──昔、子供の頃、絵本が好きだった。

  • 1二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 10:43:49

    夜になるたび、母親にせがんで絵本を読んでもらっていた。
    その世界を空想し、眠りにつけば、夢の中で冒険に出る。
    いつか現実でもそんなことができればいいなと、夢の中でも夢を見た。

    そんな、昔の話。

    現実は思ったより夢がなくて。
    気がつけば大人になり果てたオレは、夢を見るのをやめた。
    今思えば簡単で、夢想も空想も子供の特権なのだと気がついて。

    そんな夢破れた、夢に敗れたオレが没頭したのは、悲しいことに仕事だった。

  • 2二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 10:43:59

    「はぁ・・・課長め・・・ノルマがきついんだよ・・・」

    すっかり暗くなった帰路を歩きながら、愚痴をこぼす。
    ─あぁ、いやだ。昔はそんな─ありふれた─大人にはなるまいと思っていたのに。
    今のオレは、「ありふれた」大人になっている。
    とはいえ、それも仕方ないこと。
    ありふれた大人にならない人間など、この世界にどれほどいるのだろうか。
    なれない人間は、いるだろうが・・・。

    「・・・ん・・・?こんなところに本屋なんてあったのか」

    ふと、足がとまる。
    既に遅い時間だと言うのに、明かりが1つ目に入った。
    目をやると、小さな本屋が一軒あった。

  • 3二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 10:44:12

    ─この通りは、毎日通っているのだが、見落としていたのだろうか。

    何故だか無性に気になり、入ってみることにした。
    カランコロン、と古めかしい鐘の音が鳴り、鼻に紙の香りが入ってくる。

    「これは・・・」

    入店してすぐに目にはいったのは、一冊の絵本。
    [不思議の国のアリス]
    誰もが一度は読んだことが、あるいは読んでもらったことがあるだろう、絵本だった。
    封もされていなかったので、手に取って、眺めることにした。
    絵柄は今風になっているが、内容は変わらない。

    昔から変わることのない、寝物語・夢物語。

    ──あぁ、ガキの時分は、こんな世界を、こんな冒険をしてみたいと、あんなにも思ったのになぁ。

  • 4二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 10:44:50

    ナーサリーライムと草臥れたサラリーマンの聖杯戦争書きたかったけどカタツムリになったので供養

  • 5二次元好きの匿名さん23/09/01(金) 11:53:00

    良いプロローグだ……メルヘンチックなナーサリーといかにも現代なサラリーマンの組み合わせも新鮮で良

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