モルモットは───輝いた

1二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 19:52:54

原初、モルモットは一般の者であった。期待を集めるただの新人トレーナーであった。
誰よりも常識を理解り、その通りに行動する真面目な学生が次の過程に進んだだけの姿でしかなかった。

トレーナーになり僅かな時間でその人生の指針は運命によって捻じ曲げられてしまったのだ。覇道を歩む為に自ら変わらなくてはタキオンの注目を射止めることができない。モルモットは狂気に堕ち、薬を飲むことを選び、彼女に人権さえも捧げてしまった。真面目さ故に狂ったのである。

彼の存在はよく、ジョークで光らされた。
その状態で必然とも言える偶然──外なる者に姿を変えつつあるお姉ちゃんの力の一端に、風で書類をぶちまけてしまったその時触れてしまったのである。

因果の支配者たる"お姉ちゃん'を殲滅せよ。
光となれ。

自ら光を放つモルモットの体には彼女の力と反転する力が定着した。その身が持つ明るすぎる狂気に対し変質してしまった訳である。今や彼の存在は光そのものとも言えた。世界に満たされるべき光を吸収し、生み出し、そしてその膨大なエネルギーを放射する──飽食者として、無限なる者として変貌を遂げたのだ。

──全ては実験のため。速度のため。
光子を自在に反応させ、力学的エネルギーに変換しよう。爆発的に生じるエネルギーが身体を駆け巡り、宇宙法則の極点まで至る。
それはまさに"果て"へと彼女を誘える神にも等しい立ち姿であった。

2二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 19:54:05

しかし。

モルモット君、君が1番のモルモットであろうとするのは私にとってとても喜ばしいことではあるがね？…流石に眩しすぎると妨害になってレースの出走は認められないんじゃないかい？

ｿ゜ｸ゜ﾄ゜ﾞ゜ﾉ゜ﾊ゜ﾃ゜ｯ゜

彼女の悲しそうな顔に──モルモットは声を上げた。その御尊顔の美しさ、儚さと英雄然とした佇まいに虚ろなる光が霧散しかけた。

モルモットは自分の愚かさを悔いた。力に溺れかけた自身を呪った。独り天高く昇り、無情感に苛まれ、体は更に光を増してゆく。世界の地表面は本来あるべき温度よりもさらに熱せられ、地は渇き、海は消失し始めた。
世界が飢え始めてしまったのである。

そこへ無骨な甲冑を纏った女騎士がけたたましいヘリコプターから颯爽と現れ、こう言った。ラーメン、食べに行きませんか、と。
すぐに世界の光が闇に喰われ始めた時。
憎悪すべきとされたお姉ちゃんが現れた。
そしてモルモットと女騎士をその触手で摘み上げ、ラーメン屋へと直行する。

チャーシュー味噌大盛り3人前で。

モルモットは麺を啜った。思い詰め、迷惑をかけてしまったことに泣いてしまう。
ラーメン屋の店主は、短くこう言った。
ラーメン、美味かったですかい？

モルモットは笑った。食べたことがないほど、そのラーメンは光り輝いていた。
その光の色は、まさに愛の色であった。忘れていた暖かい感情そのものであった。
そして、モルモットは改心する。無限なる愛情を持ってタキオンに寄り添おうと、強く決心したのだ。

3二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 19:55:14

そして勘定をして店主に礼を言い
3人仲良く外に出ると──

やっぱりここに居たんだね、お姉ちゃん！
もう解決しちゃったの！？さっすが〜！

トレーナー！ここ前一緒にまた行きたいって話していた美味しいラーメン屋さんだよね！
むー…私を仲間外れにしたな〜！…つーん。

トレーナー君、私の弁当を作らずに何処かへ彷徨い出るなんて酷いじゃないか。
…ひどいよ……。

ﾐ゜
ﾁ゜ｬ゜ｰ゜ｼ゜ｭ゜ｰ゜ﾒ゜ﾝ゜
ﾎ゜ｳ゜ｼ゜ｼ゜ﾏ゜ｽ゜ｯ゜

お姉ちゃんは───霧散し、
女騎士は───腹を斬り、
モルモットは───日光に紛れた。
三者三様に散った後で
世界に再び安息が訪れたらしい。
モルモットは以来、タキオンを連れて店を訪れている様子が気象衛星によって観測されるようになったという。

じっけん　せいこう