- 1二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 17:25:35
- 2二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 17:37:45
夏も終わり、そろそろ秋風が吹くかというこの頃、マルゼンスキーはトレーナーと海に来ていた
「最後の思い出作り、しましょ♪ね?いいでしょ…」
そんな彼女に甘い誘いにまんまと乗った俺は、残暑も厳しい中、海へとやってきて1日中遊んだ、スイカ割り、ビーチバレー、水遊び…砂浜で追いかけっこはもうしたくないな…足がヤバい
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎ、既に日が陰り出す夕暮れとなっていた。夕陽の中で、レンタルしていたビーチパラソルや浮き輪を返却し荷物の元に返ってきたのだが…
マルゼンスキーがいない
「じゃあアタシ、荷物整理しておくから」
と言っていたので、当然荷物は整頓してあるのだが
彼女を探して辺りを見渡すと、ザパリと何か海から音がする
どうやらマルゼンは泳いでいたようだが、海に浮かぶ彼女はじっと夕陽を見つめて立ち尽くしていた - 3二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 17:48:56
(最後に泳いでおきたかったのか?)
そう感じたトレーナーは荷物を置いてマルゼンに歩み寄る
彼女に声を掛けようとしたその時
俺は 夕陽の中で濡れて佇む彼女の姿に心奪われた
『へい、そこの渚のヴィーナス!どうしたの?』
『ああ、まさに君は美の女神だ…!』
そんな歯の浮いた台詞でも言えればよかったが、俺にはどうしても、今のマルゼンスキーには不釣り合いな、安っぽい台詞に思えてしまった
彼女に数秒か数分、自分にとっては永遠にも感じられるほど見惚れていると、流石に彼女がこちらに気付く
「あらやだトレーナーくん、アタシに見惚れちゃった?」
当たり前の事実、隠そうとも思わない
「ああ…とっても…とっても綺麗だったよ、マルゼン」
飾り気のない、つまらない言葉かもしれないが、それが一番相応しいと思える台詞だった
「フフフ…そう、とっても嬉しいわ♪」
照れているのか、夕陽に照らされたからなのか、赤みがかった顔で彼女はそういった - 4二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 18:04:59
もう夕陽が水平線に沈み出している、もう帰らなければならない時間だ
「トレーナーくん、最後に水遊びしましょ!」
「え、おい、もう、時間が…」
「いいから♪いいから♪」
そう言われて海に引っ張られる膝下まで浸かったところで水を掛けられる
「アハハハ!それそれ〜!!」
「お前なぁ…そらっ!!」
文句を言いながら水遊びに応じる、満面の笑みと彼女とするのは、何物にも代え難い幸せだ
「それそ…キャッ!」
「マルゼン!!」
突如マルゼンが足を取られ、そこを抱きかかえる
「…流石にもう帰らないか…?」
マルゼンは抱えられたまま、沈黙している
「…トレーナーくん、夏が終わるのってやっぱり寂しいわね………」 - 5二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 18:13:29
マルゼンがポツリポツリと語りだす
「夏休みが始まったら、あれもこれもしようって思っても、あっという間に過ぎちゃって、明日からは秋のレースが動き出す日になって……トレーナーくんとこうして過ごせるのも……」
そっと彼女は俺に向き合い胸に顔を埋めて抱き締める、彼女の柔らかさに思わず反応をしかけるのをぐっと堪えたが…
「ねぇトレーナーくん、この夕陽に照らされた時間って不思議よね…まるでいつもとは違う別世界みたく色付いて…魔法に化かったみたく、アタシもいつもの自分じゃないみたいに思えちゃう…なんだかワガママが溢れちゃうの…」
すっとマルゼンスキーが顔を上げる、潤んだ瞳でこちらを見つめている
「ねぇ…最後の夏の思い出……ちょうだい?」
いつの間にかマルゼンを抱える腕が彼女の体を抱き締めるような形となっていた
「マルゼン……」
いつも見てきた、勝負を決める時の鋭い眼、ファンへ向ける魅了する眼、その眼が今俺に向けられている、この瞳からは逃げられそうにない
やがて、ゆっくりと2人は近づき、夕陽に照らされた2つの影は1つに重なり━━━━━ - 6二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 18:22:53
「ママー!あそこにトレンディなカップルがいるよ〜!!」
「そうね、アンタもいつかあんな素敵な恋をするのよ」
親子の声が静寂を切り裂いた、どうやら見られてしまっていたようだ
俺もマルゼンも、我に返ってしまい、ここから再開するような空気では無かった
「……帰ろっか、トレーナーくん」
夕陽が掛けた魔法は、解けてしまった
2人は海の家のシャワーで塩を落として、着替えて、荷物を持ってマルゼンのタッちゃんの元へ戻った
マルゼンの顔は浮かないまま、車内に乗り込んでも沈黙が続く
「なぁ、マルゼン…さっきの、夕陽に照らされて魔法に掛けられたみたいだって話についてなんだが…」
マルゼンはすこしキョトンとした顔をしたが、ハンドルに顔を載せてこちらを向く
「……話してみて」 - 7二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 18:54:47
「こんないい夕陽に照らされた時間って言うのは、『マジックアワー』って言ってな…マルゼンが言うように空も雲も、街も山も、みーんな別の色になって…魔法にかかったように別世界にも感じる、夕暮れだけに感じられる不思議な時間なんだ」
ふーん、なんてマルゼンが頷く
「当然、日が沈めば終わる、楽しい時間はいつだって無限じゃない…」
「結局魔法は解けちゃうものなのね……」
残念とした顔でマルゼンは項垂れる
「だけどもう一度魔法に掛かる方法があるんだが…わかるか?」
少しマルゼンが思案する
「……次の夕陽を待てばいい?」
「正解…!」
「単純過ぎるんじゃないかしら」
ハハハ…と正論を言われて苦笑いをしてしまう
「…でも、明日が曇ってもいつか晴れる日がくる、そうしたらまたマジックアワーを楽しむことができる……」
マルゼンと向き合う、いつだってアタシを送り出して、迎えてくれる真っ直ぐな目で、見つめてくる
「マルゼン、俺はいつだって君に付き合う、明日も明後日も、来年もその先にも…
いつまでも、君に魔法を掛けてみせるよ」 - 8二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 19:07:54
「…な〜んて、ちょっとクサかったかな?」
「んもぅ…///トレーナーくんたら……////」
思わぬ台詞にそっぽを向いてしまう、赤面したアタシの顔なんて、見せられないわ
でも……さっきまでのおセンチな気持ちは吹き飛んじゃった
「…それじゃ早速アタシがトレーナーくんに魔法を掛けてあげるわ!」
そう言ってタッちゃんのエンジンを掛ける、スポーツカーの回転数が上がり豪快な音が鳴り響く
「あ、いや、元気出たならいいんだけど、ほら渋滞あるかもだし、ゆっくり安全運転でいった方が……」
一気に冷や汗が出てきたトレーナーは、なんとか宥めようと言葉を並べたが…
「ありがと、トレーナーくん…」
「へ…?」
聞こえるかどうかの声を最後に、彼女が満面の笑みを向けてくれた
「大丈夫…法定速度のギリギリを攻めるだけ…!!」
タッちゃんのアクセルが踏み込まれ、エンジンが嘶き、発進する
「あ、あ、あ、ああ…」
彼女のドライブが始まる…明日にも影響でるかな…
でも彼女が笑ってくれてるなら…いいか……?
終わり - 9二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 19:38:50
- 10二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 21:12:02
宣伝
- 11二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 21:17:03
この2人いっつもオシャンティーだな…
まるでドラマのワンシーンみたいだぁ… - 12二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 23:30:54
「ママー!あそこにトレンディなカップルがいるよ〜!!」
ここめっちゃ笑った - 13二次元好きの匿名さん23/09/03(日) 23:49:54
Oh,トレンディ
トレーナーの言葉がシンプルなのがいい
あとオチすき - 14二次元好きの匿名さん23/09/04(月) 00:15:06
なんで小さい子が古い流行語しっているんだ
- 15二次元好きの匿名さん23/09/04(月) 00:16:38
ありがとう、良いトレンディドラマを読ませて貰った
それはそれとしてその子供何者だよw