【CP注意】めでたしめでたし

1二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 16:46:28

――こうしてお姫さまは王子さまと幸せに暮らしましたとさ。

……あ、マスター。
何をしていたのかって？
……実は、村の子ども達に童話を読み聞かせていたんです。
すみません、聞き取り調査をしようという流れだったのに貴方にだけ押し付ける形になってしまって……。
気にしてない？　寧ろおかげで仲良くなれたようで何より？
そう言ってもらえると助かります。
最初の方は私も普通に聞き取りをしていたのですが、大人だけじゃなくて子どもも対象に入れた方がいいのではと思ったんです。
ほら、大人では気付けないことも子どもなら気付くじゃないですか。だからと思ったんですけど……一度捕まったらなかなか離してくれなくて。
なら、一回童話を読むことで開放して貰えるという条件を出したんです。
流石に子ども相手に手荒な真似はできませんから、それにやはり平和的な解決が一番かと思いまして。
これでも私、平和を愛する救世主なんですよ。
――て、深妙な面持ちで頷かないで欲しいなぁ。そこは茶化すようにツッコんで欲しかったんだけど……。
事実だろ、ってそれはそうなのですが……やはり、自分で救世主とか言っちゃうのは意外と恥ずかしいので……。
え？　そういえば、どんな話を子ども達に聞かせていたのか？　ですか。
……コホン。
そうですね……やはり、子どもに聞かせる以上は明快で楽しく、そして幸せに終わる話がいいと思いました。
なので、今回はシンプルに王子さまが悪い魔女に囚われたお姫さまを助け出すというものをチョイスしました。

2二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 16:47:33

自分で言うのもなんですが、手応えはあったかと。
皆目を輝かせて、前のめりで聞き入るものだから、つい私も楽しく読み聞かせることが出来ました。
……去っていく時の子ども達の笑顔は暫く忘れないでしょう。
うん？　何でしょうか、マスター。……良いお母さんになりそう？
うわ、本人を前にそんな恥ずかしいこと言う？
でも、そうですね……本当に私は成れるのでしょうか？　お母様のような素敵な母親に……。
……？　愛情はあるだろうから出力さえ間違えなければ問題はない、ですか。
見てきたように語りますね。諸手を挙げて肯定しない所が妙にリアルです。
ですが、だからこそ助言としては最適かと。
確かに、如何に愛していても受け取る側にそれを理解して貰わなければ元も子もありませんね。
私もお父様とお母様の愛を実感できたからこそ、自分は愛されているのだと分かったわけですから……。
初歩的なことであるが故に重要なことですね。
ありがとうございます、マスター。使う機会があるかはわかりませんが、胸に留めておきます。

3二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 16:48:38

それはそうと、どうしましたか、マスター？
何か気にしているようだったので。
流石にそれくらいは『眼』を使わずともわかります。私は貴方のサーヴァントなのですよ。
ふむふむ……この話の魔女は最後どうなるのか、ですか。

――もちろん、王子さまの手で討たれますが。

わかりやすい勧善懲悪物でもありましたから、そうなるのは必然では？
何故そんな顔を…………ああ、なるほど。私が魔女を悪者とした話を選んだことに疑問を抱いたわけですね。
たしかに、貴方は霊基第一の私とも会っているのだから、私が魔女であることを知っているのは当然ですね。
そして、自ら同じ魔女を悪としてよかったのか……そんなところかな？
……やっぱり。
心配してくれるのは有り難いけど、気にする必要はありません。

4二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 16:49:22

物語における魔女とは、主人公を助ける助っ人(善)か、倒される悪の象徴でしかありません。
だから基本は二択しかないのです。
今回は状況や聞き手の様子から、偶々悪の方(そちら)を選んだだけ。
そもそも、物語の魔女とは舞台装置に近いものですので、貴方が心配するようなことは何も――
え？　私は助っ人(善)の方の魔女だよね？
――――――。
あ、いえ、すみません。いきなりのことでびっくりしちゃった……あはは……。
………………。
…………でも、そうですね。そうなのかもしれません。
あの頃、雨垂れの音が響く図書室で読んだ、私が憧れたのはきっと、そうだったのでしょう……。
この霊基の私を構成するものは救世主時代のものであるが故に、薄っすらとしか思い出せません。
……ですが、幼い頃の私は、きっとそんな童話の中の彼女達のようになりたいと思ったのでしょう。

5二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 16:50:41

そんな思いを裏切って、悪の魔女にでもなろうものなら……当然の結末が待っているはず……。
……『モルガン(彼女)』の末路は必然だったのです……。人を助けることを放棄し、私欲に走った魔女が討たれるは運命(さだめ)……。
………………。
安心してください、マスター。
貴方の傍にいる限り、“この”私はそうはなりません。
貴方という主役を導く魔女として、貴方の先達である救世主として、そして貴方のサーヴァントとして、裏切るようなことは決してしません。
無事に貴方が『めでたしめでたし』を迎えれるよう尽力を致しましょう。
それが、何者でもない『トネリコ』の願いでもあるのですから。

6二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 17:03:27

ひょっとしてあなたは休憩してるトネリコとマスターを書いた神様では……？

7二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 17:58:54

この絶妙な距離感がすき

8二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 18:09:38

もしかして天才ですか？

9二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 19:52:38

保守？

10二次元好きの匿名さん23/09/20(水) 21:36:32

蛇足

そういえばマスター。子ども達が噂していたみたいですが、私達のこと恋人か夫婦だと思っていたらしいですよ。
まあ実際はどうあれ、見た目的に歳が近い二人が一緒に行動していた弊害でしょう。外見的な特徴から見ても姉弟には見えないでしょうし。
あくまで子ども達が揶揄していただけなので、実害とかはないと思いますが、もしそのように言われたとしたらすみません。
え？　何故謝るのか、ですか？
それは、誤解とはいえ流石に私とそういう仲だと見られるのは嫌かと思いまして……。
嫌じゃない？　むしろ光栄だよって……。
…………やはり、貴方は少し変わっていますね。
見た目はともかく、貴方は私が妖精であることを知っているはず。それなのに、そう答えるということは…………取って喰われても文句は言えませんよ。
……なんーて、流石に冗談です。
でも、迂闊にそう言うのが危険なのは変わりません。
誰彼構わず言うのは感心しないな……。
うん？　誰彼には言っていない？　人は選ぶ？
……なるほど、こういうのを『人誑し』と呼ぶのですね。理解しました。