安価でオブジェクト制作について語るスレ 4

  • 1編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/09/01(金) 23:07:11

    安価でオブジェクトの設定を作るスレを語るスレです
    二次創作等も大歓迎 楽しくやりましょう

  • 2編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/09/01(金) 23:07:40
  • 3編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/09/01(金) 23:10:07
  • 4編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/09/01(金) 23:10:58

    とりあえず10まで保守
    自分もリハビリを兼ねて書かないとなあ

  • 5編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/09/01(金) 23:11:08

    保守

  • 6編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/09/01(金) 23:16:18

    ほしゅー

  • 7キャラシート23/09/01(金) 23:24:49

    スレ立てどうもー
    安価スレの運営にssも書くなんて現在詰まりまくっている自分にはとても真似できない
    素直に尊敬します

  • 8キャラシート23/09/01(金) 23:25:33

    うめうめ

  • 9キャラシート23/09/01(金) 23:27:10

    一つの節で処理しようとする情報を欲張りすぎているのかもしれない 
    自己分析できているなら反映しろって話なんだが

  • 10編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/09/01(金) 23:28:26

    今ちょっとリハビリも兼ねてかきはじめ
    ヤバいね

  • 11キャラシート23/09/01(金) 23:31:09

    クウェンサー達の正当性を補強するために『ネバー』をディストピアっぽく……難っ!

  • 12キャラシート23/09/03(日) 18:57:00

  • 13キャラシート23/09/06(水) 10:46:20

    IP規制いつまですんねん!保守

  • 14キャラシート23/09/08(金) 18:58:01

    うーん民度をクソにしてェ……、弱者が虐げられていてェ……
    ……HO世界だと割りとありふれてるな 
    ディストピア作ろうとしたけど平常運転だったってなんだコレ

  • 15編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/09/08(金) 23:45:15

    まあ普通にネバーの市民は慣れてそうだよね
    外界とは異常であるとはわかっていても正常性バイアスで日常の一部に完全に組み込まれてる感じ

  • 16キャラシート23/09/10(日) 21:20:15

  • 17編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/09/12(火) 23:56:58

    保守る

  • 18編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/09/15(金) 00:38:10

    保守

  • 19キャラシート23/09/15(金) 20:28:38

    保守申し訳無い
    もうちょいでまとまる……、はず!

  • 20キャラシート23/09/17(日) 21:22:34

    ぬぬぬ……

  • 21キャラシート23/09/19(火) 21:33:40

    遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆修正修正修正修正修正修正修正修正修正遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆遅筆

  • 22編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/09/19(火) 21:34:39

    大変申し訳御座いません。即保守致します

  • 23編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/09/21(木) 23:54:41

    保守

  • 24二次元好きの匿名さん23/09/23(土) 20:19:04

    だらだら長くなりすぎたな……
    ちょっと削り作業

  • 25キャラシート23/09/25(月) 19:53:49

    1日200〜300字しか書けないクソザコ我を呪い給えー

  • 26キャラシート23/09/28(木) 06:44:43

  • 27キャラシート23/09/30(土) 17:21:17

    思い切って半分くらい削って再構築することを決意
    ノイズや余計な描写の多かったこと多かったこと
    今まではずっと「これでいいのか?」と曇りながら書いてたけど漸くすっきりと道筋が通った気がする

  • 28二次元好きの匿名さん23/10/01(日) 16:48:35

    最後に来るのは書いた人がいかに満足する出来かだからね
    頑張ってくれ……

  • 29キャラシート23/10/03(火) 19:30:42

    保身

  • 30キャラシート23/10/05(木) 22:32:04

    NowLoading……

  • 31編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/10/08(日) 10:26:39

    保守る

  • 32キャラシート23/10/10(火) 17:38:36

    路線変更先でまた迷走……何したいんやお前……

  • 33キャラシート23/10/12(木) 20:06:15

    世はまさに大スランプ時代!

  • 34編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/10/12(木) 23:19:56

    思い詰めるとよくない
    肩の力を抜きなされ……

  • 35キャラシート23/10/14(土) 20:55:26

  • 36編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/10/16(月) 00:22:59

  • 37キャラシート23/10/17(火) 22:11:52

  • 38編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/10/20(金) 09:31:56

    保守

  • 39キャラシート23/10/22(日) 22:40:23

    ぬーん…… 何でもない場面のはずなんだがなぁ……

  • 40キャラシート23/10/24(火) 22:51:22

  • 41キャラシート23/10/26(木) 23:19:04

    ………………………。

  • 42編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/10/27(金) 10:37:12

    根を詰めすぎても駄目よ
    キャラシ兄貴の身体とか精神が第一だからね

  • 43キャラシート23/10/28(土) 22:48:57

    心配させて申し訳ない
    少し前は1文字も書けない日が続いたけど今は少しずつではあるけど進めてはいるので大丈夫

  • 44キャラシート23/10/30(月) 21:59:42

    保守

  • 45キャラシート23/11/02(木) 17:43:17

    っぶね おのれホスト規制

  • 46編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/11/02(木) 23:58:08

    保守

  • 47キャラシート23/11/04(土) 21:56:47

  • 48キャラシート23/11/06(月) 18:15:39

    保守

  • 49キャラシート23/11/08(水) 20:42:51

  • 50キャラシート23/11/10(金) 22:36:46

    もう少し?

  • 51編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/11/12(日) 10:32:24

    お疲れ様です

  • 52キャラシート23/11/14(火) 19:03:45

  • 53キャラシート23/11/16(木) 22:08:00

  • 54編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/11/18(土) 10:54:00

    早めの保守

  • 55キャラシート23/11/19(日) 23:44:51

    明日お出しします

  • 56キャラシート23/11/21(火) 22:46:54

    3

     以上がいろんな条約をまるっと無視して捕虜を此度の作戦遂行メンバーに組み込まざる負えなかった顛末であった。
     そして彼らが現地に降り立って最初に行っていることといえば──────。

    「おらー持って来てやったぞ元凶共ー」
    「クソ不味いレーション以外のメシにありつける贅沢に咽び泣きやがれー」

     立ち並ぶ摩天楼によって狭められた空の合間を大小無数のドローンが行き交うその直下。
     クウェンサーとヘイヴィアはお揃いの気の抜けた声を発しながら、少し遅めの朝食を乗せたトレーと共に女子組との合流を果たしていた。

    「お金をだしたのは私なんだけど。とついケチくさいことを口ばしっちゃうのは『資本企業』に身をおいてたからかしら。まぁ、おごってもらうごはんがいちばんおいしいのは世界共通なのはまちがいないでしょうけど」
    「待ってましたー!ケチャップとマスタードたっぷりのホットドッグ!カリカリホクホク皮付きフライドポテト!氷すくなめだけどキンキンに冷えてるラージサイズのコーラ!プロの栄養士さんがみたらおせっきょうコース直行のジャンクまつりじゃーっ!いっただっきまーす!」

     端的に表すと腹ごしらえであった。

     現在『ネバー』観光ツアー御一行(笑)がいるのはダウンタウンエリアの外れに店を構える世界中でチェーン展開しているカフェのオープンテラス。
     アドレイドの発案で身体のコンディションを整えるついでに腰を落ち着けられる場所で現場ブリーフィングを行おうとしていた。
     『ネバー』は100万人以上の人口を擁する一大都市。「木を隠すなら森」理論に従ってコソコソと人気の無い路地裏で密談を交わすよりも、どこにでもいる一般人に扮して表通りで会話を弾ませているフリをした方が目立たないというわけである。

  • 57キャラシート23/11/21(火) 22:48:59

    「しっかしフローレイティアの奴、過密スケジュールとストレスでとうとうヤキが回りやがったか?そこでどうして『じゃあ行って来い』って口車に乗っちまうんだよ……」
    「それも必要とはいえこんなトラブルなんて陳腐な言葉じゃ生温いカタストロフィーメーカー二人と潜入工作を成功させろって……。控えめに言って無理ムリむり、M・U・R・I!」
    「でも、あのままベースゾーンにいてもほかの策がうかんだかしら?私としてはすくなくとも『虐殺者』として糾弾されたすえに抹殺されるか、ゆびをくわえてせかいが個人のつごうのいいように舗装されていくのをただ見ているだけよりかはマシな道をしめしたつもりだったのだけれど。それにあなたたちだってかわいいミリンダちゃんの手をよごさせるのは反対でしょう?」
    「それは、そうだけど……」
    「だったらもうすべてをうけいれてやるしかないってコト。ほら、たべないの?料理がさめるわよ」

     着席して早々に愚痴を零すジャガイモコンビであったが、女スパイの正論の前に口を噤まされる。
     本気で論破して捻じ伏せる意図は無いのだろうが眼前の女は相手を問わず望む情報を引き出させる話術のプロだ。気を抜くと会話のペースを持っていかれそうになってしまう。
     実際に前回のロズウェル空軍基地跡での戦闘といい今回の潜入作戦といい、計画通りの方向へと誘導されてしまっている。
     また知らず知らずのうちに掌の上で踊らされているという状況に陥るのは手綱を握る側である彼らにとって好ましくない。というか真っ平だ。
     なので手始めにどちらが「上」なのかをはっきりとわからせる必要がある。
     クウェンサーはドリンクを手に取ると備え付けられていたマドラーをレイピアのように突きつけてアドレイドの身体のとある部位を指した。

    「素直に待っていたということは理解していると思うが裏切ろうなんて考えるなよ」

     鋒が示す先、彼女の細い首には隣に座るノエルとそっくりお揃いのチョーカーに偽造されたとあるデバイスが取り付けられていた。

  • 58キャラシート23/11/21(火) 22:50:24

    「『エンゲージ・ハイロォ』の各種コードなら既にフローレイティアさんから預かっている。それに1時間おきの定期信号の入力が確認されなかった場合でも自動で作動するから、俺達を無力化しても無駄だからな」
    「つまりはあなたたちがうっかり敵に殺されてもアウトってワケね。そういうことなら死ぬ気でまもってあげるからやさしいガイドのおねえさんにまかせときなさい。それはそれとして、私だれかとペアルックって人生ではじめてかも。ノエル、いっしょに写真どうかしら?」
    「ゔぇあっ!?いろんないみで仇と、それもこんな物騒なペアルックなんてうれしくないってば!なーれーなーれーしーくーすーんーなー!遺影ならひとりで撮りやがれっつーのっ!」

     携帯端末を片手にグイグイと自撮りスタイルで肩を寄せてくる女スパイをうっとおしそうに押し止める眼鏡の少女は、半泣き気味に自らが置かれている境遇への疑問を訴える。先程まで目を輝かせて料理に舌鼓を打っていたのに情緒と表情筋の変遷が目紛るしい。

    「そもそもどうじで肉体派からいちばん遠いかよわきノエルちゃんがこんなデンジャラスゾーンにかりだされてるのさー!?『ウェブ004』もうないじゃん!いまっ!わたしっ!ただのっ!美少女っ!!」
    「どうしても何もアンタの所から流出したデータなんだからシステムにアクセスする際に管理していた人間の生体認証が必要なんじゃないか?」
    「ヴッ!」

     クウェンサーからの指摘が図星だったのかノエルは呼吸を詰まらせて非常にわかりやすく身体を硬直させる。
     相変わらず誤魔化したりしらばっくれることを知らないポンコツの方など見もせずに、ヘイヴィアは自分のグラスに残った氷をストローでガシガシと無意味にかき混ぜながら淡々と補足を加えていく。

    「別に眼球と指一揃いを差し出しとけばてめぇをこんな所まで連れて来なくてよかったんだけどな。俺達側としてはロクな戦力になりそうもねぇ足手まといと一緒なんか願い下げだからそっちの方がありがたかったくれぇだ」
    「ノエルちゃんの人権ドコー!?哺乳類のそしきは切りとったらそれっきり再生しないって理科の教科書にかいてあるんデスケド!アイムノットプラナア!!」
    「「……………………」」

  • 59キャラシート23/11/21(火) 22:53:15

     あり得たかもしれない物騒な可能性と好きに千切って持ってく紙粘土レベルと同等にまで繰り下げられている自らの身体のパーツの扱いにノエルはワナワナと震えて抗議の声を上げるが、馬鹿二人は目すら合わせずに無視を決め込でいる。逐一コイツのオーバーリアクションに付き合うだけ徒労だと理解しているせいだろう。
     全体的に漂っている空気が悪い。

    「はいはい男子たち、よってたかっておんなのこをイジめないイジめない」

     そんな少年少女達の様子を見かねたのか、唯一平時とテンションの変わらない年長者のアドレイドが雰囲気を刷新すべく場を取り仕切る。どうやら先程の『エンゲージ・ハイロォ』を用いたマウント取りの効果は希薄であったようだ。

    「そもそも、そんなことしてもデータの認証が瞳孔のしゅうしゅくや生体電流ごとよみとるタイプだったらただの血なまぐさいスプラッターのやり損になるでしょ。だからやっぱり本人を用意するひつようがあるんじゃないかしら?」
    「そうなのっ!?だったらおどした意味とは!?てか強制連行はかくていだったってことはノエルちゃんさいしょから鉄火場にブチこまれるのも既定路線じゃん!やだー!」
    「あのなぁ……。つってもいざ今回の作戦でドンパチするハメになったら危険ランクは矢面に立つ俺様とそこの女狐がレッド。その次は爆弾で姑息に立ち回るモヤシ野郎がイエロー。んで目的地まで特にやることのてめぇが安心安全のグリーンだろうが。後ろに隠れることしかできねぇムカつくド素人のお守りなんて愛想の良いニコニコ笑顔でやってらんねぇんだよ。文句垂れるならマトモに銃を扱えるようになってから言いやがれ」
    「ぐぬぬぬ……。スーパーガンスリンガーノエルちゃんが爆誕したらさいしょにキサマらのおしりの穴をもうひとつふやしてやるからおぼえとけよ……」
    「私もふくまれてるのね。まぁいいわ、気はすんでないでしょうけど不毛な言いあらそいは一旦ストップしてちょうだい」

     確かにしかめっ面同士を突き合わせ続けても事態が好転することはない。
     一刻も早くこのフラストレーションから解放される手段はただ一つ。さっさと世界を救ってしまうに限る。
     そのためにまずは段取りの打ち合わせだ。

  • 60キャラシート23/11/21(火) 22:55:23

    「あらためてベースゾーンで取りきめたことを再確認するわよ。私たちに課せられたもくひょうは『機密情報の奪還』と『黒幕の抹殺』。OK?」
    「ああ、前者は『アンナマリー』に潜入してデータを回収後、速やかに撤退。それが困難と判断したならバックアップを含めてサーバーごと破壊することが検討されてるけど」
    「え、ちょっとそれは……」

     「破壊」という物騒なワードに当のサーバーの管理をかつて務めていた番人の少女が戸惑いの声を上げようとしたが、クウェンサーが浮ついた未練を無理矢理断ち切るように直ぐ様それを遮った。

    「そいつは最悪のケースだ。けど下手な希望なら今のうちに捨てておいた方がいいぞ。必要なら絶対に実行するのが軍だってことは操縦士エリートだったあんたならわかってるだろ」
    「……………………うん」

     納得したんだかしてないんだか不明瞭な間はさておき、元エリートで現在絶賛無職のノエル=メリーウィドウは再び返り咲けるかもしれない儚い可能性を脳の片隅に置いておくことにしたようであった。
     自由や身の安全を手に入れるには、やるべきことを全て終わらせるしかない。
     そう学習した証左故か囚われのポンコツエリートは早速テンションの切り替わりをそのまま身体へと反映させたかの如く、小学校低学年児童のように勢い良く挙手して質問をぶつけてきた。

    「はいはいっ!じゃあずっと気になってたんだけど、けっきょく『黒幕』ってだれなのさ?全部はなすとか言ってたくせに名前すらこっちにはしらされてないんだけど。いちばんだいじなことでしょソレ?」
    「あら、私としたことが上官さんいがいにつたえるのをわすれていたわ。わざわざ言わなくてもとっくに察しはついているとおもっていたからついうっかり」
    「イヤイヤ、わかんないからこうしてきいてるんデスケド!」
    「わるかったわ。まぁ、すくなくともそこの二人は察しがついているみたいだけれどね」
    「えっ?そうなの!?だれ!?だれっ!?おしえてっ!」
    「「……………………………」」

  • 61キャラシート23/11/21(火) 22:58:11

     喧しく詰め寄るノエルに対し、ジャガイモコンビはその辺の家電量販店で投げ売りされる音声出力AIのように親切な回答など返さかった。代わりに片割れの戦地派遣留学生の少年が自身にとっては正面、眼鏡の少女にとっては真後ろの方向へと気だるげに指を差す。

    「ノエル。ちょっと振り返ってみろ」
    「はい?」

     疑問を浮かべながらも、促されるままノエルは身体を軽く捻って背後を向く。
     視界に飛び込んで来たものは高層ビルの壁面に貼り付ける形で設置された、もはや幅をインチではなくメートルで測る規模の巨大なディスプレイ。
     少女の求めていた答えはそこに在った。

    『やぁおはよう諸君!それぞれが良き朝を迎えられているだろうか?私は例の如く毎朝すっきり起床できたとも!ひとえに「楽園」に住まう隣人や訪れてくれた旅人である諸君らが──────』

     映し出されていたのは白い歯を覗かせた完璧な微笑みとどこまでも抜けるような綺麗事を並び立てた朝礼を聴衆に浴びせる茶髪オールバックの男。つまり、

    「……………………アレ?」
    「アレ」
    「……………………マジっすか?」
    「『ネバー』のわだいが報道されるたびに見るかおだものね。──────ドミニーク=G=ラスティネイル。この街の現市長よ」

     それが此度の総勢31機ものオブジェクトを潰し合いという前代未聞の騒乱を誘発し、高みから見物していた黒幕の正体であった。

    「ふーん」
    「市長さんねぇ……」

     しかしながらとうとう打倒すべき敵の正体が浮き彫りとなったというのに、ドラゴンスレイヤーコンビの反応に驚きの色は無い。
     既に結末を知っている大して面白くもなかった映画の再上映でも見ているかのように退屈そうな様子ですらあった。

    「……まぁ、最初から予想をしてはいたぜ。『ネバー』の名前が出た時点で目星を付けちゃいた」 
    「で、見事正解ってことなら話は早い。この推定クソ野郎がどんな奴なのか詳しく聞かせてくれ」
    「……ええ、かしこまったわ」

  • 62キャラシート23/11/21(火) 23:00:30

     リクエストに応じて、アドレイドは元上司にして今はターゲットに当たる男について静かに語り始める。
     その表情に一瞬だけ冷徹な諜報員に似つかわしく無い嫌悪感が僅かに滲んでいた。

    「ドミニーク=G=ラスティネイル。ねんれいは51歳。もとは『資本企業』の実業家で、のちにじぶんの王国となる『ネバー』の開発プロジェクトではせんとうにたち主導。そして初代市長をきめるさいはふくすういた候補者をおしのけて、あっとうてきな支持率で35歳というわかさで当選し就任。それいらい16年間この街にくんりんしているわ」
    「うーん、ここまではうすっぺらいフリーの百科事典サイトやこうしきホームページにものっているていどだね……」
    「じゃあお行儀の良い『表』にはとても載せられない本性、『裏の顔』とやらを教えてもらうとしよう。ノエルの言う通り、それだけじゃただのどこにでもいる成金と一緒だ。鑑みるにどうせそのサクセスストーリーだって真っ当な道を歩いた結果じゃないんだろ?」
    「おさっしのとおりよ」

     短い肯定と共にアドレイドは手元のアイスティーを口に含み、乾きを潤してから続きを述べていく。

    「じったいはほかの政敵へのきょうはくや暗殺をふくむあらゆるしゅだんによる排除。それにくわえて当時難病におかされていた妻にろくな治療をうけさせず見殺しどうぜんに死なせて、『亡き妻の遺志に報いようとする夫』というおなみだちょうだいのじさくじえんのおかげというのが真相。いつだって民衆は悲劇的なバックボーンをせおったヒーローがすきだものね」
    「うわー……えげつな……」
    「まとめるとかれの正体はだれも信用せず、妻子を含めたすべてのにんげんを利用できるかできないかで価値をはんだんするエゴイストってところかしら」
    「要するにどうしようもねぇクズってワケだな。わかりやすい悪役ってのは好きだぜ。ぶっ殺しても心が一切痛まねぇからな」
    「彼についてはひとまずこれくらいにしておきましょうか。なにか気になることがあればこたえられる範囲でこたえるけど」
    「あー、それなら……」

  • 63キャラシート23/11/21(火) 23:02:08

     設けられた束の間の質問タイムに乗じてクウェンサーがおずおずと弱々しく手を挙げた。
     彼にとってもう一つ、どうしても聞いておかねばならないことがあったからだ。
     最新型戦車やガンシップなどの装甲車両や航空機、得体の知れない科学を応用して造られた次世代兵器、意志を持たぬ無人機の群れ、襲い来る猛獣や有毒生物……。
     オブジェクト以外にも、彼と相棒を始めとする第37機動整備大隊は「怪物」と呼ぶに相応しい存在とも渡り合ってきた。
     そしてそれらの中には、「一騎当千の個人」が含まれていたケースもあったわけで。

    「ドミニーク自身の戦闘能力はどの程度なんだ?」
    「おう、そいつは是非ともハッキリさせなきゃいけねぇ点だな。ひょっとして野郎は全身を改造したサイボーグや元特殊部隊の教官だったり、『島国』由来のサムライソードマスターとかだったりしねぇよな?違うよな?」
    「そのぶっとんだ属性の数々がどうして浮かんだのかはよくわからないけど、そのてんについてはあんしんしていいわ。かれが格闘術をおさめていたり、従軍していたきろくはない。きっすいのビジネスマンだからそのへんの中年男性とかわらないとおもってくれてけっこうよ」
    「デスヨネー。……しゃあっ!」
    「だよなぁ……。映画やゲームじゃねぇんだからボスだからってイカれてる強さしてる必要なんか別に無ぇもんなぁ……。普通は……」
    「え、きゅうになに?きもちわるっ」

     過去に遭遇してきたバケモノ達のせいで「人間」の基準を見失いかけていた学生と不良貴族のテンションがおかしなことになっているが、元エリート二人組はそのことなど知る由も無い。しかし興味本位で追求すると面倒そうなのは察知できたので、それ以上はタッチせずにブリーフィングを進行することにした。

    「えーと、もういいかしら?」
    「「アッハイ、ドウゾ」」
    「次に『アンナマリー』について。どこにそんざいするかは……、これも教える必要あるかしら?」
    「ううん、こんどはだいじょうぶ。たぶんもう見えてるから」

     答え合わせを断ったノエルは自らの視界に映り込むとある建造物を見据えていた。
     彼女の眼差しが向けられた方角、都市の中心にて鎮座せしは周囲の摩天楼すら見下ろすように天へと伸びる銀の塔。 
     即ち、『ネバー』象徴たるモニュメントであった。

  • 64キャラシート23/11/21(火) 23:05:25

    「そう、せいかい。街のどこにいても目につくあのタワーこそが私たちの最終目的地、『アンナマリー』。なまえもそのまんまだものね。おもてむきは住民やかんこうきゃくからは展望台をはじめとしたショッピングモールや市庁舎がへいせつされた複合施設としてしたしまれているけれどそれは仮のすがた。しょうたいは知ってのとおり、拠点防衛と迎撃および演算処理に特化させたオブジェクトよ」
    「住んでいる連中は知っているのか?自分達が普段利用しているランドマークがトンデモ兵器だってことを」
    「もちろん秘密主義のドミニークのことだから秘匿しているわ。だから、あれがオブジェクトだとだとしる人間はかれにちかしい者たちいがいにはいない。でも、いちぶの住民はきづいているでしょうね。けっして口にはしないけど」

     果たしてその寡黙さは街の王に目を付けられて抹殺されるリスクを恐れてなのか、それとも自分達の生活の豊かさを直接脅かすものではないから無関心を装っているのか。或いはその両方か。
     聞き手である3人の背中が薄ら寒い感覚に撫でられたが今は関係の無い事だ。頭の隅にへと追いやって話し合いに集中する。

    「そして重要なポイントだけど、こんかいはあなたたちおとくいの『破壊する』という手段はあきらめてちょうだい」
    「あん?どういうことだ?」
    「『アンナマリー』の動力炉はひとつだけじゃない。たしかにメインのものはタワーの真下にあるけれど、そのほかのサブ動力炉が『ネバー』地下のかくちにちりばめられてせつぞくされているの」
    「なるほど、うごく必要がなくてひろい土地をまるごとつかえるなら『オブジェクト一機につき動力炉は原則一つ』のセオリーをまもらなくてもいいいってことだもんね」 
    「そういうコト、犠牲者を出したくないならなおさら」

     一つ残らず動力炉を停止させれば黙らせることができるかもしれないが、総数すら把握出来ていないのに残された時間で全てを探し出して実行するには大隊の兵士達1000人を総動員したとしても不可能だろう。
     更にサブとはいえオブジェクトに用いられる動力炉。物理的な破壊に成功したとしても、起爆してしまったら一つだけでも無辜の人々を大量に巻き込んで街の区域が丸々消失する。
     そもそも虐殺を避けて少人数での潜入作戦を選択したのだ。
     今更別方向に舵を切ることなどできないし、するつもりもない。

  • 65キャラシート23/11/21(火) 23:07:42

    「本体を潰すのはナシっていうのはわかった。どうせ最初から現実的じゃないしな。だから当初の予定通り忍び込んでサーバーから機密情報を奪還する、だろ。まさかそのサーバーすらもアンタの知らないどこかや『アンナマリー』のエリート自身が肌身離さず大事に抱えているっていうなら正直お手上げだけど」
    「そこはあんしんしていいと思うわ。市庁舎がへいせつされていると言ったでしょう。ドミニークはたとえ肉親であっても信用しない男。じぶんの手と目のとどかないばしょ、それもじぶんいがいの人間に重要なものをあずけることはありえない。データはかくじつにタワー内のどこかにあるわ」
    「そういうことならりょうほうのターゲットがおなじたてもの内にいるってことだから好都合だね」
    「方針を纏めるぜ。まずタワーに忍び込んで監視の目を抜けつつドミニークの身柄を確保。そっから死なねぇ程度に締め上げて盗んだデータの在り処を吐かせて捜索。奪還して中身を確認、持ち出せねぇならぶっ壊し次第用済みになったクソ野郎を始末して離脱って流れだ。基本このシンプルな三段構成だが、途中のアクシデントによってはアドリブでその都度切り替えてく。つまりは『世界の命運』がかかっている以外はいつも通りっつうことだ。いや、思い返してみりゃ割りと頻繁に世界規模のゴタゴタに巻き込まれてんな俺達。うん、やっぱ平常運転だクソッタレ」

     ざっくりとではあるが部隊長(仮)のヘイヴィアによって作戦全体の手順は定められた。
     既にテーブルの上の料理は完食され、残すはドリンクのグラスの底に溜まった融けた氷ですっかり薄まった数口分のみ。
     もう間もなく出立の時は訪れる。その間際。

    「それじゃあ、さいごにすこしおはなしをしようかしら」

     アドレイド=”エンプレス”=ブラックレインは個人的な会話を唐突に切り出した。

  • 66キャラシート23/11/21(火) 23:10:16

    「急にどうした?もう話すことなんてないだろ」
    「ええ、作戦にかんしてはね。でもせっかく来たんですもの。あなたたちに『ネバー』の仕組みついて知ってもらおうとおもって」
    「仕組み?」
    「興味をもってくれたようでなによりだわ。まずはなすと言っておきながらわるいけどこの街をちょくせつ目にしてみてどうおもったかしら?ほら、てきとうな第一印象でもかまわないから」

     何だかまた女スパイのペースに乗せられているような気がしないでもないが彼女から騙そうとする意図は感じられず、生殺与奪は依然としてこちらが握っているのでクウェンサー達は若干の警戒を残しつつも思考を貼り巡らせていく。

    「んー、そうだな……」

     確かに違和感なら無人バスの乗車中からずっと感じていた。
     他の都市には有って、ここに無いもの。
     他の都市には無くて、ここに有るもの。
     記憶を辿りその違和感のシルエットを浮かび上がらせたならば、後は思い至ったことを言葉にするのみ。

    「──────働いている『人』が殆どいない、かな」
    「なるほど。いい着眼点ね」

     振り返ってみれば『ネバー』に足を踏み入れてから、社会を維持していく上で必要となる「労働に従事する人々」を見ることはなかった。ティッシュ配りのアルバイト一人すら。
     代わりに目にしてきたのは路上を往来する清掃ロボットやビルの合間を縫うように荷物を運ぶ空輸ドローンばかりだった。

  • 67キャラシート23/11/21(火) 23:12:52

    「そういやそうだったな。街に着いてから乗ったバスを始めとする公共交通機関は自動運転だし、今いるカフェだって注文の応対も人間のスタッフじゃなくて自販機みたいな半セルフ式だ。まぁ『未来都市』って触れ込みだしそういうモンだって勝手に納得していたけどよ」
    「あなたたちがおもったように『ネバー』はろうどうの多くをドローンをはじめとした機械がになっているわ。『アンナマリー』が統制をとることによってね。病院などのさいていげんの施設くらいにしか人間のスタッフは勤務していないわ。それらも自動化がすすめられてにんずうはきょくたんにすくない」
    「へー、演算処理能力は解析だけじゃなくてインフラのせいぎょにもつかってるんだ。ていうかそっちがメイン?パンフレットにはどっかの産油国みたいに住んでいるかぎり学費と医療費と光熱費はタダってかいてあったしマジで至れりつくせりだね。住民ぜんいん総ニートとかめっちゃうらやましいんだけど」
    「ほんとうにそう思う?」

     能天気なノエルの口調に対し、アドレイドの声はどこか冷めていた。

    「ドローンの生産や維持はタダじゃない。公共物だからもちろんそれらは住民たちがしはらう『税』によってまかなわるているわ」
    「でもこの有り様じゃ働き手は機械に殆ど取って代わられているみてぇだから、人間が金を稼ぐ余地なんて無いんじゃねぇのか?」
    「だからかれらは街の『中』ではなく、『外』から金をかきあつめているのよ」
    「つまり外貨か。成る程、それで『資本企業』外からの移民を積極的に受け入れていたのか」

     一つの都市のみで金を循環させても、独占や遺失などの要因でいつかは停滞がやって来る。足りなくなった分を補うために新たに貨幣を製造したとしても、やはり狭い範囲の中だけではいずれ来るインフレーションによる経済の崩壊を招いてしまう。
     だから他所から毟り取る。

    「ええ、それぞれの出身者をそれぞれのほうほうではたらきアリのようにみつがせるためにね。『正当王国』は貴族じだいにきずいたコネや事業。『情報同盟』はブログや動画配信の広告収入。『資本企業』は株とりひきや資産運用のりえき。『信心組織』は布教かつどうで得たお布施といったぐあいにね」

  • 68キャラシート23/11/21(火) 23:15:48

     暴落しようと、枯渇しようと、破綻しようと。
     全ての勢力の資財を掌握し、世界地図上の尽くを隷属させるまで『ネバー』は止まらない。

    「この街が一切合切を独り占めしてブクブク太ろうとしてるってのわかったぜ。だが金は無限じゃねぇ。んな一方的な搾取なら当然豚小屋の家賃を払えなくなる奴も出てくるはずだよな。そういった連中はどうなるってんだよ?」
    「イスとりゲームにまけた落伍者のまつろは相場きまっているでしょう?たんじゅんに街からおいだされるのよ。でもそうなるまえにあえてドミニークは声をかけるの。『このままだと路頭に迷ってしまうが、気の毒だから助けてあげようか?』ってあまいささやきをね。人間はいちどあじわった贅沢のハイスコアをわすれられないいきものよ。だからいまの生活水準を維持するため、たりなくなった財をうめなおすためにばくだいな借金やしょうかいされた非合法なビジネスへと手をのばしはじめる。貸すのも斡旋するのもじぶんをしぼりつくした張本人だというのにね」

     更に理由を加えるならば移民は様々な事情が有れ、元居た場所を捨ててやって来た者達が多くを占めている。
     古巣側からしてみれば勝手に見限って出て行った裏切り者。「やっぱりこっちの方が良かった」と都合良くUターンすることなど到底許してはくれない。
     だから『ネバー』に縋るしかないのだ。
     どれ程過酷な条件を呑まされようとも。
     最低保証の人権が約束される「籍」という後ろ盾を無しに生きていくにはこの世界は厳し過ぎる。

    「それで破産して首をくくろうと裏のしごとでしっぱいして死ぬよりもひどい目にあおうと、あの男にとってはもはやじぶんの王国の民じゃないからすでにどうでもいい存在なのよ。移住したがっているにんげんなら行列まちしているんですもの。すぐにつぎの金ヅルをまねいて、収穫したらまたリリースしてのくりかえしをおこなえばいい」
    「確かにそいつはたいそう効率的だな。吐き気を催すくれぇに」
    「これが『ネバー』……」

     

  • 69キャラシート23/11/21(火) 23:18:31

     眼鏡の少女はそう小さく呟くと改めて周囲を見渡す。
     屹立するビル群、砂漠に囲まれながらも整備されたインフラ、そして雑踏を歩む人々。
     彼らの何割が観光客ではない元々の住民かは不明だが、笑顔を浮かべている者も少なくはない。
     しかしその明るい表情の裏側では、今いる地位を剥奪されて『外側』に追い落とされないよう怯えながらの日常を送っていると思うと真に幸福そうだと素直に見ることはできなかった。

    「さっきうらやましいとか言っちゃったけど、やっぱりこんなのは『理想郷』じゃないと思う。なんかこう……、言葉にしにくいけどすっごいやだ!」
    「同感だな。勿論世界中のいろんな所で貧富の格差はあるし、弱者と強者との間の壁はぶ厚くて乗り越え難いのもわかってる。だからって俺は正義の味方じゃなくても、『どこにでもありふれているから』っていう理由だけで胸糞悪いものに対して何の感情も抱かない程乾いていない」
    「どうせこの街が『世界の中心』とやらになっちまったら、『それ以外の全部』も似たようなルールを押し付けられんだろ?クソ食らえだ。貴族としてこんなノブレスオブリージュの欠片も感じねぇやり方なんか気に食わねぇし、こちとら自分の命以外にも守りてぇモンだってある」
    「ええ、いっしょに作戦をこなすあなたたちがそうかんじてくれる人間でよかったわ。だからこわしましょう。すべてをしばろうとする王さまきどりの支配を。スマートに、クレバーに、そしてチャーミングにね。それにしても鼓舞するつもりなんかぜーんぜんなかったのにやる気になってくれたようでおねえさんうれしいわー!うふふふふ!」
    「………………おい」
    「なぁ、クウェンサー。腹立つからもうこいつの『エンゲージ・ハイロゥ』の緊急コード入力して構わねぇか?」
    「抑えろヘイヴィア。もうこういう手合は『役には立つけどそういう奴』だってクールに流せるのがデキる大人のやり方ってやつだ。……それはそれとしてクッソムカつくなぁ!!もうっ!!」
    「てめぇが一番抑えられてねぇじゃねぇか!」

     焚き付け過ぎて一周回って絶対零度となった(約一名を除く)蔑視の束が向けられていることなど何処吹く風といった様子で、アドレイド=”エンプレス”=ブラックレインはグラスに残っていた最後の一口を満足気に飲み干した。

  • 70キャラシート23/11/21(火) 23:20:33

    一旦ここまで ホスト規制はふぁっきゅー
    丸々3ヶ月空けて約12000字とかアホかぁ!
    モチベーション低下したり、途中で書き方忘れたりしたけど私は元気です

  • 71キャラシート23/11/21(火) 23:24:48

    それと整合性を取るために前の3話読み返したりしたけど今と比べても粗削りで草生える 何だその句読点の使い方
    でも勢いはあった とりあえず推敲推敲

  • 72編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/11/22(水) 10:22:45

    ホスト制限に引っかかって反応出来ずにいた
    善き……非常に善き……
    続きが気になる引きで楽しみ……

  • 73二次元好きの匿名さん23/11/23(木) 20:09:39

    それはそれとして保守の日々は続くのじゃ(無慈悲)

  • 74編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/11/25(土) 10:09:15

    保守

  • 75二次元好きの匿名さん23/11/25(土) 19:57:01

    もうちっとだけ続くんじゃ

  • 76二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 00:42:31

    4

    『市長さんへご報告ー。あなたが予測していたとおり、「ネズミ」がはいりこんだことをお知らせいたしまーす。うんうん、例の4にんでまちがいナシ☆どうする?』

    『そうかね。思ったより早かったな。相変わらず目と耳が早くて助かるよ。ふむ、それでは君の好きなやり方で彼女らを丁重にもてなしてやってくれ。「キャロライン」初の実戦とあって浮足立っているのだろう?存分にやり給え』
              
    『はーい♥あっはぁ!そうこなくっちゃ!ずっとたいくつなだけの見張り番にはうんざりしてたの!「この子たち」のほんとうのせいのうをためせる日をどれだけ待ちわびたか!やっぱり操縦士エリートは蹂躙してこそよねぇ!』

    『あぁ、大いに期待しているとも。アリュメイヤ。我が目にして、我が耳よ』

    『それじゃあいってきまーす♥』

  • 77二次元好きの匿名さん23/11/26(日) 00:43:22

    『……ローアイン、聞いていたのだろう?お前にも仕事をしてもらう』

    『はい、──────「父さん」』

    『この機に乗じて攻め込んでくる他の愚か者がいないか「内側」と「外側」の両方に目を向けておいてくれ。アリュメイヤにはああ言ったが、この街の真の守護者はお前だ。その意味が理解できていないわけではないだろう?」

    『わかっています。……それがボクのそんざいする理由だから』

    『よろしい。それと今回は私も少しばかり前に出る』

    『父さん自身が?』

    『裏切り者のペットへの制裁は飼い主である私が行わなければ、支配している他の者達に示しが付かないのでね。心配は必要無い。お前は任されたことだけに集中すればいい』

    『でも……』

    『私は同じ事を二度言わされるのは嫌いだと何度もお前に教えたはずだが?」

    『………………わかりました』

    『いい子だ。親子二人で我が最愛の妻、アンナマリーの夢を守ろうじゃないか。彼女もきっとそれをを望んでいるに違いない』

  • 78キャラシート23/11/26(日) 00:46:26

    短いけど一旦ここまで

    漸く長ったらしい「溜め」パートが終わって話を進めることができるけど、それは同時に懸念していた激むずアクションパートが始まることを意味するのである
    ……小説書くって難しいね

  • 79編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/11/26(日) 08:04:29

    >>78

    難しいね……頭の中では場面が組み上がってるけどアウトプットの段階で中々出てこない

    あるある

  • 80キャラシート23/11/28(火) 16:26:43

    ほほししゅゅ

  • 81編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/11/29(水) 23:10:46

    保守

  • 82キャラシート23/12/01(金) 20:59:44

    うーむ、今回の節はどこで区切るか……

  • 83キャラシート23/12/03(日) 20:18:44

    まぁ、書いてるうちに見つかるか(楽観)

  • 84二次元好きの匿名さん23/12/04(月) 23:21:22

    とりあえず早めの保守

  • 85キャラシート23/12/06(水) 19:50:44

  • 86キャラシート23/12/08(金) 21:04:24

    12月忙しいの忘れてたあああああっ!
    牛歩牛歩

  • 87二次元好きの匿名さん23/12/10(日) 00:05:03

    保守しておこう
    忙しいならその分自分も保守せねば

  • 88キャラシート23/12/11(月) 00:12:35

    スレ立ててから地味に1年経ってた
    すっかり個人のSS投下場所みたいになっちゃってるけど、最近はそれさえままならない
    でも完結するまでは少なくともやめないゾ♥

  • 89キャラシート23/12/11(月) 00:13:14

    そして本家2周年でもある 
    嗚呼、思い出の日々よ

  • 90編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/12/11(月) 09:40:55

    懐かしいなあ……

  • 91キャラシート23/12/12(火) 23:02:32

    ここで区切るか……、っと

  • 92キャラシート23/12/14(木) 23:24:26

    ぬーん

  • 93編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/12/16(土) 21:58:51

    保守ー

  • 94キャラシート23/12/18(月) 23:27:16

    恒例の同じところを推敲し続ける無限ループ
    なぜ日によって見え方の良し悪しが違うのか
    んで、結局最初のでよかったパターンに落ち着くの何なん?

  • 95編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/12/19(火) 08:50:26

    それはよくある
    なんでやろなあ……?

  • 96キャラシート23/12/20(水) 23:03:09

    12月が早すぎる……

  • 97キャラシート23/12/22(金) 23:35:12

    年内には何とか……

  • 98編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/12/23(土) 08:19:52

    焦らないでゆっくりと励んで下さい
    いつでもお待ちしております

  • 99キャラシート23/12/25(月) 19:15:52

    メリークリスマス☆保守

  • 100編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/12/25(月) 20:58:04

    メリークリスマス

  • 101編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/12/27(水) 22:05:38

    保守
    今年もあと僅かだねえ

  • 102二次元好きの匿名さん23/12/29(金) 21:21:24

    The☆仕事納め まとめてくぞー

  • 103編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/12/29(金) 22:56:19

    wktk

  • 104キャラシート24/01/01(月) 07:19:38

    あけましておめでとう
    ぐあぁっ年内に間に合わなかった!
    今日お出しします!

  • 105編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/01/01(月) 09:58:28

    明けましておめでとうございます
    期待

  • 106キャラシート24/01/01(月) 15:33:48

    5

    「来たわね」

     アドレイドが呟くと同時だった。
     カフェを跡にしようとしていた4人を取り巻く事態が突如としてガラリと切り替わる。
     まず最初に監視カメラ。
     気が付くと見える範囲の全てのレンズがこちらを射抜くように向けられていた。
     次に複数重なったけたたましいローター音と物々しい駆動音。
     彼らの中心とした周囲を無数の陸空ドローンが取り囲んだ。

    「これって……」
    「もうかよ……」

     既に身体の正中線、急所に沿って幾つもの不吉な赤い点が重ねられている。その正体は各機をゴテゴテと飾り立てている銃火器に取り付けられたレーザーポインターの光。
     明らかに配送や清掃など、市民の日常生活に溶け込んで利用されているモデルに必要な装備ではない。
     実力行使によって敵対者を制することを目的とする暴徒鎮圧用にカスタマイズされたモデルだ。
     そして包囲網の敷設を完了させた証なのか、無骨な無人兵器の群れの中の一機から侵入者達に対しての勧告が放たれる。
     
    『ボクは「ネバー」安全管理部隊隊長ローアイン=ラスティネイル。そこのふしんしゃ4めい。もちものを放棄してあたまに手をそえてじめんにふせろ。したがう意思をみせなければ、「治安維持」のめいもくにもとづき容赦なくはいじょする』

     AIが合成した無機質な音声では無く、抑揚を伴った血の通う人間の肉声だった。
     声質は意外にも若い。あどけなさの残る少年のもののように感じられた。
     スピーカーの向こうにいる誰かさんはもしかしたら自分とそう変わらない年齢なのかもしれないとクウェンサーは勝手に推察する。
     いや、「誰かさん」ではない。
     聞き捨てならない姓を彼(?)は名乗った。

  • 107キャラシート24/01/01(月) 15:37:11

    「ラスティネイル?ドミニークと同じ……?」
    「むすこよ。かれこそがこの街の番人。つまり『アンナマリー』の操縦士エリートってこと。あの機体はドローンの制御もになっているから、とうぜんこうして見つかれば間接的とはいえカチあうってワケ」
    「面識はあるのか?」
    「すこしね。でもべつに親しかったワケでもない。敵にまわったら情けなんてかけてはくれないていどよ」

     スラスラと女スパイは襲撃者の概要と自分との関係について述べていくが、どうにも話を聞いた限り「知り合いのよしみ」などと甘っちょろい理由で見逃してくれる展開は期待できそうにない。
     そもそもあちらからしてみれば、自分達は宣戦布告もせずに不意打ち気味に破壊工作をしにやって来た不届き者。弁明と和解の余地は皆無だ。

    「んなことはどうでもいいんだよ。どうせ『アンナマリー』はぶっ壊せねぇんだから中身のエリートと面合わせることなんて無ぇだろ。それより行動を起こす前からおもっくそバレてんじゃねぇか。何が『木を隠すなら森』だ馬鹿野郎が」
    「たしかにすこしはやすぎるわね。よていではタワーに侵入するまではだいじょうぶと踏んでいたのだけど。いちおうこういうときはあやまったほうがいいのかしら?」
    「そうやって謝罪するかどうかを自分で判断しない時点でズレてんだよアンタ!今まで怒られたこと無い人か!?」
    「と、とりあえずか弱いノエルちゃんはいたそうなのはイヤだからしたがっちゃってもいいかなコレぇ!?」

     速攻で出鼻を挫かれても無駄口を叩くことは止めない一行を他所に、ローアイン=ラスティネイルは唯一見知った顔に向けて言葉を発する。
     『ネバー』の平穏を担う防人は辺りに漂いつつあるグダグダな雰囲気になど呑まれたりしない。
     
    『アドレイド=”エンプレス”=ブラックレイ。生きていたのか。……そうか、父さんをうらぎるのがあなたのせんたくということでいいんだな?』
    「この期におよんでまだそんなかくにんをいちいち取ろうとするなんてあいかわらず律儀ね。父親とちがって」
    『……だまれ。たとえしりあいでも「ネバー」をおびやかそうとする存在はすべて敵だ。おとなしく投降する気がないのならかくごしてもらおう』

  • 108キャラシート24/01/01(月) 15:39:25

     空気が、張り詰める。
     視界を埋め尽くす数十機の無人兵器に対してこちらはたったの4人。正に多勢に無勢。
     向けられている無数の銃口から何が発射されるかは不明だが、仮に非殺傷のゴム弾だとしても命中した箇所によっては普通に人命を奪うには十分に事足りる。鉛玉だった場合、柔らかい人体などいとも容易くグロテスクな赤黒い肉塊と化すだろう。

    『ここは危険です。安全が保証されるまで市民や観光客の方々は速やかに誘導に従って避難してください』

     少し離れた場所から今更になって、路上清掃用のロボットが平坦な音声で通行人達に場を離れるよう促していた。しかし民衆は確実に聴こえているであろうにも拘らず、素直に従っている者は少ない。
     寧ろこの期に及んで突然始まった滅多にお目にかかれない逮捕劇を一目見ようと包囲網の輪の外から背伸びして覗こうとしたり、SNSで承認欲求を満たす格好のネタを得るために携帯端末のカメラを向けて一部始終を撮影しようとすらしていた。
     それら様子を横目で捉えたジャガイモコンビは互いに目配せを交わす。

    「ちっ、仕方ねぇなぁ。ヘイ、もやし野郎。『保険』の下準備はバッチリ済ましてあんだろうな?この期に及んで不発なんてかましやがったら承知しねぇぞ」
    「心配しなくともじっくり寝かせて熟成させてるよ」
    『なにをするつも
    「こんなに早く使うとは思わなかったけどな!」

     ローアインが何かを察知してドローンの群れに命令を飛ばすよりも早く、クウェンサーが尻のポケットに収めていた無線機のスイッチを後ろ手で操作した。直後、

     ドォウッ!!、と。

     空気を急激に膨張させたことによって生じた鼓膜を震わせる破裂音が数ブロック離れたエリアからこちらまでを一直線に突き抜けた。

  • 109キャラシート24/01/01(月) 15:45:56

    『なっ!?』

     突然の出来事にローアインは面食らうが、驚かされたのは彼だけではない。
     大前提として、『ネバー』は『安全国』。
     現場に居合わせた名も無き野次馬達は決して遠くない距離で炸裂した爆発音に晒された分、彼よりも格段に強く五感と警戒心を揺すぶられていた。
     
    「何だっ!?事故か!?」「近くで何か爆発したぞ!?」「とりあえず通報した方がいいのか……?」「何っ!?怖いっ!?」「ねぇ、なんかヤバくない……?」「やだ、煙こっち来てるじゃん」「うわわっ、こういう時って屋内に避難した方が良いんだっけ?」「おい、邪魔だ!動画撮ってるヒマあったら俺に道を譲れ!」

     楽観極まる物見遊山の対岸の火事気分から一転して傍観者は当事者へと変遷する。
     「自分の安全が脅かされるかもしれない」という不安が群衆の心理に芽吹き、疫病のように伝染と蔓延を繰り返し拡大していく。
     
    『っ!市民のみなさん、どうかおちついてください!ボクの避難ゆうどうにしたがって……」

     ローアインが漂いつつある不穏な雰囲気を諌めるべく指示を出そうとしたが、クウェンサーが無線機を再び操作してそれを遮る。
     目論見通りに『保険』が効果を発揮し始めているのだ。ここで野次馬達に冷静さを取り戻してもらっては台無しだ。畳み掛けるならば今このタイミングしかない。

    「させるか!おかわりをくらいやがれ!」

     先程よりも更に近くで破裂音が炸裂した。
     一度だけではない。二、三と畳み掛けるように鼓膜を圧迫する音響が段々とこちらに近づいてくるように連続していく。
     しかし、今度は爆音ではない。爆竹のように弾けるようなものだ。
     聴いた者によっては簡単に命を奪うある凶器を連想させる、──────即ち。

  • 110キャラシート24/01/01(月) 15:48:04

    「拳銃だ!さっきの爆発といい、囲まれてるそいつらの仲間が発砲したんだ!ここにいると巻き込まれるぞ!!」

     誰が叫んだのかはわからない。
     しかし、それが皮切りとなった。
     得体の知れない出自不明の爆発。
     視覚からの情報を遮断し、窒息を齎すかもしれない煙。
     そしてトドメの発砲音。
     短時間の間に「死」のイメージを立て続けに刷り込まれた人々の緊張の糸を破断するには十分だった。
     崩壊が始まってしまえば後は早い。

     ワアアアアアアァァァァァァァァッッッ!!!

     試合終了間際で逆転ゴールを決めたサッカースタジアムの歓声にも似た音圧を発しながら、民衆は存在しないテロリストから逃れるべく一斉に駆け出した。宛ら決壊したダムから放出される激流のように。
     
    『待って……さい!これは……です!ここで冷……をうしな……………う…ボで…!とにか…おち………くだ……!………………、……………ま…………!…………………………っ!!』

     ローアインが必死に宥めようとするが彼の喚起は民衆にとっては悠長で、遠く、そして小さ過ぎた。誰一人として耳を貸す者はおらず、その声を掻き消してしまう。
     パニックを起こした彼らは爆発や発砲(?)が起きた方向とは反対側、『アンナマリー』が鎮座する都市の中心部へと雪崩込んでいく。路上を埋め尽くす程に。
     自分達のすぐ眼前で行われていた捕り物を無視して、無人兵器の銃口とクウェンサー達の間を横切っている者さえ多々見受けられた。ただでさえ流れて来る煙で視界が遮られているのに、加えて守るべき対象が肉の盾となってしまってはもはや射線を結ぶどころではない。例え索敵用の対人センサーを搭載していたとしても、多過ぎる人数の前ではあまりにも無力だ。

  • 111キャラシート24/01/01(月) 15:50:38

    「え?ナニコレ?ラッキー?」

     馬鹿正直にしゃがみ込んで地面に伏せようとしていたノエルは顔を上げて呑気に呟くが即座にクウェンサーが否定する。

    「そんなわけ無いだろ。ホットドッグ買って来るついでに小さく千切ったハンドアックスを人気の無いとこにばら撒いてたんだよ。トドメの発砲音モドキは信管単品だけど。どっちも殺傷能力ほぼゼロの音だけ派手に鳴るように調整したやつをな」
    「そいつに小型のスモークグレネードと発煙筒を少々トッピングすりゃ、こうやってパニック製造機の出来上がりってこった。風向きの計算はビルばっかで却って楽だったな」
    「でもこんな派手にけむりを焚いたら、この場にいるひとみんな燻されちゃうんじゃ……。てかわたしたちも。うへぇ、なんか喉イガイガしてきたかも」
    「スモークの成分はパラフィンベース!呼吸器への影響は殆ど無いってば!プラシーボ効果にやられてる暇あったらさっさとズラかるぞ!」
    「ここまではうちあわせどおりね。そうときまればノエル、いくわよ!」
    「その言いぶりだとこのなかで『保険』とやらを知らなかったのわたしだけかよチクショー!だらぁっ!!」

     この場を跡にしようと民衆の流れに沿って逃走を図ろうとするクウェンサーとヘイヴィアを横目に、エリート二人組が高らかに声を張り上げると公衆の面前でそれぞれの着ていた衣服を上空に放り投げる形で脱ぎ捨てた。
     前後の脈絡を無視した唐突なサービスシーン(?)に虚を突かれた野郎共は呆気に取られて思わず口をパクパクさせる。

    「は?イキナリナニヤッテンノっ!?」
    「こんな時にストリップショーしてる場合かよ!」

     しかし、彼女達の柔肌がジャガイモコンビを含めた周囲の人々に晒されることはなかった。
     一瞬後。
     滞空していた衣服が地面に落ちるとお馴染みの操縦士エリート専用の特殊スーツにドレスアップしたノエル=メリーウィドウとアドレイド=”エンプレス”=ブラックレイが無駄にスタイリッシュなポーズをキメて佇んでいた。
     もうわけがわからない。

  • 112キャラシート24/01/01(月) 15:53:06

    「どういう原理!?そのスーツって爪先から指の先までピッチリ覆うタイプだよな!?二人共腕が出てるタイプの服だったから『下に予め着てたは』は通用しないし!」
    「そもそも早すぎんだろ!肝心な部分が一片も拝めやしなかったじゃねぇか!雄の本能に従って凝視しちまった俺達に謝りやがれ!」

     変装用のカツラとサングラスを取り払って元の金髪に戻ったアドレイドがスーツ前面のジッパーを胸元のやや下で止めてから、全身の調子を確かめるように四肢をスラリと伸ばしながら浴びせられるツッコミに対して蠱惑的な笑みを浮かべる。

    「やっぱり私たちの装いといえばコレよねぇ。あら、どうやっていっしゅんできがえたか気になるのかしら?うふふ、おんなはヒミツがおおいほうが魅力的だからちょーっとおしえられないわ♥」
    「バスの乗車中にたのんでもないのにおしえてもらったけど、ぶっつけ本番でやってみたらなんかできちゃった。なんでも諜報員と『島国』のYAKUZAならひっすのスキルなんだって」
    「うーむ、プールの授業において女子はてるてる坊主のようなタオルを羽織ったら首から下をカーテンで仕切った試着室のようにして器用に水着に着替えるという高等テクニックを持つというけどそれを発展させて……。だがしかし……」
    「真面目に考察を重ねんな気色悪ぃ。つーか 即興の割には息ぴったりじゃねぇかてめぇら。ほんとは仲良いだろ?」

     何はともあれ逃走の準備は整った。
     後は逃げ惑う通行人達に紛れて速やかに監視網を潜り抜けていくのみ。
     4人はそれぞれの装備が詰め込まれたキャリーバッグやギターケースを携えて目的地である『アンナマリー』へと踏み出す。

     そして、そして、──────そして。

     『ネバー』攻略一行はその行方を晦ました。

  • 113キャラシート24/01/01(月) 15:57:08

    『…………………………』

     煙のカーテンが晴れると無人機の群れと共にカフェの前でローアイン=ラスティネイル唯一人だけ(彼自身も現場に本人がいるわけではないのだが)が取り残されていた。
     ドローンの駆動する音以外何も聴こえない大都市に似つかわしくない静謐の中、彼はあくまで冷徹な声でとある人物の元へ通信を繋げる。
     全てを見ていたであろうもう一人の操縦士エリートへと。

    『…………………アリュメイア』
    『あーら、なぁに?もしかしてぶざまにも賊をとり逃がしちゃったぁ?ひょっとしてひょっとしてだけど助けがひつようなのかしらん?』
    『しらじらしい演技はよせ。どうせぜんぶ知っているくせに』

     クスクスと意地の悪そうにほくそ笑むアリュメイアと呼ばれた少女は、人の神経を逆撫でる甘ったるい声を転がして同僚を更に煽り立てる。

    『バレちゃったかぁ☆でもさいしょからアタシにまかせていればもっとおもしろ……じゃなかった、スマートにかたづいたんだよ?あーあ、市長さんにおこられちゃうでしょうねー。おきのどくさま』
    『それはおたがいさまだろう?』
    『と、言いますと?』
    『キミがわざと爆発物を見のがしたことはわかっている。「キャロライン」をあやつっていながらあんな陳腐な策に気づかないはずがない』

     その「陳腐な策」にまんまとしてやられたことに関しては自分で言っておきながら屈辱の炎で炙られるような感覚に苛まれるが、今はそこに拘泥している場合ではない。
     アリュメイアがローアインに指摘された通り、敵をむざむざ見送ったならば単純に取り逃がした彼と同様に失態を犯していることになる。寧ろ明確な利敵行為なだけに尚更質が悪い。
     そして問い詰められた当のアリュメイアはというと、

  • 114キャラシート24/01/01(月) 15:58:52

    『アハ☆やっぱりバレちゃったかぁ。だってぇ、まだ「この子」がでるまえににローアインくんさきばしっちゃったんだもん。人がせっかくあたらしいオモチャであそぼうとしていたのにその機会をとりあげるなんてしらけちゃうとおもわない?それはモテパワーゼロの野暮ってやつよ』

     適当にシラを切ることもせず、詫びれもしない態度でありのままの思惑をそのままぶち撒けた。通信機の向こうでは小さく舌でも出していることだろう。
     
    『また、わるいクセか……』

     真面目な方の『ネバー』の番人は心底うんざりした調子で溜息を吐き出す。
     そうだ。こういうヤツだった。
     アリュメイア=キングスバレイという少女は、全てにおいて己が楽しむことを優先する。
     どうせクライアントが求めているのは結果だけ。だから、その過程で徹底的に遊び尽くす。
     我儘に。身勝手に。傍若無人に。
     それでいて与えられた仕事自体は完璧にこなすのだから、苦言を呈する側だけが空虚さを積み上げていく。故にこれ以上は不毛だ。
     
    『くだらない趣味につきあう気はない。そこまで出しゃばりたいならあとはかってにすればいい。ボクは「外」の見張りにしゅうちゅうする。だからジャマも助けもしない。いいな?』
    『おーるおっけー!そもそもさいしょから適材適所じゃなかったんだってば。まぁ、おおぶねにのったつもりで待っててくれたまえよ!アタシと「キャロライン」の前では、「ネバー」のどこににげてもムダだってネズミちゃんたちに思い知らせてあ・げ・る♥』

  • 115キャラシート24/01/01(月) 16:03:23

    一旦ここまで
    やっぱりアクションシーン始まりそうで始まらなかった!あなたを詐欺罪で逮捕します!
    文字数的にペースは前回分と変わらないという遅筆さよ……

  • 116編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/01/01(月) 18:11:59

    やっと見れた
    戦闘シーンへの期待が高まるねえ

  • 117キャラシート24/01/02(火) 10:12:05

    地震とは全く関係無いところにいたけど一応生存報告 無事

  • 118キャラシート24/01/04(木) 18:10:44

    補習

  • 119編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/01/06(土) 00:49:10

    保持

  • 120キャラシート24/01/07(日) 21:30:58

    正月をたっぷり満喫して文章量じゃなく体重を増やしたバカはどこのどいつだ〜い?
    アタシだよっ!!

  • 121二次元好きの匿名さん24/01/10(水) 08:37:18

    ほしゅ

  • 122キャラシート24/01/11(木) 23:41:56

    保守マール

  • 123編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/01/13(土) 22:38:23

    保守〜

  • 124キャラシート24/01/15(月) 22:11:30

    案の定『キャロライン』の描写で悩むマン
    ジョジョの5部のベイビィ・フェイスみたいにこう何とか……

  • 125キャラシート24/01/17(水) 22:31:30

    とうとう書き始めてから丸一年経っちゃった……
    途中で投げ出してないのは我ながら驚いてるけど完結まで未だ先は長し 走れ走れ

  • 126編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/01/17(水) 22:31:43

    保守
    キャロラインは群体だけど一個の生き物みたいに動きそう

  • 127キャラシート24/01/19(金) 23:05:28

    ほすすのす

  • 128編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/01/21(日) 21:41:42

    ほしっし

  • 129キャラシート24/01/23(火) 21:34:42

    もしかしたら今月中に出せるやもしれぬかもしれない(多重修飾保険)

  • 130編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/01/25(木) 21:34:12

    期待wktk

  • 131二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 21:34:19

    もう少し……もう少し……

  • 132キャラシート24/01/28(日) 23:29:38

    やっべ ガバ発見 
    辻褄合わせのこじつけ後付けっと

  • 133編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/01/31(水) 09:47:07

    ほしっしゅ

  • 134キャラシート24/01/31(水) 15:20:20

    今夜お出しします

  • 135キャラシート24/02/01(木) 15:56:50

    6
     
     単純にはぐれた。
     
    「だあぁっもうっ!ヘイヴィアの奴どこに行ったんだよ!通信も混雑しているのか繋がらないし!」

     クウェンサー=バーボタージュは身を潜めているビルとビルの間にある裏路地で、無線機を握り締めながら毒づく。
     『保険』は少々効果を発揮し過ぎたらしい。予想以上に膨れ上がった群衆の波が、4人を分断してしまう程に。
     幾ら使わないことが前提だったとはいえ、パニックコントロールを誤った自分の不手際だ。一先ずは追手を撒けたとはいえ、些か幸先がよろしくない。
     しかしながら、不幸中の幸いか現在彼は「敵地で孤立」という最悪の事態にまでは陥っていない。
     直ぐ横に同行者がもう一人佇んでいた。
     
    「あなたの相棒くんなら、ちがう方向へながされていくのがみえたわ。ノエルも彼のちかくにいたから、私たちみたいにうまく二人組をつくれているといいのだけれど」

     アドレイド=”エンプレス”=ブラックレイン。
     もしこの女スパイに手を引かれてここまで誘導されていなければ、敵地のど真ん中で無謀極まる単独行軍(難易度ホープレス)を始めなければならなかっただろう。それ以前に人混みに揉まれて転倒した拍子に、通りすがる数多の足に踏み潰されていたかもしれない。
     更に直接戦闘となった場合はハンドアックスしか持たないほぼ素人同然の自分だけでは心許ないが、彼女さえいれば戦力的にも手札が増えるという意味でも大きなプラスとなっている。 
     「一人」と「二人」では、できることの幅が大きく変わってくる。『信心組織』風の言い回しになるが、神はまだ自分達を見捨ててはいない。

  • 136キャラシート24/02/01(木) 15:59:47

    「よく俺を助けたな。首の『エンゲージ・ハイロゥ』のおかげか?」
    「それもあるけど、あなたたちはドミニークのやぼうをくだくカギだと私はおもっているわ。だから、こんなところでサクッと死んでもらっては困るのよ」
    「そいつはどうも。それで?ヘイヴィア達はどうする?合流するために探すか?」
    「いいえ、彼らのことは一旦あきらめましょう。どちらにせよ最終目的地はかわらない。『アンナマリー』をめざしているうちに生きていればまた出会えるはず」
    「そうだな、敵さん見つかった以上時間は刻一刻を争うんだ。無駄に浪費してタイムオーバーを晒すよりさっさと進んで行こう」

     方針は定められた。
     しかしながら、こちらのターゲットはおそらく割れてしまっている。道中は幾重にも張り巡らされた防衛ラインや罠が敷かれているだろう。
     どのように突破するか、少年は顎に手を当てて思考を張り巡らせていく。

    (ドローンは……、一先ず撒いたのか?数が少ない。だけどやっぱり油断はできないし監視カメラだって当然そこら中にある)
     
     その、

     ボゴ。

    (だとするとマンホールから下水道に侵入して地下から攻めるか)

     最中、

     ボゴン、ボゴゴ。

    (それか運転できるアドレイドがいるから、マジックミラーを貼った車かフルフェイスヘルメットでバイクに乗って顔を隠し

     ボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴッ!!

     唐突に眼前のビルの壁面が泡立った。

  • 137キャラシート24/02/01(木) 16:01:19

    「っ……!あぶないっ!!」

     咄嗟に危険を察知したアドレイドにタックルされるような形でクウェンサーは地面に押し倒される。
     直後、彼が一瞬前にいた場所にキューブ状のナニカが勢い良く殺到し、獲物を食いそびれた無数のキューブ状のナニカがおもちゃ箱をひっくり返したかのように地面にぶち撒けられた。
     欠陥工事が原因で壁が崩壊したのかと一歩遅れて勘繰ったが違う。

     ガシャ、ガシャガシャガシャガシャ!

     散乱してなお、先程のキューブ状の物体は独りでに動いている。
     まるで見えない手によって子供がブロック玩具で遊ぶように、それぞれが自在に結合と分離を繰り返す。
     意図も正体も不明だが一つ分かるとすれば、確実にこれらは自分達にとって友好的な存在ではないことか。

    「なるほど。これがそうそうに潜入がバレたげんいんってワケね」

     つまりはずっと見られていた。
     一つ一つは5cm×5cm×5cmというコンパクトサイズ。
     それらをある時は地面、ある時は壁、ある時は天井、ある時は看板、ある時は自動販売機、ある時は……。
     自在に動かせて自由に模様を変えられる立方体。
     組み合わせてあらゆる物体に擬態させれば、監視の網となる目と耳を街中に張り巡らせることは造作も無かっただろう。

    「何なんだこいつらは!?アドレイド!」
    「ざんねんだけど私も知らないわ!十中八九、ドミニークが秘密裏にかいはつしていたオモチャってところでしょうけど!」
    「じゃあ、新手の戦闘用ドローンだっていうのか……!?」
    『あらら、そんな陳腐なモノといっしょにされてはこまるにゃあ』
    「っ!?」

  • 138キャラシート24/02/01(木) 16:03:01

     誰に向かって発したわけでもない問い掛けに答える者がいた。
     傍らの女スパイではない。
     崩れた壁の中。
     黒光りを放つ直径3m程の球体が滑らかに転がり出てくる。
     路地裏に姿を表したそいつは、どこに搭載されているのかわからないスピーカーから放たれる甘ったるい声でこちらに馴れ馴れしく話しかけてきた。

    『はあ~い侵入者さんたち♥「ネバー」へようこそ!アタシがこの街のもうひとりの番人、アリュメイア=キングスバレイちゃんでっす!』

     おふざけ全開といった白々しいノリの自己紹介が終わると不規則に地面に散らばっていたキューブの群れが明確な指向性を持って球体の下へ集まっていく。
     そして不気味に蠢きながら、シルエット全体を覆い尽くし更に一回り大きく膨らませる。それに付随する形で外周部のキューブが組み上がり、砲を、脚を、シンプルな球体を彩るパーツを構成する。
     大きさはまるで異なるが、全体的なフォルムはクウェンサーの脳裏に嫌でもよく見知った兵器を連想させた。
     核の時代に終焉を齎し、既存の戦車や航空機といった通常兵器を反撃すら許さず掃いて捨てるように駆逐する怪物。
     到底、こんな平和ボケした『安全国』の内側に居座っていることなど許されない存在。即ち、

    『そしてこの子はアタシがあやつるオブジェクト、「キャロライン」。ホラホラ、ゲストにアイサツして「キャロライン」ちゃん!ヨロシクネ。ワタシトイッパイアソンデネッ!はい、よくできましたー!はくしゅー!パチパチパチー!』
    「っ、もう一機……ッ!?」

  • 139キャラシート24/02/01(木) 16:04:31

     オブジェクト。

     たった数文字の単語により、ハンマーで殴られたかのような重く鈍い感覚がクウェンサーの脳を貫く。

    『アンナマリー』と『キャロライン』。
     静と動。

     アリュメイアと名乗る少女の言葉を鵜呑みにするならば、『ネバー』はオブジェクト二機体制で守られていた?
     『アンナマリー』は完全に固定されてその場から動けない故に、要塞化された原子力発電所の延長線のようなものだとまだ辛うじて受け入れることができた。類似例として現在は既に喪われているが、北欧禁漁区における『アースガルド』という前例があったのだから。
     しかし幾らあらゆる面でセオリーから外れているイレギュラーな機体とはいえ、これは流石に掟破りが過ぎる。
     
     『安全国』を縦横無尽に動き回るオブジェクト。

     あまりの衝撃に精神を呑まれかけて、恐慌状態に陥りそうになる。
     しかし、ここで折れてしまったら二度と立ち上がれない。
     何とか踏み止まって、クウェンサーは喉から必死に声を絞り出す。

    「ハッタリだ」

     騙されるな。冷静になれ。
     敵は「オブジェクト」という巨大なブランドを利用してこちらの心理に揺さぶりをかけようとしているだけだ。そうに決まっている。目の前の兵器を断じてあの怪物達の同類だと認めるわけにはいかない。
     思い出せ。自分の目指している職業は何だ?オブジェクト設計士だろう。
     未熟ながらも専門的な観点から見てみれば『キャロライン』はオブジェクトだと名乗るに足る基準を満たしてはいない。そのはずだ。

  • 140キャラシート24/02/01(木) 16:06:39

    「ありえない。最低でも核が直撃しても戦闘続行できる堅牢さ誇るオニオン装甲と艦船を一撃で真っ二つにできる砲を両立させてこその『オブジェクト』だ。アンタが乗り回しているそいつはそのどちらも持ち合わせていない!」
    『うんうん』
    「それにそんな大きさの球状本体にコックピットとJPlevelMHD動力炉を搭載するスペースなんてあるはずがない!ただそれっぽく整えたハリボテだ!」
    『あー、コレ?一応ひつようなモノはひととおりおさまってるよ。なかはギチギチだし動力炉は小型化したから出力がけっこうさがってるみたいな問題はいろいろあるけどね。だけどネズミを狩るにはこれでじゅーぶん。まぁ、しんじるかしんじないかは自由だからラクな方にかんがえとけばぁ?そうしないとそのうすっぺらなメンタルが保てないんだもんね。カワイソ』

     操縦士エリートの少女は雑魚の戯言などどうでも良いというように肯定も否定もしなかった。虫けらを潰すのに用いるのが、丸めた新聞紙だろうがスリッパだろうが結果は同じだろうとでも言うように。
     獲物がどれだけ喚こうが反論を並び立てようが知ったことではない。
     そんなもので自身の立っている「狩人」というポジションが揺らぐようなことは絶対に無いのだから、という傲慢さが言葉の端々から滲み出ていた。

    『アタシはべつに不毛なレスポンスバトルしにきたんじゃないんだってば。論破したつもりになって一人できもちよくなるならヨソでやってちょーだい』

     よってアリュメイア=キングスバレイには玩具程度の価値しか持たない有象無象に対して、一方的な不条理を強いることへの躊躇いは一切存在しない。
     どこまでも押し付けがましい残酷な遊びが、始まる。

  • 141キャラシート24/02/01(木) 16:09:30

    「それよりもエンタメもりもりのゲームをしようよ!ルールはかんたんっ!アタシと「キャロライン」があなたたちをおいかけるから、なるべくおもしろおかしくにげてくださーい!制限時間はあなたたちが永遠にオネンネするまで!いまから60秒かぞえおわったら追いかけるからがんばってー!はい、よーいスタートッ!』
    「っ、クソッ!」

     要はどこまでも死ぬまで追い詰めて殺すということだ。
     発見されてしまった以上、クウェンサーとアドレイドに選択の余地は無く。悪趣味なレクリエーションに乗るしかない状況に陥っている。
     元よりここは相手のホームグラウンドで自分達は完全なアウェイ。ダラダラと一つの敵に構っていては増援が次々とやって来る。
     今が最高値で状況は時を重ねる毎に悪化していくのは自明の理。
     更に結局『キャロライン』がオブジェクトか否かは判明していないが、仮に否であっても得体の知れないトンデモ兵器を相手に生身でそのまま無策で挑んで勝てると思うほど自惚れてはいない。
     こんな狭っ苦しい路地裏でヒロイックな対抗心を燃やして挑みかかっても、易々と死神の鎌に首を刈り取られてしまうだろう。
     業腹だがここは甘ったるい声の主が引いたレールに従うしかない。
     
    『55、54、53、52、51♪』
    「とにかくに大通りにでるわよ!一般人がいるなら、あのパズルオブジェクトだってうかつにあばれられないはず!」
    「わかってる!」

     アドレイドに促されて、クウェンサーは踵を返して半ば転がるように路地裏から踊り出る。
     しかし、先程まで賑わっていたはずのメインストリートに頼みの綱であったはずの通行人達の姿が消えていた。影も形も見当たらない。
     身を潜める数分前までは若干パニックの空気に当てられつつも、それなりの人数を目にしたというのに。 
     いきなり手札の一つを喪失した金髪の少年は思わず無意味に吠えた。

    「どこに行ったんだよパンピーズ!みんな揃いも揃って神隠しにでも遭ったっていうのか!?」
    『ごめんねぇ。おもいっきりやりたいからモブたちにはさっさと退避してもらったの。もとはといえばあなたたちのまいたタネよん。ささっ、あと40秒!いそげいそげっ!こっちはもうクラウチングスタートの体勢をとってるゾ!』
    「えぇい、危機意識が高いようで何より!」

     

  • 142キャラシート24/02/01(木) 16:10:58

     これでは肉の盾作戦ver.2が使えない。
     ならば再び身を隠すか。一体どこに?
     潜んだ先にまた『キャロライン』の末端がいるかもしれないのに?
     現在の『ネバー』はアリュメイアの目と耳が全域に敷かれていると認識して然るべきだろう。
     なので、取るべき選択は守りよりも攻め。
     確実な安全地帯を得られないのならば、強行突破で『アンナマリー』を目指す以外に生存の道はない。
     しかし生身でオブジェクトを自称するあの兵器を振り切るのは余りにも無謀。すぐに追いつかれて嬲り殺しにされてしまう。
     徒歩以外でのアシが必要だ。
     どこだ。どこだ?どこに在る!?

    『30、29、28、27、26♪』

     こちらの焦りを煽る目的であろう口ずさまれるカウントダウンが耳障りなことこの上ない。

    (充電式のシティサイクル!電動立ち乗り二輪!観光用の三輪オープンタクシー!っ、どれもダメだ!自転車に毛が生えた程度のスピードじゃ到底足りないっ!)

     キョロキョロと辺りを見渡しているこの間にも寿命という蝋燭がゴリゴリと削られる錯覚に陥っていく。

    『20、19、18、17、16♪』
    「こっちよ!」
    「!」

     その時、嗜虐心に満ちた数字の読み上げに精神を炙られているクウェンサーの耳に腹に響く排気音が飛び込んだ。
     音源の方へ目を向けるとアドレイドが路上に放置されていたと思われるバイクに跨って手招きしていた。
     元々纏っていたエリート専用スーツがライダースーツ型だっただけに、自然と様になっている。

  • 143キャラシート24/02/01(木) 16:12:47

    『10、9、8♪』
    「乗りなさい!はやく!」
     
     女スパイの声に背中を押されるようにクウェンサーはバイクの下へと駆け出す。
     この機会を逃したら怪物の顎によって、無惨にも噛み砕かれるのは必至だ。
     回収する間も無く避難を指示されたからか、もしくは後で通るかもしれない救急車両側が退かしやすいように配慮したのか、鍵穴にエンジンキーは刺さっているようだった。
     おかげで映画やアニメで度々見られるように、モタモタと何本ものカラフルな配線と格闘する過程をすっ飛ばして逃走手段を確保できる。
     緊急時でもモラルを忘れなかった元の持ち主に心の中で謝罪しつつ、飛び乗るように後部座席に収まり運転を担うアドレイドの腰に腕を回した。

    『3、2、1♪』
    「OK!行ってくれ!」
    「飛ばすわよ!つかまって!」

     停止状態から急加速を行ったせいで若干ウィリー気味に前輪を浮かせつつも、二人を乗せた鋼鉄の騎馬は颯爽と発進する。
     同時にアリュメイアが刻んでいたカウントダウンが終わりを告げた。
     
    『0』

     それを合図に先程自分達のいた路地裏から、周囲の壁を削るように『キャロライン』が飛び出す。
     地獄のチェイスの火蓋が切って落とされた。
     機体の左右に展開した三対六本の脚で地面を電動ミシンのように高速で蹴りながら、こちらを淀むこと無く追従してくる。
     速い。そして無駄がない。
     『ネバー』は大都市故に路上には停車されている車両や案内標識に看板、信号機といった遮蔽物が多い。よって直線であっても、加速を妨げられるため全速力で駆けることは通常の車両にはできない。
     しかしながら『キャロライン』はそれらを時に跳ね、時に三角飛びのように壁を蹴ってショートカットし、時に機体を分解・変形させて避けることで余計なロスを限りなく減らして速度を維持している。
     柔軟な可動性が齎す高い機動力。
     ゲーム開始から1分程しか経過していないのに、クウェンサー達の乗るバイクの位置を正確に補足して距離を詰めて来ている。

  • 144キャラシート24/02/01(木) 16:14:19

    「追いつかれる!もっと速く走れないのか!?」
    「生憎これがフルスロットルよ!ほら、カーブ!あなたもいっしょにからだをかたむけて!」
    「うおっふぉうっ!!」

     しかしながら、アドレイド=”エンプレス”=ブラックレインの運転技術も相当なものであった。
     操縦士エリートに由来する空間把握能力を駆使して、渋滞気味の高密度で路上に停められていた車両達の荒波の隙間を縫うように滑らかな挙動ですり抜けていく。
     数ミリでも誤れば、接触や転倒を免れない曲芸のように精密なハンドル捌き。
     おかげで『キャロライン』には確かに迫られてはいるが、一定以上の間合いにまで踏み込まれることはない。

    「あわばばばばばばばばばばばばばばばっ!!」

     一方でクウェンサーは振り落とされないようにしがみつくか、指示に従って伏せたり重心を傾けたりするのが精いっぱいだった。
     オトナのお姉さんと密着しているというムフフなシチュエーションなのに、興奮よりも恐怖心が圧倒的に勝って堪能するどころではない。
     寧ろ一周回って、逆に冷静さを若干取り戻していた。所謂負の賢者モードである。
     
    「吊り橋効果って行き過ぎると発動が無効化されるんだなぁって……。いや、そもそもこんな地雷女は対象外だから関係無いのかもしれな
    「あら、こんなところに段差が」
    「ブゲェっ!」

     ガクンッとバイクを打ち上げるような縦への大きな揺れによって、不細工な悲鳴と共に無免許しがみつきコアラの舌が自らの上顎と下顎でプレスされる。
     デリカシーに欠けた発言への制裁はさておき、半ば膠着状態に陥ったことで思考する余裕が二人に生まれつつあった。

    「それにしてもつかってこないわね、砲撃。さいしょのときだって崩落なんてぶつりてきな手段じゃなく、そういうのをつかっていたら私たちはいっしゅんで消し炭だったはずなのに」
    「な、長く甚振って楽しむための悪趣味なハンデかもしれないけど、やっぱり自分達の箱庭はなるべく壊したくはないんじゃないか?」
    「どちらにせよナメられているわね。隙とも言うけれど」

  • 145キャラシート24/02/01(木) 16:15:52

     『キャロライン』本体の直径は3m程しか無かった。
     それだけのサイズにコックピットや動力炉のスペースを確保するとしたら、必然的に内殻装甲は薄いものとなるだろう。外殻であるキューブ装甲を取り除きさえすれば手持ちのハンドアックスでも有効打になり得るかもしれない。
     しかしその上で当然、当たり前の前提条件が浮上する。

    「まぁ問題はどうやってあいつを丸裸にするかだよなぁ……」
    「だったら方法はないわけじゃない、かも。あれっ!」

     目を細めるクウェンサーに呼応して、アドレイドが指で何かを差し示す。
     前方。
     そこに鎮座しているのは総重量20tを超える、車両界のヘビー級アスリート。
     
    「タンクローリーか。成る程、確かに使えそうだ!」

     クウェンサーは女スパイの意図を即座に汲み取ると、背中のバックパックからハンドアックスを取り出して信管を突き刺し、すれ違いざまにタンクローリーの側面に貼り付けた。
     そして後ろを振り返り、遅れてやって来た『キャロライン』が隣に並んだタイミングで無線機のスイッチを力強く押す。

    「『窮鼠猫を噛む』って言葉の意味を百回辞書で調べやがれ!サイコロ野郎っ!」
     
     爆発音と共に大容量のタンクの胴に風穴が空けられ、通り過ぎようとしていた『キャロライン』へと内部に満たされていた「中身」が降り注ぐ。
     間欠泉のような放出は機体全体を包むように呑み込んで尚も路上に拡がり、巨大な水溜りを形成していく。
     ガソリンなどの可燃性の液体ではなかった。
     そもそも目的は燃料に誘爆させて爆発炎上に巻き込むことではない。
     ならば「中身」の正体は?
     タンクの側面には確かこう書いてあった。
     
    「業務用洗剤」、と。 
     
    「子供でもわかる常識だ。石鹸は、よく滑る」

  • 146キャラシート24/02/01(木) 16:17:38

     かくして目論見は相成った。
     摩擦を奪われて脚を取られた『キャロライン』は横転し、勢いを殺せずそのまま一直線に滑走していく。
     宛ら、巨人のボーリング。
     ピンに見立てられた道路標識や信号機をなぎ倒し、最後に待ち構えていたビルへと勢い良く突っ込んだ。
     けたたましい轟音が辺り一帯に鳴り響き、その際の衝撃を物語るかのように激突した壁に巨大なクレーターを拵える。
     その中心にめり込んでいる追跡者の外殻を構成していたキューブは崩れるように剥離し、覆われていた本体が顕となっていた。
     
    「パーツやジョイントが多いほど物体同士の結合は脆くなる。自身の生み出した猛スピードが最大の両刃の矛になったな」

     厚化粧は引っ剥がし、敗因を告げたが奴はまだ死んでいない。
     止めをさせるチャンスがあるとすれば、今この瞬間だ。
     こうしている間にもキューブは再び動き出して、本体を包み込もうとしているのが見て取れた。
     バイクが円を描くような鋭い急ブレーキを刻んで停止する。
     彼我の距離は約50mは離れているため、もやし野郎の肩でハンドアックスを投擲しようにも筋力が足らずその手前に着弾してしまう。なので、

    「アドレイド、奴に再生させる暇を与えるな!」
    「まかせてちょうだい。ここで仕留めるわ」
     
     飛び道具の出番だ。
     バイクの荷台へと靭やかな腕が伸ばされる。
     女スパイが積まれていたアタッシュケースから取り出したのは、火薬が発明されるまで狩猟で使われていたような折りたたみ式の弩。
     強化プラスチックとカーボンで構成された軍用クロスボウだ。
     付属している「矢」を手に取り、弦に装填し、トリガーを引く。
     流れるような一連の動作で射られた「矢」は、吸い込まれるように無防備を晒している『キャロライン』の表面に突き刺さった。

  • 147キャラシート24/02/01(木) 16:19:45

    「着弾かくにん」

     ここで再び強調するが『キャロライン』本体の内殻装甲は内部に機構を組み込むために薄くなっていることが推測される。
     アナログなクロスボウの矢尻では貫通は出来なくとも、突き刺さるくらいには。
     無論、細い棒切れを突き立てられた程度で最先端技術の結晶は沈黙しない。仮に銃火器を持ち出したとしても、最低限対物ライフルクラスの威力を用意しないと厳しいだろう。
     
    「えぇ、ただの棒切れならね」

     そう、弓はあくまで発射装置。
     火、文、鏑、爆薬、麻酔……。
     射撃武器とは何を飛ばすかで用途とその真価が決まる。

     今回は最も原始的な「付加価値」である「毒」。
     ──────ただし、ただの毒ではない。

    「さて、いかがかしら。ノエル謹製のウィルスのお味は?」

     矢尻には獣ではなく無機質な機械を蝕む、最新の猛毒が塗られていた。
     直後、突然スイッチを切ったかのように怪物兵器は力を失った。
     機体を起こすなどの明確な意思を宿らせた「生きた動き」がプツリと途切れる。
     それに伴って貼り付いていたキューブ達も無秩序に地面へとバラバラに散らばっていく。
     明らかに「毒」が効いている様子を確認して、クウェンサーは安堵の息を吐いた。

    「本来は『アンナマリー』のサーバーにぶっ刺して色々するために用意したんだけどな。こいつにも効いたようで助かったよ」
     
     

  • 148キャラシート24/02/01(木) 16:21:09

     オブジェクトはオニオン装甲越しにカメラやセンサー類で得た情報をコックピットへと送るために、装甲の鋼板一枚一枚の表面にプリント基板によって電子回路が細かく溶接されている。
     一見剥き出しとなっているので、ハッキングに対しては為すすべなく聞こえるだろう。
     しかし対策として層毎にファイアウォールが敷かれているため、基本オブジェクトへの外部からのサイバー攻撃は弾かれる。

     だが、『キャロライン』にはその「厚み」が無い。

     その癖オブジェクトだと自信満々に豪語したのだから、大凡の仕組みは似通ったものとなっているはずだ。
     その無駄なプライドの高さを利用させてもらった結果がご覧の有り様というわけである。

     (しっかし、ノエルの奴。電子シュミレート部門との合作とはいえ、ベースゾーンに拘留されていた短時間でこんな凶悪な代物を用意するなんて……。すごく今更だけど、野放しにしちゃいけない類の人種な気がしてきたぞうあの厄眼鏡……!)

     若干背筋に寒気を覚えながらも、クウェンサーは横たわる『キャロライン』に近づき、ハンドアックスを軽く放り投げてダメ押しの一撃を加える。
     するとあっけなく内殻表面がめくれ上がり、直径1m程の穴が空けられた。

    「やっぱり直撃さえすれば、この程度の火力でも通用はするみたいね」
    「あぁ、そんなことよりアリュメイアはどうなった?」

     機体に派手な衝撃を立て続けに与えたられたので可能性は低いが、操縦者であるアリュメイア=キングスバレイはまだ生きているかもしれない。
     銃を片手に飛び出して来ることを懸念して、一応は油断せずに警戒してみる。

  • 149キャラシート24/02/01(木) 16:23:05

    「…………………………………………出て来ないな」
    「…………………………………………こないわね」

     が、いつまで経っても何かが起こる気配は無い。
     奇襲に備えて恐る恐る近づいて中を覗いてみたが、ものの見事にもぬけの殻であった。

    「だれも乗っていないわね。脱出したわけでもなさそうだし」
    「ならやっぱりドローンの亜種だったってオチか」

     しかし、素直にそう断定するには不可解だった。
     内部を観察してみると、あたかも「人間が直接乗り込んで操縦しますよ」といった風なレバーやボタンが羅列されているようだ。
     この並びが想起させる景色を設計士志望の少年は知っている。
     とある規格外兵器の頭脳部とも言える中枢部。

    「……『ベイビーマグナム』、オブジェクトのコックピットと似ている気がする」
    「えぇ、おなじ勢力でつくられていただけに『セリーヌ』とそっくりよ」
    「でも、こんな機構は無人機なら必要無いような……」

     怪異を見事撃退して大団円を迎えたパニックホラー映画で、エンドロールの終了後に何か不吉なカットが流されそうだと待ち構えているようなザワつく気分に侵食されていく。
     実際は単純に「THE・END」と表記されるだけの杞憂かもしれない。
     しかし、完全に否定するには判断材料が圧倒的に不足している。

    「…………………………」

     勿論、敵が『キャロライン』だけではないのは理解出来てはいる。
     潜入がバレている手前、既に倒した敵に拘っているようでは次の敵が直ぐ補充されてしまう。
     しかし、心の中のモヤモヤがどうにも晴れない。

    (アリュメイア=キングスバレイの行方、無人機には必要無いはずの機構の数々、明らかに手を抜いて遊ばれていた理由。そもそも名乗っているのに扱いが軽すぎないか?敵には俺達の目的地が割れている。だったら確実にやって来る『アンナマリー』で待ち構えていればいいはずなんだ。なのにこんなキツネ狩りの猟犬同然の替えの効く斥候のように使い潰していいのか?……………………まさか)

  • 150キャラシート24/02/01(木) 16:25:14

     疑問点を線で結び付けて、考察を重ねていくといくと一つの可能性が浮かび上がってくる。

     「替えの効く」。

     額から嫌な汗が吹き出すのは、思い至る限り最悪の「説」が考える程に頭の中で補強されていくからか。
     それでもクウェンサーは声に出さずにはいられなかった。

    「なぁ、『キャロライン』ってもしかして」
     
     しかし、軽々しく嫌な予感を口にするものではない。何故ならば、

    「一機『だけ』じゃないんじゃないか?」
    『大☆正☆解!』

     それは往々にして的中するのだから。

    「「!」」
     
     またしても聞き覚えのある人の神経を逆撫でる甘ったるい声に割込まれた。音源はかなり近い。

    『うん、いいね。かなりいいよあなたたち。「キャロライン」をたおしてくれちゃうなんて。ま、「チュートリアル」ていどでくたばってもらっちゃ退屈すぎてこまるからね。あそびはやっぱりこうでなくっちゃ!』
    「チュート……リアル?」
    『そ、出ておいで。「キャロライン」』
     
     アリュメイアが呼びかけると付近に点在する全てのマンホールの蓋が内側から吹き飛ばされ、下水道に通じる竪穴から噴水のようにこれ以上見たくもなかったキューブの群れが吹き出した。
     そしていつの間にか忍び寄っていた黒い球状本体に吸い寄せられていくと、先程撃破したものと全く同じ形を為していく。
     それも一つだけではない。
     撃破した個体(?)を除いて、視界に捉えているだけで3機は存在している。

  • 151キャラシート24/02/01(木) 16:27:44

    「っ、やはりか……!」
    「まずいことになったわね」

     一機だけでも手に余るのに、更にその三倍。
     連携を絡めてくるとしたら厄介さはそれ以上。
     唯一スピードだけは対抗できる傍らのバイクの存在感と心許無さが加速度的に増幅していく。

    『ごめんねぇ。「キャロライン」ってさぁ、お察しのとおりひとつだけじゃあないんだわ。たのしませてくれたからご褒美にネタバレしてあげるけど、この子はひとつのオブジェクトに複数のJPlevelMHD動力炉をくみこんだ機体。んで、それを覆うのはへんげんじざいなキューブの外殻。つまりは動力炉のかずだけ独立した個体に分割できるってワケ。スゴイでしょ?』
     
     確かにそういったカラクリならば分割の逆、『ネバー』中に散らばった『キャロライン』を一つに集めれば対オブジェクト戦をこなせる大きさにまで膨れ上がることができるだろう。
     球状本体に搭載された数々の小型JPlevelMHD動力炉を並列接続すれば、速度や砲の出力は飛躍的に上昇し、キューブ装甲の吸着力も増してより堅牢になる。
     その状態ならオブジェクトを名を冠するには不足しない。

    『さてさて♪』

     一通りタネを明かすとアリュメイア=キングスバレイは鼻歌でも口ずさむかのように「遊び」の再開を宣言する。

    『そんじゃ、ファーストステージをはじめよっか!はたしてあと何機『キャロライン』はいるかな?いま見えているのでぜんぶ?百?それとも千?そのどれかにアタシも乗ってるからワンチャンねらってみる?せいぜいゴールの見えないマラソンがんばってね。ネ・ズ・ミ・さん♥』

     主人の号令を忠実に待つ世界最小の「オブジェクト」達が、外殻を不気味に蠢動させながれジリジリとこちらに近づいて来る。
     既にスターターピストルは撃ち鳴らされた。
     一度でも躓けばそこで終了。
     生き残るには走り続けて活路を見出すしかない。

  • 152キャラシート24/02/01(木) 16:28:22

    【キャロライン/Caroline】

    全長…可変(最小時:4m、最大時:不明)

    最高速度…最小時:時速200キロ、最大時:時速500キロ以上(推測)

    装甲…電磁吸着式キューブ装甲

    用途…最終都市防衛兵器

    分類…陸戦専用型第二世代

    運用者…『資本企業』

    仕様…6脚エアクッション(分裂時は歩行可能)

    主砲…対オブジェクト用電磁加速式大型弩砲(10機以上合体時のみ使用可能、市街地では使用を制限)

    副砲…連携用AI、対人兵装多数

    コードネーム…キャロライン

    メインカラーリング…赤(色彩ホログラムでカモフラージュ可能)

  • 153キャラシート24/02/01(木) 16:30:08

    一旦ここまで
    規制くんとクソザコ回線くんさぁ……
    一ヶ月で前回より倍近く書けた
    リハビリリハビリ……

  • 154キャラシート24/02/01(木) 16:32:44

    また微妙にオリチャー走ってるし、キャロラインの設定結構変えたなぁ
    懸念していたアクションパートだけど文字だけで躍動感出すの難スギィ!

  • 155編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/02/01(木) 20:35:53

    躍動感すごい……
    章ボスだけあって絶望感とクウェンサーたちの決死の戦闘がすごい……
    語彙力がヤバいとすごいしか言えないね……

  • 156キャラシート24/02/01(木) 21:10:08

    褒めて貰えるのは超嬉しいけど、「やめてくれ……時間かけたクセにそんな大層なもんじゃないんだ……!」と恥ずかしさで謙遜したくなるジレンマ
    心がふたつある〜(HCWR)

  • 157キャラシート24/02/03(土) 23:50:07

    そういやチャートでは他の勢力も乱入してくるんだったよな……
    フローレイティアさんパート挟むか

  • 158キャラシート24/02/05(月) 22:52:26

    ほひゅ

  • 159編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/02/05(月) 23:53:57

    保守

  • 160キャラシート24/02/07(水) 22:19:40

    ぐああっ 2月が早いっ!早すぎる!

  • 161キャラシート24/02/10(土) 00:10:31

    ノエルは書いてて楽しいけど、破茶滅茶やり過ぎて「ほんまコイツ……」ってなる

  • 162キャラシート24/02/11(日) 22:54:12

    HOSYU

  • 163編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/02/13(火) 22:25:09

    ほしほし

  • 164キャラシート24/02/15(木) 22:22:50

    全体の設定の破綻や未回収の要素をなるべく発生させないためにWikiでこれまでの章を偶に見返すんだけれども、その度に誤字を見かけるのは何なんだ
    度々直しているのにそれでも湧いてるのちょー怖いんですけど 
    ただでさえ昔の自分の文章というのは小っ恥ずかしいものなのに

  • 165キャラシート24/02/18(日) 02:20:27

    もーちょい

  • 166編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/02/19(月) 08:29:50

    保守

  • 167二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 23:00:17

    明日お出ししたいなぁ……

  • 168編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/02/21(水) 00:35:11

    おお
    期待

  • 169キャラシート24/02/22(木) 15:58:08

    7

      さて、視点を切り替えてもう一方のはぐれた者達の行方はというと──────。

    「ちくしょうが……」
    「はわわわわわわわわっ……!」
     
     ヘイヴィア=ウィンチェルとノエル=メリーウィドウ。
     両名共に、絶賛無人機によって編成された軍勢に包囲されていた。
     
    「ねぇ、やっぱり避難する人たちにながされるままシェルターの中にはいったほうがよかったんじゃないのコレ……!?」
    「黙ってろ……!そんなトコに入っちまったら最後、いつ出してもらえるか分かったもんじゃねぇ缶詰だろうが……!とにかくやり過ごすぞ……!いつものオーバーリアクションも無しだ……!」

     幸い、まだ発見されてはいない。
     現在彼らは大型トラックの車体と道路の間に這いつくばって身を潜めている。
     敵方はこちらの正確な位置は掴めておらず、「おそらくこの辺にいるだろう」と目星を付けて捜索している段階のようだ。

    (路面が太陽の光で温められてて助かったぜ。これが夜なら、サーモ式対人センサーやら何やらで速攻バレてただろうな)

     だが、「まだ」というだけで見つかってしまえばそれまで。
     おかげで眼の前を無骨の脚が横切ったりローター音が近づいたりする度に、心臓が締め付けられるような圧迫感に苛まれている。
     当然、如何にも隠れやすそうな大型車両の下を一機にでも覗き込まれればアウト。
     即座に戦闘を余儀無くされるだろう。
     そうなった場合、隣で震えている眼鏡の少女は役に立ちそうもない。彼女を守りながら、痛覚と慈悲の心を持たない無人兵器に立ち向かうことを強いられる。たった一人で。

  • 170キャラシート24/02/22(木) 16:00:09

    (あークソ見捨ててぇ。全部放っぽり出してベースゾーンに帰りてぇ……)

     思わず心中に益体も無い事を浮かべてしまう。
     だが、ノエル=メリーウィドウは作戦において重要人物である。
     普段の仕草から結び付き難いものの、電子方面に関しては逸材と言っていい。
     彼女がいなければ、『アンナマリー』のセキュリティの突破は困難となるのは間違いないだろう。
     なので道中で欠くことは許されない。

     目的地まで守り抜く。

     果たしてできるのか?自分に?
     心の中で自問自答を繰り返す。
     多少銃火器の取り扱いに覚えがあるとはいえ、敵の数はほぼ無限でこちらの弾薬は持ち運べる程度の有限。
     明らかに個人でどうにかできるレベルを軽く超えている。

    (合流するために電波を飛ばそうにも、傍受されて発信源を突き止められたら元も子も無ぇ。クソッタレが……もしもクウェンサーの野郎がいたらどうしたんだろうな。……っといけねぇ)
     
     今は隣にいない相棒に思いを馳せてはみるが、自分は逆立ちしてもクウェンサー=バーボタージュにはなれない。
     イケメン金持ち運動神経抜群貴族かつ、臆病で慎重でスケベなヘイヴィア=ウィンチェル上等兵であるのだから。
     無いものを夢想しても状況が好転することはない。自分に出来る範囲を熟していくしかないのだ。
     
    (やっぱ正面切ってのドンパチはナシだ。ここは待ちの姿勢でステルス優先。ドローン共の動きをよく観察しろ。ある程度の巡回ルートは決まってやがるはずだ。隙を見つけ次第、物音を立てずに近くのマンホールまで近づいて蓋をこじ開ける。
    下水道の中にでも逃げ込んじまえば監視の目は少なくなるはずだ。よし、コレでいくぜ)

  • 171キャラシート24/02/22(木) 16:07:23

     ざっくりではあるが打開案は浮かんだ。
     僅かな希望を抱いて、ノエルにその旨を伝えようとした矢先だった。
     
    「ぶぇっっっっくしょいっ!!」

     何の脈絡も無く、隣の馬鹿野郎が色気もヘッタクレもないバカでかいくしゃみをぶち撒けた。

     クショーイ、ショーイ、……ョーイ、……ーイ。

     ビルの壁に木霊する大音量に反応した無機質なレンズ達が一斉にこちらを向く。
     ものの一瞬でヘイヴィア=ウィンチェルの思考がフリーズし、世界から色と熱が失われる。

    「あっ、ゴメン」
    「ばっ……!てンめええええええエエエェェぇぇぇぇッッッ!」

     そして取り戻した途端、喉を張り裂かんばかりに叫んでいた。
     怒りに任せて掴みかかりそうになったが、もはやそれどころではない。
     急いで二人は隠れ蓑であった大型トラックの下から這い出る。
     背中をけたたましい音によって叩かれるが、正体はドローンに搭載された機関銃が火を吹いて自分達を蜂の巣にすべく奏でられている葬送曲だ。
     まともに喰らえば人間スポンジがいとも容易く出来上がる。
     
    「もーっ、このアホアホアホアホアホアホアホぉ!!オタンコナスっ!!」
    「ゴメっ、ほんっとゴメンっ!マジでわるいっておもってるってばぁっ!ほら、でも人間ってきんちょうするとでちゃうっていうでしょ!生理現象だしシカタナイじゃん!」
    「それにしてもタイミングが悪すぎるんじゃボケェェェぇぇぇぇぇぇぇッッッッ!!もうヤダこいつ!見捨てるっ!絶対見捨ててやるぅ!」

     ジグザグに遮蔽物の合間を蛇行して逃げることによって、辛うじて銃弾の雨を防いではいるが体力は無尽蔵ではない。疲れ果てて膝を折った時が一巻の終わり。
     蜂の群れのような凶弾は、いとも容易くただの的となった獲物を噛み砕くだろう。
     それはけっして遠くないうちに訪れるであろう「いつかの自分」の末路だ。

  • 172キャラシート24/02/22(木) 16:10:43

     それ以前に。

     人間と機械では移動の速度がまるで違う。
     尚且つ、兵器ともなれば最適なフォーメーションで標的を追い詰めるようにプラグラムされている。
     
     故に。

     彼らは先んじて一機を自分達の行手を阻む形で配置されているであろうことを念頭に置いておくべきであった。
     
    (回り込まれてやがるっ!?)

     咄嗟にアサルトライフルを連射して撃ち落とすが、その一連の動作が致命的な隙を生んだ。

    (ちくしょう、コイツは囮だ……!)

     僚機が破壊されることすら織り込み済み。
     振り返った時には後ろから迫っていた方の空中ドローンがヘイヴィア達を上空から撃ち下ろす形で構えていた。
     遮蔽物に影響されない射線が確保されてしまう。
     
    (詰……ん……っ!)

     だが、放たれる弾丸が彼らを貫くよりも先に。

    「っ、だぁらっしゃっああああアアアアアアァァァッ!!」

     眼鏡の少女は道端の花壇に並べられていたレンガの一つを拾い上げ、いっそヘナチョコとも言える「運動が苦手な人」特有の不格好なフォームで腕を振り抜いた。

  • 173キャラシート24/02/22(木) 16:12:00

    「おいっ、何やってんだ!そんなもん効くわけ……」
     
     しかし。
     ヒュンッ!、と。

     眼鏡の少女を腕を伸ばして制止しようとした不良貴族の頭のすぐ横を、猛烈な速さを伴ったナニカが風を切る音と共に通り過ぎた。

    「へ?」

     それは小柄な少女の細腕から発揮されるはずのない豪速球だった。
     しかしながら一瞬後、背後で激しい衝突音が鳴り響く。
     振り返ると焼き固められた粘土の塊がドローンの一つに深々とめり込み、ブスブスと煙を上げる無惨なスクラップへと変じさせていた。
     明らかに彼女が先程投げ放ったレンガだ。

    「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃあっ!!」

     一度だけに留まらない。
     まるで駄々を捏ねる小さな子供がヤケになって肩を軸にして腕を振り回す、通称「グルグルパンチ」を繰り出す格好で恐るべき投擲を連続で放っていく。
     それら多くの狙いはデタラメであったものの、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」に倣って無人兵器を沈黙へと導いていった。
     ヘイヴィアはパチパチと瞬きを繰り返し、目の当たりにした光景とそれを作り出した少女を交互に見る。
     
    「え、何……?その……何?」
    「よっしゃあ!ナイスピッチング!ノーコンノエルちゃんでもこれだけ投げれば命中するもんね!」
    「そうじゃなくてそのメジャーリーガー顔負けの黄金の肩はどういうことだよ!?あのトロ臭かったてめぇがどうして!?」
    「あぁ、コレ?」

     さも世間の常識を語るかのように、強肩の迷投手は己が身に宿りしふしぎパワーの原理を解説をする。

  • 174キャラシート24/02/22(木) 16:15:54

    「『情報同盟』ではエリートを機械化してのうりょくを向上させることはわりとよくあるケースだよ。ノエルちゃんの場合はうでとあしのすこしだけにとどまってるけど、なかにはからだの半分いじょうが機械の人もいたりする。さすがにそこまでやるのは少数派だけどね。それと逆にアイドルとかインフルエンサーやってる子はからだにメスいれるのいやがってやってなかったり」
    「道理で集中治療室であんな馬鹿力を出してたのか……。って諜報部は何やってんだよ!おもっくそ危険物持ち込んでんじゃねぇか!てかコイツ自身が危険物!」
    「埋めこんでいるものをどう取りあげるっていうのさ?」

     至極当然の反論を突きつけられて、不良貴族は口を噤まざる負えなくなる。
     尤も諜報部やフローレイティアは目の前のデンジャラスサイボーグに対して押収や拘束といった措置が取れないから、『エンゲージ・ハイロゥ』でお茶を濁していたのかもしれないが。

    「というワケでノエルちゃん銃はうてないけど、こうして追いつめられればちゃんとたたかいで役にたつのだよチミ〜!ほめろ!うやまえ!あがめたてまつれっ!」
    「うおっ、危なっかしいからこっち来んじゃねぇよ!てめぇの場合、コケた拍子に身体を掴まれてスポンジケーキみてぇにパーツごと引き千切られるなんてスプラッターコメディが起きかねねぇっ!てか戦えるなら最初から言えやゴルァ!」
    「だって『使える奴』っておもわれたら最前線にたたなくちゃいけなくなるじゃん!」
    「クズっ!」
     
     無駄にデカい胸を張り上げて近づいてくるノエルに対して、ヘイヴィアは顔を引きつらせておっかなびっくりに身を躱す。
     しかし、一応鈍臭そうな眼鏡の少女が戦闘手段を備えていたことは判明した。
     まぁ、本人がノーコンを自称しているため投擲の命中率に関しては信用できないし、操縦士エリートの反射速度とサイボーグ由来のパワーに特化しているだけなので運動センスはそのままという不安は残ってはいるが。
     そうこうしている内に、再び増援らしき無人兵器が集まりつつあった。
     僚機の一団が撃破されたことを察知した周囲のドローン達がやって来たのだ。 
     数分前までならば、隅で縮こまって通り過ぎるのを待つだけの存在だった。
     しかし、今は違う。
     ノエルという対抗手段を有効活用するために分隊長(仮)は声を張り上げて指示を飛ばす。

  • 175キャラシート24/02/22(木) 16:18:04

    「おかわりが来やがったぞ!一先ずシンプルに見えてるヤツは全部黙らせる!」
    「ぶえぇっ!ぜ、ぜんぶぅ!?どうやって!?さっきはなんとかなったけど、あれだけの数をまたやっつけられるなんてちょいムリめですけどぉっ!」
    「コントロールに自信が無ぇなら拾ったモンを手の中で粉々にしてから投げろっ!全部が全部クリーンヒットで無くても構わねぇ!トドメは俺が刺してやるからよ!」
    「な、なるほどっ!」

     「質」が伴わないのなら「数」でゴリ押す。
     握力に任せて砕かれた破片達がショットガンの弾ように空中で広く拡散して、命中したドローン達を次々とダウンさせていく。
     直撃せずとも威力は十分。完全に沈黙させることが出来なくとも、掠っただけで陸上型ならば脚を折るか抉れ、空中型ならばローターを破壊してそれぞれの機動力を奪う。
     そして動けなくなった鉄屑にヘイヴィアがアサルトライフルの弾を叩き込んで引導を渡していく。
     「作業」と呼ぶに相応しい、まるでバランス調整が大味なシューティングゲームのような有り様であった。

    「よっしゃ!やっぱ面制圧は大正義だぜっ!ほら、アホ眼鏡!じゃんじゃん投げやがれ!」
    「もうノエルちゃんの呼び名、『アホ眼鏡』で固定されちゃってる感じ?それにしても、ぜひゅうぅ……!し、しんどい……っ!」
    「『アホおっぱい』よかマシだろ。ほら、手ェ緩めんな!敵味方平等に止まった奴から先に死んでくぞ!」
    「ひぎぃっ!」
     
     息を荒げるノエルであったが、彼女が肩をぶん回す度に明確に無人兵器はその数を減らしていく。
     アウェーではあったものの、環境を味方に付けていたことが大きなプラスとなった。
     レンガ、小石、空き缶、……。
     大都市は投げやすい物がそこかしこに氾濫している。
     例え落ちている物など無くとも、握力に任せてその辺の鉄製品やコンクリートを毟り取れば「弾」は簡単に確保できた。
     結果として、ものの3分足らずで辺りに存在していた無人兵器達は駆逐されてしまった。
     慣れない白兵戦を行った疲労によって、地面に倒れ込んだお騒がせサイボーグは尻を天に突き上げる姿勢で突っ伏して肩で荒く息を吸う。

  • 176キャラシート24/02/22(木) 16:19:28

    「ひゅう、ブヒィ……チカレタァ……」
    「ったく、切り抜けたのもピンチになったのもてめぇのおかげだから何一つ感謝できねぇ……。マジで置き去りにしてやろうかコイツ……」
    「み、水ぅ……」
    「おいおい、さっきラージサイズのコーラ飲んでやがったクセにもう喉乾いてんのかよ。遠足と違ってトイレ休憩なんてお上品なモン無ぇから出したくなっても知らねぇぞ。おっとこの音は」 

     徐ろにヘイヴィアの鼓膜を刺激したのは、数ブロック離れたエリアから鳴り響いてきた派手な爆発と銃声。
     聞き慣れた音であった。
     『正統王国』軍製の爆薬と火器によるものだ。
     事故や事件でないとしたら、何者かが交戦中ということだろう。
     思い当たる人物は二人しかいない。
     共にこの街に潜入した爆弾の扱いに長けた金髪の悪友と、憎たらしいが戦闘を始めとした何事もそつなく熟す女スパイだ。
     
    「まだクウェンサーの野郎とあの女狐はくたばっちゃいねぇらしい。ちまちまハンドアックスを起爆させてるヒマがあるってことはそれなりに余裕があるみてぇだ」
    「どうする?ごうりゅうすんの?」
    「いいや、音は途切れずに『アンナマリー』に段々と向かってやがる。目的地が一緒なら進んでいきゃ会える。俺達は地下からのルートで行くぞ」

     奇しくももう片方のペアと同じ結論に至ったヘイヴィアとノエルは、手近のマンホールの蓋をこじ開けて中へと潜って行く。

  • 177キャラシート24/02/22(木) 16:21:34

    『………………………………』

     そんな彼らの背中を眺めていた影が一つ。

    『ま、地下にもいるんですけどネ☆』

     無数の立方体によって形成されたアリュメイア=キングスバレイが駆る個にして群のオブジェクト、『キャロライン』の一個体であった。
     擬態していた大型トレーラーの形を崩しつつ、『ネバー』の番人である少女は思案する。

    『(うーん、でもどっちかに集中したいから二画面プレイはそんなに気がのらないにゃー。やること二倍でたのしさ半減とかナンセンスだし)』

     彼女がその気になれば、今直ぐにでも『キャロライン』をけしかけることができる。もしそうなればこちらの存在に気付いておらず、自ら閉塞空間に赴いたヘイヴィア達は為すすべなく制圧されてしまうだろう。

    『(でも仕事だしなぁ)』

     アリュメイアは遊び好きだが、それは仕事の中で許される範囲での話だ。
     積極的にノルマや条件を無視してまで優先する道理はない。
     理由は単純。
     『資本企業』における絶対の価値基準、金が貰えないからだ。

    『(こっちはAIの自動操縦にまかせちゃっていいかー。アドレイド=”エンプレス”=ブラックレインと爆弾の彼のほうがこっちよりもおもしろそうだし)』
     
     興味を失った標的の末路など、態々見届ける必要はない。
     無機質な尖兵が、無慈悲に放たれる。
     その直前。

    『そこまでだ。アリュメイア』

     雇用主からの通信が割り込んだ。
     不機嫌さを隠そうとしない声で『ネバー』防衛の一翼は応じる。

  • 178キャラシート24/02/22(木) 16:24:17

    『ちょっと市長さん。いま仕事ちゅうなんですけどぉ』
    『邪魔立てして申し訳ないが、一旦侵入者を追うのは中止だ』
    『はぁ?あなたが頼んだからこうしてネズミを追いかけているのだけれど?「存分にやれ」、と言いましたよね?そこんトコわかってます?』

     いくら雇用主であっても、正当な理由さえあれば労働者側に弾劾する権利は存在する。
     加えて自分は操縦士エリート。
     替えの効かないポジションであるが故に、多少は強気に出ても即座に切り捨てられる心配はない。
     その不文律を理解している上で、ドミニークは構わず続ける。

    『承知いるとも』
    『ネズミたちはどうするんです?このまま放置だと「アンナマリー」、あなたの喉元までたどり着いちゃいますけど?』
    『私が迎え撃つ。やはり飼い犬の粗相は飼い主が直々に処断せねばならないのでね。そのために君の「キャロライン」を幾つか私の下へ寄越してほしい。いいかね?』

     「いいかね?」。
     番人の少女は知っている。
     雇用主がこの言葉を使うのは相手から了承を得る為では無く、自身の意見を絶対に通す際に誇示される形だけの最終確認なのだと。
     ならばこれ以上不服を並び立てても無駄だろう。
     どうせ聞き入れられることはない。
     そういう男だ。

    『……べつにかまわないですけど、その間アタシはなにを?ほかにしてほしいことがあるからわざわざ呼びとめたんでしょう?』
    『うむ、察しが早くて助かるよ。君には引き続き「内側」の警備を任せたい。どうやら忙しくなりそうだからね。これまでは意識して市街への損害を最小限に抑えてくれていたようだが、その配慮についてももう気にしなくていい』
    『それって……』
     
     アリュメイアの問い掛けに『ネバー』の王は小さく嘆息して告げる。新たな嵐の訪れを。

    『また招かれざる「お客様」が来るのさ。それも団体でね』

  • 179キャラシート24/02/22(木) 16:28:07

    一旦ここまで
    無限規制&鯖落ち地獄
    自宅のWi-Fiここ2週間くらい使えなくなっているんですけどぉ!

  • 180編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/02/22(木) 19:07:01

    荒らし対策なんだろうがほぼ意味ないよなあホスト規制……

  • 181二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 00:06:49

    ノエルはヘイトコントロールミスると悲惨だからこうしてハチャメチャなギャグキャラに落とすのさ!え?最初から?……そだね
    頑張れヘイヴィア……お前が「ノエルちゃん係」だ

  • 182キャラシート24/02/24(土) 22:11:59

    次回は政治パート?

  • 183編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/02/26(月) 23:33:52

    保守

  • 184編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/02/28(水) 23:42:11

  • 185キャラシート24/03/01(金) 21:29:34

    もうちょい?

  • 186編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/03/04(月) 08:30:47

    ほしゅほしゅ

  • 187二次元好きの匿名さん24/03/04(月) 12:40:43

    ふーむ、日を跨ぐまで規制されちゃうのかね?不便
    あ、続きは明日あたりお出ししまーす

  • 188キャラシート24/03/05(火) 15:41:52

    8

    『ネバー』攻略一行が会敵及び交戦に入る30分程前。
     第37機動整備大隊の指揮官室にて─────。
     
    「やはり貴様らが一枚噛んでいたということか」

     フローレイティア=カピストラーノ少佐は映像チャット用のモニターを不愉快そうに睨みつけていた。

    『ええ、我々の想定した事態となってくれているようで何より。これで漸くこちらも動きやすくなるというもの」

     通信相手は『情報同盟』軍に所属する将校。
     レンディ=ファロリート中佐。 
     戦地派遣留学生の少年達からは「おほほ」と呼ばれている操縦士エリートの少女が所属する部隊にて指揮官を務めている女性だった。
     顔見知りではあるが別に仲は良くない。寧ろその真逆。そもそも勢力からして異なる。
     共闘関係を幾度か築いたことはあるものの、それ以上に殺し合って来た敵という認識で間違い無い。
     今までもこれからも。
     よって無駄な世間話を挟まず、単刀直入に結論を述べていく。

    「ノエル=メリーウィドウは最初から泳がされていた」

     思えばきっかけからして妙ではあった。
     表向きは特徴に乏しい目立たない機体であった『サイトシーカー』に、アドレイド=”エンプレス”=ブラックレインは何故目を付けたのか。
     幾ら腕が立つとはいえ、スパイによって機密情報を抜かれたのか。
     一エリートが無断でオブジェクトを発進させて脱走することを許したのか。

    「余程貴様らの情報管理や警備体制がザルで無い限り、まんまと盗み出されるなどという失態が起こり得るなんてありえなかった。全ては『餌』を撒いて『本命』を釣るための布石か?」
    『はて、何のことやら。確かに「偶然」ターゲットの在り処を聞き付けた「邪な企みを持った何者」かに持ち出される可能性は万に一つくらいは「あったかも」しれません。ノエル=メリーウィドウの独断専行もまた同様に。しかし、どのような形であれ我々は「被害者」です。実際に実行した者が「悪」であることは変わりません。まぁ、賊が操縦士エリートとしても優秀だったというのは全くの予想外でしたけれどね。おかげでこちらの少なくない数のオブジェクトが犠牲となりましたが、いずれも許容範囲内です。こうして望んだ展開に持ち込めたのですから』

  • 189キャラシート24/03/05(火) 15:45:19

     銀髪に褐色の美女は真意を伺えない白々しい笑みを浮かべつつ、事の経緯を説明していく。
     道端に札束を放置し、いざ魔が差した誰かによって拾われた途端に糾弾して騒ぎ立てるような薄汚れたマッチポンプ。
     御大層な被害者根性だが、今更これ以上追及しても無駄だろう。向こうが敵である自分達の通信に応じているのがその証だ。
     現時点でアリバイに関しての根回しは、とうに済ませて有耶無耶となっていることは確定と見ていい。もはや「真実」はどこにも存在せず、「誰が悪いか」などという陳腐な犯人探しは彼女達『情報同盟』にとっては1bitの意味すら持たない。
     
    『「ネバー」の急成長は、「情報同盟」全体にとって目の上のタンコブでした。所詮二軍止まりの有象無象とはいえ、一軍を引き立てて支えている層の人材とそれに付属する資産の流出は看過はできません。支配とはされる側の存在無くして成立はしないのですから。勝手にいなくなられては困るのですよ』
    「だからわざと漏洩させたのか。あの街の周辺で『宝探し』を引き起こして『ネバー』を刺激するために」
    『だから我々は「被害者」だと。尤も、肝心の「宝箱の中身」に関しては本物を織り交ぜつつでしたけれどね。信憑性が伴わなければ誰も釣られてはくれないはずなので』

     つまりはこの北米大陸南西部で起こった戦争自体が、たった一つの街を潰す名目を得るために勃発したということになる。
     敵勢力だけでなく自分達の抱えている機密情報を流出させるという文字通り身を切るようなリスクを侵したのは、それだけ『ネバー』に警戒心を募らせていたことを示しているか。

  • 190キャラシート24/03/05(火) 15:47:53

    『信じるか信じないかは自由ですが、渡った機密情報の「質」は他勢力に知られてほしくは無い程度には存在しています。それは我々「情報同盟」もまた例外無く』
    「愚か者共が。眼の前の危機感を払拭するために更に大きな危機を自ら作ってどうする。貴様らのやり方は不確定要素が多すぎる。少しでもタイトロープから足を踏み外していたら、その御大層な計画の全てが水泡に帰していただろうが」
    『耳が痛いですね。しかしあの街を潰したかった理由については、無秩序な膨張に加えてもう一つの懸念が有ったからなのですよ。その懸念を調べるためにかねてより工作員を送り込んでいたのですが、全員とは言わずとも不自然な失踪が相次ぎましてね。彼らは選りすぐりの諜報員。安物の無人兵器の餌食となったり、買収されて寝返ることはありえません。なのである仮説を立てていました』
    「おい、何の話をしている?」
    『そして先程、その仮説は正しかったと証明されたようです』

     眉を潜めるフローレイティアに対して、レンディは淡々とひた隠されてきた在ってはならない事実を突き付けた。

    『「『ネバー』はオブジェクトを保有している」。これは重大な条約違反に当たります。国際法に照らし合わせるならば、もうあの街は「安全国」としてカウントはされません』
    「っ!」
    『「ただの建造物だ」と言い逃れのできる「塔」の方ではありませんよ。内側で不穏分子を排除する役目を担うもう一機。……アレを「一機」と数えていいのか判断しかねますが、既にそちらについても把握済みです。あなたの部下達は実に都合の良い「口実」を作ってくれましたよ』
    「待て、もう一機……だと?」
    『おや、ご存知無かったのなら失礼。端的に言い表すと、あの街は自在に動かすことのできるオブジェクトを運用しているのですよ。ならばこちらが取り得る手段は一つ』
    「……っ、まさか貴様ら……!」
    『察しはついているようですね。話が早くて結構』

     一拍置いて、宿敵はあっさりと非人道的な決断が言い放った。

    『オブジェクトを用いて「ネバー」へ侵攻を行います』

  • 191キャラシート24/03/05(火) 15:52:35

     一般人が生活を営んでいる領域へのオブジェクトによる武力介入。
     一見とんでもない暴挙にしか聞こえないが、大義名分は十分揃ってしまっていた。
     現在の戦争の形となる以前、核兵器を運用していた時代から既に敷かれていた絶対的な不文律。

    『定められたルールを守らない以上、もはや「ネバー」は問答無用で「戦争国」。そして、怪物には同じ怪物をもって対抗する。あなたも良く知っている「戦場の常識」でしょう?』
    「ふざけるなよ。あの街は百万人がいるんだぞ。その全員を血と火の海に沈めると宣うのか?幾らお得意の口先で屁理屈を並べたとしても、後処理になって世界中から次に吊るし上げられるのは貴様らだ」
    『えぇ、あなたの意見は正しい。但し、それは数分前までのお話です』

     静かに声を荒げて反論しようとするフローレイティアとは対象的に、レンディの態度は飽くまでフラットを貫いていた。
     噛みつかれることは織り込み済みだったのだろう。それに対する回答も。

    『我々は情報を重んじるが故に「敵」を正しく分析できています。軽んじはすれど侮りはしません。我々の辿り着いた結論に他の勢力が至っていないとでも?』
    「…………………………」

  • 192キャラシート24/03/05(火) 15:54:03

     確かに先んじていたのは『情報同盟』だったかもしれないが、四大勢力のパワーバランスはほぼ拮抗している。でなければ弱い陣営が真っ先にやられて喰われてしまうのだから。
     よって他の三勢力は直接の情報戦で多少は劣っていたとしても、コネや金の流れ、人々の伝聞などを利用してアドバンテージの差を埋めて対抗しようとする。その結果、僅かに遅れて同じ答えを得たとしても全くおかしくはない。よって、

    『直ぐにでも私達「情報同盟」と「正統王国」だけでなく、「資本企業」と「信心組織」の部隊も同時多発的にアクションを起こすでしょうね。本格的に「世界の総意」を騙る四大勢力全ての軍が動き出してしまえば、侵攻反対を掲げる少数派の意見ははたして聞き入れてなどくれますかね』
    「外道共が……!」
    『どうとでも罵って頂いて結構です。しかしながら、平和主義者の我々は流血を最小限に抑えることを望んでいます。せっかくなのでタイムリミットをお教えしましょう。残された時間はそうですね……。潜入済みの歩兵部隊は手遅れですが、本命のオブジェクトが到着するのは諸々の手続きや発進準備込みで約90分後といったところでしょうか。無駄でしょうけれど、何か行動を起こすのならばどうかお早めに』

     言うだけ言うと宿敵はそこで通信を切り上げた。

  • 193キャラシート24/03/05(火) 15:56:55

    「クソっ!」

     フローレイティアは毒づいて実務デスクの上に積まれていた書類を怒りに任せて払い除ける。
     完全に後手に回った。
     『ネバー』が擁する「もう一機」、潜入済みの他勢力の部隊、極めつけに90分と経たずに襲来する多数のオブジェクト。
     元よりタイトなスケジュールに縛られていた作戦ではあったが、これ程までに次から次へと脅威が湧き出て来るとは想定外であった。
     全てを諦めてこのまま「全体の流れ」に身を任せていれば、此度の事件は勝手に解決するのかもしれない。
     しかしそれでは部下が無駄死にし、蹂躙されるはずでなかった百万の命が磨り潰されてしまう。
     それは本来そうならないための本作戦にGOサインを出した立場の人間として、到底見過ごすことは出来ない結末だ。
     そのため確実に訪れる最悪を回避すべく一度頭を冷やして、取れる選択肢を頭の中で並べていく。

    (今からクウェンサー達の援護や回収するために救援部隊を送ってたとしても到底間に合わない。作戦放棄して帰還するように指示しても同様だろうな。だとすれば……)

     張り巡らせた思案に一区切りをつけた合図として煙管に残っていた煙草を灰皿に落とすと、まだ辛うじて卓上に残っていた内線の受話器に手を伸ばしてベースゾーン全体に命令を下す。
     
    「総員!緊急事態につきスクランブルを発令する!『ベイビーマグナム』出撃の準備に直ちに取り掛かれ!」

     「怪物には同じ怪物をもって対抗する」。
     成る程、スマートなルールだ。
     ならばこちらも則らせてもらうとしよう。
     ただし、攻めるためでなく守るために。

  • 194キャラシート24/03/05(火) 16:02:24

    一旦ここまで
    まーたタイムリミットボリボリ短縮してるよコイツ
    そして例の如く説明台詞が、長いっ!
    レンディさんの登場は全く当初の予定にはなかったし、ずっと戦い詰めだったベイビーマグナムは今回出ないはずだったのにまさかの休日出勤
    3章でタイムカード切っちゃたからお賃金は出ないよ ごめんね

  • 195キャラシート24/03/05(火) 16:04:17

    そして、半年以上ダラダラ居座ってきたけど漸くスレに終わりが
    明日のホスト規制されない時間帯に次スレ建てようかね

  • 196編集初心者マン◆bvw/mWLSaA24/03/05(火) 21:31:06

    週刊世界の危機
    要はい つ も の

  • 197キャラシート24/03/06(水) 17:44:36
  • 198二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 17:57:34

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