復讐終えたアクアなら推定幼女神の事も可愛がりそうという風潮

  • 1二次元好きの匿名さん23/08/31(木) 23:13:05

    精神的余裕がMAXまで来たアクアは無敵なのではという風潮
    なお推定幼女神の方はお手軽に実体化して各キャラにアクアに可愛がられている場面を見せつけたり色々からかっているものとする

  • 2二次元好きの匿名さん23/08/31(木) 23:15:02
  • 3二次元好きの匿名さん23/08/31(木) 23:43:32

    個人的な推定幼女神と各キャラとの相性
    アクア:色々あったがなんだかんだ放っておく事は出来ないと世話してく内に情が湧いて本当の親戚のちびっ子みたいな目線になってくる
    ルビー:原作からして印象×、泥棒猫程度の感情
    かな:アクアとの嘘設定(親戚辺り)に騙される。良く自称神という事にツッコミを入れているが鋭い事を言う辺り見込みがありそうと思っている
    あかね:真っ先に嘘を見抜くもどれだけエミュっても正確な正体は分からず終いで相手からも言動で色々揺さぶられるちょっと不憫な役回り
    メッさん:親戚にしては距離近くない?それはそれとして数字ジャンキーは止まらない
    ミヤコ:そう言えば小さい頃ルビーもアマテラスとか何とか言ってたしそういう事もあるのかもね…と謎の理解を示す

  • 4二次元好きの匿名さん23/08/31(木) 23:55:13

    人の温もりを知る邪神
    何故か抱き枕にするとどことなく魘されなくなるアクア
    こういう謎の関係があると尚の事面白い

  • 5二次元好きの匿名さん23/08/31(木) 23:57:14

    >>2

    まぁ落ちてるし感想代わりにちょうどいいんじゃないかな

  • 6二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 00:02:29

    >>5

    そう、丁度落ちててこれの続きが見れなくて落胆している民がいたから万が一ここにあのSS書いてた人が来たら良いなー程度で建てた次第

  • 7二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 00:06:27

    続き書いてくれるならまた見たいな
    ほしゅ

  • 8二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 00:16:01

    同じからかわれでも扱いやすいからすぐネタキャラ化するかなと妙に不憫になるあかね、そしていつも通りの胃痛役メッさん
    でもこの幼女神を通して何となく仲が近くなるあかかなもアリ
    それはそれとしてルビーからの印象はどうあっても変わる事は無さそうというある種の信頼感

  • 9二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 01:25:46

    保守

  • 10二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 01:29:20

    ほしゅ

  • 11二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 07:56:08

    なかなか気になるところで終わってるのな
    続きを読めるなら嬉しいが

    来てくれるかどうかわからんし、とりあえず疫病神ちゃんファン&考察スレとして動かしておくかね
    さりなちゃんの過去も知ってるのが確定してる訳だが、これは誰の人生でも好きに覗けるのか
    それともゴローやさりなに特別注目してたのかどっちなんだろうね

  • 12二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 09:38:25

    あの二人にだけわざわざ絡みに行ってるし前者の能力はあるが特別使う事は無く後者してたって感じなのかね?

  • 13二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 10:40:37

    アクアに抱っこやおんぶされてると絵になると思う

  • 14二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 11:29:31
  • 15二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 15:43:47

    一緒に旅行行くスレもあったなあ

  • 16二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 16:00:45

    まだ原作で詳細が明かされてないから、
    カミキヒカルも霞むようなド外道という可能性もあるし、
    こんなんアクアが添い遂げるしかないでしょ……みたいなめっちゃ可愛いところある子って可能性もある
    全てはアカ先生しだいだ

  • 17二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 18:08:26

    >>16

    ガチで二人の目の前で前世まで見透かした様な事言った以外何の追加情報も無いんだよな

    それを言うならカミキもなんだけど

  • 18二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 21:37:17

    アクアにおぶられて思わずスヤスヤ寝てる幼女神概念
    あかかなは何だかんだ可愛げがあると微笑ましそうに見てるもののガルルとするルビー
    その後ルビーが頻繁に狸寝入りしていたのは言うまでもない

  • 19二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 23:35:35

    >>16

    二次創作上の要注意ポイントではあるw

    まぁアクアに肩入れしてるのは間違いないんだろうなーとは思うけど

    ルビーに対しては…うん…

  • 20二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 01:06:38

    >>19

    そもそも疫病神だの邪神だの幼女神だの言われてるけど神かどうかすら明かされてないという事実

    描写からしてほぼほぼ神で間違いは無いけどそれこそ進撃の巨人ラスボスみたいな大どんでん返しがあったら出演二次作品一斉に死に絶える

  • 21二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 02:23:29

    >>20

    ゴローバレの時は色々と凄かったらしいけど、こっちは正体が見えないからそれ以上のインパクトだねぇ…

  • 22二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 02:37:59

    >>21

    ゴローバレも相当凄かったけどある程度予想は付いてたからなあ…

  • 23二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 02:39:23

    >>22

    どうあれバレるならまぁそうだろーねっていう感じだったしねぇ

    あにまん具現化とか言われてたし

    でも疫病神ちゃんは…本当に予測不能…

  • 24二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 06:53:55

    まぁそれを気にしだしたら二次創作は完結してからじゃないと出来なくなるし
    現時点での解釈でいいんじゃないの

  • 25二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 11:46:23

    このレスは削除されています

  • 26二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 12:10:55

    >>24

    まぁそれはそう

    それはそれとしてインパクトはやっぱり興味深いところw

  • 27二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 22:10:03

    >>24

    まあ幼女神程度なら何とかなるか…

  • 28二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 22:24:23

    「あ、お兄ちゃん。お帰りなさい」
    「何してるんだ、こんなとこで。一人でいて大丈夫なのか?」
    「ふふ。心配してくれるの?」
    「…まあ、一応な」
    「嬉しいな。でも大丈夫だよ、あの子たちがいるからね」
    「あの子たち? …あのカラスか。そういえば、いつも連れてたな。あれはお前の何なんだ?」
    「そうだね、お友達かな。いい子たちだよ」
    「いい子たち、ねぇ…なんか俺の事睨んでるように見えるが」
    「そんなことないよ。手を上げたら寄ってきてくれると思うから、お兄ちゃんやってみて?」
    「手? こうか? ………全然寄って来ないぞ」
    「あれ、あの子たちお兄ちゃんの事は好きじゃないみたいだね」
    「まぁ、カラスに好かれても仕方がないからいいけどな…それにしても」
    「なあに?」
    「そうやって公園で遊んでる姿を見てると、お前が普通の女の子に見えてくるから不思議なもんだな」
    「ふ~ん。やっぱりお兄ちゃんは、普通の女の子が好きなんだね」
    「こら、変な言い方するな」
    「じゃああたしも、普通の女の子みたいにしてみようかな?」
    「は?」
    「ねーねーおにーちゃん、かえったらウズメといっしょにおやつたべよ?」キャルン☆
    「うぉっ…おい、気色悪いからやめろって」
    「えー、おにーちゃんのいじわるー。いじわるおにーちゃんだー」
    「だから………ええい、だーれがいじわるだって~?」ガバッ
    「ひゃっ」
    「ほらほら、言ってみろ、誰が意地悪だー…………………あー、その、なんだ、悪かった」
    「……ううん、あたしも悪ふざけが過ぎたね。だから、下ろして欲しいな」
    「あ、ああ…」
    「……」
    「……」
    「……お兄ちゃんの、えっち」
    「は!? おい、待て、それは誤解…いて、いてて、おい、こいつら何とかしてくれ、ウズメ! おい!」

  • 29二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 23:19:50

    >>15

    スレチならすまんがそのスレ教えて

  • 30二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 23:43:14
  • 31二次元好きの匿名さん23/09/02(土) 23:45:46

    >>28

    もしかして貴方は…!?>>2のスレのSSの方では!?

  • 32二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 07:56:14

    疫病神ちゃん可愛いあげ

  • 33二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 07:57:53

    >>30

    ありがとうございます

  • 34二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 16:25:39

    >>31

    はい

    保守代わりに投下していた者です


    思いつきの駄文ですので保守代わり程度に読んでいただければ

  • 35二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 23:02:30

    ※一応の前提は>>2のスレ、「復讐を終えたアクアのところにミヤコさんが預かったという体で疫病神が『ウズメ』と名乗り現れた」というもの

    話としては>>2のスレの27、30、34、38、40、43、46、53と>>28の続き

  • 36二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 23:02:48

    「…ふぅ」
    「ミヤコさん、お疲れ様。冷たいの、飲む?」
    「あらウズメ、ありがとう。頂くわ」
    「お仕事大変?」
    「そうね…でも、ちょっと前に比べるとずいぶん楽になったのよ。壱護も帰ってきてくれたし、みんなの仕事もいい感じに軌道に乗ったしね。
     それに、最近はアクアもルビーも晴れ晴れとしてるから。私も気が楽だわ」
    「そうなんだ」
    「…あの子たちはね、昔から妙に大人びててね…小さい頃から、まるで大人みたいに物分かりがよかったの。
     正直言えば、助かったところもいっぱいあったんだけど…まるで、こちらが気を遣われているように感じることもあったのよ」
    「お兄ちゃんたち、変わってたんだねぇ」
    「…壱護から色々聞いてね。あの子たちがずっと抱えて来た色んな事、私は全然気づいてあげられなくて。
     それなのに母親みたいなつもりでいたのが恥ずかしくなっちゃったんだけど…それを言ったら、二人に凄く怒られちゃった。
     そんな事言わないで、って。ミヤコさんは凄いお母さんだ、自分たちこそ今までちゃんと言わなくてごめんなさい、ってね。
     私、わんわん泣いちゃって。そしたら二人も泣きだして、三人して泣きっぱなしだったわ」
    「ふふ。みんな、泣き虫さんだ」
    「うふふ、そうね。でもね、それで初めて私達が本当に家族になれたような気がしたの。
     それ以来、アクアもルビーもなんだか前より甘えてくるようになってね。小さな子供みたいなわがまま言ったりするのよ?
     …それがね、嬉しくて。小さい頃より手がかかるなんて変よね、ふふっ」
    「ミヤコさん、なんだか楽しそう。お兄ちゃんたちのこと、好き?」
    「もちろん大好きよ。本当に大切な家族だもの。今なら、心から言える。私は今、幸せだわ。
     …あら、ごめんねウズメ、私の話ばかりしちゃって」
    「ううん、お話を聞けて楽しかったよ」
    「そう? ありがとう。なんだかウズメも、あの子たちに似て大人っぽいところあるわね。
     …んーっ、もうちょっと仕事するつもりだったけど、そんな気分じゃなくなっちゃった。ウズメ、一緒にお風呂入りましょうか」
    「わあい、ミヤコさんとお風呂だ」
    「うふふ。じゃあ片づけちゃうから、ちょっと待っててちょうだいね」

  • 37二次元好きの匿名さん23/09/04(月) 00:44:08

    >>34

    とんでもねえ、待ってたんだ

  • 38二次元好きの匿名さん23/09/04(月) 08:25:07

    保守のアクア

  • 39二次元好きの匿名さん23/09/04(月) 17:55:06

    本編で疫病神の名前が明かされることはあるのかねぇ

  • 40二次元好きの匿名さん23/09/04(月) 22:50:41

    「わあ、にぎやかだねぇ」
    「おにいちゃんと二人きりがよかったのに…」
    「いつまでもぶつくさ言うなって。ミヤコさんが張り切ってあいつの浴衣まで用意しちゃったんだし、連れて行かない訳にはいかないだろ」
    「む~」
    「お兄ちゃん、あたし、似合ってるかな?」
    「…まぁ、似合ってるぞ。さすがミヤコさんの見立てだな。凄いのはミヤコさんだからな」
    「ふふ。それでもいいよ、ありがとう」
    「む~~~! おにいちゃん、私は!? 似合ってる!?」
    「ああ、似合ってるぞ。可愛い」
    「か、かわいい…えへへ、ありがと♪」
    「あ、ルビーお姉ちゃん、ちょっといいかな?」
    「…何よ」

    「安心して。あたし、そのうちこっそり離れるから。そうしたら、彼と二人で楽しむといいよ」
    「…いっちょ前に気を遣ってるつもり? どうせなら、そのままいなくなってくれると嬉しいんだけど」
    「ごめんね、それはもう少し無理かな。でも前にも言った通り、あなたのことも応援してるよ。あなたが彼と結ばれるなら、あたしにとってもいいことだから」
    「そんな事言って、信じられるとでも思うの?」
    「そう簡単に、信じて貰えないとは思う。それでも、あたしにも目的があるから。そのためなら、協力も惜しまない」
    「…訳わかんない」
    「そうだね。とりあえず今日は、ちゃんと二人の時間を作るから。楽しんでおいでよ」
    「……」
    「おい、二人ともそろそろ行くぞー? まずはお参りしてからだからな、色々回るのはそれからだぞ」
    「はーい」「はぁい」

    ガラガラガラガラ…
    「…触ってないのに鳴ってるんだけど、この鈴…」
    「怪奇現象だな…」
    「ふふ、そんなに恐縮しなくてもいいのにねぇ」

  • 41二次元好きの匿名さん23/09/05(火) 00:21:14

    >>40

    浴衣姿の幼女神良い…

  • 42二次元好きの匿名さん23/09/05(火) 09:08:26

    保守

  • 43二次元好きの匿名さん23/09/05(火) 18:08:55

    夏祭りでわたあめとかりんご飴食べてる幼女神概念

  • 44二次元好きの匿名さん23/09/05(火) 20:41:10

    アクルビ疫の三人で手を繋いで歩けばいいな

  • 45二次元好きの匿名さん23/09/05(火) 20:54:10

    >>44

    (但しルビーはめちゃくちゃ不満そうな顔をしている事は避けられないものとする)

    幼女神「こうして歩いてると二人とも夫婦に見られるかもしれないね」

    ルビー「!?そ、そんな言葉に騙されにゃいんだからね!」

    アクア(反応しにくい……というか夫婦にしては俺達は若過ぎるってところにはツッコミ入れないのかルビーは……)

  • 46二次元好きの匿名さん23/09/05(火) 21:05:41

    >>44

    そんな3人の前を歩く一家族

    子「もう1回!もう1回」

    父「えーまた?」

    母「仕方ないわねー」

    父母「「せ~の!」」

    かけ声の後、手を繋いでる子どもを上に上げる

    楽しそうな一家族


    を一部始終見ていた疫病神はスッと指を指す

    アクア「…やらないぞ」

    疫病神「あれやったら…私達家族みたいじゃない?」

    ルビー「せーの!!」

    アクア「待て待て待て待て!」

  • 47二次元好きの匿名さん23/09/05(火) 23:26:12

    「おもしろいねぇ、これ。ふわふわで、甘くて」
    「りんご飴にしようかな、あんず飴にしようかな…」
    「こっちにははしまきがないのが残念だな」
    「ふふ。楽しいね」
    「あ、おにいちゃんあれ面白そう! ね、行こっ!」
    「おい、人前で引っ付くな」
    「いーじゃん、せっかく二人きりで来てるんだし」
    「だからってな…二人…ふたり? そうか…そう、か…?」
    「どうしたの、おにいちゃん?」
    「…いや…」


    社の上から、境内の賑わいを見下ろす。"見えないように"しているから、誰かに気づかれることはない。
    とうに日は落ちたというのに、人の世界は光に包まれている。もはや夜の帷すらも、人を覆い隠すことなど出来はしない。
    その中で行われる祭事も、あの頃とは全く趣を異にしている。あの頃の祭事とは、生きるために必要な儀式であった。
    人の手の及ばぬ物事について神に縋り、供物を捧げ、希う。叶えられれば盛大に感謝し、祝う。もっと真剣で、もっと懸命なものであった。
    今の世は、違う。人は既に神に縋ることを止め、人は人だけの世を生きている。
    神への願いを記した木札を眺めてみたが、神でなくては叶えられない願いなどほとんどない。もはや神頼みとは、己の決意を新たにするための形骸と化している。

    しかしそれでも、この者達は神を忘れず、神を否定してはいない。
    例え形ばかりと言えど、神に対する儀礼を踏む事に抵抗はなく、己の目に映らない存在に対しても存在を拒むことをしていない。
    海の彼方では、多くの神がその存在を否定され、人々から忘れ去られたという。
    一度信心を失ってしまえば、例え後世にその存在が掘り起こされようとも、もはやそこに神性は存在しない。ただ、そういった物があったという抜け殻が残るばかりである。
    そうはならず、こうして存在を留めおけていることは----そう、"運がいい"のだろう。

    だからこそ。少しばかり、お節介をしたくなるのも、当然なのではないだろうか。
    この賑わいの中、二人きりの時間を楽しんでいるであろう、彼らを思い浮かべる。
    あの子が、彼にとっての楔となれば良い。もしあの子では不足でも、楔となりうる人間は何人もいる。なって、貰わなければ…。
    …頭を一つ、振る。頃合いだろう。そろそろ、あの家に帰らなければ。

  • 48二次元好きの匿名さん23/09/06(水) 07:31:09

    3人歩いてたら見惚れそうだよな、顔がいいのもあるけどなんか神秘的なオーラ感じて

  • 49二次元好きの匿名さん23/09/06(水) 15:38:01

    アクルビに劣らず顔がいいしな
    並外れた美しさなんてのは人外の特徴といえばそうではあるが

  • 50二次元好きの匿名さん23/09/06(水) 21:39:57

    「ああ、やっと見つけた。おい、探したんだぞ」
    「……あれ」
    「どうした、変な顔して」
    「二人とも、なんでここにいるの?」
    「なんでとは言い種だな。いつの間にかいなくなってた誰かさんを探してたに決まってるだろ」
    「……気づいたんだ。ルビーお姉ちゃんには、心配いらないよって伝えたはずだけど」
    「…あんたほっといて帰ったら、ミヤコさんに怒られるから。それだけだから」
    「…そう、なんだ。…ふふ」
    「何だよ」
    「何でもないよ。ふふ。ごめんね。ありがとう」
    「…変な奴だな」
    「さ、こいつも見つかったし帰ろう。おみやげ冷めちゃうよ」
    「そうだな。遅いとミヤコさん心配するし、行くか」
    「うん。ねえお兄ちゃん、手をつないでもいい?」
    「は?…ってこら、返事する前に掴むな」
    「あーっずるい、私も!」
    「おい待てルビー、落とす! 持ち替えるからちょっと待てって!」

    遠ざかる賑わいを背に。ぶら下げた袋から、いい匂いを漂わせて。
    あたしと、星野アクアと、星野ルビー。三人で、手を繋いで歩く。
    少しぼやけた月の下。握った手に、少しだけ力を込めて。


    残された時間が、少ないことを悟った。

  • 51二次元好きの匿名さん23/09/07(木) 00:09:41

    お前までアクアを曇らせる要員になるのか…?

  • 52二次元好きの匿名さん23/09/07(木) 03:16:41

    しゅ

  • 53二次元好きの匿名さん23/09/07(木) 07:55:49

    微妙に不穏になってきたな…

  • 54二次元好きの匿名さん23/09/07(木) 14:35:28

    このレスは削除されています

  • 55二次元好きの匿名さん23/09/07(木) 23:36:03

    「ふぁ…む」 ペチン! 「いって…何だよ」
    「お前が気の抜けた欠伸なんかしてるからだろーが。どうせまた夜中までロクでもないことしてんだろ」
    「してねーよ、むしろ最近は早く寝るようにしてるよ。でもなんか眠気が取れなくて…」
    「散々無理しすぎて、それが当たり前になって寝すぎって感じてんじゃねーのか。若いうちからそんなんだとすぐ体壊すぞ。ほら、今日はもう帰れ」
    「え? いや、俺はまだ…」
    「どうせ急いでやることも今はないしいいんだよ。それに、迎えも来てるってよ」
    「迎え?」
    「やっほ。お兄ちゃん」
    「ウズメ? お前、一人でこんなとこまで来たのか?」
    「クス。お友達と一緒だから大丈夫だよ」
    「こいつがお前のとこに居候してるって子か。なかなか映える顔してんな。
     嬢ちゃん、映画に興味ないか? 嬢ちゃんならいい画が撮れそうだし、出演させてやるぞ」
    「ふふ、ありがとう。でもあたし、もうすぐいなくなっちゃうから。ごめんなさい」
    「そうか? 残念だな。ま、興味あったらこいつに連絡しろよ、ねじ込んでやるから」
    「そいつはやめといた方がいいよ。全然子供らしくないし、小賢しい事言うし」
    「おめーがそれを言うのかよ、早熟。ま、そういう訳だからさっさと帰れ。シャキっとしてから出直してこい」
    「だから…もう、わかったよ。ウズメ、片づけるからちょっと待ってろ」

    「…そういや、さっきのは本当なのか? もうすぐいなくなるってのは…」
    「クス。寂しい?」
    「そんなわけ…」
    「あたしは、寂しくないよ」
    「……そうかよ」
    「でも、君は寂しいって思ってくれるんだね」
    「はっ、誰が」
    「嬉しいよ。あたし、嬉しい」
    「…お前、人に変わったって言うけど。お前もなんか、変わったな」
    「ふふ。そうかな? じゃあきっと、それは君のせいだね」

    寂しくは、ないよ。ならないよ。だって。

  • 56二次元好きの匿名さん23/09/08(金) 05:41:51

    続きが気になり過ぎる

  • 57二次元好きの匿名さん23/09/08(金) 12:15:26

    保守

  • 58二次元好きの匿名さん23/09/08(金) 17:16:08

    このレスは削除されています

  • 59二次元好きの匿名さん23/09/09(土) 00:38:51

    お互い絆されてていいな…

  • 60二次元好きの匿名さん23/09/09(土) 10:16:08

    ガチャ
    「おにいちゃーん! ねぼすけおにいちゃん! お休みだからってよくないぞ!」
    「……」
    「もー、最近ほんとねぼすけだよね。…仕方ないのかもしれないけど」
    「……」
    「…うーん、我慢我慢。ほらおにいちゃん、起きてよ」
    「……」
    「おにいちゃんてば…おーい、おにいちゃん…?」
    「……」
    「…おにいちゃん? ねえ、どうしたの? ねえ…」
    「……」
    「息は…してる、よね…ちょ、ちょっと…おにいちゃん! 起きて、起きてよおにいちゃん!?」
    「……」
    「ど、どうしよう!? おにいちゃん、起きない…そうだ、ミヤコさんに」

    「待って。星野ルビー」

    「え…何よあんた。今あんたに構ってる暇ないの、おにいちゃんが起きないの! ミヤコさん呼んで…そうだ、お医者さんも」
    「無駄だよ。それじゃ、彼は目を覚まさない」
    「な、何言って…まさか、あんたの仕業? あんたがおにいちゃんに何かしたの!?」
    「違う。あたしは何もしていない。あたしは、彼の目を覚ましにきたの」
    「は? 何よそれ、あんたなら何とかできるって言うの?」
    「できる。任せて欲しい」
    「そんなの信じられるわけ…」
    「信じて」
    「……っ」
    「お願い。星野ルビー」
    「………ダメだったら、すぐお医者さん呼ぶからね」

  • 61二次元好きの匿名さん23/09/09(土) 15:54:25

    アクアは大丈夫なのか…?

  • 62二次元好きの匿名さん23/09/09(土) 20:54:23

    保守

  • 63二次元好きの匿名さん23/09/10(日) 01:23:37

    ほう、アクアが『持っていかれる』とは…

  • 64二次元好きの匿名さん23/09/10(日) 08:56:58

    「ありがとう」
    そう言うと、こいつ―――ウズメは、目を覚まさないおにいちゃんの胸に手を当てた。
    そして、そのまま目を閉じる。
    …どれくらいそうしていただろうか。
    「……ん、ん……」
    あれほど揺すっても、叩いても全く反応しなかったおにいちゃんが、反応を示した。
    「おにいちゃん!?」
    すぐにおにいちゃんに駆け寄る。
    「ふぁ…ルビー? 何だ、休みなのに早いな…」
    その様子は、全くいつも通りで。二度と目覚めないんじゃないか、とまで思わされたさっきまでの雰囲気はない。
    なんだか酷く安心してしまって、目端が潤んでくる。それを隠すように、おにいちゃんに抱き着いた。
    「うわ、おいルビー、どうしたんだよ…」
    「どうしたじゃないよ…おにいちゃん、何しても起きなくて…ほんと、心配したんだよ…?」
    「…俺が? …そうか、悪かった。心配かけたんだな」
    「ほんとだよ、もう…その子がいなかったら、どうなってたかわからないんだから…」
    「その子? ああ、ウズメもいたのか。お前が起こしてくれたのか?」
    「そうだよ、ねぼすけのお兄ちゃん」
    「なんかお前に言われると刺さるな…」
    「おにいちゃんが悪いんだからね。ね、…あ、あれ…? あんた、どうしたのその体…」
    ウズメの方を見た私は、思わず言葉に詰まった。
    「体? …別に、いつものウズメじゃないか」
    「え、何言ってるのおにいちゃん、だって…」
    「ルビーお姉ちゃん」
    私の言葉を遮るように、ウズメが声をかけてくる。
    「お話したいことがあるよ」

  • 65二次元好きの匿名さん23/09/10(日) 08:57:33

    「落ち着いて聞いて欲しい」

    「彼の魂が、消えかかっている」

    明らかに一回り小さくなったウズメは、はっきりとした声でそう言った。

  • 66二次元好きの匿名さん23/09/10(日) 15:58:10

    アクアの方が曇らせるのか…

  • 67二次元好きの匿名さん23/09/10(日) 18:18:18

    このレスは削除されています

  • 68二次元好きの匿名さん23/09/10(日) 21:07:54

    保守

  • 69二次元好きの匿名さん23/09/11(月) 01:09:21

    待て、アクアの方も曇らせてるがこれウズメもライフ削ってるんじゃ…

  • 70二次元好きの匿名さん23/09/11(月) 05:57:46

    疫病神はアクアに対しては物言いの割に結構気にかけてるなってところあるけど
    ルビーに対してはなんか言葉通り辛辣って感じはあるよね
    何の差なんだろう

  • 71二次元好きの匿名さん23/09/11(月) 10:52:22

    ルビーがアマテラスの系譜だからトゲがあるとか
    自分の推しの子であるアクアに推されているのが気に入らないとか
    そんな感じとか?

  • 72二次元好きの匿名さん23/09/11(月) 18:07:26

    「…何、言ってるの…? 魂って、おにいちゃんの…ゴロー先生の、魂が?」
    「そうだね。最も、もうだいぶ雨宮吾郎だった頃とは変わっているけれど。
     今、星野アクアの肉体に入っている魂という認識でいいよ」
    「ふざけたこと言わないでよ。おにいちゃんは元気じゃない」
    「でも、さっきは目覚めなかった」
    「あ、あれはたまたま…」
    「断言してもいい。明日も、明後日も、彼は目覚めない。あたしが目を覚まさせないかぎり、彼は二度と目覚めない」
    「そん、な…」
    「…信じたくない気持ちはわかるよ。でも、もうこうなった以上時間はあまりないんだ」
    「時間がないって…だったら、だったらどうしろって言うの? このままおにいちゃんの魂が消えるの待てって言うの!?」
    「そうはさせない。そのために、あたしがここにいる」
    「そのために? あんた、おにいちゃんを助けられるの?」
    「助けられる。あなたが、協力してくれるなら」
    「協力…」
    「そう。けれど、難しいことかもしれない。それでも、協力してくれる?」
    「…やるよ。しないと、おにいちゃん助けられないんでしょ? 何でもやる」
    「ありがとう。…彼のこと、好き?」
    「は? 何それ、なんで」
    「答えて。必要な事なんだ」
    「必要って……そんなの、好きに決まってる! 大好き。世界で一番大好き、当たり前じゃない。それが何なの?」
    「そうだね。聞くまでもないことかもしれなかったけど、それでも確認しておきたかったんだよ」
    「何の確認よ」
    「彼の魂を救う方法。それは、誰かが彼に魂を分け与え、失われた分を取り戻すこと」
    「魂を…分け与える?」
    「そう。でもこれは、彼を本当に信頼している人間にしかできない。それこそ無意識に近いところで、彼のためなら何でもできると思っているくらいに。
     魂の話だからね、嘘もつけないし、取り繕うこともできない。それだけの強い信頼を持った人間を探すのは、砂山から金の粒を探すくらい大変な事…なんだけど、ねぇ、本当は」

  • 73二次元好きの匿名さん23/09/11(月) 19:52:01

    このレスは削除されています

  • 74二次元好きの匿名さん23/09/12(火) 06:34:05

    このレスは削除されています

  • 75二次元好きの匿名さん23/09/12(火) 14:57:56

    「実は、何人もいるんだよねぇ、彼の場合」
    「…はぁ?」
    「ちょっとズルをして、彼に近しい人の魂を少しだけ覗かせてもらったんだけど。魂を分け与えるに十分な信頼を抱いている人が、何人もいたんだ。
     幸運―――いや、彼の行いの賜物だから、そう言ってしまうのは彼に悪いね。いっそ、別の意味で心配になるくらいだよ」
    「……せんせ、ほんと女たらしなんだから」
    「あれ、あたし別に女の人とは言ってないけど」
    「うるさい! とにかく、これでおにいちゃんを助けられるんでしょ!」
    「うん。これだけの人数がいるなら、一人一人の魂の負担も抑えられる。
     実はさっき、あたしが彼にしたことは、魂を分け与えるのと同じようなことなんだ。その結果が、今のあたしだよ」
    「今のって…そう、どうしたのその体? どう見ても、小さくなってるじゃない」
    「今のあたしの体は、魂を使って具現化させているようなものだからね。彼に魂の力を注ぎ込んだ分、こうなっちゃったってとこかな。
     これと同じことを人の魂を使って行えば、分け与える方にもそれなりの負担がかかる。ややもすると、寿命にも影響が出かねないほどにね。
     でも、今回は大丈夫だと思う。あたしもいるしね」
    「…ずいぶん自信ありげじゃない」
    「神様みたいなものだからね。とにかく、十分な状況は用意できたよ。
     けれど、失敗は許されないから、数日準備が欲しい。その間、あなたにも協力してもらいたいこともある」
    「わかった。何をすればいい?」
    「まず、彼にはこの事を話さないこと」
    「え? おにいちゃんに言わないの?」
    「そう。もし彼が自分の魂が消滅しかかっていることを自覚してしまえば、魂の消滅が早まってしまうかもしれない。
     特に彼は、一度死を経験しているからね。死についてのイメージは明確だろう。それに引っ張られてしまいかねない」
    「…わかった」
    「そしてもう一つ。これは、あなたにやってもらいたいこと。
     けれど、あなたにとっては辛いことになるかもしれない。それでも、やってくれる?」
    「やる。何だって。おにいちゃんのためなら」
    「ふふ、ありがとう。それじゃあ、お願いしたいのは…」

  • 76二次元好きの匿名さん23/09/12(火) 17:05:06

    アクアの善行(本人はそう思っていない)の結果の賜物だな…

  • 77二次元好きの匿名さん23/09/12(火) 21:38:31

    色々な人を煽ってたのはそれか

  • 78二次元好きの匿名さん23/09/13(水) 07:54:05

    「……」
    「何を考えてるのかな?」
    「…普通にしゃべって動く赤ん坊って結構気持ち悪いのね、ってこと」
    「あなたがそれを言うかなぁ」
    相変わらず、カンに障る笑い方をする。
    元々幼児と言っていい容姿だったウズメは、今や乳児にしか見えないほどに幼くなっている。
    こいつが準備と称した数日間、断言した通りに全く起きないアクアを毎日目覚めさせた結果だ。
    こんな風になっても、アクアもミヤコさんも誰一人ウズメをおかしいと思っていない。「ごまかしている」と言っているが、ホントでたらめな奴だ。
    「…ねえ。あんた、そのままだと…もしかして、消えちゃったりするの?」
    「そうだね。このまま同じことを続けていれば、いずれは」
    「……」
    「そんな顔しなくても大丈夫。これはあくまで、ここにいるための仮初の肉体だから。消えても、あたしの存在がなくなる訳じゃない。こことはちょっとズレた所に帰るだけ。
     …ただ、そうなるとこちらに干渉するのが難しくなるから、その前にやることはやっておかないとね」
    そう言うと、ウズメは平然と立ち上がる。
    「あなたの協力のおかげで、準備は整ったよ。今夜、彼にあなたたちの魂を分け与える」
    「協力って…本当に、あんなのでよかったの?」
    「クス。ご不満かな?」
    「…別に」
    こいつが私に頼んだ協力。それはこの数日の間に、アクアに魂を分け与えることになる対象の人物と、アクアが二人きりで交流する機会を作ってほしい、というものだった。
    何でも、魂の通り道とかなんとかを作りやすくするためってことだけど。その対象というのは、だいたい予想通りの人たちで。
    「『おにいちゃんが元気がないから、励ましてあげて』って言っただけで、みんなすぐ駆け付けるんだから。ほんと、せんせーは女たらしだ」
    「本当にね。それには同意するよ」
    「あんたも引っかかってるんじゃないの?」
    「ふふ。どうだろうね」
    相変わらずの、人を食ったような笑い。けど、私ももうわかってる。
    こいつは人をからかうような言い方はしていたけど、アクアの事については一度も嘘を言わなかった。
    「………ごめんなさい」

  • 79二次元好きの匿名さん23/09/13(水) 11:20:38

    そもそもなんでアクアの魂が消えかかってるんだ?

  • 80二次元好きの匿名さん23/09/13(水) 16:27:53

    >>79

    大した理由ではないですが、それはまぁこの先で明らかに…なれば…いいなぁ

  • 81二次元好きの匿名さん23/09/13(水) 17:24:05

    死んだら本来星の海に還る(?)筈なのに他人の身体に詰め込まれて精神負荷かけて長年過ごしたのなら普通に魂削られそうだな

  • 82二次元好きの匿名さん23/09/13(水) 23:21:51

    保守

  • 83二次元好きの匿名さん23/09/14(木) 07:21:59

    このレスは削除されています

  • 84二次元好きの匿名さん23/09/14(木) 09:03:54

    「何がかな?」
    「あんたのこと。本当はどこかで、あんたが原因なんじゃないかって思ってた。
     あんたがおにいちゃんを死なせにきたんじゃないかって」
    「…そう」
    「でも、あんたは少なくともおにいちゃんに対してはそんなことしない。それだけは、わかったから。
     だから、疑ってごめんなさい」
    「……」
    「…なんで、せんせーばっかり酷い目に遭うんだろう」
    「……」
    「ゴローせんせ、殺されたんだよ。私みたいに、死ぬのがわかってて、死んじゃったんじゃないんだよ。もっと、生きられたはずなのに。
     せっかく生まれ変わったのに。また、そんな訳の分からない理由でいなくなっちゃうの?
     …私たちが、生まれ変わりだから? だから、魂だけ消えちゃうの?」
    「…肉体と魂の結び付きは、あなた達が思っているより強い。肉体が健康なのに、魂だけが消えるなんてこと、自然にはまずありえない。
     確かにあなた達のように、本来と異なる肉体に魂を入れた場合は少し特別だけど。
     入れて間もない頃ならともかく、これだけの年月が経っているなら既に定着しているはず。それが理由で魂が消えることはないよ」
    「だったら! だったら、どうしてせんせの魂が消えたりするの!?」
    「ごめんね。本当の本当に、わからない。なるべく近くにいて、探りを入れるようにはしていたんだけど。
     あたしは魂を観測はできても、心を覗ける訳ではないから。せいぜい、ちょっとお話してもらいやすくなるように誘導するくらい」
    「…役立たず」
    「…そうだね」
    「疫病神。あんたなんか、来なければよかったんだ」
    「返す言葉もないよ」
    「………ごめん」
    「いいよ。それで、あなたが少し楽になるのなら」
    そう言って、ウズメはうずくまる私の頭を撫でた。その手が私を落ち着かせるのが、悔しい。
    「そうだね。この際だし、本当のことを話しておくよ」

    「あたしは、彼の魂を回収するために、ここに来たんだよ」

  • 85二次元好きの匿名さん23/09/14(木) 15:08:12

    このレスは削除されています

  • 86二次元好きの匿名さん23/09/14(木) 23:36:20

    保守

  • 87二次元好きの匿名さん23/09/15(金) 07:56:35

    「え…?」
    呆けた顔で、ルビーがこちらを見る。その顔に少しだけ、胸が疼く。
    「彼は、こちらの思惑通りに仕事をしてくれた魂だからね。相応の扱いをしないと、こちらの面子が立たない。
     だから、この先彼が亡くなった時、すぐに魂を回収できるように観測していたんだけど…ある日、彼の魂が少しずつ薄れ始めていることに気が付いた」
    「薄れ、って…?」
    「復讐が終わって、少し経ったころだったかな。こちらは大慌てだよ。理由はわからないし、もしそのまま魂が消えてしまえば、星と海に還って完全に消滅してしまう。
     だから、消え去る前に急いで回収する必要があった。そこで、あたしに白羽の矢が立ったわけ。その命令で、あたしはここにきたんだよ」
    「…じゃあ、あんた、やっぱりせんせーを…」
    「だけどね。あたしもちょっと思う所があった。
     こっちの思惑で輪廻転生を乱してまで利用して、仕事が終わったからっていなくなられる前にはい回収、なんてちょっとどうかと思ったんだよ。
     だから、ちょっとサボることにしたんだ」
    「サボる?」
    「魂が消えそうだから急いで回収する必要があるのなら、消えないようにできれば慌てて回収することもないからね。
     とりあえず彼のそばにいて、魂が消えようとしている原因を調べ、また魂が消えずに済むようにできるならそれでいいと思ってね」
    「……」
    「残念ながら原因の特定はできなかったけれど、魂が消えずに済む方法については目途が立った。まぁ、最初からあなたがいたからそれは大丈夫だと思っていたけれど。
     だから、とりあえず彼の魂を維持することに決めたと、そういうわけなんだよ」
    「……」
    「信じてくれるかな?」
    「…そもそも、何言ってるのか全然わかんない」
    「そうだよねえ」
    「でも、せんせのために色々してくれてるってことはわかった」
    「…うん」
    「ありがと。そこだけは、あんたを信じる」
    「うん。嬉しいよ」

    「…さて。それじゃあそろそろ、最後の仕上げにとりかかろうか」

  • 88二次元好きの匿名さん23/09/15(金) 13:24:27

    口ではああ言ってたが実際は罪悪感でボロボロとかそんな感じかな

  • 89二次元好きの匿名さん23/09/15(金) 20:54:36

    保守

  • 90二次元好きの匿名さん23/09/16(土) 02:56:52

    人間臭くなってきたなこの子も

  • 91二次元好きの匿名さん23/09/16(土) 09:09:51

    「あ、あたしも一緒にいてもいい…?」
    「ごめんね。今回は集中したいから、あたし一人でやらせて欲しい」
    「そっか…」
    「その代わり、あなたにもお願いしたいことがある。彼に近しい人に連絡して、今夜一晩、彼のことを想うように頼んで欲しい。
     想いを集められれば、魂の受け渡しもやりやすくなるから。もちろん、あなたも」
    「わかった。任せといて。…お願い、おにいちゃんを助けて。私の魂、全部使ってもいい。
     私は、おにいちゃんがいなくなった世界でなんて生きていけないから。二度もせんせを失う人生なんて、私は堪えられない」
    「力は尽くすけど、その考えは危険だからやめて欲しいな。消えようとしている魂に、消えてもいいと思っている魂が寄り添えば、引っ張られて諸共消滅しかねない。
     自分が彼を引き戻すんだっていうくらいの強い気持ちで、彼のことを想うようにしてね」
    「…うん。ごめん、ありがとう」
    「…けれど、これは予め言っておくよ」
    ルビーの目を、正面から見据えて言う。
    「もしあたしが失敗して、彼の魂が消えそうになってしまった時は。あたしはその前に、彼の魂を回収する」
    「……」
    「そうなったら、あたしを恨んでくれていいよ」
    「…ううん。あんたが失敗しないことを信じる」
    「……ありがとう、星野ルビー」
    「でも、一つ聞いてもいいかな」
    「何かな?」
    「そうなった時は。私が死んだらまた、せんせと会える?」
    「…それは、無理だよ。あなたの魂は星と海に還り、彼と出会うことは金輪際ありえない」
    「…そっか。うん、わかった」
    最後に見せた笑顔は、泣き顔のようにも見えた。

    星野ルビーは、ああ見えて聡い。そして、嘘については特に敏感で、潔癖だ。下手な誤魔化しなどあの子には通じまい。

    しかし、それ故の幼さもある。嘘を見極められる分、嘘をつかない相手はそれだけで信用してしまうところがある。
    事実を覆い隠す手段は、嘘をつくことだけではないというのに。

    あたしは確かに、あの子に嘘はついていない。ただ、言っていないことがいくつかあるだけ。

  • 92二次元好きの匿名さん23/09/16(土) 17:37:01

    保守

  • 93二次元好きの匿名さん23/09/16(土) 20:17:37

    このレスは削除されています

  • 94二次元好きの匿名さん23/09/16(土) 23:37:48

    あの子に話したことは、全て本当のことだ。
    星野アクアの魂が消えかかっているのも、その回収のためにあたしが来たのも、魂の受け渡しで彼を助けることができることも。
    ただ、告げていない事実もいくつかある。

    例えば、あたしがここからいなくなれば、あたしが来てからの事は全て忘れて、適当に記憶の辻褄合わせがされてしまうこと。

    そして、魂の受け渡しを行って彼の魂を修復したとしても、根本的な解決にはならないこと。

    結局のところ、魂が消えようとしている原因を突き止めて解決しなければ、また魂の消滅は起きてしまう。
    どこに穴が開いているかわからない水瓶に水を注ぎ込むようなものだ。一時的には水は満ちるだろうが、また漏れだしていずれ水はなくなるだろう。

    だが、あたしにとってはそれで構わないのだ。
    あたしの本当の目的は、既に達成されているのだから。

    あたしの目的は、彼の魂にあたしの存在を刻み込むこと。
    ここ数日で彼の魂に何度も干渉したことで、それは成し遂げている。
    これでこの先、彼の魂が消滅せんとしたとしても、星と海に還ることなく、あたしの下へ自然と導かれることになる。
    もはや、彼の魂はあたしのものと言ってもいい。
    これから行うことは、せっかくお膳立てが整ったのだからやってあげよう、程度のことでしかない。

    ああ、そういえば一つだけあの子に嘘をついていた。
    あたしが、命令を受けてここに来たということ。
    命令などではない。あたしは自分から、他の者に先んじてここに来たのだ。
    こんな機会を、逃すわけにはいかない。

    彼の魂に触れるのが、自分以外であってなるものか。

  • 95二次元好きの匿名さん23/09/17(日) 09:12:22

    保守あげ

  • 96二次元好きの匿名さん23/09/17(日) 12:56:17

    星野アクアの部屋に入り、眠る彼を見下ろす。
    穏やかで、端正な寝顔。これが永遠の眠りになりつつあると、気づく者はいないだろう。
    部屋の外からは、あの子たちが集まっている気配を感じる。あの子たちは、死にゆく者にとても敏感だ。
    先日は全く彼に反応しなかったあの子たちが、今や爛々とした目で彼を見つめているのだろう。彼の命の灯が消えかかっている何よりの証だ。

    星野アクアの体に近づく。薄れゆく魂の姿が見える。
    このまま彼の魂を回収してしまっても、あたしとしては別に問題はないのだが。
    先程自分に向けられた、星野ルビーの縋る様な瞳が、ふと過ぎる。
    嫌だろうに、悔しいだろうに。そんな相手に想い人の運命を託さなければならないという表情は、いっそ滑稽ですらある。
    …それでも。それなりには楽しませてもらったことだし、少しは報いてあげても、まぁいいだろう。
    これによって彼がどれだけ生きたとしても、所詮人の生など転寝する間に終わること。あたしは、その日を楽しみにすればよいだけなのだから。

    そろそろ、いいだろうか。魂の道は、問題なく開けるだろう。
    彼の胸に手を伸ばし―――

    その手が、止められた。

    「起きてたんだ」
    「まぁな」
    星野アクアの、手によって。

    「目覚めるとは思っていなかったよ。よく起きられたね」
    「何でだろうな。夢を見ていたのか、見ていなかったのかもわからないが。ただ、誰かの声がしたような気がして。
     そしたら、急に起きなきゃって気持ちになってな。それで、な」
    「クス。それはきっと、あの子…いや、あの子たち、の声かもね」
    「そうかもな」

    「俺は。もうすぐ、消えるんだろ」

  • 97二次元好きの匿名さん23/09/17(日) 20:37:45

    保守

  • 98二次元好きの匿名さん23/09/17(日) 22:43:05

    このレスは削除されています

  • 99二次元好きの匿名さん23/09/18(月) 01:57:57

    このレスは削除されています

  • 100二次元好きの匿名さん23/09/18(月) 08:25:55

    「…それも、気づいてたんだ」
    「自慢じゃないが、一度死んでるからな。忘れようもない、あの時の感覚に近いものを最近感じてた。
     身体が寒くなって。何も感じなくなっていくことを感じる、自分が消えていくあの感覚。
     気のせいかとも思ったが…お前のその姿を見るに、やっぱりただ事じゃないんだろうなって」
    「クス。ごめんね、せっかくあなたに選んでもらった服なのに。ちょっと、合わなくなっちゃったね」
    「いいさ。やっぱりお前には、その不吉な恰好が一番似合ってる」
    「言ってくれるね。誉め言葉として受け取っておくよ」
    「ああ。そのつもりで言ってるからな。お前はそれが一番魅力的だ」
    「…減らず口だねぇ」
    「…なぁ。俺は、どうなるんだ」
    「このままだと、君の魂は消えて霧散する。何か、消えたくて仕方がないことでもあるのかな?」
    「心当たりが多すぎるな」
    「クス。そうかもね。大丈夫、そうなる前にちゃんとあたしが回収してあげるから。丁重に扱うと約束するよ」
    「そうか。まぁ、お前ならいいか」
    「皮肉かな?」
    「本心だよ。しばらく一緒にいたから、前よりはお前のこともわかった気がするし」
    「ふうん。どうあたしの事をわかったのかな?」
    「お前、思ってたより俺のこと好きだろ」
    「前言撤回だね。君の魂は雑に扱うとするよ。それはもう雑に」

    「さて、戯言はこれくらいでいいかな。もう少しだけ、君に時間をあげよう。
     君の魂に、君を想う人たちの魂を分け与える。あの子たちに感謝しながら受け取るといいよ。
     大丈夫、すぐに終わるから。君はそうだね、何か楽しみにしていることでも考えていてくれたら手っ取り早く済むよ。
     だから、」

    「その手を、放してくれるかな」

    「いいんだ」
    「俺は、もういいんだよ」

  • 101二次元好きの匿名さん23/09/18(月) 15:09:57

    保守

  • 102二次元好きの匿名さん23/09/18(月) 22:31:35

    このレスは削除されています

  • 103二次元好きの匿名さん23/09/18(月) 23:57:04

    「俺は―――雨宮吾郎は、母親の命を奪って生まれた」
    「誰もが、そういう目で俺を見ているように思えた」
    「俺は、自分が生まれた意味がわからなかった」
    「なぜ俺が生まれて、母が死ななければならなかったのか」
    「人の命を扱うようになれば、その意味がわかるのかもしれないと思って、医者を目指した」
    「目指していた外科医ではなく、産婦人科医になって」
    「研修先でさりなちゃんと、出会って」
    「別れた」
    「わかってたんだ。俺にできることなんかない。俺に何かできる程度のことなら、さりなちゃんがあんなに苦しむはずがないと」
    「だけど、わかっていてもさりなちゃんを見ていることしかできない自分が情けなくて」
    「俺は人を救うことなんかできないんだって突き付けられた」
    「医者としての人生も、命を失うことから始まったんだ」
    「それでも、産婦人科医として、初めてこの手で新生児を取り上げたとき」
    「ほんの少しだけ、救われた気がしたんだ」
    「もしかしたら、これを続けていれば自分の生まれた意味がわかるのかもしれない」
    「一つでも多くの命を、無事にこの世界に導くことができたなら」
    「生涯これを続けていけたのなら、俺にも生まれた価値ができるのかもしれないって」
    「でも、それもできなかった」
    「俺の生涯は、中途半端なところであっさり終わって」
    「絶対にこの手で取り上げたいと思っていた赤ん坊も、取り上げることもできず」
    「誰にも気づかれないまま、俺は死んだ」
    「雨宮吾郎は、何もできないまま終わった」

    「そして俺は、自分で取り上げることのできなかった赤ん坊に生まれ変わった」
    「俺は、星野愛久愛海となった」

  • 104二次元好きの匿名さん23/09/18(月) 23:57:49

    「なぜ自分なんかに、二度目の人生が与えられたのかわからなかった」
    「俺よりも、与えられるべき人はたくさんいるのに」
    「何もできない俺なんかに、こんな機会が与えられていいはずがないと、ずっと悩んでいた」
    「けれど、ルビーも生まれ変わりだと知って。星野アクアとして生きることにも、慣れてきて」
    「これは、俺に与えられた贖罪の機会なんだと思うようになった」
    「雨宮吾郎として何も成せなかった自分に」
    「母の命を奪って生まれておきながら、誰一人救うこともできなかった自分に」
    「その罪を雪ぐためのチャンスが与えられたんだと、思った」
    「だからこの人生では、アイとルビーを俺が守っていこうと決めた」
    「そうすれば、星野アクアとしての人生に意味が持てるはずだと」
    「でも」
    「それも、できなかった」
    「アイは殺され、俺は死にゆくアイを見ていることしかできなかった」
    「俺はまた、何もできなかった」
    「消えようと思った。消し去りたかった。俺という存在を」
    「けれど、見つけてしまった。生きる糧を。復讐というよすがを」
    「そんなことをしても、アイは戻らない。誰の救いにもならない」
    「わかっているのに、止められない俺がいた」
    「復讐のために生きようとする俺を、消えようとする俺がずっと見ていた」
    「生きなきゃいけないと思う俺と、生きていてはいけないと思う俺が、同時に存在していた」
    「復讐のことだけを考えて、ずっと過ごしてきた人生は」
    「幸せだった」

    「ルビーが健やかに育っていくのを見て、嬉しかった」
    「ミヤコさんが本当の母のように抱きしめてくれて、温かかった」
    「カントクのところで演技や映像の勉強をするのは、楽しかった」
    「有馬の太陽みたいな演技に、目を焼かれた」
    「あかねを過ごす穏やかな時間に、心が満たされた」
    「MEMが夢を叶える姿を見て、胸が溢れた」

  • 105二次元好きの匿名さん23/09/18(月) 23:58:33

    「復讐を考えて生きながら、幸せを享受するたびに」
    「同じだけ苦しみを感じる俺がいた。同じだけの憎しみを抱く俺がいた」
    「その板挟みで押し潰されながら、俺はついに」
    「復讐を遂げた」

    「復讐を終えた時、感じたのは達成感なんかじゃなかった」
    「罪悪感でもなかった」
    「ただ、俺はこんな人間なのか、という事実が腑に落ちた」
    「誰かを救うことも、守ることもできないのに」
    「誰かを破滅させることはできてしまった」
    「二度目の生を無意味な復讐にやつし、人生の全てをかけてやり遂げたことが」
    「こんなことだったのかと、自分に失望した」

    「自分が消え始めていることに気づいた時、俺は安心したんだ」
    「やっと、星野アクアを終わらせられる。やっと、俺は解放される」
    「俺は、何もできなかった」
    「俺は、もう何もできない」
    「俺を助けないでくれ」
    「俺を救わないでくれ」
    「俺は救われるべき人間じゃないんだ」

    「俺は、俺でいることが、もう嫌なんだ」


    「…そう」
    「それが、君の本心なんだね」
    「よく、わかったよ」

  • 106二次元好きの匿名さん23/09/19(火) 08:10:03

    保守

  • 107二次元好きの匿名さん23/09/19(火) 16:00:55

    疫病神ちゃん引っぱたいていいぞ

  • 108二次元好きの匿名さん23/09/19(火) 20:43:39

    保守
    やっぱアクアって利他的に見えて実は利己的なのでは

  • 109二次元好きの匿名さん23/09/19(火) 23:41:36

    >>102に投稿していたつもりの物をうっかり消してしまっていたことに今更気づいたので再投稿です


    「…どういうことかな?」

    「言葉の通りだ。俺は、このまま消える」

    「ふーん? そんな覚悟は、とうに捨てたように見えたけどね?

     黒川あかねとまた会う約束をしてたじゃない? 新しい映画に出たいんじゃなかったのかな?

     ずいぶんと、未来を楽しみに生きようとしていたようだけど。死ぬまで背負うなんて、大層なことを言っていたよね?」

    「そう見えていたんなら、俺も捨てたもんじゃないな」

    「何を言って……、…まさか」


    まさか、この男は。演じていたというのか。

    長く同じ時間を過ごした家族や、並み居る演技の天才や、このあたしをも欺いて。

    『復讐を終えて晴れ晴れと未来を歩む星野愛久愛海』という人間を、演じていたというのか。


    「…やられたね。大したものだよ」

    「お前に褒められるとは光栄だな」

    「そうだね。本当に脱帽だよ。満足したかな? それなら終幕だね。舞台を降りて、仮面を捨てようか。

     素直になってくれると、あたしも楽に終わらせられるんだけど」

    「ああ。何もしなくていいぞ。それが一番楽だろ」

    「……いい加減にしてくれないかな? 子供みたいな我が儘に付き合うつもりはないんだよ。それなら、無理にでも――」

    魂の力を注ぎ込もうとして、気付く。

    魂の道が途切れている。先程までは、しっかりと繋がっていたはずなのに。

    「――君は、本当にあの子たちを拒絶するつもり?」

    「ああ」

    彼は笑う。おおよそ彼に似つかわしくない、酷薄とも言えるような笑みで。


    「俺は、あいつらに救われるような人間じゃないんだ」

  • 110二次元好きの匿名さん23/09/19(火) 23:44:40

    すみません

    >>109>>103~と読んで下さい

  • 111二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 07:31:44

  • 112二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 11:01:19

    >>105から続き

    その独白は、彼の本心から溢れたものなのだろう。恐らくは、誰にも漏らしたことのない、ルビーですら知らない、彼の本当の心。

    それを聞いて、あたしは。

    「…何のつもりだよ」

    「したくなっただけだよ」

    彼の頭を抱き寄せる。この姿では、あたしが彼の頭にしがみついているようにしか見えないかもしれないけど。

    「君をそこまで追い詰めたのは、あたしのせいだから」

    「…お前のせいじゃない、俺が」

    「ううん、違うんだよ。その肉体に、君の魂を入れたのは、あたしだから」

    「…何?」

    「星野ルビーの肉体に天童寺さりなの魂を入れる事は、ずっと前から決まっていたこと。必要だったのは、彼女を支える片翼。

     輝かしい栄光を掴むあの子を、愛し、守り、迫る脅威を万難を排して取り除こうとする存在。君は、それにうってつけだったからね。

     その君が、まさに星野アクアが生まれる直前に命を落とした。だから即座に魂を移し替えた」

    「…都合のいい人間が、都合よく死んだから、か。勝手なもんだ」

    「というのが、あたしが弁解した内容」

    「は?」

    「本当はね、星野アクアとして生まれ変わる魂は、いくつかの候補から選ばれるはずだった。

     あたしはそれを無視して君の魂を入れちゃったわけだからね、そりゃあ怒られたよ。…それでも、あたしは君の魂を選んだ」

    「……どうして、そこまでして俺を」

    「本当はただ、君に消えて欲しくなかっただけだから」

    「俺、に?」

    「あたし、ずっと見てたんだよ。君が雨宮吾郎だった頃からずっと。前にも言ったけどね」

    「あれは出まかせじゃなかったのか…」

    ずっと、見てきたのだ。

    大事なものが欠けていながら、歪むことも濁ることもなく、ただ欠けた部分を求めるその魂の姿を。

    この魂が満たされたのなら、どれだけ美しいものになるのだろうかと。

    「君の満たされた魂があたしは欲しかった。けれど、それは決して雨宮吾郎としての人生では満たされることのないものだった。

     だから、もう一度君に生を与えた。この生で、君の魂が満たされることを願って、ね。軽蔑したかな?」

    「いや…もう、どうでもいいことだ。魂でも何でも、持っていってくれ」

    「うん。そうするよ。…そうするつもり、だったけどね」

  • 113二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 18:10:05

    このレスは削除されています

  • 114二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 22:54:26

    彼の体に、力を送り込む。これはあの子たちの魂じゃない、今のあたし自身の力だ。
    「今の君は満たされていない。欠けているどころか、空っぽだ。あたしはそんな魂が欲しいわけじゃないよ」
    「お前、何を」
    「君は使命を果たした。君の魂は星と海に還ることなく次の生を得て、それは幸せなものになるだろう。
     けれど、それはきっと君を満たすものにはならない。君を満たすものは、この生にある」
    「やめろ」
    「それに。君がこの生で成し遂げたことの酬いは、この生で受けるべきだよね」
    「おい!」
    彼は、あたしを引きはがそうとする。しかし、赤子のようなあたしの手は、彼がいくら暴れようとびくともしない。
    当然だ。人の力で、神に抗えるはずがない。
    「やめろ、やめるんだ、ウズメ!」
    そう。もっと、あたしをそう呼んで欲しい。そうすれば、あたしは――成れる。
    「君は、守ってきたじゃないか。前世からずっと大切に思っていたあの子を。道に惑い、破滅しかけたあの子を」
    途切れていた魂の道を開く。
    「君は、救ってきたじゃないか。命を捨てようとしていたあの子を。夢を諦めきれず、囚われかけていたあの子を」
    あの子たちの魂の力を送り込む。
    「君が何もできなかったのか。それは、君ではなくあの子たちに決めてもらうべきだよね」
    「頼む、やめてくれウズメ、俺は」

    「なら、あたしを拒めばいいよ」
    ―――否。できるはずがない。
    「目を覆い、耳を塞いで」
    ―――あたしから目を逸らすことなど、
    「魂の岩戸を閉じて、全てを拒絶すればいい」
    ―――神々だってできやしない。
    「できるものなら、ね」

    我が名は、天鈿女命。

    この国で最初のアイドルを、侮るな。

  • 115二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 06:36:38

    アメノホシュメ

  • 116二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 12:35:22

    閉じこもってるアクアにまさにって感じだな

  • 117二次元好きの匿名さん23/09/21(木) 15:53:50

    「ああ…ああああっっっ!!!」
    アクアは、あたしの腕の中でまるで苦痛を与えられているかのように悶える。
    苦痛であるはずがない。あたしの仮初の肉体を通じて彼に流れ込むこの力は、彼を心から案じる者達の、その想いなのだから。
    星野ルビー、黒川あかね、有馬かな、MEMちょ、斉藤ミヤコ…いや、これはそれだけじゃない。
    ルビーが連絡を取った人は存外に多かったらしい。あたしが直接魂の道を繋いでいないはずの、何人もの想いもまた流れ込んでくる。
    全く、これだけの人間を誑かしておいて、何が誰も救えないというのか。自己評価の低さもここまで来ると傲慢とすら言えるんじゃないかな、アクアお兄ちゃん?
    「抗わないで。ただ、受け入れればいい。とっても温かいはずだよ。君の事が大好きっていう、その想いなんだから」
    彼の魂に、力が満ちていくのを感じる。
    しかしそれでも、彼は完全には受け入れていない。最後の岩戸が、この恩寵を受けることを拒んでいる。
    これが、きっと…彼の魂が消えようとしている、根本的な原因のはず。それさえ、掴めれば――
    「おい、ウズメ、お前その体…!」
    彼の言葉にふと気づくと、あたしの体が少しずつ虚ろになりつつあった。少々、無理をしすぎたらしい。
    元々これが終わればあたしは消えるつもりだったので構わないのだが。
    「お前、このままじゃ消えるんじゃないのか…やめろ、やめてくれ、俺なんかのために!」
    …全く。この男は何なのだろう。多少情を移したからと言って、今まさに自分に苦痛を与え続けている相手を案じるというのか。
    本当に、本当に、この男は。
    「何で、俺なんかにお前が…!」
    「ふふ。そんなの、決まってるじゃない」
    あたしは本当に、
    「さっき君が言った通りだよ」
    この甘っちょろくて愚かな男が、
    「君のことが、好きだから」
    ―――愛おしいのだ。

    「………!!」

    "開いた"。

    「君はもう、許されていいんだよ。雨宮吾郎」

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