ファインモーション「買い出し手伝ってくれてありがとねシャカール!」【SS】

  • 1二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 21:27:03

    「……買いすぎだろ」
    パーティー用品の詰まった紙袋を抱えながら愚痴る。
    「そう?結構絞ったつもりなんだけどなあ」
    ファインがころころと笑う。
    思わずため息をつくと、なにか見つけたのかファインが駆け出す。
    「あのお菓子おいしそう!買ってくるからちょっと待ってて!」
    「おう、こけンなよ」
    壁にもたれかかりながらファインの背中を見送る。
    人ごみの中をいくつかの黒服が縫うようにファインを追う。

    ……こうして二人で買い出しに行くことも本来ならありえなかったんだろうな。

    そんなことに思いをはせていると。
    「シャカールさん?」
    声をかけられたほうを向くと小柄なウマ娘がオレを見上げていた。

  • 2二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 21:27:17

    「フラワーか」
    「こんにちは。シャカールさんもクリスマスの買い出しですか?」
    「殿下サマに巻き込まれてな」
    「ふふっ、私もスカイさんと一緒に来たんです」
    フラワーの頭越しに後ろを見やるが、空色の髪は見当たらなかった。

    オレの視線に気づいたのかフラワーが頬をかく。
    「少し用があるらしくて……ついていこうとしたらすごい勢いで断られてしまいました」
    「お前に贈るプレゼントでも見繕ってるンじゃねェか?」
    「……やっぱりそうなんでしょうか?」
    フラワーが胸に手を当てて頬を赤らめる。
    なんとも微笑ましい姿だ。

    肩をすくめると胸元の紙袋がかさりと鳴った。
    「まァ、気づかないフリしてやれ。わざわざ恥かかせることもねェだろ」
    「……シャカールさんはオトナですね」
    「ハッ、ンなこと初めて言われたぞ」
    顔を見合わせると、お互いに笑みがこぼれた。

  • 3二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 21:27:45

    すると突然。
    「フラワー!」
    振り向いたオレたちの視線の先には空色の髪をなびかせて駆け寄るスカイの姿があった。
    スカイはフラワーの隣に立つと急造の笑顔を貼りつけて話しかける。
    「ごめんごめん、お待たせフラワー。あ、シャカール先輩もこんにちは」
    そう言うなりスカイはフラワーの肩を抱き寄せた。
    まるで見せつけるように。
    うっすらと開いている目からは焦りと怒りの色が見て取れた。
    困惑するフラワーがスカイとオレを交互に見つめる。
    苦笑しつつ口を開く。

    「おう、たまたまフラワーと会って話しててな」
    「へえ~?たまたまですかあ」
    「別にお前が思ってるようなことじゃねェから怒るな」
    「セイちゃん怒ってなんかいませんけど?」
    肩をすくめながら自分の耳を指さす。
    「……そういうコトはその耳を隠してから言え」
    スカイが慌てて自分の耳に手を当てる。
    思い切り後ろに倒れ伏していた耳にようやく気がついたらしい。

    しどろもどろしているスカイの額を空いているほうの手で軽く小突く。
    「後輩の好きなヤツを横取りするシュミはねェっての。あと、もう少しフラワーのことを信用してやれ」
    スカイは額を押さえたままオレをにらみつけていた。
    反論を重ねようとスカイが口を開く。
    しかしスカイの手をぎゅっと握りしめるフラワーの手にさえぎられた。
    下唇を嚙みうつむくスカイとその様子を心配そうに見つめるフラワー。
    一つ息をついてオレは口を開いた。

    「そンなに好きなら絶対にその手を放すなよ……後悔ってのは後にしかできねェンだからな」

  • 4二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 21:28:19

    「おかえり、シャカール」
    「……見てたのかよ」
    二人のところから立ち去ると柱の陰でファインが待っていた。
    「私まで行っちゃうとややこしくなっちゃいそうだったから」
    ファインと連れ立って寮への帰路を歩く。
    「でもあんなに嫉妬しちゃうなんて意外だったかも」
    「好きなモンが関わるとどうしてもな。ファインだってそうだろ?」
    「……シャカールがフラワーちゃんと話してた時の私みたいに?」

    目を丸くしてファインのほうを見る。
    ファインは困ったような笑みを浮かべた。
    「私だって嫉妬するんだよ?」
    「その……悪ィ」
    「ふふっ♪許してしんぜよう」
    冗談めかして話すファインの顔から視線を下げると、なにも持っていないオレとファインの手があった。
    そっと手を伸ばす。
    もう少しで触れようかというところで。

    ファインのほうから指を絡めてきた。
    しかも小指だけ。

    「えへへ、こういうの“指切りげんまん”って言うんだっけ?」
    「だいぶ違う気がするけどな……なにを約束させる気だよ」
    「んー、そうだね……」
    ファインが立ち止まってこちらをじっと見つめる。

    「……シャカールは、私の隣にずっといてくれる?」
    「イヤだって言っても離れてやらねェよ」
    「えへへ……ありがと、シャカール」
    寒空の中、絡み合う小指がじんわりと温かかった。

  • 5二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 21:28:56

    「そういえば約束を破ったら針千本飲ませるんだっけ」

    「……ファインが言うとまあまあシャレにならねェな」

    「でもシャカールは飲まなくていいからね」

    「なンでだよ」

    「だってもしシャカールの隣にいられなくなったら、私は針千本飲むよりつらい思いをすると思うから」

    「だからオレもそう思うだろうってか?随分と傲慢だな」

    「えへへ♪」

    「…………まァ、否定はしねェ、かな」

    「……!そっか……シャカールもそう思ってくれるんだ……」

    「~~~ッ!さっさと帰るぞ!」

    「はーい♪」

  • 6二次元好きの匿名さん21/12/23(木) 21:30:43

オススメ

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