじゃうことになんのよ?」
「だってトウカイテイオーがトレーナーが死んじゃうって大慌てしてたから…」 - 68二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 20:37:57
トレーナーの中でいつの間にか死んでそうな人1位は南坂なイメージがある
2位が黒沼トレーナー - 69二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 21:38:17
(あかん)
- 70二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 21:39:21
ターボはアホ可愛いなあ
- 71二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 21:43:56
いやほら……流石に南坂なら落ち着いて話を聞いてくれるさ。
問題はターボやテイオーが叫んでる内容を勘違いしそうなウマ娘が聞くことだ。 - 72二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 21:45:51
勘違いの輪が広がっていく……?
- 73二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 22:25:24
「テイオーが?」
「うん?」
「それってテイオーのトレーナーの事じゃないの?スピカのトレーナーの」
「????」
「????」
「あー!!トウカイテイオーのトレーナーが死んじゃうのか!!じゃぁ!ターボスピカのトレーナー探してくる!!」
「ちょいまちっ」ガシッ
「ネイチャ放して!ターボ、テイオーのトレーナー探さないと!」
「まぁまぁ落ち着きなさいな。トレーナー、スピカのトレーナーさんに連絡できる?」
「もちろんですよ、今連絡してみますね」
「わぁぁ~!ネイチャ天才だ!かしこさSSだな~!」
「いやいや、ネイチャさんはかしこさC位ですよ~、どう?トレーナー」
『お掛けになった電話番号は現在電源が入っていないか…』
「繋がりませんね…」
「うっそ…」 - 74二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 22:26:57
悪い方向に進みまくってる
- 75二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 22:32:06
大丈夫だ
南坂ならなんとかしてくれる - 76二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 22:46:25
- 77二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 23:05:54
- 78二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 23:45:38
「大体貴方はデリカシーが全然っ足りないのよっ!よくそんなので年頃のウマ娘のトレーナーをやってられるわねっ!」
「まぁまぁおハナさん、それぐらいで…。トレーナーさん、気心の知れた相手でも女性に向かってそういう事を言うのは感心しませんよ…?」
「はい、すいません…(たづなさんの目怖…)」
「まったくこの男は…」
「でも、先方との連絡が終わってからで良かったですね」
「すいません、協力してもらって…」
「いえいえ、それにしてもご迷惑をお掛けしたイベント会社の親会社の社長さんが偶々イベントを見学に来ててゴールドシップさんの大ファンになってしまうとは…」
「そんで今度の大きなパーティーにスピカ全員をゲストとして招待したいと来たもんだ…世の中何が在るか分かんねーなぁ…」 - 79二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 23:49:52
「えーと、つまりテイオーのトレーナーがオンシンフツーでジュカイで迷子になってソーナンしてるんだ!!急いで探しに行かないと!!」
「ま、待ってください、ターボさん。たまたま繋がらなかっただけでそんなことあるわけが…」
「あれ〜、ターボちゃんどうしたの?そんな大きな声を出して…」
「ターボさん。往来の真ん中で騒ぐのははしたないですよ」
「あ!マチタンにイクノ!大変なんだよ!!トレーナーがオンシンフツーでユクエフメーなんだよ!!」
「わ、わ、わ、ちょっと落ち着いて!行方不明ってどういうことなの?」
「ふむ…。よくわかりませんが人を探してるようですね?古来より三人寄れば文殊の知恵と言いますし、他の生徒たちにも協力を募るのがいいのではないでしょうか?」
「い、いや〜、そこまで大事にする話じゃないと思うんでしょうが…」
「なるほどー!やっぱりイクノは賢いなー!!じゃあターボみんなに聞いて回ってくる!!ターボエンジン全かーい!!」
「え…あ、ちょ、ちょっと待ってターボ!!…行っちゃった…。ねぇトレーナーさん、これどうしよっか…?」
「まあ普通に考えれば会議や打ち合わせの最中だから電源を落としてるだけだと思うのですが…」
「…こうなってはアタシたちにできることはこれ以上の騒ぎにならないように祈るだけだね…」
「ねぇねぇ〜、それで結局なんの話だったの?」
騒動を大きくするだけしたのであとは任せた - 80二次元好きの匿名さん21/12/22(水) 23:52:52
ゴルシ「大漁じゃーーい!!」
簀巻きにされ担がれるた中年のおじさん「うおおおおおおおおおおおおおおおお(心臓が爆発しそうだよ~!もしかしてこれが恋?)」 - 81二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 00:06:43
こいつ…!ターボを解き放ちやがった…!!
- 82二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 00:38:23
- 83二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 00:49:51
走ったことで本当に忘れてしまうスズカさん概念
- 84二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 01:07:26
- 85二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 02:54:21
- 86二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 09:53:10
バッカモーン!そいつがスレ主だ~!!
- 87二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 10:07:02
おい待てぇ!放置すんじゃねえ
- 88二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 11:41:30
「まさか貴方メンバーに自主練の指示も出さずに来てたんじゃないでしょうね?」
「…うぐ、俺も慌てたんだよ…」
「ごめんなさいサイレンススズカさん、もう少しでトレーナーさんをお返ししますので、あと少しだけ待っていて頂けますか?」
「はい。…あの…こちらで待たせて貰って良いでしょうか…?」
「えぇ勿論んですよ」
トトト…チョコン
「で、さっきの話の続きなんだが、そのパーティーはドレスが要るんだっけ?」
「当たり前よ、あの子達に何着せて参加させるつもりなのよ?(ごく自然に隣に座ったわね)」
「…勝負服?いや、おハナさん怖い顔するなよ!ドレスって高いんだろ!?さすがに人数分も俺は用意出来ねーよ!」
「そこはご安心ください。ドレスも含めて諸費用はトレセンが負担致しますので(隣と言うかもうくっついてますね)」
「ほっ…、良かったなスズカ!トレセンがドレス買ってくれるってよ!お前はドレスの希望とかあるのか?」
「…急に言われても…考えた事ないです…」
「う~ん、イメージカラーのグリーンもいいけが、お前は美人だからな…清楚な白色も良いんじゃないか?」
「…トレーナーさん…恥ずかしいです…」
「ハハハわりーわりー、まぁ後で皆とゆっくり考えりゃいいか!」
「貴方達…何時もそんな感じなの…?」
「そんな感じ…?」
「…?」
(無自覚…!)
「…ハハァ~ン、おハナちゃん、俺たちが仲が良すぎるって思ったんだなぁ…?」
「…そうね」
「俺達スピカはトレーナーと担当の垣根を取っ払って何でも気軽に相談出来る距離感を目指してるんだよ」
(…距離感じゃなくて物理的に距離が近いのよ貴方達は…)
「お堅いリギルじゃこうは行かねーだろうが、おハナちゃんなら真似しても良いぜ?」キリッ
(…この男ほんとイラつく)
「ハァ…余計なお世話よ、リギルは貴方に心配されるような信頼関係は結んでないわ」 - 89二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 12:04:49
pipipipipi…!
「あ、私の携帯ですね」
「たづなさんのですか、どうぞどうぞ」
「ありがとうございます、では失礼して…」
「はぁ…この話は一旦保留にして後日改めましょうか…私もトレーニングを見にかないと…」
「わりーな、おハナちゃん。スピカはこういう経験ないから助かったよ…」
「これぐらい良いわよ…。それよりスピカはもうちょっと節度を守って、貴方はちゃんとトレーナーとしての領分を弁えて行動して欲しいところね」
「…おハナちゃん…焼きもち?」
「ぶん殴るわよ」 - 90二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 12:52:03
スズカさん中型ワンコ感あって良いと思う
- 91二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 13:37:33
「…え!?警察の方が…?学園から通報が…?いえ私は何も…、誘拐…!?はい…はい…直ぐにお伺いします。…はい。くれぐれも生徒達に混乱が拡がらぬよう…。はい…お願いします」
「誘拐…!?」
「一体何が…?」 - 92二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 14:26:35
おハナさんって沖トレからも「おハナさん」呼びだっけ?
なんか途中から「おハナちゃん」って呼ばせてたけど不自然だったかな? - 93二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 14:56:07
沖トレもおハナさんやね
- 94二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 15:01:51
あーもう滅茶苦茶だよ
- 95二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 16:40:04
マジかー!自分でも何か違和感は感じてたんだが…次からはちゃんと気を付けよう
- 96二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 18:00:11
- 97二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 18:47:57
ひとのSS見てると、悪い意味じゃなくて「自分だったらこうする」「このキャラならこういう行動するはず」とか浮かんでくるよね。
ある意味これも「解釈違い」に含まれるんだろうけど、そこから新しい物語思い付いたりするから良い刺激になるよね。
- 98二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 19:11:48
- 99二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 19:13:50
- 100二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 21:07:57
スレ主でもその続きを書いた人でもないのに勝手に続きを書いてしまうと次躊躇われるので続きお願いします
- 101二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 21:46:31
「たづなさん、一体何があったんです?」
「すいません、私もまだ詳しくは…話によると学園のトレーナーの一人が消息不明で、その担当ウマ娘達がパニックになって警察を呼んだようなんです」
「うちのトレーナーが?一体誰が?」
「まだそこまでは…何でも部屋に遺書のような物が残されていたそうで…」
「遺書!?でもさっき電話で誘拐がどうとか…」
「それもまだ詳細が分からないのですが、その行方不明のトレーナーを探しに行った担当のウマ娘の一人も連絡が取れなくなったとかで…一部の生徒がトレーナーを自殺に見せ掛けた誘拐で、探しに来たウマ娘も一緒に拐われたと騒ぎだしたようで…」
「なんてこった…」
「今校門に警察の方が来られているそうで、今から伺ってきます…」
「…たづなさん、俺も一緒に行きます」
「でもこれは理事長秘書である私の…」
「こんなに震えてるじゃないですか…!」
「…!」
「こんな恐ろしい事が起きてるんです、誰だって怖いのは当たり前ですよ。だから一緒に立ち向かいましょう!」
「トレーナーさん…!」
「たづなさん、私も一緒に伺います。この男より冷静に物事に当たれる自信があるわ」
「おいおい、言いっこ無しだぜおハナさん」
「ふふふ…お二人とも有り難うございます」
「な~に、礼なんて要りませんよ!何時もこっちがお世話になってるんです!こんな時ぐらいお役に立たせてくださいよ」
(そうだった…この男はこういう男だった…昔から…。普段はズボラでいい加減で頼りない男だけど、いざと言う時に誰よりも先に矢面に立つ…。こんなヤツだから私も…) - 102二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 23:00:43
「そうだった…この男はこういう男だった…」
───結果から言うと、彼がここに到着した時点で全て解決した。
「お前らー!ちゃんと頭下げろー!もう一度だ!もーーーーしわけありませんでしたーーーー!」
『もーしわけありませんでしたー!!』
男は警察官に対して深々と頭を下げた。45度を超えて90度位腰を曲げて頭を下げる。
それに倣い彼の後ろで、彼のチーム"スピカ"の面々も頭を下げる。
「いえいえ、何事も無くて良かった。では私達はこれで」
彼は最敬礼で帰るパトカーを見送った。頭を下げることに関しては今の彼の右に出るものは居ないだろう。
泣き腫らした顔で口をあんぐりさせて此方を見るスピカメンバー。事情を話した時の警察の方々の苦笑いが脳裏から離れない。
今さら説明も不要だろうが全て勘違いだった。
行方不明のトレーナーとはこの男。
誘拐されたウマ娘というのはサイレンススズカの事だった。
私が教えたストレス発散方法で彼が綴った思いの丈を、何故か"遺書"だと勘違いしたスピカメンバー。
私達が事務室で話してる間に、何がどうなってこの内容になったか全く不明だが、あれよあれよと話が拡がり、ここにはスピカ以外に、カノープスやリギルのメンバーまで集まって居る始末。
血相を変えた大勢の生徒達の剣幕に警備員が警察に通報したようだった。
「エル、グラス、…何故すぐに私に連絡しなかったの?」
しょんぼりと肩を落とす二人のリギルメンバー。この二人は特にスピカのスペシャルウィークと仲が良い。 - 103二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 23:01:06
「トレーナー、この子達を怒らないであげてクダサーイ。何時も忙しいトレーナーさんに迷惑を掛けたくなかっただけなんデース」
駆け付けたリギルメンバーのタイキシャトルが困ったような笑顔で二人の後輩を庇う。
勿論怒るつもりなんて無かったのだが、自分で思っているより険しい顔をしているのかも知れない。
たった小一時間、連絡がつかなかっただけで心配して大騒ぎするスピカ。どれだけ相手を想っていたらそうなるのだろうと首をかしげるが、少しだけ羨ましいと思う気持ちが自分の中にあって、少しばかり驚いた。
「ふふふ…怒ってないわ。私はね、貴女達の連絡を迷惑だなんて思ったことは無いわ。むしろもっと気軽に連絡してくれて良いのよ?」
私も少しだけ彼を見習ってトレーナーと担当の垣根を越えてみようか。
「トレーナーさん、もう頭をあげて下さい!」
額を地面につけてキレイな土下座を披露しては理事長秘書を困らせる男を横目で見て私は、
「でも流石にああは成りたくないわね」
そう呟いて一人くすりと笑った。 - 104二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 23:22:10
- 105二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 23:51:25
素晴らしかったです。完走ありがとう…
- 106二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 23:52:13
- 107二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 23:59:33
嘘でしょ……いつのまにか起承転結全て描かれている……
面白かったからハートポチポチしなきゃ - 108二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 00:14:06
- 109二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 00:16:19
良い感じだったと思うぜ!
スレ主にも期待だな!! - 110二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 00:30:21
- 111二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 00:39:45
エエんやで…大事なんは心意気やで
- 112二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 00:51:44
実質リレー小説みたいなもんだからライブ感を楽しむんや!
俺は楽しめた!! - 113二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 10:10:35
リレー形式SSスレとか初めて見た
- 114二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 10:18:28
自然と隣に座るスズカさんがいいなと思いました
- 115二次元好きの匿名さん21/12/24(金) 15:13:24
スピカ箱推しのワイ、スピカメンバーのやらかしを箇条書きで良いから知りたい
- 116二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 02:56:05
あんなふうに紙に書き込んだのにはきっかけってほど大したことがあったわけじゃない。ただちょっとした、本当にちょっとした小さなことが偶然にも何十に重なってあんな夢を見ることになった所為だ
『彼女達に選ばれたんだ。もっと頑張らないとな』
『今じゃスピカの子たちを目標する子も増えてますよ』
それは何気ない同僚からの賞賛の言葉だった
そこには羨望と少しの嫉妬があって、でもそのほとんどが善意が込められていた
『…今までお世話になりました、フジ先輩…』
『うん。あっちに行っても元気でね。何かあったらいつでも相談に乗るから。だからたまには声を聴かせてくれるかい?』
『うぅぅ……フジせんぱい~~~!』
『よしよし。今この瞬間、私の胸は君だけのものだ。好きなだけ使うといいさ』
『うぅわぁぁぁ~~~~!』
それはたまたま見つけてしまった脱落者の姿
勝負の世界なら珍しくもない光景はこのトレセン学園でもよく見かける。日の目を見る者がいれば日陰で一生を終える者もいる。いつだって栄華を手にできるのはごく僅かな限られた者たちだけだ
この仕事をしてから何度も目にしてきたはずのそれを、涙で腫れた目を擦りながら学園を後にする1人の背中を、その時はなぜかずっと追いかけていた。
『テイオーもマックイーンも前みたいな走りできなくなってるよなぁ』
『どうしたの急に?』
『いやさ、最近のレース観ててちょっとそう思って』
『う~ん……どっちも酷い故障だったみたいだし復帰できたけでもすごいと思うけど。テイオーなんて有馬記念それでも勝っちゃったんだし』
『見た見た! あれ凄かったよな。オレ感動して泣いちゃったよ! ……けどさ、正直もう無理してほしくなんだよなぁ……。無理してまた故障したらあの子たちがかわいそうだろ?』
『まぁ……ファンとしては元気なままでいてくれた方が嬉しい……かも』
それはある日のレース場で耳にした憐憫の声
愛されてるからこその悪意なき同情心は一つ間違えれば彼女たちのプライドを傷つけかねない優しくも残酷な評価だった。
気にすることはない。こんなのはこの仕事をやってたら常に聞こえてくることだ。
そう思いつつ心のどこかではやるせない気持ちが静かにたまり続けていた。
- 117二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 02:56:31
表舞台に立つのはいつだってあいつらだ。必然的に人の悪意や善意の矢面になることも多くなる。
多くの子たちが渇望し、多くの子たちがその困難に打ちのめされて日陰から出れずに終える中で目指す大舞台に行けたとして、栄光の光を浴びる者が必ずしも輝き続けるわけじゃない。表舞台で走る彼女たちに贈られる言葉は賞賛だけではなく、時に冷たく惨い一方的な本音が混じる。
もしもそれをあいつらが受けた時、この前見てしまった学園を去るあの後姿がもしもあいつらだった時、あいつらに選んでもらった俺はあいつらに何をしてやれるのだろうか―――― - 118二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 02:57:39
「やばいな。思った以上に電話に時間食っちまった……。あいつら今頃待ちくたびれてるよな。急いで戻ってやらないと」
イベントスタッフへの謝罪電話が終わったのは部室を出て30分以上過ぎた頃だった。
緊急での対応を余儀なくされたためとはいえトレーニングに来たあいつらを放り出してきてしまった。担当の後始末をするのも仕事のうちだがトレーナーの本分はやはりウマ娘たちへの練習調整だ。そこを怠っていては本末転倒。というか、このままだとあいつらから職務怠慢だなんだとドヤされる。
部室へと向かう脚は自然と早くなる。電話中ずっと静かな場所を探していた所為で少しだけ部室が遠いけど近道を通ればあっという間に到着だ。
「悪いお前ら待たせたな。ちょっと電話が長引いて……」
見慣れたスピカの部室を見つけてすぐに扉を開ける。そこにはいつものチームスピカのメンバーがずっと待たされた所為で怒った様子で俺を向かい入れて、
「……って、あれ? いない?」
「よっ。遅かったな、トレーナー」
中にいたのはなぜか新聞紙を広げて読んでいるゴールシップただ一人だけだった。 - 119二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 03:49:38
他のやつらはどうしたんだ?」
「ああ、それならお前の帰りが遅いってんで全員明日に向かって走りに行ったぞ」
「自主トレしに行ったってことか? それならそれで別にいいんだが……」
どちらにせよ今日のトレーニングメニューには走り込みが組み込まれてる。それを自主的にやってくれたのなら問題はない。が……
「お前はなんで一緒に行かなかったんだ?」
「そりゃもちろんお前に話があるからだろ」
「話? なんのだ?」
ゴールドシップからの話なんて8割がた碌なことじゃない。思わず身構えてしまう。
「今度の休日、丸一日空けとけ」
「……また、なんでだ?」
「それは当日教える。その時のお楽しみってやつだ」
「どこかに行くのか……?」
「それも明日公開だ」
新聞を開きながら不敵な笑みを浮かべるゴールドシップ。その笑みを見ていると何故か背筋が凍るような身震いを覚えた。
「な、なんだ? また何か企んでるのか?」
「おいおい人聞きワリぃな。……いや待て。この場合はウマ聞きが悪い……? 娘聞きが悪い……?」
「別にそこはどっちでもいいだろ……。それと、悪いが今度の休みは無理だ」
またよくわからない部分で自分の世界に入るゴールドシップを止めるため、もう一つはきちんと断るため、変な行動を起こされる前にはっきりと告げる
「はあ!? なんでだよ!」
「休み返上で仕事だ。もうじきレースが近い連中もいるし合宿の時期にも入る。スケジュールの調整にいろいろと準備しなくちゃいけないことがいっぱいあるんだ。だから今度の休日は無理だ」
「なんだよそれ。一日ぐらいいいだろう別に。ちょっくら付き合えよ」
「無理なもんは無理。どっか遊びに行くんなら他のやつと行ってこい。お前たちのトレーニング自体は休みにしてあるから好きなだけ羽を伸ばせばいい」 - 120二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 03:50:18
ほぼ毎日トレーニング・ダンスレッスン・勉学まで含めウマ娘の日々はなかなか休まるものじゃない。いくら若い体力が有り余ってるとはいえ決して無尽蔵なわけではない以上どこかでガス抜きが必要になる。貴重な休みの日にはできるかぎりそれら全部を一旦忘れて思いっきり遊ぶのもまだまだ学生であるこいつらのやるべき本業だ。
それにきちんとした休みをとることで練習にもさらに身が入るだろうし、次のレースで最高のポテンシャルを発揮しやすくなる。延いては今後のこいつらの出走予定にまで影響することだ。なのにトレーナーである俺が仮に一緒にいようものならどうしたってレースのことを意識させてしまう。それでは休めるものも休めない
「俺のことはいいから楽しんでこい」
「……ほーう、そんなこと言っていいのか?」
そういうつもりで言ったんだが、ゴールドシップの目が怪しく光り、
「トレーナー? こいつはいったい何だと思う?」
広げた新聞の裏側からススッと一枚の紙が顔をのぞかせた。 - 121二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 04:28:23
雰囲気好きだわ
- 122二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 05:51:55
「え」
全体の半分しか出ていないがそれがなんなのかはすぐにわかった。
慌てて全身のポッケに手を突っ込んであるはずと思っていた紙を探す。しかし突っ込んだ手が掴むのは家の鍵や中身のない財布、あと予備の飴が数個だけ。あるはずのものはどのポッケを漁っても出てこず、その代わりに大量の汗が背中に流れた
そして、思い出した。あの紙は先程自分が思っていることをひたすら書き綴ったもので、片づけようとしたところで電話に出て、その途中でメンバーが部室に入ってきてうるさくなったから一度退室して、あの紙を机の上に置いたままにしていたことを
「えーっと……『この男のどこがいいんだ?どんなところに好――――』」
「待て待て待て! 読むな読むな! なっ、なんでお前がそれ持ってるんだよ!? いやっ、今はそんなことはどうでもいい! それをこっちに渡すんだ!」
「ハーイすとっぷ」
焦って詰め寄ろうとしたところでビシッと顔の前に掌が置かれて反射的につんのめる
「優しいゴルシちゃんはせーっかくチャンスをあげようとしたのにな~。トレーナーは仕事人間だからな~。しょうがねえから休みはこの紙の内容を学校の校庭で音読するしかなくなちまったな~」
「やめてくれ! そんなことされた日には明日からこの学園にいられなくなる!」
「でもな~休みの日が暇だしな~」
あきらかにこちらの様子を見るような流し目とこちらの目がかち合う。
くそ……! 完全にあっちに主導権を握られてる……!
「何が目的だ! 要件を言え!」
「まずは身代金120億円な」
「出せるか!!」 - 123二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 05:52:50
こいつは返す気0なのか。それともそんなものを手元に残して俺で遊ぶのがそんなに楽しいとでもいうのか……。
「どうしてもこれを返して欲しいんだったら、あとはわかるよなぁ? なぁトレーナー?」
「うっ…お前……!」
「そんな生ナマコを食った時みたいな顔しやがってどうした。交渉のつもりなんだぜこっちはよう?」
「どこがだよ!? あきらかに脅迫だろ!」
「『結局俺は泣いてばかり――――』」
「そうだなこれは立派な交渉だな! 絶対間違いなくそうだから読み上げるのだけはやめてくれ!」
「なんだようやく理解できたか。まったくうちのトレーナーは世話がかかるぜ」
両肩を上げてやれやれのポーズをとる目の前の葦毛のウマ娘をこれほどにくたらしいと思ったことはない。
「それじゃ今度の休みは駅前に集合な! 今夜あたりにでもメッセージで時間とか送るから必ず見ろよ」
そう言いながらそれまで読んでいたであろう新聞紙を折りたたみ、あの手紙を片手でヒラつかせながら出入り口まで歩き始める。
途中、俺の横を素通りしていくところで握られた手紙を何気なくかすめ取ろうとするがそれは予測できてたと言わんばかりに簡単にひょいっとかわされる。
「アタシも先に行って他の連中と並走してくるからトレーナーも早く来いよ~。んじゃな」
無情にも閉められた扉。1人部室に残された俺はガクっと項垂れるしかなかった - 124二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 10:03:05
ほう…トレゴルですか…大したものですね
- 125二次元好きの匿名さん21/12/25(土) 10:08:16
あれ、一見ゴルシだけしか紙を読んでなさそうだけど
7の時点でみんな見てるよね?
うーむ、読めない。楽しみ